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準大手私鉄

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

準大手私鉄(じゅんおおてしてつ)とは、日本の民営鉄道事業者私鉄)の分類の一つで、中小私鉄の一種。準大手民鉄とも呼ばれる。

大手私鉄」に対する語で、中小私鉄でありながら沿線地域の発展に伴って企業が成長し、鉄道事業が大手私鉄に準ずる規模まで増大した鉄道事業者が「準大手私鉄」と呼ばれる。

準大手私鉄・準大手民鉄の語は、公的機関や報道出版においても用いられており、国土交通省も「準大手民鉄」の呼称を用いて分類している[1]。しかし、大手私鉄、準大手私鉄および中小私鉄の明確な定義はない[2][3][4]業界団体である日本民営鉄道協会は、協会に加盟している72社のうち、「大手民鉄」(大手私鉄)16社以外の56社を総称して「地方民鉄」(中小私鉄)と呼んでいる[4]。日本民営鉄道協会は、2000年代の中頃までは「準大手」の呼称も用いていたが、その基準が曖昧なため、現在では使っていない[3]

大手私鉄の承認は国土交通省などの公的機関ではなく、日本民営鉄道協会が行っており、鉄道事業者からの要望を受けて同協会理事会で審議の上、承認を受ければ大手私鉄とされる[2]。そのため、日本民営鉄道協会に加盟していない鉄道事業者は事業規模にかかわらず大手私鉄とはみなされず、既に同協会に加盟していた東京地下鉄(東京メトロ)は民営化に伴い大手私鉄入りしたが、大阪市高速電気軌道 (Osaka Metro) は民営化後も同協会非加盟のため大手私鉄とはみなされない[2]。一方で、準大手私鉄とされている3社のうち神戸高速鉄道は同協会に加盟していない[注釈 1]

また大手私鉄・準大手私鉄という場合、鉄道会社や企業グループの規模だけでなく、鉄道事業の規模が占める割合が重視される[2]。一例として、遠州鉄道グループや静岡鉄道グループ[5]連結売上高は大きい[注釈 2]ものの、グループ全体の利益に占める鉄道事業の割合は低い[2][5]。また富士急行グループは売上高の多くを富士急ハイランドなどのレジャー産業などが占めている。こうした鉄道事業者は準大手私鉄とはみなされていない。

準大手私鉄の一覧

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現在の準大手私鉄

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2025年度現在、準大手私鉄とされているのは以下の3社である。3社の掲載順序は『鉄道要覧』に準ずる。日本民営鉄道協会(民鉄協)は、非加盟の神戸高速鉄道以外の2社を地方民鉄に分類している[6]

No. 会社名
(略称)
本社所在地 民鉄協 設立 資本金
(百万円)
旅客営業
粁程 (km)
駅数
(駅)
備考 出典
1 北大阪急行電鉄
(北大阪急行、北急)
大阪府
豊中市
加盟[7] 1967年(昭和42年)
12月11日[注釈 3]
1,500 8.4 6 第三セクター
阪急阪神東宝グループ
[8]
2 山陽電気鉄道
(山陽電鉄、山陽、山電[注釈 4]
兵庫県
神戸市長田区
加盟[10] 1933年(昭和8年)
6月6日
10,090 63.2 46 東証プライム上場[注釈 5]
山陽電鉄グループ
[11]
3 神戸高速鉄道
(神戸高速)
兵庫県
神戸市中央区
非加盟[10] 1958年(昭和33年)
10月2日
100 7.6 6 第三セクター
阪急阪神東宝グループ
[12]

過去の準大手私鉄

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相模鉄道は、1990年5月31日、日本民営鉄道協会より大手私鉄への昇格が承認された[13]

神戸電鉄は、国土交通省監修・財団法人運輸政策研究機構発行の『数字でみる鉄道』によれば、2004年版までは準大手民鉄に分類されていたが、2005年版以降では中小民鉄に分類されている。なお、1980年代から1990年代前半には相模鉄道同様に大手私鉄に昇格する計画が存在した[14]

新京成電鉄泉北高速鉄道は、いずれも準大手私鉄に区分されていたものの、2025年令和7年)4月1日に、それぞれ親会社である京成電鉄南海電気鉄道を存続会社として吸収合併されたため、法人格自体が消滅した[15][16]

現行
区分
会社名
(略称)
本社所在地 民鉄協 設立 資本金
(百万円)
旅客営業
粁程 (km)
駅数
(駅)
備考 出典
大手 相模鉄道
(相鉄)
神奈川県
横浜市西区
加盟[17] 1964年(昭和39年)
11月24日
100 35.9 25 東証一部上場
相鉄グループ相鉄HD完全子会社
[18]
中小 神戸電鉄
(神鉄)
兵庫県
神戸市兵庫区
加盟[19] 1926年大正15年)
3月27日
11,710 69.6 47 東証一部上場[注釈 5]
阪急阪神東宝グループ神戸電鉄グループ
[20]
消滅 新京成電鉄
(新京成)
千葉県
鎌ケ谷市
加盟[21] 1946年(昭和21年)
10月23日
5,934 26.5 24 左記は合併時点の情報。
2022年(令和4年)まで東証スタンダードに上場
京成グループ・新京成電鉄グループ
2025年(令和7年)4月1日、親会社の京成電鉄に吸収合併[注釈 6]
[22]
[15]
消滅 泉北高速鉄道
(泉北高速、泉北、泉鉄[注釈 7]
大阪府
和泉市
加盟[23] 1965年(昭和40年)
4月1日
4,000 14.3 6 左記は合併時点の情報。
南海グループ泉北高速鉄道グループ(旧・OTKグループ)
2025年(令和7年)4月1日、親会社の南海電気鉄道に吸収合併[注釈 8]
[24]
[16]

