江ノ島電鉄1000形電車

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第23回(1980年
1100形(左)と1000形

江ノ島電鉄1000形電車(えのしまでんてつ1000がたでんしゃ)は、江ノ島電鉄(江ノ電)に在籍する電車1979年昭和54年)12月3日より営業運転を開始した。

1980年(昭和55年)鉄道友の会ブルーリボン賞受賞車両である[注 1]

江ノ島鎌倉観光時代の1979年から1987年(昭和62年)にかけて東急車輛製造で2両編成6本(12両)が製造されたが、落成時期ごとに仕様が異なっているため、本項では形式の付番ごとに解説する。

1000形[編集]

旧標準塗装に戻されていた頃のの1001編成(現在は緑の標準塗装)。 新嵐電カラー(京紫色)になった現在の1002編成。
旧標準塗装に戻されていた頃のの1001編成(現在は緑の標準塗装)。
新嵐電カラー(京紫色)になった現在の1002編成。
  • 営業運転開始日:1979年(昭和54年)12月3日
  • 在籍数:2両編成2本・4両 (1001 - 1051, 1002 - 1052)

最初に登場したグループで江ノ島電鉄としては48年ぶりの新造車。吊り掛け駆動方式が採用されたが、これは小型車、急曲線対応の台車でのカルダン駆動方式採用実績がなかったためである。ワンハンドル式マスター・コントローラーを採用し、ブレーキシステムは電気指令式である。主制御器東洋電機製造製のAC-M450-778A-M(直列10段、並列8段)である。主電動機は東洋製のTDK5610-Aであり、出力は端子電圧300V時50kWである。歯車比は79:15 (5.27) と吊り掛け駆動車の中ではかなり高めの設定である。内装は暖色系のカラーリングでFRPを採用(内窓きせ)。側窓は一段下降式とし、戸袋窓と連接部窓には鉄道車両としては当時珍しかった熱線吸収ガラスを採用してカーテンを省略した[注 2]。前面裾部には路面電車のバンパーにあたる補強が施工されており、これは当線の特徴である併用軌道に於ける事故対策であり、1000形系列の全編成に施工された。非冷房で落成したが、1001編成は1985年(昭和60年)に、1002編成は1986年(昭和61年)に冷房装置が搭載された。前照灯は丸形である。

長い間自動放送装置を搭載していなかったが、1001編成は2003年平成15年)にリニューアルが施工され、車椅子スペースドアチャイム(音量は小さい)や音声合成式の車内自動放送装置が設置された。1002編成は2004年(平成16年)に同様のリニューアルが施工され、塗装と社紋を20形と同一のものに改め[注 3]、同年12月28日より営業運転に復帰した。後述する1100形・1200形・1500形についても後にIC式の自動放送装置が設置されており、さらに英語放送も追加された。2008年(平成20年)には1002編成の正面行先表示器字幕にローマ字表記が追加された。

2015年(平成27年)には2編成揃って追加更新が行われ、1501編成などと同仕様になった(パンタグラフのシングルアーム化、行先表示のフルカラー・3色LED化、車内液晶表示器設置、蛍光灯のLED化など)。

2006年(平成18年)4月からは、1001編成が「S.K.I.P号」(Shonan,Kamakura,Information,Promotionの意)として漫画家西岸良平を起用し、沿線の名所を描いたラッピングを施して運転していた。このラッピングは、西岸が鉄道ファンであると同時に、双葉社の『まんがタウン』誌に西岸が連載している漫画『鎌倉ものがたり』のファンが江ノ島電鉄の社員にいたこともあって、実現したものである。その後500形と同一の塗装に戻されたが、2009年(平成21年)12月12日から2015年(平成27年)5月頃まで、本形式の登場30周年を記念して登場当初の塗装に復元されていた(現在は500形に準じた元の塗装に戻されている)[1]。1002編成では1502編成に代わって2017年4月まで紫色の嵐電カラーで運用されていた。

1100形[編集]

2016年現在の1101編成。
  • 営業運転開始日:1981年(昭和56年)12月20日
  • 在籍数:2両編成1本・2両 (1101 - 1151)

