朱の盆

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『化物づくし絵』より「朱のばん」

朱の盆(しゅのぼん)は日本の妖怪。一般的には朱の盤首の番などと書かれ、いずれも「しゅのばん」と読み、本来の名称は「しゅのばん」である(後述)。『諸国百物語延宝5年、1677年)』では「首の番」、『老媼茶話(ろうおうさわ、寛保2年、1742年)』では「朱の盤」と記されている。恐ろしい顔を見せて人を驚かせる妖怪で、この妖怪に会うと魂を抜かれるとされる。

概要[編集]

『老媼茶話』に、朱の盤(しゅのばん)が登場する話が2話ある。『諸国百物語』では首の番という表記で、その2と同じ話がある。

その1[編集]

越後(今の新潟県)から江戸に向かって旅する2人の男がいた。途中、荒れ野で道に迷って日が暮れたが、1軒のあばら家があり、老婆が1人いた。一夜の宿を請うと老婆は快く招き入れ、1人の男はすぐに熟睡してしまった。もう1人の男が見ていると、老婆の舌が5尺(1.5メートル)も伸び、眠っている男の頭をなめ回す。気味悪く思うと、外から「舌長姥(したながうば)、なぜ早くやらないか」と言う声がする。誰だと老婆が問うと、「朱の盤坊だ、手伝おうか」と言って入ってきた。見ると6尺(1.8メートル)もある赤い顔をした坊主である。男がとっさに道中差(武士以外の旅人が携帯を許された短い刀)を抜いて斬り付けると朱の盤は消え失せたが、舌長姥も眠っている男を抱えて外に飛び出したと見るや、家も消えて旅人は1人荒れ野に取り残された。日が昇って周囲を見ると、遠くの草むらで、連れ去られた男が全身の肉をすっかりなめ取られて白骨になっていた。

その2[編集]

会津の諏訪の宮に朱の盤という化け物が出るとの話を聞き、山田角之進という若侍がその正体を見届けようと夜中に出かけた。すると別の若い侍に出会ったので、四方山話のついでに、「ここには朱の盤というものが出るそうであるが、貴殿はご存知か?」と問うと、相手の侍が「それはこのようなものでござるか」と言って見せた顔は、満面朱を流したように赤く、髪は針のようで、額には1本の角、目は星のように輝き、口は耳まで裂け、牙をかみ鳴らす音は雷鳴のとどろくようであった。角之進は余りの恐ろしさに気を失った。しばらくして息を吹き返し、夜道を急ぐと1軒の家があり、女房が1人で留守番をしていた。ようよう安堵して、先刻化け物に出会った云々の話をすると女房は、「それは大変な目にあわれました。してその化け物はこんな顔でありましたか」と言って、またさっきの化け物の顔になった。角之進は家を飛び出し、やっと自宅に逃げ戻ったが、100日寝込んだ末に亡くなったという。

その2の型は、のっぺらぼうなどのように、各地に伝わる再度の怪(化け物が2度続けて同じ人を驚かせる)に当てはまる型である。

名称[編集]

『老媼茶話』をはじめとして、「しゅのばん」(朱の盤)あるいは「しゅばん」という名称が一般的である。また、細川幽斎による『源氏物語』への註の中に「朱ノ盤トイフ絵物語アリ」[1]との記述があり、原本が散逸してしまい内容は不明ながら古い絵巻物作品に「しゅのばん」という名のものがあったらしいことが確認できる。

「しゅのぼん」(朱の盆・朱の盤)という呼び方はおもに昭和以後に見ることも出来る。これは「しゅのばん」を題材とした水木しげるの作品『ゲゲゲの鬼太郎』の登場妖怪として使用された名称が用いられているものであり、水木の著作において「しゅのぼん」という表記がとられている[2][3]

形態[編集]

境港市水木しげるロードに設置された朱の盆のブロンズ像

「しゅのぼん」として知られる妖怪の姿は、水木しげるのデザインによるものである。アニメ版の『ゲゲゲの鬼太郎』(第3期~)において、ぬらりひょんの手下として凖レギュラー登場し知られるようになった。水木による「しゅのぼん」の頭に角を持つ点などデザインは『老媼茶話』に登場する「しゅのばん」の文字表現を下敷きにしていると考えられる。

平成23年(2011年)、兵庫県立歴史博物館学芸員・香川雅信が入手した妖怪画『化物づくし絵』の中に「朱のばん」と記された一つ目で赤い顔の火に包まれた妖怪の絵(画像参照)が発見され、江戸時代における「しゅのばん」の絵画例のひとつでは無いかとも見られている[4]

備考[編集]

泉鏡花による戯曲天守物語』は、城に宿る亀姫などをはじめ『老媼茶話』にある説話から題材の着想を得ており、「しゅのばん」を素材とした朱の盤坊(しゅのばんぼう)、舌長姥が登場する。朱の盤坊は頭にサイのような1本の角を生やした、十文字ヶ原に棲む妖怪と劇中では設定されている。

脚注[編集]

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  1. ^ 細川幽斎、 野口元大・徳岡涼 編『細川幽斎選集 1 源氏物語聞書』 続群書類従完成会 2006年 594頁 ISBN 4-7971-1701-X
  2. ^ 水木しげる 『決定版 日本妖怪大全 妖怪・あの世・神様』 講談社(講談社文庫)、2014年、368頁。ISBN 978-4-062-77602-8。 朱の盤(しゅのぼん)
  3. ^ 水木しげる 『鬼太郎国盗り物語』4巻 講談社 107頁 ISBN 978-4-06-332093-0 朱の盆(しゅのぼん)
  4. ^ 香川雅信「新出「化物づくし絵」について」『』vol.0032、郡司聡他編、角川書店〈カドカワムック〉、2011年、248-249頁。ISBN 978-4-04-885094-0

関連項目[編集]

外部リンク[編集]