牧野洋 (工学者)

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牧野 洋
人物情報
生誕 (1933-12-10) 1933年12月10日(84歳)
日本の旗 日本東京府
居住 日本の旗 日本
満州国の旗 満州国
出身校 東京大学
学問
研究分野 機構学ロボット工学
研究機関 松下電器産業
山梨大学
牧野オートメーション研究所
博士課程
指導学生
清水晃[注 1]
主な指導学生 寺田英嗣
学位 工学博士(東京大学)
主な業績 自動機械やロボットの機構学
カム曲線、クロソイド曲線の応用
SCARAロボットの開発
自動化推進協会設立
影響を
受けた人物
佐田登志夫、谷口紀夫
影響を
与えた人物
広瀬茂男、謝存禧、鄭時雄、今瀬憲司、明愛国、古屋信幸
学会 精密工学会日本機械学会、日本ロボット学会
主な受賞歴 エンゲルバーガー賞
アセア・ゴールデンロボット賞
瑞宝中綬章
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牧野 洋(まきの ひろし、1933年昭和8年)12月10日- )は日本の機構学ロボット工学研究者技術者技術士(機械部門)、工学博士東京大学)。山梨大学名誉教授自動化推進協会名誉会長で、牧野オートメーション研究所代表。ロボット殿堂入りした組み立て用産業用ロボットSCARA(スカラ)」の開発者で、カムやロボットなどの機構解析でも顕著な業績を挙げている。

山梨大学教授、同 地域共同開発研究センター長、精密工学会自動組立専門委員会委員長、自動化推進協会会長などを歴任。「牧野の平面三角法」[1]「牧野座標系」[2]「牧野機構学」[3]など、名前を冠する用語もある。1985年エンゲルバーガー賞、アセア・ゴールデンロボット賞、2013年瑞宝中綬章

来歴[編集]

自動組立機械の研究開発[編集]

東京大学卒業後、松下電器産業株式会社に入社。中央研究所(後の生産技術研究所)機械部で2年程設計見習いをした後、放電加工機の研究に従事する。その後設計部に移り、自動組立に関するバレルカム式のインデックステーブルの開発研究、自動ねじ締め機の試作などを行った[4]山梨大学に着任してからも自動組立機械の研究に従事し、カム機構を中心に理論解析、設計手法の開発を行った[5]1968年に設立された精機学会の自動組立専門委員会(谷口紀夫会長、後の精密工学会生産自動化専門委員会)などの学会活動も行い、1972年に設立された自動組立懇話会(後の自動化推進協会)では会長を務めた。

1973年1月~1975年9月まで、日刊工業新聞社の「機械設計」誌に「自動機械のための機構学」を連載する[6]。これをまとめ直したものが、同社から1976年に「自動機械機構学」として出版された。この書籍ではベクトルによる解析や空間機構の解析、機構のシンセシス手法が盛り込まれ、内外の研究者に影響を与えた[1][7]

機構学・ロボット研究と産学連携[編集]

自動組み立てのためのNCアセンブリセンタを志向し[8]、組み立て作業に適したコンプライアンス(柔らかさ)を構造的に持つ、SCARA(Selective Compliance Assembly Robot Arm)を考案する。1978年4月には産学連携でSCARA研究会を立ち上げ、実用化を推進する。これはロボット業界における産学連携の成功例であり、組立分野にロボットが普及した契機となった。SCARAは水平多関節ロボットの代名詞となり、カーネギーメロン大学のロボット殿堂入りを果たしている[9]

また、その中でカム曲線をロボットの動作制御に応用し[10][11]クロソイド曲線を応用した経路補間法についても研究を進めた[12][13][14]。この間、加茂精工から相談されたボール減速機について、理論解析を寺田英嗣(現山梨大学教授)と行い、同発明品の理論的裏付けを与えた[注 2]

その他に、山梨大学では古屋信幸、明愛国、寺田英嗣らとともに、球面SCARAの開発[16][17]やステュアートプラットフォーム(パラレルメカニズムの一種)の折り紙解[18]などの研究を行った。産学連携に関するものとして、3次元ロボットティーチング装置、及びそのキャリブレーション(校正)[19]、球面SCARAロボットの制御[20][21]、マルチロボットシステムの制御[22]、ビジョンによるロボットピッキング[23]、トロコイド歯車[24]などの研究を行った。また、山梨大学地域共同開発共同研究センター長にも就任している。

大学退官後、牧野オートメーション研究所[編集]

1999年に山梨大学を定年退官後も、牧野オートメーション研究所を設立して技術者として活動する。THK(株)のメカトロ事業の立ち上げに協力し、2000年5月から3年程センター長にも就任している[25]。この間、トロコイドスプロケットの研究[26]において、再び企業側から産学連携に携わっている。自動化推進協会においては、「自動化こぼれ話」の連載、同会が実施する「メカトロニクス技術認定試験」の試験委員長を務めたり[27]、機構解析手法やカム設計手法の講座を担当している[3][28]

