木星の衛星と環

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木星の衛星と環(もくせいのえいせいとわ)では、木星衛星について述べる。

2012年初頭までに、木星には66個の衛星(不確定S/2000 J 11を除く)[1]と3本の環が発見されており、2009年までに衛星のうち50個が命名されている。

衛星[編集]

発見[編集]

1610年に木星の最初の4つの衛星(ガリレオ衛星)が発見された。それから4世紀の間に、地上からの観測で更に9個の衛星が発見された。

1979年ボイジャー1号が3つの衛星を発見し、衛星の総数は16個となった(1975年に発見されたが、のちに見失われたテミストを含めれば17個)。

1999年10月6日に小惑星探査プロジェクトのスペースウォッチにより小惑星「1999 UX18」が発見されたが、やがて実は木星の新衛星だった事がわかった。この衛星はカリロエと命名された。

2000年11月23日から12月5日にかけて、スコット・S・シェパードデヴィッド・C・ジューウィットに率いられたハワイ大学のチームが木星の小さな衛星の組織的な捜索を始めた。彼らはマウナケア天文台群にある13基の望遠鏡のうち2つ(一つは日本のすばる望遠鏡)に世界最大級のCCDカメラを取り付け、2000年だけでテミストの再発見を含む11個の衛星を発見した(ただし、S/2000 J 11については存在を疑問視する意見もあり、不確実な存在となっている)。

2001年12月9日から11日の捜索では11個、2002年にはわずか1個だったが、2003年2月5日から9日の捜索で更に23個の衛星が発見された。

2010年9月7日S/2010 J 1、翌9月8日にはS/2010 J 2という新衛星2個が発見された。公転周期はJ1が約2年、J2が約1.6年とされる[2]

2011年9月27日チリラスカンパナス天文台マゼラン望遠鏡で、木星に新たな2つの衛星が周回していることが撮影された。それぞれS/2011 J 1S/2011 J 2と仮符号が付けられた。この2つの新衛星は不規則衛星に分類される逆行衛星群の一部で、木星からの距離が遠く、公転軌道も傾斜した楕円状という。衛星直径はいずれも1キロほどで、公転周期はそれぞれJ1が約580日、J2が約726日[1]

1999年以降に発見された46個の衛星の多くは長楕円軌道だったり、逆行していたりする。これらは直径が平均3km、最大の物でも9km足らずで、木星に捕獲された太陽系小天体だと思われるが、これらについてはごくわずかな事しか知られていない。

現在知られている木星の衛星の総数は66個[1]で、太陽系の惑星の中でも土星に次いで多かったが、2011年の発見で衛星の総数が再び最大となった。未発見の小さな衛星の存在可能性はある。

分類[編集]

木星の不規則衛星。横軸は軌道長半径 / 100万 km、縦軸は黄道面に対する軌道傾斜角 / °。

一般に惑星の衛星は、離心率軌道傾斜角が小さい規則衛星と、それらが大きい不規則衛星に分けられる。木星の衛星では、内側の8つが規則衛星である。また、内側の15は順行衛星、それ以外は逆行衛星である。逆行衛星は、捕獲された小天体だと考えられている。なお、古くに名づけられた衛星や特殊な軌道を持つ衛星を除き、順行衛星は語尾が‐a、逆行衛星は語尾が‐eと名づけるよう決められている。

1979年ボイジャーによる発見からしばらくの間、知られていた16の衛星は4個ずつ4つのグループ(内部群、ガリレオ衛星、ヒマリア群、外部逆行群)に整然と分けられていた。しかし1999年以降、新しい小さな衛星が多数発見されたことで分類は複雑になった。現在発見されている衛星は、6つの主なグループと、いくつかの孤立した衛星に分けられている。

