無誘導爆弾

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無誘導爆弾(Mk82)

無誘導爆弾(むゆうどうばくだん、Gravity bomb)または自由落下爆弾(じゆうらっかばくだん)は、航空機搭載爆弾の一種。単に航空機から投下する爆弾を示す。最も古くからあるタイプの航空機搭載爆弾。

概要[編集]

大日本帝国海軍の使用した九八式25番陸用爆弾の構造図。日本海軍における無誘導爆弾の基本的な構造を示す。弾頭および弾底に信管を装着し、弾体は鋲接で接合された。炸薬量96.6kg。400mmのコンクリートを貫通した

無誘導爆弾は航空機から無線などによる操縦・誘導をともなわず、自由落下によって目標物へと投下される兵器である。爆弾本体の構造は弾殻信管炸薬と安定翼で構成される。各国が用いた初期の航空爆弾や大戦中の爆弾には、衝撃による弾体の変形や破壊による不発を少なくするため、信管が複数取り付けられることが多かった[1]

無誘導爆弾は航空機の爆弾倉または機体下面や主翼下面に設けられた懸架装置に取り付けられる。航空機は無誘導爆弾を懸架して飛行し、目標の上空へ達すると照準器によって目標を確認し、投弾(切り離し)する。第二次世界大戦の中盤に無線、赤外線で誘導される誘導爆弾が開発されるまでは、航空機搭載爆弾には無誘導爆弾しかなかった。

ベトナム戦争時、F-4戦闘爆撃機火器管制システムと組み合わされた場合、500ポンド無誘導爆弾は平均誤差半径122m(400ft)の精度を発揮することができた[2]

投下方法[編集]

無誘導爆弾の投下にあたっては、目標と運搬する航空機の位置関係、投下時の航空機の速度、目標の速度、投下後の爆弾に働く重力や空気抵抗、風向きなどを計算に入れる必要があるが、全ての変数を得られるわけではない。第一次世界大戦においては、投下の見越し角度は全て目測によるものであった。こうした原始的な水平爆撃の命中率は低く、より精度の高い急降下爆撃が開発された。第二次世界大戦では水平爆撃の他、急降下爆撃も行われ、大戦中に照準器の機械化が進められた。現在ではコンピュータにより投下タイミングが自動計算される。

第二次世界大戦中にアメリカ陸軍中将ジョージ・C・ケニーは反跳爆撃を開発し、日本軍の艦艇を攻撃した。これは、機銃を増設した航空機が、艦艇に射撃を加えて対空防御を制圧しつつ、海面すれすれの低空で、5秒遅延信管付きの爆弾を投下すると、石切りと同じ原理で爆弾が海面を跳ねながら突進していくというものである。爆弾が艦艇に命中した場合、舷側または舷側水線下で爆発した。反跳爆撃は、本来点的な攻撃である爆撃が線的な攻撃になった点で雷撃に近いが、雷撃よりも高速で突入し爆弾を投下できた。魚雷は入射角と衝撃を計算に入れて投下せねばならず、また、あまり高速で投下すると弾体が破壊される欠点があった。

日本陸海軍も反跳爆撃の実験を行い成功したが、大戦末期の艦艇攻撃の主戦術は特攻へと傾斜した。日本陸軍の反跳爆撃は、昭和18年3月から研究を開始し、昭和19年4月には爆弾の整備にまで至った。爆撃は速度500km/hで進入し、距離200mまで接近、高度20mから10mで投弾し離脱するものであった。信管は15秒延期されており、昭和19年12月8日にはフィリピン、おそらくレイテ島オルモック湾一〇〇式重爆7機が輸送艦に対し攻撃を実施、1発が命中した。弾種は強化改良された250kg跳飛爆弾である[3]

日本海軍の反跳爆撃は艦艇の側面装甲の貫通を狙うことにこだわり、戦術化が遅れた。これは爆撃法が反跳を必要とすることから爆弾がブレて飛翔し、貫通には不適であったことが原因の一つであった。また、信管の開発に時間をとられたこと、弾体強度、弾道直進性、威力などから、大型艦艇への大規模な反跳爆撃の実施に至らず、特攻を主戦術とした[4]

さらには、自機の速度・高度を大いに利用したトスボミングという投下法もある。これは、急上昇を行いながら爆弾を切り離すことで、より遠方に爆弾を放り投げることができる方法である。目標と自機の距離をとることができるが命中精度が低下するため、主に低高度からの投下や、自機と爆弾の距離を稼ぐ必要のある核爆弾の投下法として使用された。

種類[編集]

誘導装置を必要としない爆弾は単価が安く大量生産に適する。無誘導方式の爆弾は、誘導爆弾ミサイルが開発された後も、航空機における主力地上攻撃武装として使用された。また、初期の核爆弾は航空機から投下するのみの無誘導爆弾であった。湾岸戦争においても投下量自体は、誘導兵器よりも無誘導爆弾の方が多い。1990年代ユーゴ紛争より、急激に誘導爆弾使用割合が増加し、無誘導爆弾の使用が減少した。

第二次世界大戦当時の日本陸海軍の用いた無誘導爆弾、また、現代の軍が使用するものの中には、空気抵抗板やパラシュートバリュートが取り付けられた減速爆弾が存在する[5]。これは航空機が低空から爆弾を投下すると、爆弾炸裂の影響(衝撃波や四散する破片)が投下母機に及ぶため、空気抵抗により爆弾の落下速度を下げ、母機の退避時間を稼ぐというものである。こうした爆弾は投下飛翔中の水平速度が減少し、降下角と地面への入射角が深くなり、炸裂した爆弾がより効果的に爆風と生成破片を放射するという利点もある。地面に着弾した際に侵徹量が少なくなり、地中へと爆発威力を及ぼすよりも、地表へ露出した目標へ威力を及ぼす。

