月相

月相(げっそう、英語: lunar phaseまたはphase of the moon)とは、月面のうち太陽光を反射して輝いて見える部分を地球から観測または予測したときの様相である。
概論
[編集]4つの中間的な月の位相は、それぞれ平均して約7日間(約7.38日)続きますが、月が地球から遠地点(Apogee)や近地点(Perigee)にあることによる距離の変化により、この期間は約±11%変動することがあります。
直近の新月から経過した日数は、**月齢(Moon’s age)**と呼ばれます。[1] 月の位相の一連のサイクルは、**朔望月(Lunation)**と呼ばれます。[2]
任意の日付における月齢や月の位相は、既知の新月(例:1900年1月1日、または1999年8月11日)からの経過日数を計算し、それを平均的な朔望月の長さ(29.53059日)[3]で割り、余りを月齢として求めることで概算できます。この方法は、月の軌道が完全な円であると仮定しており、新月の正確な時刻は考慮していないため、結果に数時間の誤差が生じることがあります。基準日から遠い日付ほど、精度は低下します。
この簡易計算は、一般的な用途や装飾的な目的(例:月相時計)には適しています。月の遠地点や近地点を考慮したより正確な計算には、より複雑な方法が必要です。
また、**月の章動(Libration)**により、満月よりやや多く(最大約101%)見えたり、月の裏側の一部(最大約5%)がわずかに見えることがあります。[4]
これらの特徴を踏まえ、月相は常用的にはカレンダーなどに補記されて月見などの伝統文化の参考にされるほか、占いなどにも利用されている。
ただし天文学などの学術的には月相を28分割することにあまり意味はないので、国立天文台の暦要項では中央標準時における朔、上弦、望、下弦の4種類の月相の時刻のみが公表されているし[5]、NASAによる月相の解説ページではそれらの中間の4種類を加えた8種類の月相が解説されている[6]。
主な月相
[編集]月齢との比較
[編集]月齢と月相は月の動きを日数またはそれに近似した数値で表現する点で共通している。したがって月相と月齢はおおむね連動する。しかし、「月齢カレンダー」などと称する出版物やウェブサイトでは一般的に月齢を数字で表記し月相を画像で描写していることもあり、世間一般では月相と月齢の混同がしばしば見られる。
月齢が朔の瞬間からの経過日数を示す時間的概念であるのに対し、月相は月の地球と太陽との位置関係を示す空間的概念と言える。
朔望月との関係
[編集]平均朔望月は約29.530589という端数であるため、カレンダーなどでは下記のような現象が見られる。
- 月齢 - 朔の瞬間を以て0としリセットするため、毎日1ずつ増加する数字が朔日(旧暦1日)またはその翌日に不規則に変化する。
- 月相 - 月相は28分割で表すが、この数は平均朔望月よりも約1.530589少ない。したがって前日と同じ月相が続く日が1か月あたり1日ないし2日発生する。
月相を平均朔望月の1周29.530589により近い周期で表せば月齢とより良く一致するが、1周を28としているのは4の倍数にすることによって満月と半月(上弦と下弦)を整数にするためである。このずれと、月の公転角速度が一定でないせいで、一般に月相と月齢は一致しない(月齢のほうが大きいことが多い)。たとえば、満月の月相は常に14だが、月齢はおよそ13.9〜15.6の範囲を変動する[7]。
計算する時刻
[編集]端数の処理
[編集]- 月齢 - 通常、小数点以下第1位まで求める。
- 月相 - 通常、黄経差を28等分した整数で表す。より詳細な数値が必要な場合は、黄経差を360°を一周とした角度やラジアンで表現し、例えば28等分の方法で月相0と月相1の中間を月相0.5と表現することは一般的でない。
時計の「ムーンフェイズ」
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時計の中には「月相を表示する小窓」を装備しているものがあり、「ムーンフェイズ」と呼ばれる。月齢は太陰暦の名残りであるが、月の引力による起潮力、天文時計では地球と月が共通の重心(太陽)を公転することによる慣性力が潮汐に及ぼす影響度合いも示し、漁業、海運、貿易などの分野で重要な指標となるほか、占星術でも使用される。