規則/不規則 順行/逆行 グループ 衛星数
規則衛星 順行衛星 アマルテア群 4
ガリレオ衛星 4
不規則衛星 テミスト 1
ヒマリア群 5
カルポ 1
逆行衛星 S/2003 J 12 1
アナンケ群 8~16
カルメ群 15~17
パシファエ群 12~13
S/2003 J 2 1
  • アマルテア群(内部群):直径200 km以下、軌道半長径20万 km以下、軌道傾斜角0.5°以下の4つの小さい衛星。現在の位置で形成されたのではなく、外から取り込まれたものであるとの報告がある[3]
  • ガリレオ群(ガリレオ衛星):軌道半長径が20万 kmから400万 kmの、ガリレオ・ガリレイによって発見された4つの大きな衛星(いくつかは太陽系で最大級)。
  • ヒマリア群:軌道半長径が1100万 - 1200万 km、軌道傾斜角が1.6°という狭い範囲(27.5°±0.8°)に「密集」している。離心率は0.11から0.25と幅広い。
  • アナンケ群:軌道半長径が平均2127万6000 km、軌道傾斜角が149.0°±0.5°、離心率が0.216 - 0.244の、境界が明瞭でないグループ。確実にこのグループに属する衛星は8個だが、他の8個については軌道要素がさまざまで論争の余地がある。
  • カルメ群:軌道半長径が平均2340万4000 km、軌道傾斜角が165.2°±0.3°、離心率が0.238 - 0.272(S/2003 J10は例外的に大きな離心率を持つ)のグループ。
  • パシファエ群:軌道半長径が平均2362万4000 km、軌道傾斜角が151.4°±6.9°、離心率が0.156 - 0.432(最も大きく分散していることに注意)。

アマルテア群、ガリレオ群以外のグループは、それぞれ共通の起源を持つと考えられている。おそらくは、より大きな衛星か捕獲された本体が分裂して、それぞれのグループを形成したのだろう。

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木星の環。ゴサマー環はアマルテア起源のものとテーベ起源のものが一部重なっている。

木星の環は、土星などのそれより暗いために地上からは発見できなかったが、1960年にキエフ天文台のフセフスビャーツキー (S. K. Vsekhsviatsky) が木星の赤道直下にある暗い縞は環の影だという説を唱えている(ただし、環を構成する物質は木星から噴出したものであるとされていた)[4]。その後、パイオニア探査機が観測した木星を取り巻く放射能帯の分布から環が存在する可能性とその位置が予想され[5]、ボイジャー1号の観測によって初めて確認された。

環は衛星に隕石が衝突した際に発生する煙状のダストによって形成されている。主環はアドラステアとメティスから、ゴサマー(蜘蛛の糸)環はアマルテアとテーベから出たダストによる。また、これらの外側には極めて薄い環があり、捕獲された惑星間塵で形成されていると考えられている。


