朝鮮統一問題

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朝鮮統一問題
統一旗。朝鮮統一のシンボルとして使用される。
各種表記
ハングル 통일
漢字 統一
発音 トンイル
(トンイル)
日本語読み: とういつ
2000年式
MR式
英語表記:
Tong-il
T'ongil
Korean reunification
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朝鮮統一問題(ちょうせんとういつもんだい)とは、朝鮮統一の実現を巡る一連の政治問題を指す呼称である。

朝鮮統一とは、朝鮮大韓民国韓国)と朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)に分裂している状況を改め、最終的には単一政府の施政によって朝鮮を再統合することである。 現在は政治的に分断されて存在しているが、両国とも「一国としての朝鮮」の成立が最終目標であると公言している。両国の統一は、朝鮮のアイデンティティという意味では非常に重要な位置を占めている。

分裂の経緯[編集]

第二次世界大戦後、連合国日本統治下にあった朝鮮で信託統治を実施する計画を策定し、北緯38度線を境とする2つの施政区域に朝鮮を分割した。そして、朝鮮南部にアメリカ軍が、朝鮮北部にソ連軍がそれぞれ進駐して、軍政を開始した。

しかし、朝鮮南部の民族主義者などから信託統治反対運動を受けた米ソは、信託統治の実施を巡って対立を深め、冷戦の影響もあったことから、最終的に朝鮮は大韓民国と朝鮮民主主義人民共和国という2つの独立国家に分裂した状態となった(朝鮮分裂)。

その後、北朝鮮は朝鮮統一を目指して朝鮮戦争を引き起こしたが、韓国側に参戦したアメリカ軍を中心とした国連軍の反撃を受け退却する。さらに、韓国側が朝鮮半島全土を制圧しそうになったところで、北朝鮮の要請に基づいて、中華人民共和国が人民解放軍を「志願兵」として100万人規模の派遣をして戦線を押し戻した。その後、両者は膠着状態となり、休戦によって朝鮮は軍事境界線で分断されることとなった。両国は未だに平和条約を締結していない。

現在までの流れ[編集]

両国は建国以来「朝鮮の正統な国家」としての立場を巡り敵対的な関係が続き、上記のように朝鮮戦争で朝鮮半島の分断は決定的となった。その後、小規模な軍事衝突が発生するなど長期間に渡り緊張状態が続いているが、韓国・金大中政権以降の北朝鮮宥和政策、いわゆる太陽政策の推進により、初の南北首脳会談が実現するなど緊張状態はやや緩和した。しかし、一方では北朝鮮の核開発問題韓国人拉致問題など未解決の問題が山積しており、最近では太陽政策の見直しが叫ばれるなど、統一の見通しは全く立っていないのが現状である。

また、2007年5月には両国を結ぶ鉄道京義線)の試運転が行われたが、祝賀行事などで盛り上がった韓国に対して北朝鮮では行事などは無く全体に冷めた対応に終始し、統一についての両国の温度差が浮き彫りとなった。更に韓国においても拉致被害者の家族が試運転に対して抗議を行うなど、依然として両国の統一は厳しい状況であることがうかがわれた。

その一方で、2000年のシドニーオリンピック2004年のアテネオリンピック2006年の冬季トリノオリンピック、2002年アジア競技大会、2003年アジア冬季競技大会、2006年アジア競技大会の開会式では、両国の選手団は統一行進(競技自体は別の国として参加)を行うなど、スポーツの分野では統一の機運は比較的高く、2008年に中国で行われた北京オリンピックでは、真に統一された選手団として出場させる計画もあったが、実現せず、行進も別々で行われた。また、1991年に日本千葉県で行われた卓球の世界選手権、同年にポルトガルで行われたFIFA U-20ワールドユース大会では、両国は統一選手団として出場している(U-20サッカーコリア代表を参照)。

呼称[編集]

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)政府は大韓民国政府を「南朝鮮」(南北会談では南側)と呼んでいる。蔑称として用いる場合は南朝鮮傀儡傀儡の後に徒党が入ることがある)これに対し、韓国側は、北朝鮮を「北韓」と呼んでいる(1972年以前は北傀と呼んでいた)。

