活断層

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1891年の濃尾地震を引き起こした根尾谷断層(写真中央を斜めに走る段差が根尾谷断層)
1995年の兵庫県南部地震により発生した野島断層

活断層(かつだんそう、英語: active fault)とは、「断層」のうち、最近の地質時代(特に数十万年前以降)に繰り返し活動し、将来も活動すると推定される断層のことをいう[1][2][3][4]

概要[編集]

地震により一度地層が壊されると断層に沿って地盤は弱くなるため再び力が加わると同じ場所がずれ動く可能性が高くなる[5]

「極めて近き時代まで地殻運動を繰り返した断層であり、今後もなお活動するべき可能性のある断層」を特に「活断層」という[6]。ここでいう「極めて近き時代」とは新生代第四紀を指す。狭義には、「完新世」[7]、或いは「過去数十万年」を指す場合もあるが、これは多くの場合、活断層の認定が断層の変位基準となる地形の形成年代に深く関わることから設定された便宜的なものであって、その曖昧さが指摘されている[8]

別の定義によれば、「現在の応力場の下で地震を起こし得る断層のうちで、断層面が地表まで達しているもの(地表断層)に限る。ただし、伏在断層であっても断層面の上端が地表近く(およそ1 km以下の深度)まで達しているものは、何らかの方法で最近の地質時代における活動を確認することができる。したがって、この種の浅部伏在断層は活断層の範疇に含める。」とされる[9]が、検出されにくく、多くの場合は地表付近の精密な調査から検出されたものをとしている。

更に、国土地理院が刊行している都市圏活断層図[10]の凡例では、地表に証拠を残すものとしている[11]。すなわち、研究者(学会)ごとに解釈が異なり統一された定義は定まっていない[11]。一方で、活断層では地震が過去に繰り返し発生しており、また今後も地震が発生すると考えられているため、活断層の活動度の評価は、そこを震源として発生する地震の予知に役立つと考えられている。

活断層は長期間連続的に動き続けるのではない。一部の例外を除いて、ある一定の周期で瞬間的に動き、他の期間はあまり目立った活動をしないものが多い。活動周期と1回に動く大きさは、断層によって異なるが、概して、海洋プレート沈み込み地帯やトランスフォーム断層では100年前後、内陸の断層では数百年から数十万年程度の活動周期を示す。ただし、ごくまれに、常時ずるずると滑りつづけ(「安定すべり」という)、大きな地震を起こさない活断層もある。これはクリープ断層と呼ばれ、サンアンドレアス断層の一部などがそうである。

活断層の存在は、その活断層が繰り返しずれた跡が地形や地層に残されていることにより確認される。新しい時代に形成された地形や地層に比べて、古い時代に形成された地形や地層ほど大きくずれていれば、繰り返しずれを生じた証拠と考えられる。古いものほど地震を多数回経験しているため、大きくずれているためである。そしてまた、今後も同じように繰り返し地震を発生すると考えられる[2]

活動が活発な活断層は、その活動の繰り返しによってずれが累積するため、盆地平野などの低地と山地の境界を形成する例がよくある。したがって、活断層はこのような大きな地形の境界の周辺に見つかることが多い[2]

表近くの地層が軟らかい場合などでは、活断層のずれが地表まで到達せず、断層運動による変位が軟らかい地層内で拡散する場合がある。この場合には、ある程度の幅をもった撓みとして現われる。これを活撓曲と呼ぶ[12]。活撓曲は地下に断層面が伏在しているため、通常の活断層と同様に地震による被害を発生させると考えられている。また、地層が波状に変形することを褶曲といい、特に活断層と同様に現在も変形を続けている波状地形を活褶曲と呼び、背斜向斜がある[12]

活断層は、地下に斜めに広がっていることがある。地表で見えている活断層から離れていても、 地下に活断層が広がっていれば、そこでも強く揺れる場合がある[13]

なお、活断層がない場所であれば地震が起きないわけではない。過去に地下で地震が発生しても、地震の規模が小さいため地表にまでずれが及ばないことがあるほか、ずれが地表にまで及んだ場合でも、地表付近に残された痕跡が長い間の侵食や堆積により不明瞭になってしまうことがある[14]。このような理由で、活断層が確認されていない場所でも、その地下 には将来地震を発生させる活断層が存在している可能性は十分にある。そのような活断層は、地下の地質の構造を詳細に調べたり、丹念に地形を調べたりすることなどで確認され る可能性がある[14]

活断層の特徴[編集]

活断層には以下のような特徴がある[12]

