月桂冠 (企業)

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月桂冠株式会社
GEKKEIKAN SAKE CO.,LTD.
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Gekkeikan head office.JPG
1993年に竣工した新本社
種類 株式会社
市場情報 非上場
本社所在地 日本の旗 日本
612-8660
京都府京都市伏見区南浜町247番地
設立 1927年昭和2年)5月15日
(株式会社大倉恒吉商店)(創業:1637年寛永14年))
業種 食料品
法人番号 2130001000050 ウィキデータを編集
事業内容 日本酒を中心とした各種酒類の製造・販売、化粧品・入浴剤の製造・販売、飲食事業
代表者 代表取締役社長 大倉治彦
代表取締役副社長 葛西正昭
資本金 4億9680万円
売上高 234億円(2019年度)[1]
純利益 11億9200万円
(2022年03月31日時点)[2]
純資産 316億6700万円
(2022年03月31日時点)[2]
総資産 444億8400万円
(2022年03月31日時点)[2]
従業員数 375名(2021年4月1日時点)
関係する人物 大倉恒吉(11代目当主)
大倉治一(12代目当主)
大倉敬一(13代目当主)
大倉弘 (月桂冠相談役)
和田義為(大倉恒吉商店取締役)
濱崎秀 (大倉恒吉商店取締役)
外部リンク 公式ウェブサイト
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月桂冠株式会社(げっけいかん)は、日本酒造メーカー、および同社が製造する日本酒の銘柄。日本酒を中心に各種の酒類を製造する。勝利と栄光を意味する月桂冠を由来として名付けられた。本社及び工場は京都府京都市伏見区に所在する。

概要[編集]

明治時代以降、急速に全国展開し、灘の白鶴酒造とともに、日本最大の酒造メーカーとなった。戦後、業界に先駆けて、一年を通して醸造可能な「四季醸造蔵」を建設し、大量の酒を供給することに成功したことでも知られる。コーポレートブランドコンセプトは「For Your Lifestyle Taste うるおいをあなたと」で、基本理念は「健をめざし 酒を科学して 快を創る」となっている。

近年は本業である日本酒の製造のほか、焼酎の製造・販売、ビールワイン、食品等の販売、日本酒を利用した化粧品入浴剤などの販売や医薬品開発なども行っている。清酒の製造で培った技術を利用し、近年では稲わらからバイオエタノールの特許技術を取得したり、花王との共同研究により、菌による染毛技術の特許を取得するなど、バイオ技術の面でも注目されている。

また、2014年4月には「冷凍鍋焼きうどん」で知られるキンレイ(旧法人)から食品事業を会社分割により譲渡して新法人による「キンレイ」を設立するなど新事業にも力を入れている。

特徴[編集]

月桂冠の酒樽の一例

創業が他業界と比べて非常に古いといわれる日本酒業界の中でも、月桂冠の歴史は古く、創業は1637年にまで遡る。1867年鳥羽・伏見の戦いでは、酒蔵などが被害を受けるものの、本宅が被害を受けずに済み、廃業を免れたという歴史的な経緯もある。明治時代以降は、全国的な清酒メーカーとして発展した。

数十年以上の長きにわたり日本酒メーカーのトップシェアを誇ってきた月桂冠であるが、2002年白鶴酒造に追い抜かれた。

京都における名門企業であり、伝統企業の国際組織である「エノキアン協会」(1981年結成 本部パリ 団体名は旧約聖書に登場するアダムの孫エノックから)に加盟している。協会への入会の条件として、「創業200年以上の歴史」、「同族経営」、「業績良好」の3条件を全て満たさなければならず、日本からの申請者で条件が満たせたのは月桂冠を含めて5社であった(他には法師虎屋岡谷鋼機赤福)。社長は代々大倉家から出される。

また、株式会社ではあるが、サントリー竹中工務店、日本のロッテコカ・コーラの日本法人P&Gの日本法人Googleの日本法人ヤンマー大日本除虫菊(金鳥)、興和佐藤製薬などと同様に上場していない企業としても有名である(現在東京証券取引所上場されている上場持株会社傘下の中核企業を含む)。堅実な経営を脈々と続けてきたことで知られ、一貫する経営方針やその経営内容は大企業でも参考にするものが多い。