統一への各勢力の動き[編集]

韓国[編集]

太陽政策[編集]

太陽政策支持者は、アメリカ韓国による北朝鮮への制裁や脅迫が、統一の展望を改善するどころか悪影響を与えたと主張している。

強硬政策[編集]

太陽政策の批判者は、北朝鮮との対話や貿易が、平和的な朝鮮統一の展望を改善することに寄与していないと主張し、太陽政策は、非民主的で全体主義的な北朝鮮政府の体制強化を助長していると主張している。

北朝鮮[編集]

北朝鮮は、朝鮮戦争を開始して軍事的に統一を目指した過去があるため、その指向性は完全には捨てていないと考えられるが、1980年代からの長期経済衰退により、それを可能とする国力は乏しい。1980年10月に金日成が武力に頼らない統一方法として高麗民主連邦共和国を提唱したが、韓国側は受け入れていない。また独裁国家のため情報も乏しく、具体的な動きはさだかではない。

統一および統一後の諸問題[編集]

国民意識[編集]

朝鮮半島の分断には様々な要因があるが、1948年8月13日李承晩による大韓民国(以下韓国)の建国宣言と、それに伴う同年9月9日金日成による朝鮮民主主義人民共和国(以下北朝鮮)の建国宣言が、その中でも最も大きな要因と考えられている。しかし、韓国の中央日報が2005年9月に伝えた報道によると、「朝鮮半島分断の責任はどこの国にあるか」というアンケートにおいて、アメリカ53%、日本15.8%、ロシアソ連)13.7%、中国8.8%という結果になっている[1]。このように、統一に要する負担をアメリカ・日本・ロシア・中国に求める意見も少なくない。また、下記のような経済的な負担が考えられることから、表向きは統一を願いつつも、実際には現在の分断状態を維持したほうが良いと考える層や韓国国外への脱出をはかる層も存在する。 北朝鮮の世界的な孤立状況と南北の経済格差、韓国の資本主義と北朝鮮の共産主義が全く正反対にあることから、現実的に統一は無理なのではないかとする声もある。また韓国では一部の人が「統一新羅時代から朝鮮(韓)民族は言語や伝統、歴史を共有してきたが、朝鮮戦争後の社会体制の違いから南北の人間はもう既に別民族」とする考えもおこってきている。ニューライトなどは、統一問題には冷淡であり、北朝鮮が崩壊したら、周辺諸国が共同管理すればよいと主張する。

北朝鮮については、言論の自由がない情報統制国家ゆえに、国民の統一に関する意識がどの程度なのかは定かではない。

統一に要する費用[編集]

統一に要する費用については、アメリカのウォールストリート・ジャーナルが報じたところ、世界銀行などの試算によると、約2兆ドル~3兆ドル(日本円にして約204兆円~306兆円)とも言われており、これは韓国のGDPの約3倍にも相当する。現在、韓国と北朝鮮との経済格差はおおよそ15:1と換算されており、統一が実現した場合には国力に勝る韓国がその大部分を負担し、北朝鮮へのインフラ整備や食糧支援を初めとした総合的な援助を長期的に行う必要があるとされる。そのような巨大な負担を韓国が担うことが出来るかという点については、大いに疑問視されており、負担の一部を国際社会からの援助で賄うことができたとしても、韓国がその負担に耐え切れず、朝鮮半島の経済が崩壊してしまうのではないかとも危惧されている。GDPランキング86位の北朝鮮と15位の韓国とは経済力に差がありすぎるため、香港の中国返還のように韓国国民が反対する可能性がある。

なお、過去に日本が朝鮮半島を併合した時も同様で、日本は巨額の税金を半島のインフラ整備などに投入しつづけ、半島経営についての収支は常に赤字であったとされている。また、東西ドイツ統一の場合も、経済格差は西ドイツ3:東ドイツ1であったと言われており、統一後の長期に渡る不況や、現在も存在する旧東ドイツ領域との経済格差による問題などが大きな国内問題となった。