一定の時間をおいて繰り返して活動する

活断層は普段は断層面が固着しているため動かないが、断層面を挟む両側の岩盤には常に大きな力(ひずみ)がかかっており、このひずみが限界に来た時に岩盤が破壊され、断層に沿って両側が互いに反対方向にずれ動く。この動きで地震が発生し、ひずみは解消される。その後、活断層は長く動きを止め、次にひずみの限界が来るまで動かない[12]

いつも同じ向きにずれる

活断層にかかる力のもとはプレート運動で、その運動の向きや速さは長期的には変化しないため、活断層にかかる力も長期的には変わらない。このため、活断層の活動は基本的には同じ動きが繰り返される。活断層周辺の地形は、このように繰り返された動きの累積により形成されたもので、地形を見ることで活断層の動きの特徴を把握することができる[12]

ずれの速さは断層ごとに大きく異なる

活断層が1回動いて生じるずれが数mであっても、それが繰り返されると、ずれの量は累積して次第に増加する。この増加していく速さ(平均変位速度)は断層ごとに大きな差がある。「平均変位速度」は、長期的に見た場合の活断層の平均的なずれ量を速度で示したもので、通常は1000年あたりのずれの量で表す。これによりその活断層の活動度が分かる[12]

活動間隔は極めて長い

1つの活断層による大地震発生間隔は1000年から数万年と非常に長いのが特徴である。一方、海溝型地震の発生間隔はこれよりずっと短く、例えば南海トラフを震源とする地震の発生間隔は100年程度で、歴史時代に巨大地震(南海地震東南海地震など)を何回も発生させてきている[12]

長い断層ほど大地震を起こす

断層の長さが長いものほど、大きな地震を起こす可能性がある。これまでの日本の内陸直下地震の例では、M7級の地震では長さ20km程度、M8級の地震では長さ80km程度の範囲にわたって地表のずれ(地表地震断層)が現れている例がある[12]

活断層の調査[編集]

活断層を掘削して調査を行うと、過去に繰り返し発生した地震の規模や間隔などがわかり、将来の活動の可能性を推定することができる[14]活断層の調査は、空中写真の判読、地形分類図の作成、現地での測量地形観察、地表踏査、トレンチ調査、弾性波探査、ボーリング調査、広域テフラの同定(鍵層)や放射年代測定(特に放射性炭素年代測定)などの方法によって行われる。調査の結果判明した活動時期及び変位量を基に、平均変位速度、地震の発生間隔、活動度(AA級からC級まで)の評価を行う。

日本における階級分け[編集]

地形学者地質学者らにより全国の断層の1000年あたりの平均的なずれの量を調査と評価が行われ、ずれ量によりAからCの階級分けが行われている。活動度A級の活断層が約100、B級の活断層が約750、C級の活断層が約450知られている。しかし、C級の活断層はずれ量が小さい場合は地形による判別が困難であり、実際のC級活断層はもっと多いと考えられている。

断層の階級分けの例[15]
分類 定義
(1000年あたりの平均的なずれの量)
A級活断層 1 m以上 10 m未満
B級活断層 10 cm以上 1 m未満
C級活断層 1 cm以上 10 cm未満

日本の活断層[編集]

プレートテクトニクスによれば、日本列島は、関東・東北地方の沖の日本海溝太平洋プレートが北アメリカプレートの下に沈み込む際に東西方向の強い圧縮力を受けている。東北から近畿にかけての断層の多くは、この応力を受けて生成された逆断層や横ずれ断層である。逆断層は南北方向のものが多く、山々を隆起させる。火山以外の山地の多くは逆断層によって形成されたものである。横ずれ断層は東北-西南方向と西北-東南方向の2方向に向くものが多い。ほとんどの断層は横にずれると同時に上下にも動いている(斜めずれ)。また南海トラフではフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に沈み込んでいるが、東端の伊豆半島付近を除けば太平洋プレートの沈み込みほどには顕著な断層系を発達させていないと見られている。また日本の中では例外的に、九州中部の別府から島原にかけての地域では南北方向に引っ張られる応力が働いていることが知られており、正断層が多く見られる。これは沖縄トラフの延長とする説もある。日本には、これまで存在が確認されているものだけで少なくとも2000以上の活断層があるといわれ、実際はさらに多くの活断層が存在すると考えられている[13][14]