日本陸軍の開発した徹甲爆弾は、コンクリートで建造された強固な防御建築物に対して破壊効果を発揮するよう設計されていた。弾殻は鋳鋼を熱処理して硬化され、炸薬に発火するまでの秒時を遅めるための遅延式信管を、比較的衝撃に対して変形を起こしにくい弾底に装着した[6]。 徹甲爆弾は防御建築物に命中するとコンクリートの壁面を貫通侵入し、遅延信管が作動して目標内部で炸裂する。

また、日本海軍の使用した対艦用の爆弾は通常爆弾と呼称され、陸上の目標に用いる陸用爆弾とは別個の設計が施された。通常爆弾は艦艇の装甲を貫通して内部で炸裂する性能が要求された。艦艇の装甲に対し、陸用爆弾を命中させると衝撃に耐えられず弾殻がはじけ、内部の炸薬が飛散する恐れがあったためである。そこで弾殻を強靭な鍛鋼で製造し、さらに命中時の衝撃に耐えられるよう弾殻の厚みが増強されていた。欠点としては製造単価が高価であることと、弾体内部に充填する炸薬量が少なくなったことである[7]

現代の無誘導爆弾[編集]

アメリカ[編集]

過去に朝鮮戦争ベトナム戦争で使用された爆弾であるM117英語版M118英語版は、最新の航空爆弾よりも感度が高く、爆発しやすい炸薬を使用していた。これらの爆弾の一部は、現在もアメリカ軍の兵器庫に残っているものの、ほとんどが消費された。M117は、主としてB-52ストラトフォートレスによってのみ投下される。

現在主用されるアメリカ軍の汎用爆弾はMark 80系列である。この形式の爆弾は、1946年に空力的な研究が行われた結果、ダグラス航空機会社の設計技師エド・ハイネマンによって設計された「エアロ1A」として知られる形状を採用した。これは艦載機のための最小抗力を追求しており、弾体のサイズに約8対1の長さと直径の比率を用いている。Mark 80系列の爆弾は、ベトナム戦争までの戦いには投入されていないが、当時運用されていた旧式な爆弾を装備更新して以来、現在に至るまで使用されている。この汎用爆弾は、4つの基本的な兵装の種類が含まれる。

ベトナム戦争では、Mk81「ファイアークラッカー」が効果不十分であると認められたため、アメリカ軍での使用が中止された。しかし、Mk81爆弾の最近の精密誘導式の派生形(SDB)は、2003年以降、イラクにおいてアメリカ軍の実戦経験に基づいて運用開始され、巻き添え被害を低減するためにMk82及びそれよりも大きい爆弾と一部代替されはじめている。また、アメリカ海軍海兵隊の使用する汎用爆弾は、ベトナム戦争以降、航空母艦上で火災が発生した場合に爆発事故を起こす可能性があることから、この不意の爆弾の発火を遅らせるように設計されている。弾体は、表面を厚いアブレーティブ難燃性塗料によって処理されている。

Mk80シリーズの爆弾は、以下のバージョンが主として使用されている。

  • BDU-50演習弾(非爆発性)Mk82爆弾本体を流用した訓練用のバージョン
  • BDU-56演習弾(非爆発性)Mk84爆弾本体を流用した訓練用のバージョン

誘導爆弾キット

Paveway II p1230135.jpg
  • GBU-12D Paveway II(Mk 82)レーザー誘導爆弾。
  • GBU-16B Paveway II(Mk 83)レーザー誘導爆弾。
  • GBU-24B Paveway III(Mk 84)レーザー誘導爆弾。
  • GBU-38 JDAM(Mk 82)INS/GPS 誘導爆弾。
  • GBU-32 JDAM(Mk 83)INS/GPS 誘導爆弾。
  • GBU-31 JDAM(Mk 84)INS/GPS 誘導爆弾。

低高度爆撃用遅延バージョン

Snake Eye
  • Mk 82 スネークアイ Mk 82に折り畳み式フィンを取り付けたバージョン。
  • Mk 82 Retarded Mk 82にバリュートを取り付けたもの。
  • Mk 83 Retarded Mk 83にバリュートを取り付けたもの。
  • Mk 84 Retarded Mk 84にバリュートを取り付けたもの。


ソビエト連邦/ロシア[編集]

FAB-250
FAB-500
  • FAB-250-公称重量250ポンド(113キロ)
  • FAB-500-公称重量500ポンド(227キロ)
  • FAB-1500-公称重量2,000ポンド(908キロ)


イギリス[編集]

フランス[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 兵頭二十八『日本海軍の爆弾』59頁から60頁
  2. ^ Whitney, Bradley & Brown, Inc. (2006年10月17日). “Multi-Mode Precision Strike Weapons (PDF)” (英語). 2013年1月27日閲覧。
  3. ^ 兵頭二十八『日本海軍の爆弾』208頁から212頁
  4. ^ 兵頭二十八『日本海軍の爆弾』212頁から217頁
  5. ^ 兵頭二十八『日本海軍の爆弾』259頁
  6. ^ 兵頭二十八『日本海軍の爆弾』80頁
  7. ^ 兵頭二十八『日本海軍の爆弾』80頁

参考文献[編集]