ムーンフェイズは、16世紀頃の置時計から見られはじめるが、18世紀の天才時計師アブラアム=ルイ・ブレゲが懐中時計のために開発した古典的機構では、両側に月の絵を二つ描いた円盤を59日周期で1回転させ、半円形を組み合わせた小窓によって円盤の約半分を表示して残りを隠す巧妙な機構になっている。円盤が1周する間に平均朔望月の約29.530589日周期に近似した29.5日周期で(旧暦)2朔望月分の月相を表現するため、この精度では約965日に1日の割合で時計の方が早くなる。[8]
その後、各メーカーが技術開発を進め、誤差を大幅に縮減したモデルが存在する。超高精度な機構を搭載したものでは、IWCのポルトギーゼ・エターナル・カレンダー(45,361,055年に1日の誤差)[9]、アンドレアス・ストレラーのソートレル・ア・リューン・パーペチュエル2M(2,060,757年に1日の誤差)、クリスティアン・ファン・デル・クラウーのリアルムーン・ジュール(11,000年に1日の誤差)[10]などがある。高精度化は、歯車の歯数を増やすことにより実現するが、最も精度の高いIWCのモデルでは、コンピューターシミュレーションを駆使して3つの中間歯車を備えた減速機構を開発、「最も精密なムーンフェイズの腕時計」としてギネスブックに登録されている。
実際の月相は、月を楕円弧状に光と影の部分に分けるが、「ムーンフェイズ」は月食と同様に円を円で隠すことで月相を表現している。月相0付近ではあまり違和感がないが、それ以外では実際の月相と「ムーンフェイズ」が表示する月相の形状は大きく異なる。この問題を解決する方法として、月の円盤を小窓ではなく時分針と同じ軸で回転させ、カージオイド型の円盤で隠す方法(ル・ローヌ[11](スイス)のヘドニア・ムーンフェイズ[12]、Ochs und junior(スイス)のムーンフェイズモデル[13]など)、半分を黒く塗った球体を横に回転させる方法(アーノルド&サンの「ルナ・マグナ」[14]、クリスティアン・ファン・デル・クラウーのムーンフェイズモデルなど)がある。ただし、これらは1朔望月で一回転させる必要があるうえ、構造が複雑になって厚みが増えるなどの問題があり、現時点では一般的ではない。
ちなみに、24時間計のバリエーションとして、ムーンフェイズに似た外観で、太陽と三日月を描いた円盤が24時間で1回転して昼夜を区別する「サン&ムーン」機能がある。
脚註
[編集]- ^ “Moon Age Today | Moonagetoday.org” (英語). 2025年10月17日閲覧。
- ^ “lunation” (英語). dictionary.cambridge.org (2025年10月15日). 2025年10月17日閲覧。
- ^ “Synodic month | astronomy | Britannica” (英語). www.britannica.com. 2025年10月17日閲覧。
- ^ “Lunar libration: what it is and how to photograph it” (英語). BBC Sky at Night Magazine (2025年5月14日). 2025年10月17日閲覧。
- ^ “令和 3年(2021) 暦要項”. 国立天文台. 2020年11月8日閲覧。
- ^ “What Are the Moon’s Phases?”. NASA. 2020年11月8日閲覧。
- ^ “暦Wiki/月の満ち欠け/月齢と満ち欠け - 国立天文台暦計算室”. 国立天文台. 2020年11月7日閲覧。
- ^ ムーンフェイズの機構と進化、代表的モデル - webChronos(2019年8月1日付 シムサム・メディア)
- ^ IWC「ポルトギーゼ エターナル・カレンダー」が“最も精密なムーンフェイズの腕時計”としてギネス世界記録を大幅に更新!(2024年7月7日付 webChronos)
- ^ [1] The 8 Most Accurate Moon Phase Wristwatches Today
- ^ Le Rhöne、ノーブルスタイリング(日本総代理店)
- ^ スーパームーンから、ル・ローヌ 「へドニア グランド ムーンフェイズ」へ、Watch media online、2020年4月8日
- ^ Moon Phase, Ochs und Junior
- ^ アーノルド&サンからの2021年 W&W新作「ルナマグナ」、Watch media online、2021年4月11日
関連項目
[編集]- 地球の満ち欠け ‐ 月面から見た地球の満ち欠け。