脚注

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注釈

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  1. ^ ただし株主のうち阪急電鉄阪神電気鉄道は同協会加盟の大手私鉄である。
  2. ^ 2020年度での中小私鉄全体の売上高の順位は遠州鉄道(遠鉄)が1位で静岡鉄道(静鉄)は3位である。なお、2位は大阪市高速電気軌道(Osaka Metro)であり、遠鉄・Osaka Metro・静鉄の3社を「中小3強」と称している事例もある。
  3. ^ 準大手私鉄への昇格は1987年4月1日
  4. ^ グループ企業に「山電サービス株式会社」がある[9]
  5. ^ a b 2013年7月12日までは大証一部に上場していたが、東証との合併による大証の現物株式取引終了に伴い、東証一部上場となった。
  6. ^ 路線名は新京成線から松戸線に変更。
  7. ^ グループ企業に「泉鉄産業株式会社」が存在した。
  8. ^ 路線名は泉北高速鉄道線から泉北線に変更。

出典

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  1. ^ 鉄道いろいろ 鉄道フォトギャラリー 鉄道 - 国土交通省、2021年9月9日閲覧。
  2. ^ a b c d e 枝久保達也 (2020年6月1日). “相鉄が大手となって30年、かたや大阪メトロが中小を抜け出せない理由”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. 2021年9月9日閲覧。
  3. ^ a b 大手民鉄 | 鉄道用語事典”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2023年12月9日閲覧。
  4. ^ a b 地方民鉄 | 鉄道用語事典”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2023年12月9日閲覧。
  5. ^ a b 枝久保達也 (2019年6月10日). “「鉄道以外」で99%を稼ぐユニーク私鉄、遠州鉄道と静岡鉄道を大解剖!”. ダイヤモンド・オンライン. ダイヤモンド社. 2021年9月9日閲覧。
  6. ^ 地方民鉄 旅ガイド”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2023年12月9日閲覧。
  7. ^ 北大阪急行電鉄株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  8. ^ 会社概要路線図・各駅情報 - 北大阪急行電鉄
  9. ^ 会社情報 - 山電サービス。2024年12月25日閲覧。
  10. ^ a b 山陽電気鉄道株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  11. ^ 会社概要路線図・駅情報 - 山陽電車
  12. ^ 会社概要事業概要 - 神戸高速鉄道
  13. ^ 相鉄グループ100年史 編纂事務局 編「年表」『相鉄グループ100年史 1917―2017』(PDF)相鉄ホールディングス、2018年12月、388頁https://www.sotetsu.co.jp/media/2019/trans/group/history/pdf/100years_018.pdf#page=152021年9月9日閲覧 
  14. ^ 「情報アングル・儲かりまっか!の再開発II」『産業と経済』第42巻第7号、1988年6月10日、57頁、全国書誌番号:00009491 
  15. ^ a b 完全子会社(新京成電鉄株式会社)の吸収合併(簡易合併・略式合併)に関するお知らせ』(PDF)(プレスリリース)京成電鉄、2023年10月31日https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS01810/c42c9a09/9d88/4561/b70d/344102d6f272/140120231030573888.pdf2023年11月1日閲覧 
  16. ^ a b 連結子会社である泉北高速鉄道株式会社との経営統合に関する基本合意のお知らせ』(プレスリリース)南海電気鉄道、2023年12月20日https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20231220505776/?fbclid=PAAaYd0o7dXdXLrxrkPgZGca9D0mGbiToiQAeOIMVnXggqP16ayEgvmVGTwIg_aem_Ad7ny0Q_VoDmKZy_FJ_Q9dJNDVSOO3BYnb3e79qkTQTDNJXAJX7OKMWW1ZlSEi1i6FU2023年12月20日閲覧 
  17. ^ 相模鉄道株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  18. ^ 大手民鉄の現況(単体) - 大手民鉄データブック、日本民営鉄道協会
  19. ^ 神戸電鉄株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  20. ^ 会社案内駅・電車の情報 - 神戸電鉄
  21. ^ 新京成電鉄株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  22. ^ 会社概要 - 新京成電鉄
  23. ^ 泉北高速鉄道株式会社”. www.mintetsu.or.jp. 日本民営鉄道協会. 2024年1月20日閲覧。
  24. ^ 会社概要路線図 - 泉北高速鉄道

関連項目

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外部リンク

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