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木星の衛星と環
番号/名前 直径/幅
(km)
質量
(kg)
軌道
傾斜角
(度)(4)
離心率 軌道
半長径
(km)(3)
公転周期
(日)(3)
発見
(年)
(ハロ環) 22,800   100,000 ~ 122,800   1979  
(主環) 6,400 122,800 ~ 129,200 1979
XVI メティス 40
(40 × 60)
1.2 ×1017 0.000 0.0012 127,690(1) 0.294780(2)
(7.08時間)
1979 アマルテア群
XV アドラステア 26 × 20 × 16 7.5 ×1015 0.000 0.0018 128,690(1) 0.29826(2)
(7.11時間)
1979
(ゴサマー環) 85,000   129,200 ~ 214,200   1979  
V アマルテア 262 × 146 × 134 2.1 ×1018 0.360 0.0031 181,170(1) 0.49817905(2)
(11.92時間)
1892 アマルテア群
XIV テーベ 110 × 90 1.5 ×1018 0.901 0.0177 221,700(1) 0.6745(2)
(16.23時間)
1979
I イオ 3,660.0 × 3,637.4 × 3,630.6 8.9 ×1022 0.050 0.0041 421,700(1) 1.769137786(2) 1610 ガリレオ衛星
II エウロパ 3,121.6 4.8 ×1022 0.471 0.0094 671,034(1) 3.551181041(2) 1610
III ガニメデ 5,262.4 1.5 ×1023 0.204 0.0011 1,070,412(1) 7.15455296(2) 1610
IV カリスト 4,820.6 1.1 ×1023 0.205 0.0074 1,882,709(1) 16.6890184(2) 1610
XVIII テミスト 8 6.9 ×1014 15.346 0.2006 7,391,645 129.827611 1975
(2000)
 ?
XIII レダ 20 1.1 ×1016 27.210 0.1854 11,097,245 238.824159 1974 ヒマリア群
VI ヒマリア 170 6.7 ×1018 29.590 0.1443 11,432,435 249.726305 1904
X リシテア 36 6.3 ×1016 25.771 0.1132 11,653,225 256.995413 1938
VII エララ 86 8.7 ×1017 30.663 0.1723 11,683,115 257.984888 1905
S/2000 J 11 4 9.0 ×1013 26.169 0.2058 12,570,575 287.931046 2000
XLVI カルポ 3 4.5 ×1013 56.001 0.2736 17,144,875 458.624818 2003  ?
S/2003 J 12 1 1.5 ×1012 142.680 0.4449 17,739,540 482.691255 2003  ?
XXXIV エウポリエ 2 1.5 ×1013 144.694 0.0960 19,088,435 538.779839 2001 アナンケ群?
S/2003 J 3 2 1.5 ×1013 146.363 0.2507 19,621,780 561.517739 2003
S/2003 J 18 2 1.5 ×1013 147.401 0.1570 19,812,575 569.728015 2003
S/2011 J 1 1 162.830 0.2963 582.22 2011  ?
S/2010 J 2 1 150.4 0.307 20,307,150 588.1 2010
XLII テルクシノエ 2 1.5 ×1013 102.844 0.2685 20,453,755 597.606695 2003 アナンケ群?
XXXIII エウアンテ 3 4.5 ×1013 123.649 0.2000 20,464,855 598.093368 2001 アナンケ群
XLV ヘリケ 4 9.0 ×1013 120.908 0.1375 20,540,265 601.401918 2003 アナンケ群?
XXXV オーソシエ 2 1.5 ×1013 101.861 0.2433 20,567,970 602.619143 2001
XXIV イオカステ 5 1.9 ×1014 127.043 0.2874 20,722,565 609.426611 2000 アナンケ群
S/2003 J 16 2 1.5 ×1013 149.279 0.3185 20,743,780 610.362159 2003
XII アナンケ 28 3.0 ×1016 149.526 0.3963 20,815,225 613.518491 1951
XXVII プラクシディケ 7 4.3 ×1014 132.099 0.1840 20,823,950 613.904099 2000
XXII ハルパリケ 4 1.2 ×1014 143.944 0.2441 21,063,815 624.541797 2000
XXX ヘルミッペ 4 9.0 ×1013 149.058 0.2290 21,182,085 629.809040 2001 アナンケ群?
XXIX スィオネ 4 9.0 ×1013 116.088 0.2526 21,405,570 639.802554 2001 アナンケ群
XL ムネーメ 2 1.5 ×1013 147.647 0.2214 21,427,110 640.768660 2003
L ヘルセ 2 1.5 ×1013 139.842 0.2379 22,134,305 672.751882 2003 カルメ群
XXXI アイトネ 3 4.5 ×1013 143.251 0.3927 22,285,160 679.641347 2001
XXXVII カレ 2 1.5 ×1013 133.342 0.2011 22,409,210 685.323873 2001
XX タイゲテ 5 1.6 ×1014 140.521 0.3678 22,438,650 686.674715 2000
S/2003 J 19 2 1.5 ×1013 140.956 0.1961 22,709,060 699.124764 2003
XXI カルデネ 4 7.5 ×1013 119.572 0.2916 22,713,445 699.326904 2000
S/2003 J 15 2 1.5 ×1013 109.168 0.0932 22,721,000 699.676116 2003 アナンケ群?
S/2003 J 10 2 1.5 ×1013 115.021 0.3438 22,730,815 700.129403 2003 カルメ群?
S/2003 J 23 2 1.5 ×1013 137.576 0.3931 22,739,655 700.537990 2003 パシファエ群
XXV エリノメ 3 4.5 ×1013 143.354 0.2552 22,986,265 711.964625 2000 カルメ群
XLI アエーデ 4 9.0 ×1013 112.763 0.6012 23,044,175 714.656754 2003 パシファエ群
XLIV カリコレ 2 1.5 ×1013 141.240 0.2042 23,111,825 717.806112 2003 カルメ群?
XXIII カリュケ 5 1.9 ×1014 137.125 0.2140 23,180,775 721.020662 2000 カルメ群
XXXII エウリドメ 3 4.5 ×1013 143.033 0.3770 23,230,860 723.358859 2001 パシファエ群?
S/2011 J 2 1 151.851 0.3867 725.06 2011  ?
S/2010 J 1 1 163.2 0.320 23,314,335 723.2 2010
XLIX コレー 2 1.5 ×1013 137.371 0.1951 23,238,595 776.02 2003 パシファエ群
XXXVIII パシテー 2 1.5 ×1013 144.112 0.3289 23,307,320 726.932963 2001 カルメ群
XLVIII キュレーネ 2 1.5 ×1013 115.507 0.4116 23,396,270 731.098603 2003 パシファエ群
XLVII エウケラデ 4 9.0 ×1013 118.384 0.2829 23,483,695 735.199980 2003 カルメ群
S/2003 J 4 2 1.5 ×1013 98.660 0.3003 23,570,790 739.293961 2003 パシファエ群
XXXIX ヘゲモネ 3 4.5 ×1013 150.314 0.4077 23,702,510 745.500007 2003
XLIII アーケ 3 4.5 ×1013 146.289 0.1492 23,717,050 746.185469 2002 カルメ群
XI カルメ 46 1.3 ×1017 120.659 0.3122 23,734,465 747.008062 1938
XXVI イソノエ 4 7.5 ×1013 118.554 0.1665 23,832,630 751.646937 2000
S/2003 J 9 1 1.5 ×1012 135.452 0.2762 23,857,810 752.838751 2003
S/2003 J 5 4 9.0 ×1013 117.922 0.3071 23,973,925 758.341296 2003
VIII パシファエ 60 3.0 ×1017 143.037 0.2953 24,094,770 764.082032 1908 パシファエ群
IX シノーペ 38 7.5 ×1016 146.657 0.2468 24,214,390 769.779665 1914
XXXVI スポンデ 2 1.5 ×1013 112.409 0.4432 24,252,625 771.603566 2001
XXVIII アウトノエ 4 9.0 ×1013 129.073 0.3690 24,264,445 772.167762 2001
XVII カリロエ 9 8.7 ×1014 131.895 0.2644 24,356,030 776.543335 1999
XIX メガクリテ 5 2.1 ×1014 143.760 0.3078 24,687,240 792.436947 2000
S/2003 J 2 2 1.5 ×1013 151.523 0.1882 30,290,845 1,077.018006 2003  ?