日本においては、1980年に『日本の活断層 - 分布と資料』(活断層研究会編、東京大学出版会)が刊行され、その後、1995年兵庫県南部地震を契機として、各地で活断層調査が実施された。その結果は、国土地理院による『縮尺2.5万分の1都市圏活断層図』(2007年現在で133面刊行)や、産業技術総合研究所活断層研究センターによる『活断層ストリップマップ』などにまとめられ、近年刊行されている地域地質研究報告(5万分の1地質図幅)にも反映されている[16]。また、活断層データベース[17]には、日本の主な活断層の平均変位速度などのパラメータや、それらの算出根拠となった調査データがまとめられている。

断層変位地形[編集]

活断層が動くと地表に食い違い(変位)が生じることがあるが、断層運動の繰り返しで形成された地形を断層変位地形という。断層変位地形は、断層の活動度、変位様式などによってさまざまな地形が認められる。日本はその気候の特徴から浸食・堆積作用を受けやすいため、断層の活動度が低い場合には変位地形が不明瞭となったり、痕跡がなくなったりすることがある[12]

主な日本の活断層[編集]

濃尾地震発生当時の根尾谷断層

以下の〔〕内は平均変位速度で、1000年間の平均変位量、()内はその断層が起こした地震の例。

世界の主な陸上の活断層[編集]

アメリカ大陸[編集]

オセアニア[編集]

アジア[編集]

ヨーロッパ[編集]

アフリカ[編集]

活断層と防災[編集]

日本国外

アメリカ合衆国カリフォルニア州では活断層法(1972年制定)が制定されている他、ニュージーランド台湾では、法律により活断層直上とその周辺への利用制限措置が執られている[18][19]

日本

2011年時点において一般住宅では活断層の直上や周辺に対する利用制限、建築制限などの法的制限はない[20][21]が、活断層の直上に限らず建築基準法により一定の耐震基準を満たしていることが求められている。ただし、一部の自治体では条例や行政指導により直上の制限をしている場合がある[21][22]。また、原子力関連施設では建築の制限がある[注釈 1]

日本国内には断層が自然に露出している地域が複数あるほか、断層が風化などしないように保存して、防災の啓発や観光に役立てている見学施設がある。例として濃尾地震(1891年)の震源となった根尾谷断層地震断層観察館・体験館(岐阜県本巣市)や、阪神・淡路大震災(1995年)で出現した野島断層の保存館(兵庫県淡路市の北淡震災記念公園内)が該当する。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 原子力発電所の立地前の活断層調査やその調査結果の公表が不十分であったことが次々に明るみに出ている。東京電力柏崎刈羽原子力発電所(新潟県)は2003年に原発沖の海底活断層を調査し、活断層の存在を把握していたが、2007年7月に新潟県中越沖地震が発生するまで一般には公表していなかった[23]日本原子力発電(日本原電)の敦賀発電所(敦賀原発、福井県)では、2号機の下を通る断層が近隣の活断層「浦底断層」と連動して動いた可能性があることが2012年に判明した。しかし日本原電は、3・4号機の増設を申請した翌年の2005年に、浦底断層の地震エネルギーが想定以上だとする基礎データを得ていたにもかかわらずこれを公表していなかった[24]。敦賀原発では同年5月より追加調査を実施している[25]。2012年7月の原子力安全・保安院の専門家会議では、関西電力大飯発電所(大飯原発、福井県)の敷地内にある断層が近隣の活断層と連動して動いて地形を変化させる可能性が指摘された。また、北陸電力志賀原子力発電所(石川県)の原子炉建屋の真下を通る断層についても明らかに活断層であることが指摘された[26]。北陸電力では同年7月から2013年12月にかけて志賀原発敷地内や近隣を走る福浦断層などの調査を実施した[27]

出典[編集]