また、株式会社マッスルにも関与し[29]、「ロボやんプロジェクト」に機構部企画開発ディレクターとして参画しており[30]、同社が開発した介護ロボット「ROBOHELPER SASUKE」の機構設計にも協力している[31]

人物[編集]

牧野は東京に生まれ、満州で育った[32]。祖父は牧野菊之助。クラシック音楽鑑賞(特にプロコフィエフ[33])やテニスが趣味で[32]キリマンジャロコーヒーカナディアン・ウイスキーを好む[33]

履歴[編集]

略歴[編集]

受賞・栄典[編集]

社会的活動[編集]

(学術団体)

  • 精密工学会(旧 精機学会) - 名誉会員、自動組立専門委員会 会長(1983年~1994年3月)[42]
  • 日本機械学会
  • 日本ロボット学会 - フェロー(2002年)、名誉顧問(2012年)[35]

(その他)

著作[編集]

学位論文[編集]

主著[編集]

共著[編集]

連載[編集]

  • 「自動化こぼれ話」 - 『自動化推進』(1979年2月~、#外部リンクも参照。)
  • 「自動化こぼれ話」 - 『メカトロニクス』(1980年1月~1981年1月、1982年9月~1983年12月)
  • 「裏返しのメニュー」 - 『メカトロニクス』

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 清水晃 『ロボットマニピュレータによる3次元形状の加工』 山梨大学〈博士論文(甲第76号)〉、1998年
  2. ^ これにより、精密工学会の第11回 精密工学会賞(昭和63年度)を受賞している[15]
  3. ^ 業績題目 - SCARAロボットの開発、受賞者 - 牧野洋、村田誠、古屋信幸(山梨大学)
  4. ^ 受賞論文 - 寺田英嗣、牧野洋、今瀬憲司「サイクロイドボール減速機の基礎解析(第1報)動作原理」、『精密工学会誌』第54巻第11号、1988年、 pp.2101-2106。
  5. ^ 2008年度登録「重要科学技術史資料(未来技術遺産)」第00021号「SCARA試作機」第二種、山梨県甲府市、1980年[39]
  6. ^ 受賞論文 - 蘭豊礼、玉井博文、三浦憲二郎、牧野洋「リニアな曲率・捩率を持つセグメントによる軌道生成」、『精密工会誌』第78巻第7号、2012年、 605-610頁。

出典[編集]