冷房準備工事車で落成し、翌年の1982年(昭和57年)に江ノ電初の冷房車両となった。また、社名が「江ノ島鎌倉観光」時代の最後に製造された車両でもある。

2005年(平成17年)2月から12月にかけて、当時放映されていたNHK大河ドラマ義経』のラッピングが施された。

2008年の夏休み期間中、集英社漫画雑誌週刊少年ジャンプ』のラッピング電車「パイレーツ号」として運行され、車体には銀河を模したイラストが施され、客室側窓の巻き上げカーテンには同誌に連載されている漫画作品に登場するキャラクターのイラストが描かれていた。

1001・1002編成とはほとんど同型であるが、前照灯の取り付け位置の切り込みの角に丸みが付いているのが外観上の違いである。車内は冷房準備工事の関係上首振り式扇風機を装備し、冷房装置搭載後もそのまま残された。しかし、1200形以降は補助送風機としてラインデリアが標準装備となり、1001・1002編成や300形303・304・305編成も冷房装置設置改造時に首振り式扇風機を撤去してラインデリアを装備されたため、最後まで非冷房で残っていた初代500形の引退後は江ノ電で唯一客室に首振り式扇風機を装備する編成になった。

2006年にリニューアルが施工され、上記の1000形の更新内容に加えて化粧板を新500形と同様のものに変更している。また、扉窓についても金属支持に変更された。2015年(平成27年)には追加更新が行われ、同年に更新された1001・1002編成などと同仕様になった(パンタグラフのシングルアーム化、行先表示のフルカラー・3色LED化、車内液晶表示器設置、蛍光灯のLED化など)。

2009年4月から2012年4月21日まで「3代目S.K.I.P号」として江ノ電沿線の風景がラッピングされた後[2]、2012年4月29日から(当初は28日の予定だった)は「スキップえのんくん号」として、えのんくん(江ノ電のキャラクター)や鎌倉・江ノ島の風物が描かれた。2017年1月7日を最後に検査入場し標準塗装に戻され、「スキップえのんくん号」は運行を終えた[3]

1200形[編集]

1201編成の旧塗装。 新塗装化後の1201編成。他編成とは異なり社紋円盤が設置されていない。後ろは2000形。
1201編成の旧塗装。
新塗装化後の1201編成。他編成とは異なり社紋円盤が設置されていない。後ろは2000形。
「台湾友好記念電車」ラッピングの姿で走る、現在の1201編成。 大規模更新で、従来車では初めて設置された車内液晶表示器。
「台湾友好記念電車」ラッピングの姿で走る、現在の1201編成。
大規模更新で、従来車では初めて設置された車内液晶表示器。
  • 営業運転開始日:1983年(昭和58年)12月19日
  • 在籍数:2両編成1本・2両 (1201 - 1251)

江ノ電では初めて落成当初から冷房装置を搭載した車両である。このグループから前照灯が角形とされた。さらに天井も補助送風機をラインデリアに変更し、平天井化したことで1100形よりも冷房効果を高めた。この編成は長年にわたって明治製菓(現・明治)の商品「カール」の広告車両だったが、2004年に1502編成に変更され、一般塗装に戻った。日本の1,067mm軌間の鉄道線では最後となる完全新造の吊り掛け駆動方式(バー・サスペンション方式)の電車である。また、車体の一部は腐食対策としてステンレス製とされ、屋根板に1.2t、床板に1.0tのステンレスが使用されている。

2007年(平成19年)の夏休み期間中、尾田栄一郎の漫画『ONE PIECE』のラッピング電車「麦わら号」として運行され、車体には海と空のイラストが描かれ、窓ガラスにキャラクターのステッカーが貼られ、車内広告も『ONE PIECE』で統一されていた[4]

他の車両が相次いで新塗装に変更されている中、2007年に入ってもオリジナル塗装であったが、「麦わら号」運転終了後は新塗装に変更され、1000形のオリジナル塗装は一旦消滅した。なお、この編成のみ側面の乗務員室扉の隣に社紋円盤が取り付けられていなかった。2014年(平成25年)から2017年(平成29年)4月まで、「台湾友好記念電車」として、台湾の平渓線との観光提携をPRしたラッピング電車して運行された。