  1. ^ 活断層とは何か | 国土地理院”. www.gsi.go.jp. 2021年3月20日閲覧。
  2. ^ a b c 活断層”. www.jishin.go.jp. 地震本部. 2021年3月20日閲覧。
  3. ^ 正しく知ろう!活断層Q&A”. danso.env.nagoya-u.ac.jp. 活断層自治体連携会議. 2021年3月22日閲覧。
  4. ^ 日本国語大辞典,世界大百科事典内言及, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典,知恵蔵,デジタル大辞泉,百科事典マイペディア,世界大百科事典 第2版,日本大百科全書(ニッポニカ),精選版. “活断層とは” (日本語). コトバンク. 2021年3月24日閲覧。
  5. ^ 国土地理院広報第579号(2016年9月発行)”. 国土地理院. 2016年11月5日閲覧。
  6. ^ 多田 文夫「活断層の二種類」『地理学評論』第3号、日本地理学会、1927年、 980-983頁、 doi:10.4157/grj.3.10_980
  7. ^ Active fault (online web page)”. Earthquake Glossary. USGS Earthquake Hazards Program (2009年11月3日). 2019年9月11日閲覧。
  8. ^ 中田 高「活断層研究の将来について」『活断層研究』第28号、日本活断層学会、2008年、 23-29頁、 doi:10.11462/afr1985.2008.28_23
  9. ^ 池田 安隆「活断層の地震危険度評価:我々は何をすべきか」『活断層研究』第15号、活断層研究会、1996年、 59-63頁。
  10. ^ 都市圏活断層図 国土地理院
  11. ^ a b 鈴木康弘「活断層の定義および位置精度に関する留意点」『活断層研究』第2014巻第41号、2014年、 11-18頁、 doi:10.11462/afr.2014.41_11
  12. ^ a b c d e f g h i 活断層とは何か”. www.gsi.go.jp. 国土地理院. 2021年3月22日閲覧。
  13. ^ a b 活断層の地震に備える”. 気象庁. 2021年3月22日閲覧。
  14. ^ a b c d 地震がわかる!”. 地震本部. 令和3年3月23日閲覧。
  15. ^ 地震の基礎知識とその観測 -6.2 活断層-防災科学技術研究所)」より作成
  16. ^ 岡田 篤正「日本における活断層調査研究の現状と展望」『活断層研究』第28号、日本活断層学会、2008年、 7-13頁、 doi:10.11462/afr1985.2008.28_7
  17. ^ 活断層データベース 産業技術総合研究所
  18. ^ 増田聡「ニュージーランドの活断層指針を発信点として-地震本部の成果発信と活断層を考慮した街づくり」『「地震本部ニュース」平成.22年』、地震調査研究推進本部、2010年。
  19. ^ 増田, 聡、村山, 良之「活断層に関する防災型土地利用規制/土地利用計画 -ニュージーランドの「指針」とその意義を日本の実情から考える- (国交省 資料3) (PDF) 」 『自然災害科学』第25巻第2号、日本自然災害学会、2006年8月31日、 NAID 110004812259
  20. ^ 鈴木康弘:第11回/活断層へ備える心構え 活断層大地震に備えるために(仙台放送)
  21. ^ a b 久田 嘉章「活断層と建築の減災対策」『活断層研究』第2008巻第28号、2008年、 77-87頁、 doi:10.11462/afr1985.2008.28_77
  22. ^ 病院など建築を規制 検討委了承、活断層近くの危険区域”. 徳島新聞 (2012年9月4日). 2014年4月30日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2014年4月30日閲覧。
  23. ^ 平成15年に実施した柏崎刈羽原子力発電所海域活断層の再評価に関する調査結果について (PDF)”. 東京電力 (2007年12月21日). 2011年8月11日閲覧。
  24. ^ 社説「原発と活断層 立地の総点検迫られる」”. 中国新聞 (2012年4月26日). 2012年6月3日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2012年4月29日閲覧。 “日本原子力発電敦賀原発...1、2号機の直下を通る断層...が過去、近くの活断層と連動して動いた可能性があることが、原子力安全・保安院の調査で分かった。...日本原電は2004年に...も「浦底断層は活断層ではない」としていた。しかし、今年3月、この断層の地震エネルギーが想定の2倍以上と分かり、加えて基礎データを05年には得ていたことが明るみに出た。
  25. ^ 日本原子力発電 (2012年11月16日). “添付資料1 敦賀発電所 敷地内破砕帯の活動性評価に係る追加調査の工程見直しについて (PDF)”. 敦賀発電所 敷地内破砕帯の活動性評価に係る追加調査および敷地周辺活断層の連動性評価に係る追加の地形・地質調査の工程見直しについて. p. 1. 2012年11月17日閲覧。
  26. ^ 再稼働の大飯、断層調査へ 志賀原発も 専門家から要望続出 原子力安全・保安院”. 共同通信 (2012年7月17日). 2012年7月19日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2012年7月17日閲覧。 “志賀原発1号機の原子炉建屋直下を南東-北西方向に走る「S-1断層」をめぐっては、活断層が専門の今泉俊文...が...過去の安全審査に問題があったと指摘。...大飯原発...は「F-6破砕帯」で、1、2号機と3、4号機の間をほぼ南北方向に走っている。渡辺満久...らが6月に「近くの活断層と連動して地表がずれる恐れが否定できない」と指摘していた。
  27. ^ 耐震バックチェックにおける北陸電力(株)志賀原子力発電所S-1破砕帯の取り扱いに関する調査結果報告 (PDF)”. 原子力安全保安院. p. 4 (2012年9月14日). 2012年9月14日閲覧。[リンク切れ]

参考文献[編集]