ロゴは月桂樹の葉を環状にしたものが主流であったが、近年CMなどでは、月桂樹の葉を近代的に改良したロゴを使用している。かつては「お酒の王様・月桂冠」(1970年代頃)、「日本の酒・月桂冠」(1980年代頃から)というジングルが流れていたこともある。特徴的な商品名の筆文字は、「明治の三筆」と呼ばれた書家・日下部鳴鶴によるもの。

業界に先駆けて「月桂冠総合研究所」を設立したり、四季醸造蔵を業界ではじめて建設するなど、科学技術を駆使した大量醸造を可能にし、近代化を進めた酒造メーカーである。一方で、ごく一部ではあるが杜氏を中心とした伝統的な醸造も現在も行っていることで知られている。ただし、常勤の杜氏は1人だけであり、基本的には機械による大量醸造でコスト競争力のある製品を製造している。全国新酒鑑評会モンドセレクションで各蔵で金賞を数多く受賞するなど、一般的な「安酒」のイメージを拭うためのアピールを継続している。

Jリーグ京都サンガF.C.のオフィシャルスポンサーであり、また、近年は企業メセナなどにも積極的に関わるなどしている。本社のある京都市伏見区には、月桂冠大倉記念館があり、酒造りに関する文化財等を公開している。

米国へも比較的早い時期から進出し、現在では、米国内でのシェアは25%もある。現在では他社も進出し日本酒自体が現地で定着したため「Sake」または「Japanese Sake」と普通に呼ばれるようになったが、過去には「Gekkeikan」が日本酒の代名詞であった。また清酒需要のある韓国、中国へも進出し、海外展開を進めている。

なお、自社単独で厚生年金基金を保有する数少ない企業である。非上場のため退職給付会計等の影響が軽微なことが基金存続の理由と思われる。京都府下で他に厚生年金基金を保有する企業は株式会社イシダのみである。

沿革[編集]

月桂冠大倉記念館(左)、大倉家本宅(中央)、月桂冠旧本社(右)
  • 1637年寛永14年)- 大倉治右衛門により酒屋「笠置屋」として創業し、「玉泉(たまのいずみ)」の銘柄で酒を販売。屋号は、創業者の出身地に由来(現在の京都府南部の笠置町)する。
  • 1905年明治38年)- 11代目の大倉恒吉が月桂冠を銘柄名として採用。
  • 1910年(明治43年)- 駅でコップ付の酒を販売、月桂冠の名が知られるようになる。
  • 1927年昭和2年)-「株式会社大倉恒吉商店」を当時の紀伊郡伏見町に設立。
  • 1939年(昭和14年) - 清酒は公定価格の対象となり価格が固定化される[3]
  • 1944年(昭和19年)-「大倉酒造株式会社」に商号変更
  • 1981年(昭和56年)- 業界に先駆け、三増酒を全廃(菊正宗松竹梅が再開した現在では、大手で唯一の完全無糖化の蔵である)。
  • 1984年(昭和59年)- 創業200年以上の企業で構成されるエノキアン協会に加盟。
  • 1987年(昭和62年)-「笠置屋」創業350周年、会社創立60周年を機に、「月桂冠株式会社」に商号変更。
  • 1989年平成元年)- 米国月桂冠株式会社を設立。
  • 1995年(平成7年)- 業界初の200mlカップ酒「ザ・カップ200(上撰/佳撰)」を発売[4]。これ以降、カップ酒は大型化が進み、現在は200mlが主流になっている。
  • 1996年(平成8年)- 韓国月桂冠株式会社を設立。
  • 2002年(平成14年) - コーポレートシンボルを導入、「For Your Lifestale Teast うるおいを あなたと」のキャッチコピーを制定。
  • 2003年(平成15年) - 阪神・淡路大震災での損傷や老朽化により、永く醸造の主力であった北蔵地区での醸造を中止。以後は貯蔵庫として利用される[5]
  • 2007年(平成19年)- 上海駐在所を設立。中国進出。
  • 2010年(平成22年)- カップ酒「ザ・カップ200」を軽量化し、「エコカップ(上撰/佳撰/つき/糖質ゼロ)」を発売[6]。従来155gあった容器の重量を129gに軽量化し、容量は200mlから210mlに増量している。
  • 2011年(平成23年)- 中国に販売会社・月桂冠(上海)商貿有限公司を設立。
  • 2014年(平成26年)- 株式会社キンレイ[注 1]の食品事業部門を会社分割により譲受、新法人による株式会社キンレイを設立。北蔵地区の再開発のため近代化産業遺産の旧大倉酒造研究所および明治期の木造酒蔵などを解体[5]
  • 2015年(平成27年)- 月桂冠の環境への取り組みが、「第12回京都環境賞」の特別賞(企業活動賞)を受賞
  • 2017年(平成29年)- 日本酒初のプリン体低減特許製法で実現、「プリン体ゼロ」の商品を発売

