武蔵野うどん

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武蔵野うどん

武蔵野うどん(むさしのうどん)とは、東京都多摩地域埼玉県に伝わるうどんのことである。「手打ちうどん」とも呼ばれる。

普及範囲[編集]

武蔵野とは、狭義には「埼玉県川越以南、東京都府中までの間に拡がる地域」、広義には「武蔵国全部」ともされているが[1]、「武蔵野うどん」の特徴を備えたものは、多摩地域の北部(小平市東村山市武蔵村山市東久留米市清瀬市西東京市東大和市など[2])から埼玉県川越市付近までの武蔵野台地上のエリアを中心に、北は埼玉県北本市加須市熊谷市比企郡、東はさいたま市大宮区など、埼玉県の平野部全体に見られる。

歴史[編集]

多摩地域から埼玉県入間郡にまたがる武蔵野台地は、関東ローム層に覆われており、浸水量が降雨量を上回るのが通常であり、水田を使用するより良質な小麦の生産が盛んであった。こうしたことから、うどんが多く食べられ、小麦主食の文化地帯となっており、各家庭でうどんを打つ習慣があった[3]

特徴[編集]

もともと郷土料理であるため、使用される小麦粉は武蔵野台地で生産されたものを使用する事が原則(地産地消)である。は、一般的なうどんよりも太く、色はやや茶色がかっている。加水率は低く分は高めである。コシがかなり強く、食感は力強い物でゴツゴツしている(つるりとはしていない)。食するときには麺は、ざるに盛って「ざるうどん」もしくは「もりうどん」とする。つけ麺の汁は、かつお出汁を主とした強い味で甘みがある。シイタケゴマなどを具として混ぜたものを、温かいまま茶碗ないしそれに近い大きさの器に盛る。ネギ油揚げなどの薬味を好みで混ぜ、汁をうどんにからませて食べる。豚肉の細切れを具にしたメニューの「肉汁うどん」などは明治時代中期以降の食べ方で、商業化された「武蔵野うどん」の店舗では「肉汁うどん」「きのこ汁うどん」が「武蔵野うどん」であるかのように近年売り出しているが、「武蔵野うどん」とは武蔵野地方で「手打ちうどん」と呼ばれるコシの強いうどんの麺を指す用語である。天ぷらうどんのような食べ方は元々なく、「糧(かて)」と呼ばれる具(主に茹でた野菜)が付く程度である。だが、明治維新以前から北多摩の農村部地域では、うどん汁に獣肉(豚肉)を入れていた。それが武蔵野うどんの発祥だと考えられても不思議ではない。

武蔵野台地では江戸時代はうどんはハレの日の行事食でもあり、旧家では現在でも冠婚葬祭などの祝い事(つるつるかめかめ、と食べるため)、親戚集まりには(細く長く良い事が続くように)うどんを出す事が多い。かつては「うどんが打てなければ嫁にいけない」と言われていた。現代では飲食店で武蔵野うどんを食べられる[2]

製法[編集]

全てのうどんに共通する事項の一部は省略する。

一般にうどんは蕎麦と比較して製作を始めてから完成するまでに時間がかかるため、店舗では小麦粉をこねて、強いこしを出すための足で踏む作業をあらかじめ済ませておく場合がある。ここから先の打つ作業はガラス張りの部屋で行われ、その様子を順番待ちをしている間などに見ることができるようになっている店も多いが、足で踏む工程が最大の特徴である強いこしを出すための大切な要素ともなる。

うどん打ちは、まず太く短い棒を使って徐々に伸ばしていく。しばらくしたら細く長い棒に変えてさらに薄く、丸く伸ばしていく。円形の直径が1mほどになったところで小麦粉をふりかけ、棒に巻きつけて粉をなじませる作業を数回繰り返す。これが終わったら、棒に巻きつけた麺を屏風状に折り畳み、それを包丁で切る。元が円形のため、折り畳んだ端と中心では麺の長さに大きな差があり、端では10cm程度、中心では1m近くの長さになる。また包丁を使った手作業のため、太さはまちまちである。