しかし、一方で、ベルリンの壁崩壊によって、東ヨーロッパの民主化が進み、それがソビエトの崩壊に結びつき、ヨーロッパおよび世界に「平和の配当」をもたらしたことも事実である。北朝鮮の民主化と韓国による統一が、この地域の軍事緊張を低下させるのであれば、それは周辺諸国にとっても経済的にも安全保障的にもプラスとなる。このように、長期的には東アジアの民主化の進行はこの地域に恩恵をもたらすことは否定できない。その意味で、慎重かつ着実な統一の前進を求める声も根強い。  

統一後の国家体制[編集]

韓国は資本主義体制の民主主義国家であり、北朝鮮は共産主義的な独裁国家であるが、統一した場合の国家体制については全く不透明な状態となっている。このような全く正反対とも言える体制の国同士が統一した例としては、南北ベトナムの統一、東西ドイツの統一があげられる。共産主義国家に飲み込まれた前者は大量の難民が発生し(ベトナム難民)、資本主義国家に吸収された後者では難民は発生しなかったものの統一後の社会インフラの整備などで巨額のコストと失業などが発生している。

朝鮮半島、周辺諸国および世界にも混乱をもたらす大量の難民を出さないために現実的に考えられるのは韓国による北朝鮮の緩やかな併合と思われるが、その過程において、北朝鮮の国民が資本主義や民主主義を理解し受け入れることができるか、またその為の教育や努力を韓国がなしうるかについてもかなり困難が予想され、実現にはかなりの長期間が必要であると考えられる。また、資本主義体制の香港およびマカオが社会主義体制の中華人民共和国に返還された際には一国二制度が採用されたが、同じように朝鮮半島も片方による吸収統一を行わずに一国二制度のような形式をとる可能性もあり、北朝鮮は連邦制、韓国は緩やかな連合制を主張している。

その他考えられる諸問題[編集]

統一後は、もとの韓国だった地域へ大量に流入すると思われる北朝鮮地域からの住民の移動により、治安の悪化や都市スラム化が進むと考えられている。また、このような問題に端を発する差別や排斥運動なども懸念される。また、現在でもいる北朝鮮の情報工作員や過激な民族主義者が統一後の韓国を混乱させるのではないかという事も危惧される。この混乱が半島内に収まらず、日本や中国などの近隣諸国へも悪影響を及ぼす可能性も懸念される。一方で、このまま北朝鮮が存続しても、不安定な軍事独裁国家として周辺諸国の脅威となり、また、脱北者という名の難民を生み出し続けることとなる。特に陸続きの中国では、今でも大量の脱北者が存在するとされている。したがって、一時的な負担は大きくても、統一による「平和の配当」が期待できるという見方もある。

中国は、北東アジア最大の鉄鉱石埋蔵量を誇る北朝鮮の茂山鉱山の50年間の採掘権を獲得し、また羅津港の50年間の使用権を獲得するなど北朝鮮の経済的利権を囲い込んでいる。そのため、南北統一が実現すれば、中国の巨大な北朝鮮の経済権益を喪失しかねない。また、北朝鮮が崩壊すれば、大量の難民が中国に流入し、中国の社会秩序さえ不安定化するため、重村智計[2]礒﨑敦仁[3] は北朝鮮が崩壊内戦クーデター等の混乱状態に陥れば中国が北朝鮮に軍事介入する可能性を指摘している。また、韓国主導で南北統一が実現すれば中国はアメリカと同盟関係にある韓国と国境を接することになる。したがって、安全保障の観点から、北朝鮮の存続を望んでいると考えられている。池上雅子は事実上崩壊国家である北朝鮮の体制を安定的に継続させるため、ポスト金正日体制は、中国の傀儡政権になる公算が大きく、地政学的に重要な戦略拠点、巨大な経済権益とインフラ投資、軍事介入と傀儡政権により事実上中国が北朝鮮を吸収する可能性を指摘している[4]

脚注[編集]

  1. ^ “韓国民の53%「米国に分断の責任」”. 中央日報. (2005年9月12日). http://japanese.joins.com/article/574/67574.html 2014年4月17日閲覧。 
  2. ^ ポスト金正日--揺れる北朝鮮の行方を占う 『正論』2008年11月号
  3. ^ 『週刊東洋経済』2010年2月6日号
  4. ^ 北朝鮮・モンゴルに見る中国の擬似「満州国」政策[1]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]