主力商品[編集]

パック類[編集]

  • つき
  • 上撰さけパック
  • 佳撰グリーンパック
  • 辛口派
  • 甘口派
  • ひんやり冷酒
  • 味わい燗酒
  • すべて米の酒
  • 糖質ゼロ

カップ・壜[編集]

  • 月桂冠(特撰・上撰・佳撰)
  • 月桂冠(鳳麟特 純米大吟醸)

低温で約30日をかけ発酵 滑らかさと複雑さが絶妙[7]

  • エコカップ(上撰・佳撰・つき・糖質ゼロ)
  • キャップエース
  • プチムーン
  • ヌーベル月桂冠
  • 笠置屋
  • 鳳麟
  • 伝匠月桂冠
  • 生酒
  • 生貯蔵酒
  • にごり酒
  • ひんやり冷酒
  • レトロボトル 吟醸酒
  • Zipang(スパークリング清酒)
  • THE SHOT

化粧品[編集]

  • モイストムーン
  • しっとり酒風呂

梅酒・リキュール[編集]

  • キレイ梅酒
  • キレイ桃酒
  • 京のマッコリ
  • ほろどけシリーズ(もも・巨峰・りんご・さくらんぼなど)
  • プチムーン
  • みりん
  • 甘酒

健康食品[編集]

  • 超(スーパー)米ウコンプラス(健康飲料)

ドイツビール[編集]

  • ヴェルテンブルガー
  • ガッツ・アルトビア

ドイツワイン[編集]

  • グリューワイン赤
  • グリューワイン白
  • ペーター・メルテス
  • モーゼルラント

フランスワイン[編集]

  • リュック・ジャヴロー
  • アリアンス・テロワール
  • アリアンス・ロワール

スペインワイン[編集]

  • カペル・ヴィノス(サングリア)

所在地[編集]

本社[編集]

京都市伏見区南浜町247(〒612-8660)。 近くには黄桜(旧社名・黄桜酒造)や寺田屋黒田節発祥地記念札など、歴史的建造物などが多く建っている。

支店組織[編集]

  • 北日本営業部
    • 北海道支店(札幌市)
    • 東北支店(仙台市)
  • 東日本営業部
    • 首都圏支店(東京都中央区)
    • 関東甲信越支店(東京都中央区)
    • 首都圏業務用支店(東京都中央区)
    • 首都圏流通支店(東京都中央区)
    • 関東甲信越流通支店(東京都中央区)
  • 中部営業部
    • 東海支店(名古屋市)
    • 北陸支店(金沢市)
    • 中部流通支店(名古屋市)
  • 近畿営業部
    • 大阪支店(大阪市)
    • 大阪業務用支店(大阪市)
    • 京都支店(京都市)
    • 近畿流通支店(大阪市)
  • 中四国営業部
    • 中国支店(岡山市)
    • 四国支店(高松市)
  • 九州営業部
    • 九州支店(福岡市)
    • 九州流通支店(福岡市)
  • 広域流通部
    • 広域流通支店(東京都中央区)

蔵・工場[編集]

  • 物流センター
  • 昭和蔵
1927(昭和2)年建設。国内初の冷房付き鉄筋コンクリート造り2階建て。経済産業省の近代化産業遺産に指定されている[8]
  • 大手蔵
月桂冠の主力工場として稼働中。
1961(昭和36)年建設。日本で初めての四季醸造蔵。鉄筋コンクリート造り7階建て。
1973(昭和48)年には大手二号蔵を建設[8]
  • 総合研究所
1909(明治42)年、11代当主大倉常吉が酒造技術を科学的に研究するため、大倉酒造研究所を開設。1982(昭和57)年、創業345年(会社設立55周年)を記念して、大手蔵構内に規模を拡大して設置。1990(平成2)年、名称が月桂冠総合研究所と変更された[9]

