トゥー・ヴァージンズ

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「未完成」作品第一番 トゥー・ヴァージンズ
ジョン・レノンオノ・ヨーコスタジオ・アルバム
リリース
録音 1968年5月19日
ジャンル 前衛音楽
時間
レーベル アップル・レコード / ライコディスク
プロデュース ジョン・レノンオノ・ヨーコ
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 124位(アメリカ[1]
  • ジョン・レノンオノ・ヨーコ アルバム 年表
    -トゥー・ヴァージンズ
    (1968年)
    ライフ・ウィズ・ザ・ライオンズ
    (1969年)
    テンプレートを表示

    「未完成」作品第一番 トゥー・ヴァージンズ』(原題:Unfinished Music No.1: Two Virgins)は、1968年に発表されたジョン・レノンヨーコ・オノのアルバムである。2人が共同で制作した最初の作品に相当する。

    解説[編集]

    制作の経緯[編集]

    レノンは1960年代中盤から前衛音楽に興味を抱いて、アルバムを制作する構想を持っていた。彼は1966年11月ロンドンのインディカ・ギャラリーで、アメリカ前衛芸術家として活動していたオノと出会い、翌年には彼女の個展に出資したり、彼女をビートルズレコーディングセッションに招待したりした。レノンが1968年2月から4月にかけてインドマハリシ・マヘシ・ヨギ修行を受けていた時には、2人は文通で密に連絡を取り合っていた。

    彼女への思慕を次第に深めていったレノンは、1968年5月19日夜、妻シンシアの旅行中に彼女を自宅に招待し、明け方にかけて2人で前衛音楽を制作した。

    内容[編集]

    本作は2人が即興で出した音[注釈 1]からなる12曲が収録されている。'Together'ではバックに1928年の同名ヒット曲が流れている。

    本作で最も特筆すべきことは、レノンの前衛音楽云々というレコードの内容ではなく、2人が全裸で写っているジャケット写真参照)であろう。表ジャケットには正面写真、裏ジャケットには振り向く姿を背後から撮影した写真が使用された。2人は本作を録音した後、ロンドン・メリルボーンモンタギュー・スクウェア34番地にあるリンゴ・スターが借りたフラットで同棲生活を開始した。そして1968年10月にセルフタイマー機能を使って、これらの写真を自分達で撮影した。

    裏ジャケットの写真の下には、ポール・マッカートニーが本作に寄せた以下の言葉が掲載された[2][注釈 2]

    When two great Saints meet, it is a humbling experience. The long battles to prove he was a Saint. — Paul McCartney

    反響[編集]

    陰茎を露出したレノンと乳房陰毛を露出したオノの姿を載せたジャケットはイギリスアメリカは勿論、全世界で大きな物議を醸した。当時ビートルズのメンバーは1968年に設立されたアップル・レコードから、配給元のEMI(イギリス)やキャピトル・レコード(アメリカ)を介して自分達のレコードを発売していた。今回、EMIもキャピタル・レコードも本作の配給を拒否したので、イギリスではトラック・レコード英語版[注釈 3]、アメリカではテトラグラマトン・レコード英語版[注釈 4]が配給した。但し、テトラグラマトン・レコードは2人の顔だけが印刷された茶色のカバーを被せて配給した[3][注釈 5]

    日本では、ビートルズの作品を販売していた東芝音楽工業を初めどのレコード会社も、猥褻図書販売の容疑で警察の手入れを受けることを恐れて本作を発売しなかった。本作のジャケット写真を掲載したアングラ・レコード・クラブの雑誌『フォークリポート』[注釈 6]出版元は、猥褻文章図画販売の容疑で大阪府警と曽根崎署に強制捜査を受けた[注釈 7]

    スターは「なあ、ジョン。君は良いと思ってやってるのかもしれないけど、ちょっとは僕達の事も考えてくれよ。庇うのが大変なんだから[要出典]」と苦言を呈していた。

    本作を録音した後、2人は同棲生活を始め、常に行動を共にするようになった。レノンは本作を宣伝して、自分は録音中にオノと初めて肉体的に結ばれたと公言した。

    再発[編集]

    1997年ライコディスクから初めてCD化され、日本では発表から29年にして、ビデオアーツ・ミュージックから発売された[注釈 8]。英・米ステレオ盤LPで12曲に分かれていたセクションは、英モノラル盤LP同様「サイド・ワン」と「サイド・トゥー」と名づけられた2つのトラックに統合された。ボーナス・トラックとしてオノの自作曲「リメンバー・ラヴ」が追加収録された[4]

    収録曲[編集]

    1. "Two Virgins Side One": – 14:14
      • "Two Virgins No. 1" (Lennon/Ono)
      • "Together" (De Silva, Brown, Henderson)
      • "Two Virgins No. 2" (Lennon/Ono)
      • "Two Virgins No. 3" (Lennon/Ono)
      • "Two Virgins No. 4" (Lennon/Ono)
      • "Two Virgins No. 5" (Lennon/Ono)
    2. "Two Virgins Side Two": – 15:13
      • "Two Virgins No. 6" (Lennon/Ono)
      • "Hushabye Hushabye" Copyright Control
      • "Two Virgins No. 7" (Lennon/Ono)
      • "Two Virgins No. 8" (Lennon/Ono)
      • "Two Virgins No. 9" (Lennon/Ono)
      • "Two Virgins No. 10" (Lennon/Ono)

    Rykodisc CD bonus track: "Remember Love"

    脚注[編集]

    出典[編集]

    1. ^ Unfinished Music, No.1: Two Virgins - John Lennon, Yoko Ono | Awards | AllMusic
    2. ^ the-paulmccartney-project.com”. 2024年1月23日閲覧。
    3. ^ Discogs”. 2024年1月23日閲覧。
    4. ^ Discogs”. 2024年1月23日閲覧。

    注釈[編集]

    1. ^ オノの「ねえあんたあ、ちょっと遊んでいかない」という日本語あり。
    2. ^ 「二人の聖人が出会う時、それは謙虚な経験である。彼が聖人だったことを証明する長い闘い」
    3. ^ ザ・フーのマネージャーのキット・ランバートとクリス・スタンプが設立。ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス、ザ・フー、クレージー・ワールド・オブ・アーサー・ブラウンなどが所属していた。
    4. ^ ビル・コスビーらが設立。ディープ・パープルが在籍した。
    5. ^ 旧約聖書創世記の第2章21節から24節までが引用され、25節「アダムと其妻は二人倶に裸體にして愧ぢじざりき」(舊新約聖書 文語訳: 日本聖書協会 978-4-8202-1275-1)に相当する部分は、太字で"And they were both naked, the man and his wife, and were not ashamed." 「男と彼の妻は二人とも裸であり、恥らってはいなかった」と改変されていた。
    6. ^ 編集長は中川五郎。この写真は1970年冬の号に掲載された。
    7. ^ 同じ号に掲載されたポルノ小説との合わせ技だった。
    8. ^ ライコディスク特有のケース全体を覆うオーバーカバーが付けられ、日本盤では同様のデザインのカードが付属している。

    外部リンク[編集]