2011年(平成23年)末に大規模な車体更新工事が施され、リフレッシュされた。上記の1000形・1100形の更新内容に加えて、ドア上に500形のようなツインモニターがつき、東日本旅客鉄道(JR東日本)のE233系のようにドア付近に黄色い警戒色が施された。また、乗務員扉横に社紋円盤が入り、他の1000形系列と同じような意匠になった。1501編成以降で採用されたフルカラーLEDへの交換は行われておらず、1000系列の更新が完了した2016年(平成28年)現在、同形式唯一の方向幕装備車となっている。なお、方向幕は2016年にローマ字入りの物へ交換されている。

2013年(平成25年)末にパンタグラフが、菱形から1500形・10形・20形・新500形と同様のシングルアーム形に変更された。吊り掛け車両としては初めてのシングルアームパンタグラフ搭載車となる。

1500形[編集]

リニューアル後の1501編成。前面のフルカラーLEDが特徴。
  • 営業運転開始日:1986年(昭和61年)4月23日(1501編成)、1987年(昭和62年)12月10日(1502編成)
  • 在籍数:2両編成2本・4両 (1501 - 1551, 1502 - 1552)

急曲線対応の台車においてもカルダン駆動方式が採用できるめどが立ったことで登場した江ノ電初の新性能車両である。同時に弱め界磁制御も導入され、マスコンハンドルの段数が3段から4段に増えた。主制御器は東洋製のACDF-M450-789A-M(直列11段、並列8段、弱め界磁2段、発電制動19段)である。主電動機は東洋電気製造製TDK8005-A形(端子電圧300V、電流195A、出力50kW、定格回転数1,300rpm、高速試験回転数3,250rpm)が採用された。歯車比は82:13 (6.31) と低速域の加速力を重視した数値である。起動加速度は2.0km/h/s、減速度は常用3.5km/h/s、非常時4.0km/h/sである。力行・減速ともに応荷重装置付きであり、乗車率0%から250%まで加減速度は一定になる。台車は両端の電動台車がTS-829形、連接部の付随台車がTS-830形であり、いずれも枕バネにはコイルバネを採用している。また、車体のステンレス使用率を1200形より増やし、新たに運転台正面に腰板に2.5t、骨組みに4.5t、側面の腰板に2.0tのステンレスを使用した他、柱類を台枠上部より400mmまでの部分をステンレス製としている[5]。さらに、側扉窓の支持方式は登場時から押え金式となっている。登場からしばらくは「サンライン・カラー」と称されるクリームに赤とオレンジの帯を巻いた塗装だったが、その後1000形の標準色である緑の帯に変更された。1501編成はリニューアル工事を受けて1002編成と同様の新塗装とされたが、2007年4月から2009年2月まで「2代目S.K.I.P号」として鎌倉江の島界隈の写真を施した車体となった[6]。1502編成は1201編成に代わって明治製菓の全面広告電車として運用されていたが、その後標準塗装に戻され、広告ラッピングは2000形2003編成が引き継いだ。

2009年6月、1000形登場30周年を記念して、1501編成が重要部検査を受けた際にサンライン・カラーに再び塗り替えられた。ヘッドマーク付きで運行していた。また、同年10月には京福電気鉄道(嵐電)との姉妹提携を記念して1502編成が嵐電カラーで運行開始し、車内に嵐電沿線の写真や情報が掲出されている。

大規模な車体更新工事を施工するため、2013年8月31日に1501編成のサンライン号が、2014年9月1日に1502編成の嵐電号が改修工事入庫をした。その後再び緑の標準塗装に戻され、パンタグラフがシングルアーム式に、行先表示器の前面・フルカラーLED(季節に応じたイラストを掲出できる)、側面・3色LED化、ツインモニター設置、ドア付近に黄色い警戒色・乗降扉付近のノンスリップ化や車椅子スペースとドアチャイム設置および室内照明機器のLED化が行われた。1501編成は2013年12月14日、1502編成は2014年12月12日に営業復帰し、1502編成の嵐電カラー(京紫色)は1002編成が引き継いだ。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 制度上、特急車両の受賞が比較的多いブルーリボン賞において、全席ロングシート通勤形電車が受賞したのは当形式が初めてである。また、国鉄・大手私鉄以外の鉄道事業者がブルーリボン賞を受賞したのはこれが初めてであった。
  2. ^ この意匠は同時期に東急車輛で製造された京急800形とも共通している。
  3. ^ 後に、金色の帯が20形のデザインから新500形と同様のデザインに変更されている。

出典[編集]