渡邊守章
人物情報 | |
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生誕 |
1933年3月20日![]() |
死没 |
2021年4月11日 (88歳)![]() |
出身校 | 東京大学 |
学問 | |
研究分野 | 文学(フランス文学)・演劇学・美学 |
研究機関 | 東京大学、放送大学 |
学位 | 文学博士 |
渡邊 守章(わたなべ もりあき、1933年3月20日 - 2021年4月11日)は、日本の演出家、フランス文学研究者[1]。東京大学名誉教授、放送大学名誉教授。
経歴[編集]
1933年、東京生まれ。都立日比谷高校を卒業し、東京大学教養学部教養学科フランス分科で学ぶ。同大学大学院仏文科を修了(文学博士)。
1971年、東京大学教養学部助教授に採用された。1978年に教授昇進。1988年には教養学部内に教養学科表象文化論専攻研究室を創設し、初代主任を務めた。1993年に東京大学を定年退官し、名誉教授となった。その後は放送大学教養学部教授として教鞭をとり、副学長もつとめた。2007年に放送大学を退任し、名誉教授となった。客員としては、2008年より京都造形芸術大学特任教授。2014年3月末までは同大学舞台芸術研究センター長も務めた。2021年4月11日、胸部大動脈瘤破裂のため東京都内の病院で死去[2]。88歳没。
受賞・栄典[編集]
- 2006年:日本翻訳文化賞および毎日出版文化賞を受賞。クローデルの韻文による戯曲『繻子の靴』の翻訳に対して。
- 2007年:読売文学賞を受賞。ロラン・バルト『ラシーヌ論』の翻訳に対すして。
- 2019年1月:フランスのレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエを受章[3]。
- 2019年:文化庁長官表彰[4]。
研究内容・業績[編集]
研究者として[編集]
日本演劇界との協働[編集]
- 1970年には観世寿夫らと「冥の会」を結成し、演劇活動を行った。
- 1979年からは演劇集団 円の演出家としても活動。ラシーヌの『フェードル』を能様式で演出し、フランスでも上演した。ほかに『能ジャンクション・葵上』のような実験的な能や、クローデル、コクトーのほか、多くの近代演劇の演出を手掛けており、1996年から演劇製作「空中庭園」を活動の拠点として演出活動を行った。野村萬斎を武司時代(十代期)からいち早く起用し、また渡辺謙も守章演出で初舞台を踏んでいる。演劇企画『空中庭園』を主宰した。
主な演出作品[編集]
- 1972年 冥の会『アガメムノーン』(作=アイスキュロス)
- 1975年 冥の会『メーデーア』(作=セネカ)
- 1980年 演劇集団 円『悲劇ブリタニキュス』(作=ラシーヌ/出演=藤田宗久、橋爪功、後藤加代)
- 演劇企画「会」『女中たち』(作=ジャン・ジュネ)
- 1981年 演劇集団 円『バジャゼ 後宮悲劇』(作=ラシーヌ/出演=渡辺謙、後藤加代)
- 1983年 演劇集団 円『アンドロマック』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代)
- 演劇企画「会」『バルコン』(作=ジュネ/出演=仲谷昇、後藤加代)
- 1984年 演劇集団 円『女王ベレニス』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代)
- 1986年 演劇集団 円『悲劇フェードル』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代、松本留美、井上倫宏)
- 1987年 パルコ・能ジャンクション『葵上』(出演=後藤加代、野村武司)