衛星の仮称[編集]

アマルテア (Jupiter V) からレダ (Jupiter XIII) までは1975年に国際天文学連合 (IAU) によって正式に命名されたが、このうちVIからXIIまでについてはそれまで現在の名称とは違う名が付けられていた。それらは当時の天文年鑑にも掲載されており、一種の非公式な仮称として用いられていたと思われる。

これらの仮称の多くにはゼウス(木星)が長であるオリンポス神族の名が使われており、クロノス土星)が長であるティターン神族の名が土星の衛星に使われたのに対応していた。しかし、以前に名づけられていた小惑星の名と重複していたため、重複しない名前がIAUにより選ばれた。

番号 現在の正式名称 '75以前の仮称
V アマルテア
VI ヒマリア ヘスティア
VII エララ ヘラ
VIII パシファエ ポセイドン
IX シノーペ ハーデス
X リシテア デメテール
XI カルメ パン
XII アナンケ アドラステア

一時的な彗星[編集]

木星は、その強い重力で彗星を一時的に捕獲して、衛星にすることがある。この中で最も著名なのは、1994年に衝突した衛星、シューメーカー・レヴィ第9彗星である。木星の周回軌道に乗っている事が実際に観測されたのはこの彗星のみであり、ほかにも軌道計算により以下のような彗星が衛星になったと見られている。

作品[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c 木星で新たに2つの衛星を発見”. National Geographic News (2012年2月3日). 2012年2月5日閲覧。
  2. ^ 木星に新しい衛星を2個発見 65個に”. アストロアーツ (2011年6月3日). 2012年2月5日閲覧。
  3. ^ すばる、木星の近傍を回る衛星の起源に迫る
  4. ^ 天文ガイド』1980年1月号
  5. ^ 『天文ガイド』1980年2月号

関連項目[編集]