  1. ^ a b 広瀬茂男 『ロボット工学』 裳華房〈機械工学選書〉、1987年ISBN 4785365013
  2. ^ ロボット機構学 1988.
  3. ^ a b 須田大春「事業報告「C#で学ぶ牧野機構学」実施報告」、『自動化推進協会』第40巻第1号、2011年
  4. ^ 私の歩んできた道 第1回 2005, p. 1103.
  5. ^ 自動機械機構学 1976.
  6. ^ 自動機械機構学 1976, p. iii.
  7. ^ ロボット機構学 1988, p. i.
  8. ^ 牧野洋「NCアセンブリセンタ」、『精密機械』第41巻第482号、1975年、 250-255頁。
  9. ^ 巻頭言 スカラロボット ロボット殿堂入りのお知らせ」、『自動化推進』第35巻第3号、2006年
  10. ^ 汐崎勤、牧野洋「PTPロボットの制御における大変位問題の解」、『精密機械』第45巻第530号、1979年、 148-153頁。
  11. ^ 古屋信幸、相馬勝男、陳栄進、牧野洋「選択的コンプライアンス構造をもつ組立用ロボットの開発研究(第2報) SCARA制御装置のハードウェアとソフトウェア」、『精密機械』第49巻第7号、1983年、 835-841頁。
  12. ^ 仇時雨、牧野洋、須田大春、横山恭男「クロソイドによる自由曲線補間法」、『日本ロボット学会誌』第8巻第6号、1990年、 680-687頁。
  13. ^ 仇時雨、神谷好承、青柳誠司、岡部佐規一、牧野洋「クロソイド補間を用いたロボットの軌跡速度制御に関する考察」、『日本機械学会論文集 C編』第57巻第542号、1991年、 3240-3246頁。
  14. ^ 牧野洋「接線法を用いた自由点列のクロソイド補間」、『精密工学会誌』第60巻第1号、1994年、 80-85頁。
  15. ^ 今瀬憲司「ボール減速機の商品化」、『日本ロボット学会誌』第23巻第2号、2005年、 65-167頁。
  16. ^ 明愛国、古屋信幸、牧野洋「球面SCARAロボットの開発研究(第1報)」、『精密工学会誌』第54巻第7号、1988年、 1265-1271頁。
  17. ^ 明愛国、張同庄、山本唯司、古屋信幸、村田誠、牧野洋「球面SCARAロボットの開発研究 (第2報)」、『精密工学会誌』第55巻第9号、1989年、 1615-1620頁。
  18. ^ 金嘯海、古屋信幸、牧野洋「ステュアートプラットフォームの順機構学解 -折り紙解による順機構解の解法-」、『精密工学会誌』第62巻第5号、1996年、 732-736頁。
  19. ^ 王樹華、明愛国、牧野洋(山梨大学)、清水晃(ぺんてる(株)甲府研究所)「冗長自由度ティーチングロボットの機構誤差解析と校正」、『精密工学会誌』第60巻第4号、1994年、 544-548頁。
  20. ^ 明愛国、清水晃、牧野洋「工芸品のロボット加工システムに関する研究」、『精密工学会誌』第60巻第1号、1994年、 91-96頁。
  21. ^ 牧野洋、寺田英嗣、ザガリアサイッド、王樹華、岩城純一郎、和田泰宗、田部誠(山梨大学)、清水晃(ぺんてる株式会社)「球面スカラロボットの制御ソフトウェアの研究」、『山梨大学地域共同開発研究センター研究成果報告書』第4巻、1996年、 17-19頁。
  22. ^ 牧野洋、寺田英嗣、金子智、清水淳史(山梨大学)、中沢東治(株式会社テスコン開発部)「マルチロボットシステムの制御に関する研究」、『山梨大学地域共同開発研究センター研究成果報告書』第4巻、1996年、 20-22頁。
  23. ^ 牧野洋、寺田英嗣、傅寶莱(山梨大学)、北原康行(三協精機株式会社)「ビジョンを用いたロボットピッキングの研究」、『山梨大学地域共同開発研究センター研究成果報告書』第4巻、 14-16頁。
  24. ^ 寺田英嗣、牧野洋、今瀬憲司「直動形トロコイド歯車の基礎解析(第1報) -トロコイドカムラックの動作原理-」、『精密工学会誌』第63巻第11号、1997年、 1609-1613頁。
  25. ^ 私の歩んできた道 第2回 2005, p. 1223.
  26. ^ 寺田英嗣、石田和義、地場広幸、牧野洋(THK(株))、入江禀三(三協オイルレス工業(株))「ローラチェーン用トロコイドスプロケットの基礎解析(第1報) -機構学的歯形条件-」、『精密工学会誌』第67巻第11号、2001年、 1829-1833頁。
  27. ^ 熊谷卓「巻頭言 メカトロニクス技術認定試験を世界標準へ」、『自動化推進』第35巻第1号、2005年
  28. ^ 平林敢歩「事業報告 2011年度「C#で学ぶ牧野機構学講座」実施報告」、『自動化推進』第40巻第4号、2012年
  29. ^ 蘭豊礼、玉井博文、牧野洋「三連クロソイドによる自由点列補間」、『精密工学会誌』第76巻第10号、2010年、 pp.1194-1199。
  30. ^ “マッスルなど、ロボ標準プラットフォームの構築に向けプロジェクト発足”. Robonabl最新ニュース (日刊工業新聞社). (2010年10月26日). http://www.robonable.jp/news/2010/10/26mucle.html 2014年1月12日閲覧。 
  31. ^ “マッスル、新開発の移乗システム公開、要介護者をシートごと抱きかかえて移乗”. Robonabl最新ニュース (日刊工業新聞社). (2012年9月28日). http://www.robonable.jp/news/2012/09/musclecorp-0928.html 2014年1月12日閲覧。 
  32. ^ a b シーバス・リーガル・ロボット 1987, 著者紹介.
  33. ^ a b 裏返しのメニュー 1984, 著者紹介.
  34. ^ 自動機械機構学 1976, 著者紹介.
  35. ^ a b c d e 日本ロボット学会名誉会員のご紹介 (PDF) 」 、『日本ロボット学会誌』第30巻第7号、2012年9月、 お知らせp.2。
  36. ^ 私の歩んできた道 第3回 2005, p. 1362.
  37. ^ Past Recipients by Year, , Robotics Online > Joseph F. Engelberger Awards (Robotics Industry Association), http://www.robotics.org/filesDownload.cfm?dl=pastrecipients_year.pdf 2016年5月3日閲覧。 
  38. ^ スカラロボットがロボット殿堂入り”. 自動化推進協会お知らせ (2006年6月27日). 2014年1月12日閲覧。
  39. ^ 産業技術史”. 国立科学博物館. 2014年1月12日閲覧。
  40. ^ “瑞宝中綬章に産業ロボットの牧野氏ら 秋の叙勲 山梨関係は40人”. 山梨日日新聞. (2013年11月3日). http://www.47news.jp/localnews/yamanashi/2013/11/post_20131103103047.html 
  41. ^ 事業内容1、論文賞:FAおよび産業用ロボット技術に関する研究業績の表彰<平成24・25年度「論文賞」受賞論文一覧>”. 財団法人 FA財団. 2014年3月3日閲覧。
  42. ^ 精密工学会 生産自動化専門委員会「自動化機器の歴史を残す―生産自動化専門委員会報告― (PDF) 」 、『専門委員会・分科会研究レビュー(精密工学会 Vol.71 No.10)』。

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

関連機関