- 1988年 パルコ・能ジャンクション『當麻』(出演=野村武司)
- 1989年 演劇集団 円・シアターサンモール『天守物語』(作=泉鏡花/出演=後藤加代)
- 1990年 東京グローブ座『ハムレット』(作=シェイクスピア/出演=野村武司、後藤加代)
- 銀座セゾン劇場『かもめ』(作=チェーホフ)
- 1992年 演劇集団 円 円『愛の勝利』(作=マリヴォー/出演=平栗あつみ)
- 1993年 銀座セゾン劇場『ロレンザッチョ』(作=ミュッセ/出演=堤真一、佐藤オリエ)
- 1994年 シアターΧ『アガタ』(作=マルグリット・デュラス/出演=范文雀)
- 1995年 武生市『源氏物語』(構成=渡邊守章/作曲=松平頼則)
- 1997年 空中庭園・六行会ホール『声』(作=コクトー/出演=剣幸)
- 1998年 空中庭園『天守物語』(作=泉鏡花/出演=後藤加代、平栗あつみ)
- 1999年 空中庭園・青山円形劇場『悲劇フェードル』(作=ラシーヌ/出演=後藤加代、平栗あつみ
- 2001年 演劇集団 円『シラノ・ド・ベルジュラック』(作=エドモン・ロスタン/出演=橋爪功、仲谷昇)
- 2004年 空中庭園・世田谷パブリックシアター『内壕十二景』(作=渡邊守章/出演=観世栄夫、野村萬斎)
- 2016年 『繻子の靴 - 四日間のスペイン芝居 -』(2016年12月、京都芸術劇場 春秋座/作:ポール・クローデル/出演:剣幸、吉見一豊 ほか) 翻訳・構成・演出[5]
著作[編集]
単著[編集]
- 『ポール・クローデル 劇的想像力の世界』中央公論社、1975。博士論文
- 『虚構の身体 演劇における神話と反神話』中央公論社、1978
- 『芝居鉛筆書き』冬樹社、1983
- 『劇場の思考』岩波書店、1984
- 『パリ感覚 都市を読む』岩波書店〈旅とトポスの精神史〉、1985/岩波現代文庫(新編)、2006
- 『フーコーの声 思考の風景』哲学書房、1987
- 『踊ること・劇 舞台のある風景』新書館、1987
- 『演劇的欲望について こえ・ことば・すがた』筑摩書房、1987
- 『演劇とは何か』講談社学術文庫、1990。文庫オリジナル
- 『快楽と欲望 舞台の幻想について』新書館、2009
- 『越境する伝統 渡邊守章評論集』ダイヤモンド社、2009
対談・編著[編集]
- 『哲学の舞台』ミシェル・フーコー 朝日出版社(エピステーメー叢書) 1978、増補改訂版2007
- 『空間の神話学 対談集』朝日出版社 (エピステーメー選書) 1978
- 『仮面と身体 対談集』朝日出版社(エピステーメー選書) 1978
- 『時間の部屋 対談集』朝日出版社(エピステーメー叢書) 1980
- 『幽玄-観世寿夫の世界』リブロポート 1980
- 『劇場の余白に 対談集』青土社 1985
- 『演戯する都市』如月小春対談 平凡社 1986
- 『「フェードル」の軌跡』新書館 1988
共編著[編集]
- 『フランス』 山口昌男・蓮實重彦共著 岩波書店 1983
- 『マラルメ全集 Ⅰ-Ⅴ』 ステファヌ・マラルメ 筑摩書房 1989-2010。編集委員
- 『ミシェル・フーコーの世紀』蓮實重彦共編 筑摩書房 1993
- 『舞台芸術論 放送大学教材』放送大学教育振興会 1996
- 『演劇を読む 放送大学教材』渡辺保・浅田彰共著 放送大学教育振興会 1997
- 『フランスの文学 17世紀から現代まで 放送大学教材』塩川徹也共編 放送大学教育振興会 1998、日本放送出版協会 2003
- 『ミシェル・フーコー思考集成』(全10巻)筑摩書房 1998-2002。蓮實重彦と監修
- 『舞台芸術の現在』日本放送出版協会 2000
- 『表象文化研究 文化と芸術表象』放送大学教育振興会 2002