汁は削り節だしを主にしたものは全て共通である。そこ(下地)に具を投入して温めたものを程よく冷ましてから食べる。出汁よりも醤油が利いており、具によってメニューが決められ、主に以下のようなものがある。

  • きのこ汁うどん - シイタケエノキなどの茸を具としたもの。薬味とは別にネギ油揚げが入るがさらに薬味としてネギを添えることもできる。
  • 肉汁うどん - ここでいう肉は主に豚肉。「糧うどん」と呼ばれる、野菜=糧入りのうどんは、武蔵野うどんの中でも伝統的なものである。
  • なす汁うどん - ナスを具として入れる。

このほかにも具やを一切加えずに出汁だけの汁を冷ましたものを用意している店もある。この汁は「冷汁」と呼ばれるが、武蔵野うどんと範囲をほぼ同じくする「すったて」とは全く異なったものである。

地域おこしへの活用[編集]

うどんでは、香川県讃岐うどんが地元自治体・企業によって全国に宣伝されて、観光客誘致や地域おこしの素材となってきた。武蔵野うどんも、武蔵野手打ちうどん保存普及会(小平市)[4]や村山うどんの会(武蔵村山市)[5]のような振興団体が作られ、東京都商工会連合会と多摩観光推進協議会、JTBなどにより店巡りスタンプラリーが実施されるなど、町おこしに活用されるようになっている[2]

店舗[編集]

タネとして天ぷらを出す店も多く、蕎麦を出す店もある。

  • 桶川市べに花ふるさと館 - 地元の醤油など周辺地域で産した原材料を使用している。建物はかつての豪農の邸宅を改築している。
  • 藤店うどん(さいたま市、川越市) - 上記写真の肉汁うどんのほかにも天麩羅を盛り、汁を上からかける「ぶっかけ」うどんというメニューがある。
  • 久兵衛屋 - 大和フーヅによって展開されている武蔵野うどんのチェーン店。埼玉県をはじめとする関東地方で出店されている。
  • 山田うどん - 埼玉県を中心に展開するチェーン店。『つけ汁うどん』として肉汁うどんが供されるが、「つけ汁そば」「つけ汁相盛り」といったメニューもあり、結果として「肉汁そば」を食べることも出来る。ただし、同社のうどんは、前述した武蔵野うどんの特徴を必ずしも備えているわけではない。むしろ本来の武蔵野うどんとは逆に、コシのない麺である。
  • ふたばや - 昔ながらの手打ちうどんを提供するお店。
  • 近年では、東京都区部でも武蔵野様どん店が増えており、店によって製造法、麺の太さやコシ、面の形状も異なる。又代表的メニュー肉汁うどん1つ取っても具材や出汁の取り方も違い店舗により特徴が分かれる

特殊なもの[編集]

汁はつけ汁が一般的だが、多くの人にふるまう場合などには具や薬味を入れない「かけうどん」として出されることもあり、その場合には七味唐辛子を好みで加える。しかし麺は上記の製法によるものである。

参考文献[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 広辞苑』第5版 岩波書店。
  2. ^ a b c 【東京探Q】「武蔵野うどん」根付いた背景は?小麦生産 台地で盛ん/江戸からの食文化 観光資源に『読売新聞』朝刊2018年9月3日(都民面)。
  3. ^ JR東日本 伝統を味わう武蔵野うどん(2009年8月16日時点のアーカイブ
  4. ^ 小平糧うどん小平市ホームページ(2018年9月22日閲覧)。
  5. ^ 村山うどんの会について(2018年9月22日閲覧)。

関連項目[編集]

  • 武蔵国
  • 熊谷うどん - 近年、埼玉県熊谷市では、事実上、武蔵野うどんから派生する形でローカルうどんブランドを作り出している。

外部リンク[編集]