海外拠点[編集]

  • 米国月桂冠
  • 上海月桂冠
  • 韓国月桂冠

博物館[編集]

月桂冠大倉記念館
昔の酒蔵を改造し伝統的な酒造工程やその用具などを展示する博物館。展示物には京都市の有形民俗文化財に指定されているものもある。館内ではプラムワインや吟醸酒などの試飲をするスペースがあり、また、成人の入館料はお酒のおみやげ一本つきというシステムである。近隣には、十石船の乗り場があり、春・秋のシーズンには、景色を楽しむ観光客で賑わいを見せる。

関連企業[編集]

  • (株)キンレイ
  • 多賀(株)
  • 松山酒造(株)  
  • 共同酒造(株)
  • 大倉産業(株)
  • 藤清(株) 
  • (株)大倉酒店 
  • (有)一寸木商店 
  • (株)京都アメニティ開発
  • (株)タカトー

資本参加[編集]

  • (株)伏見夢工房

受賞歴[編集]

全国新酒鑑評会
平成14酒造年 - 29酒造年[10]
  • 「月桂冠」金賞受賞 - 平成29年受賞

提供番組[編集]

テレビ番組[編集]

現在[編集]

過去[編集]

前身枠の火曜夜9時枠後半時代から数えて10年以上に渡り、番組スポンサーを務めた(1980年代前半まで)。

ラジオ番組[編集]

現在[編集]

ほか

過去[編集]

など多数

CM・イメージキャラクター[編集]

企業イメージCM[編集]

「京都・伏見 月桂冠」 京都の名所・旧跡の四季折々の姿と、同社製品の歴代のラベルが紹介される内容である。

商品CM[編集]

現在[編集]

いずれも、時代劇専門チャンネルのオリジナル時代劇『闇の狩人』とのタイアップCM。

過去[編集]

コラボレーション商品[編集]

  • 月桂冠酒器セット(カネミ美和)
  • 月桂冠冷酒コップ(カネミ美和)
  • 月桂冠菰型ぐい呑(カネミ美和)

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 旧法人のキンレイ(オリックスグループ)は外食事業に特化した企業として「KRフードサービス」と商号を変更。
  2. ^ 提供開始時は「大竹発見伝 ザ・ゴールデンヒストリー」(第1期)だったが、その後「ゴールデンリスナー会議室」を経て同(第2期)の途中で現在の提供コーナーへ移動した。
  3. ^ 編成の都合で番組が休止のときは振替特番のスポットでCMが流れる場合やスポーツスペシャル内にてCMが流れる場合もあった。
  4. ^ 2021年4月4日未明(4月3日深夜)の同番組内発言および提供読みより

出典[編集]

  1. ^ 月桂冠株式会社 会社概要
  2. ^ a b c 月桂冠株式会社 第95期決算公告
  3. ^ 砂糖、ビールなどに公定価格(昭和14年3月31日 東京朝日新聞)『昭和ニュース辞典第7巻 昭和14年-昭和16年』p153 昭和ニュース事典編纂委員会 毎日コミュニケーションズ刊 1994年
  4. ^ 月桂冠、業界初の200mlを9月上旬から発売 カップ市場シェア拡大へ」『日本食糧新聞』、1995年8月28日。2012年5月15日閲覧。
  5. ^ a b 姿消す京都・伏見の酒蔵風景 月桂冠、近代化遺産も解体」『京都新聞』、2014年8月8日。2014年8月9日閲覧。オリジナルの2014年8月8日時点におけるアーカイブ。
  6. ^ 新カップ酒、軽量容器で酒増量 月桂冠「エコカップ」新発売”. 月桂冠ニュース. 月桂冠 (2010年8月5日). 2011年11月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年5月15日閲覧。
  7. ^ 武者英三『日本酒完全バイブル』株式会社ナツメ社、2015年2月7日、225頁。 
  8. ^ a b 『日本の美しい酒蔵』 木下光他、株式会社エクスナレッジ、2018年、87頁。
  9. ^ 月桂冠総合研究所について”. 月桂冠. 2019年3月3日閲覧。
  10. ^ 独立行政法人 酒類総合研究所 -「全国新酒鑑評会 入賞酒一覧表」

関連項目[編集]

  • 明治屋(明治時代から販売の委託を行っていた)

外部リンク[編集]