- 『フランス文学』柏倉康夫・石井洋二郎共著 放送大学教育振興会 2003
主な翻訳[編集]
- 「アンドロマック」 ジャン・ラシーヌ「戯曲全集 第1巻」人文書院、1965
- 「倒れる者すべて 燠火」サミュエル・ベケット 世界文学大系95 現代劇集、筑摩書房、1965
- 「ブリタニキュス、ミトリダート」 世界古典文学全集48 ラシーヌ、筑摩書房、1965
- 「エスキュリアル」ミッシェル・ド・ゲルドロード、今日のフランス演劇1 白水社、1966
- 「悪は走る」 ジャック・オーディベルティ、今日のフランス演劇2 白水社、1966。加藤晴久共訳
- 「黄金の頭」ポール・クローデル、今日のフランス演劇4 白水社、1967
- 「バルコニー、屏風」ジャン・ジュネ、全集4 新潮社、1968
- 「カリギュラ」カミュ、新潮世界文学49 新潮社 1969、「カリギュラほか」新潮文庫 1971、のち「カミュ全集3」
- 「オルメドの騎士」カミュ全集9:新潮社、1973
- 「女中たち」ジャン・ジュネ、筑摩世界文学大系85 現代劇集 筑摩書房、1974
- 「メーデーア」セネカ、世界文学全集1 集英社、1974
- 「流謫の詩、詩神讃歌 他」 ポール・クローデル、筑摩世界文学大系56 同上、1976
- 『仮面の道』クロード・レヴィ=ストロース、新潮社、1977/ちくま学芸文庫、2018。山口昌男共訳・文庫版は渡辺公三が改訳
- 『ブリタニキュス、ベレニス、バジャゼ、ミトリダート』 ジャン・ラシーヌ「戯曲全集2」白水社 1979。この巻のみ刊行
- 『闇を熔かして訪れる影 オランダ絵画序説』ポール・クローデル、朝日出版社 1980
- 『マラルメ論』サルトル、中央公論社 1983/ちくま学芸文庫 1999、平井啓之共訳
- 『ベジャールによるベジャール』コレット・マソン編、新書館 1984
- 『性の歴史Ⅰ 知への意志』ミシェル・フーコー、新潮社 1986
- 『カミーユ・クローデル』アンヌ・デルベ 文藝春秋 1989
- 『フェードル、アンドロマック』ラシーヌ、岩波文庫 1993
- 『ロレンザッチョ』ミュッセ、朝日出版社 1993/光文社古典新訳文庫 2016
- 『舞踊評論』(共訳)、ゴーチエ、マラルメ、ヴァレリー、新書館 1994
- 『女中たち・バルコン』 「ベスト・オブ・ジュネ」白水社 1995/岩波文庫(改訳版) 2010
- 『繻子の靴』クローデル、岩波文庫(上下)、2005。日本翻訳文化賞・毎日出版文化賞
- 『ラシーヌ論』ロラン・バルト みすず書房 2006。読売文学賞 翻訳研究部門
- 『ブリタニキュス、ベレニス』ラシーヌ 岩波文庫 2007
- 『シラノ・ド・ベルジュラック』ロスタン 光文社古典新訳文庫 2008
- 『アガタ/声』 デュラス/コクトー共著 光文社古典新訳文庫 2010
- 『マラルメ詩集』 岩波文庫(訳・注解)2014
脚注[編集]
- ^ 「渡辺守章」デジタル版 日本人名大辞典+Plus
- ^ "仏文学者、渡辺守章さんが死去". 共同通信. 共同通信社. 21 April 2021. 2021年4月21日閲覧。
- ^ 「渡辺守章さんに仏の勲章 クローデル研究・翻訳と演出で活躍=訂正・おわびあり」『朝日新聞デジタル』2019年1月24日。2020年7月29日閲覧。
- ^ 令和元年度文化庁長官表彰名簿
- ^ “上演8時間超のポール・クローデル「繻子の靴」を渡邊守章が演出、出演に剣幸”. ステージナタリー. (2016年8月29日) 2016年8月30日閲覧。
外部リンク[編集]
- 渡邊守章・空中庭園に関する未公認ブログ https://web.archive.org/web/20140907190540/http://blogs.yahoo.co.jp/moriakiteien