未完成の音楽作品

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未完成の音楽作品(みかんせいのおんがくさくひん)では、「未完成交響曲」のニックネームがあるフランツ・シューベルト交響曲第7番ロ短調D.759など、作曲者自身の手によって完成されることがなかった音楽作品について記述する。

未完成の音楽作品は、文字通り完成されていない音楽である以上、作曲者が自身の「作品」として発表することは基本的にはない。また、未完成である以上「作品」として演奏されることは、一部の例外を除き皆無である。むしろ、各々の作曲家を研究する上においての資料として扱われる場合の方が多いであろう。

分類[編集]

未完成の音楽作品の分類法はいろいろ考えられる。

  1. 一応1つの作品として解釈できなくもない状態まで仕上げられているものと、そうでないもの。
  2. 作曲半ばでその作品の完成を断念したものと、作曲半ばで死去したもの。

どちらの分類法も、その定義が極めてあいまいであり、完全に分類しきれるものではない。以下では便宜的に後者の分類法を用いることにする。

作曲家が完成を断念したもの[編集]

上の分類法においてここに分類されると考えられる作品としては、以下のものが挙げられる。

  • シューベルト
  • シューマンツヴィッカウ交響曲 - 作曲者の生前に第1楽章のみ初演された。3楽章形式での完成を意図して書かれているが、第2楽章までしか完成していない。ジョン・エリオット・ガーディナーをはじめ、数名の指揮者が録音している。第1楽章には序奏付きの版と序奏なしの版がある。
  • ワーグナー:交響曲(第2番)ホ長調 - スケッチをもとにアントン・ザイドルがオーケストレーションした第1楽章、および第2楽章の一部が現存する。
  • チャイコフスキー交響曲変ホ長調 - 第5番の次の交響曲として作曲が開始されたが、途中で作曲者の気が変わり、ピアノ協奏曲第3番となった。これも未完成に終わったが、ピアノ協奏曲としては第1楽章のみの単一楽章作品として演奏される。交響曲としては後に何種類かの補筆完成版が作られて演奏されており、非公式の吹奏楽版まで存在する。
  • ドビュッシー - 完成させたオペラ『ペレアスとメリザンド』の他に、未完に終わった幾つかのオペラがある。これらは後世に補筆完成されている。
    • オペラ『ロドリーグとシメーヌ』
    • オペラ『鐘楼の悪魔』
    • オペラ『アッシャー家の崩壊』
    • 交響曲 - フォン・メック夫人のお抱えピアニストをしていた少年時代に第1楽章のピアノ連弾譜のみ作曲。ドビュッシーの四手連弾・2台ピアノの演奏会や録音で取り上げられている。
  • ラフマニノフ:交響曲ニ短調(「ユース・シンフォニー」と通称される)
  • ソラブジ:交響曲第2番 - 大編成で演奏時間が長いため、ピアノ譜のみでオーケストレーションがされていない。

上記のうち、シューベルトの交響曲ロ短調は例外的に「音楽的に完成された作品」とみなされ、頻繁に演奏されている。それ以外はみな、たとえば習作的であったり、途中で作曲家が投げ出したものなどであり、「作品」として演奏されることは少ない。

完成前に作曲家が死亡したもの[編集]

上の分類法においてここに分類されると考えられる作品としては、以下のものが挙げられる。

ブルックナーの交響曲第9番は音楽的にほとんど完成しているとみなすことが可能である。すると、ベートーヴェン、ブルックナー、マーラーなど、交響曲の大家とされる作曲家たちは、みな交響曲第9番を完成させたすぐ後に死んでいる、と捉えることもできる。このため、特にブルックナーやベートーヴェンの死を目の当たりにしたマーラーは晩年、交響曲第9番を書くことを非常に恐れていたと伝えられている(第九の呪い)。たまに評論家たちがドヴォルザークをこの範疇に入れることがあるが、それは誤りである。なぜならドヴォルザークの生前、最後の交響曲ホ短調「新世界より」は、出版社の都合で第5番として出版されたためである(作曲者の死後、9曲の交響曲全てに番号が作曲順に付け直された)。上記のいずれも何らかの形で補筆完成され、楽譜の出版や演奏、録音が行われている。

なお、この「第九の呪い」のジンクスは、20世紀のソ連の作曲家ショスタコーヴィチが交響曲を15曲作曲したことによって破られたといわれるが、実際にはショスタコーヴィチ以前にラフブライアンミヨーミャスコフスキーらが第10番以降の交響曲を作曲している。また、メンデルスゾーンは番号付きの5つの交響曲とは別に、13曲の「弦楽のための交響曲」を作曲している。

現在頻繁に演奏されている未完成の音楽作品[編集]

今日、未完成でありながらも頻繁に演奏されている音楽作品としては、以下のものが挙げられる。

交響曲[編集]

このうちシューベルトの未完成交響曲は完成した部分が第2楽章までであるが、そのままでも十分な交響曲と見なしうるとして頻繁に演奏されている。

ブルックナーのものは大半が完成されているが、演奏可能な状態まで作曲されたのは第3楽章までである。第4楽章は補筆が試みられており、それを含めて完全な交響曲として演奏される場合もあるが、3つの楽章のみで演奏されることが多い。ブルックナー本人は第4楽章の代わりに「テ・デウム」を演奏しても良いと語ったと伝えられている。

ボロディンのものは一部が未完成に終わったが、弦楽四重奏曲から編曲されて充てられている。

マーラーのものは、第1楽章はほぼ完成されていたが、他は大雑把な枠組みのみであった。第1楽章単独で演奏されることもあるが、残りの楽章が研究家の手によって補筆完成され、全楽章演奏されることもある。特にクック版が有名である。

オペラ[編集]

管弦楽曲[編集]

協奏曲[編集]

室内楽曲[編集]

器楽曲[編集]

  • シューベルトピアノ・ソナタ第12810111215番など
  • ブーレーズ:ピアノ・ソナタ第3番 ― 作曲者は存命しており「現在進行中の作品」だが、本人が完成しているとして放棄している。全5楽章の構想のうち、公開出版されているのは第2楽章および第3楽章。非公開の自筆譜に基づく他の楽章を演奏した録音も市販されているが、多くのピアニストが演奏会や録音で取り上げるのは公開されている第2・第3楽章のみである。第3楽章「星座」は赤と緑の2色刷りの楽譜で、作曲者の提唱する「管理された偶然性」によって幾通りもの演奏ができる。特に逆から読んだ場合は題名を「星座 - 鏡」とする。

合唱曲[編集]

その他[編集]