梓弓
梓弓(あずさゆみ、あづさゆみ)は、神事などに使用される梓(アズサ)の木で作られた弓。材質に関わらず弓のことを梓弓と呼ぶこともある。
または枕詞の一つ。
概要[編集]
古くは神事や出産などの際、魔除けに鳴らす弓(鳴弦)として使用された。甲斐国や信濃国から都に献上され、現在でも遺品として残されている例がいくつかある(正倉院中倉の3張など)。
梓弓という固定された様式が有るわけではなく、伏見稲荷大社の奉射祭ではアズサの木の枝にそのまま弦を張っただけの弓が使用され、また式年遷宮に奉納される弓は京弓師柴田勘十郎に代々伝わる製法で作られるなど、使われる場ごとにその様相を異にする。
神事[編集]
- 祭り矢・祭り弓
- 祭り矢・祭り弓という神事が日本各地で催されていた。年始に行う事が多く「鹿討の神事」などとの共通性もみられ、その地域の1年の吉凶を占うものであり、神社の境内などで弓術の的と同じ物を、選ばれた福男が射抜くことにより行われた。的は金的・銀的などがあり、射抜ければ祝的となり、五穀豊穣や大漁追福が約束された。また地域によっては、神職が行う事もあり、これらに使用された弓矢を梓弓と呼ぶ場合もある。
- 梓巫女
- 梓巫女と呼ばれる古神道や古くからの民間信仰による、いわゆる祈祷師が存在し、神社に属さずに特定の地域や渡り巫女として、吉凶の占いや厄落としや口寄せをしていた。このときに使用された道具が梓弓と呼ばれ、小さな葛籠(つづら)に入れ持ち歩いていたので小弓であった。
枕詞としての梓弓[編集]
万葉集などにおいては、春(張る)、引くなどを導く。 ほかにも、いる、はる、本、末、弦、おす、寄る、かへる、ふす、たつ、矢、音なども導く。
例:梓弓 おしてはるさめ けふふりぬ あすさへふらば わかなつみてむ(古今和歌集20)