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歯のフッ素症

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
フッ化物の過剰摂取により生じた歯のフッ素症と思われる歯

歯のフッ素症(はのフッそしょう、Dental fluorosis)は、水道水にもともと含まれるフッ素の化合物(フッ化物)、水道水フッ化物添加、歯磨き粉の飲み込み[1]などによるフッ化物の過剰摂取により、歯に褐色の斑点や染みができる症状を指す。その結果、歯の見栄えが悪くなり、程度に応じて歯が脆くなる[2]。中等度の症例では、エナメル質にいくつかの白い点や小さな孔が生じ、より重症だと、茶色い染みが生じる。

歯のフッ素症は、6ヶ月から5歳までの歯の発生期にフッ化物を過剰摂取すると生じる。口腔に萌出した歯には、発生しない。歯のフッ素症は通常永久歯に発生し、ときおり乳歯にも発生する。

歴史的にコロラド褐色斑(Colorado stain)、斑状歯(Mottled tooth)との呼び名も残っている[3]。また、骨のフッ素症(骨フッ素症)と区別して、歯牙フッ素症という呼び名が使われることもある[2]

歴史

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1909年、アメリカコロラド州パイクス山一帯の集落でに褐色の斑点が生じる症例が報告された。調査の結果一帯の氷晶石に含まれるフッ化物が川の水に溶け込んでおり、この高濃度のフッ化物が溶け込んだ水を飲み続けることによって歯に褐色斑が生じることが判明した。

日本

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日本における歯のフッ素症は1928年(昭和3)に富取卯太治が岡山県内の某集落に発生する地方病として発表した。1931年(昭和6)の調査では富山県から鹿児島県に渡る広い範囲で斑状歯の発生地域が報告されている。フッ素症による歯の褐色斑自体は近代に医学者が発見するより前から存在し、「なすび歯」「なす歯」、「ハクサリ」、「ヨナ歯」、「クワズ」、「クイヤミ」などと称する地名(小字名)全国各地に存在した[4]

兵庫県西宮市山口町船坂には、歯に斑点が出る症状を「なす歯」、「なすび歯」と呼び、原因を「ナスのたたり」とする言い伝えがある[5]。また、戦後にも宝塚市の一部地域の水道に基準値を超えるフッ素含有量の高い水源が使用され、特定の小学校の生徒に斑状歯が頻発した。この問題は1971年(昭和46年)に「宝塚斑状歯問題」として社会問題になり、複数の水源地の廃止と公費による治療が行われた。当該地域の近隣には1968年(昭和43年)の住居表示による変更まで「ハクサリ」改め「白砂里」という地名が残っていた[5]

ディーンの指数

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トレンドリー・ディーン英語版による歯のフッ素症の指数は、1942年に開発され、現在では最も普及した分類体系である。歯のフッ素症スコアは、2本以上の歯に見られる、最も重度な症状に基づいて決定される。[6]

ディーンの指数
分類 判断基準 – エナメル質の状態
正常滑らかで、つやがあり、青白いクリーム状の白い半透明の歯面
疑わしいいくつかの白い点あるいは白班
軽微小さく不透明で紙の白さの部分が歯面の25%以下
軽度不透明で白い部分が歯面の50%以下
中等度すべての歯面が罹患している、かみ合わせの面の顕著なすり減り、茶色の汚点
重度すべての歯面が罹患している、別々のあるいは集まった小孔、茶色の汚点

米国における歯のフッ素症の有病割合

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2005年現在、米国歯科研究所en:National Institute of Dental Research)による1986-1987年の実態調査[7]CDCによる1999-2002年の実態調査[8]のみが、米国における歯のフッ素症の有病割合に関する全国資料である。

NIDR and CDC Findings
ディーンの指数 1987 2002
疑わしい17%11.8%
軽微19%
軽度4%5.83%
中等度1%0.59%
重度0.3%
合計22.3%37.2%

CDCは、アメリカの小児における歯のフッ素症の有病割合は、20年前の同様の調査よりも9%上昇している、としている。[9]さらに、この調査は、アフリカ系アメリカ人コーカソイドのアメリカ人よりも有病割合が高いということも示している。

この疾患は、浅い井戸から飲料水を汲み上げる農村部にて、有病割合が高い。フッ化物濃度が1mg/L以上の飲料水が供される地域やカルシウムの摂取の不足する小児に生じやすい。

食事摂取基準

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1mg/Lのフッ化物添加水道水では、1mgのフッ化物を摂取するのに1Lの水を必要とする。フッ化物添加水道水におけるフッ化物の至適濃度は、上限量以上のフッ化物を摂取されないように設定される。

フッ化物配合歯磨剤の飲み込み、フッ化物濃度の高い食品の摂取といった、その他のフッ化物の摂取経路とフッ化物添加水道水の摂取が重なると、フッ化物の摂取量は上限量を超えるかもしれない。

歯のフッ素症は、フッ化物の摂取量を上限量以下にすることで、予防される。

フッ化物の食事摂取基準[10]
年齢 体重 kg (lb) 目安量 (mg/day) 上限量 (mg/day)
幼児 0-6 か月 7 (16)0.010.7
幼児 7-12 か月 9 (20)0.50.9
小児 1-3 歳 13 (29)0.71.3
小児 4-8 歳 22 (48)1.02.2
小児 9-13 歳 40 (88)2.010
少年 14-18 歳 64 (142)3.010
少女 14-18 歳 57 (125)3.010
成人男性 19 歳以上 76 (166)4.010
成人女性 19 歳以上 61 (133)3.010

鑑別診断

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歯のフッ素症における鑑別診断には、ターナーの歯(通常は、より局所的に発生する)やエナメル質形成不全症がある。

脚注

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出典

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参考文献

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  • 谷岡優子「<安田賞受賞論文>風土病の民俗学 : 六甲山東麓における「斑状歯」をめぐって」『関西学院大学社会学部紀要』第117巻、関西学院大学、2013年10月31日、63-107頁、NCID AN00047522 

関連項目

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外部リンク

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