晋山式

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曹洞宗の晋山式(2016年11月13日撮影)

晋山式(しんさんしき)とは、寺院に新たに命を受けた住職(新命)が晋山すること。その式を晋山式という。晋は「進む」こと、 山は「寺」のこと。新たな住持人(住持または住職に同じ)として、寺に入山すること。全ての宗派が晋山式を行うとは限らず、宗派によって異なる。

概要[編集]

晋山式とは、各寺院において、新たに住職となった僧(「新命方丈」ともいい、「方丈」とは住職の居室のことで、転じて、その居室にいる人という意味で、住職を方丈とも呼ぶ)が、その寺院に晋む(進む)こと。禅宗寺院の多くは山間部にあって山号を持ち、そして、寺院を山ともいうため、「山に晋む式」と書いて「晋山式」とゆう。簡単にいえば、住職交代式ということ。もともとは、「乗込晋山」といって、外部から招聘されて、その日、当日に初めて各寺院に入ることをいっていたが、最近では、たいがい、副住職や徒弟として、その寺院に住んでいながら準備を進めて、その山内で内移りをする略法を採っている[1]

現在の『行持軌範』[2]では、正式な晋山式として「乗込晋山法」と、一般的な寺院で行う場合の「晋山略法」とを示している。また、普段「晋山式」という場合には、「晋山略法」と、「晋山開堂法」とを指す。

浄土真宗では山号が用いられない為、「住職継承」という、これに対して、住職が退任することを「退董」(たいとう)、その際の儀式を「退董式」(たいとうしき)と言う。日蓮正宗(にちれんしょうしゅう)では、本山格である本門寺 (三豊市)(ほんもんじ)、下条妙蓮寺(しもじょうみょうれんじ)、定善寺(じょうぜんじ)のみ晋山式と言われるが、それ以外の寺院の儀式は「入院式」という。

晋山式(次第)の一例 (曹洞宗の場合)[編集]

  • 三門法語
新命方丈が三門(山門)に到着すると、香を焚いて仏道に契った言葉(法語)を唱えて、この三門をくぐる事への見識を述べます。
  • 大擂上殿
三門をくぐると、出迎えに来た僧侶に導かれて、太鼓が打ち響く中を本堂に入ります。
  • 仏殿法語
本堂の中央に祀られている本尊に、新任住職として挨拶を行います。
  • 土地堂法語
仏法と各寺院の建物を護持する神である招宝七郎大権修理菩薩の前にて、寺院の繁栄と檀信徒の家内安全や諸縁の吉祥ならんことを祈ります。
  • 祖堂法語
中国に禅の教えを伝えた達磨大師に法語を唱えます。
  • 開山堂法語
高祖道元禅師・太祖瑩山禅師・各寺院の開山・歴代の住職の尊像や位牌が祀られる堂に入り、挨拶します。
  • 拠室(こしつ)
各殿堂での行持が終わると、新命方丈は初めて自室である方丈の間に入ります。
  • 視篆(じてん)
寺院に伝わる数々の印鑑を受け取ると、印刻を確認し、実際に署名捺印する儀式を行います[1]

晋山開堂[編集]

各寺院は、当該地域社会の平和と発展を祈るための活動が行われる。そのため、新命方丈は、晋山と同時に本堂を広く開放し、地域の方々の信仰、修養の道場とする旨を宣言し、実際に、本堂(法堂)中央にある須弥壇上に登り、まず祈りを捧げる言葉や、報恩の言葉を、香を焚きながらお唱えし(これを香語という)、その式に参加している大勢の僧侶達と大問答を展開して、寺院開山以来の厳しい修行の型を示すものです[1]

晋山開堂式(次第)[編集]

  • 空座問訊(くうざもんじん)
新命方丈が出てくる前に、須弥壇上に迎えて尊い教えを受けることを願って、空座ながらも壇上に対して迎えの礼拝を行います。
  • 新命上殿(しんめいじょうでん)
太鼓が打ち響く中を、新命方丈が本堂に入ります。
  • 伝衣搭著
開山以来伝わる袈裟(伝衣)を著けます。
  • 新命登座
新命方丈は、説法(上堂)、問答を行うために、須弥壇上に登ります。
  • 拈香(ねんこう)
はじめに釈迦牟尼仏・高祖道元禅師・太祖瑩山禅師を供養し奉るための香を焚いて、その功徳をもって人々の幸せを祈願します。次に、各寺院の開山・歴代の住職に報恩の香を焚きます。次に、寺院開創に尽力してくれた開基、並びに檀信徒各家の先祖諸霊に供養し、各家の家門隆昌を願って香を焚きます。最後に、仏祖が伝えてきた大いなる正法を、自分に伝授させてくれた師匠(本師)に対して、恩に報いる焼香をします。
  • 問訊(もんじん)
問答に先立って、問答の開始を願う礼拝を行います。順番は、まず新命方丈に付き従っている五人の侍者(五侍者)が問訊し、続いて、本堂の大間に立っている東西の両班が問訊します。
  • 白槌(びゃくつい)
白槌師が槌砧という鳴器を打ち、「法筵龍象衆、当観第一義」などの句を述べて問答開始を宣言します。
  • 垂語(すいご)
新命方丈は話のきっかけとなる言葉を述べて大衆を誘い、ここに大問答が開始されます。
  • 問答
次から次に大衆が前に出て、新命方丈に対し、仏道の真意や、和尚としての境涯を問う問答を行います。
拈香・結語
問答の終わりに、それまでの祖師方が残された行実を語り、その跡を偲びながら、一連の流れの結びとします。
  • 白槌
白槌師が槌砧を打って、「諦観法王法、法王法如是」と唱えて、問答終了を宣言します。
  • 下座(げざ)
新命方丈は須弥壇から下ります。
  • 祝辞・祝電
  • 祝拝
堂内にいる僧達が、説法・問答が円成したことを祝して、礼拝します。
  • 散堂
終了したので、各自、本堂から出て、自らの居室に帰ります[1]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 『曹洞宗 晋山式』公式サイト・曹洞禅ネット - [1]
  2. ^ 明治22年に刊行された『洞上行持軌範』「例言」によると、江戸時代には『椙樹林清規』、『僧堂清規』、『永平小清規』が用いられており、結果、各地で様々な法式で行持が行われていたという。そこで、明治期に入り法式を統一しようとして、当時の曹洞宗務局が作ったものである。この『行持軌範』はあらゆる法式差定に於いて拘束力を持つ。- 『つらつら日暮らしWiki(曹洞宗関連用語集)』[2]

関連文献[編集]

  • 曹洞宗務局編『曹洞宗務局普達全書』「甲事十四号 能本山貫首晋山式礼ノ事」曹洞宗務局文書課、明治34年、国立国会図書館蔵書、2016年9月1日閲覧。
  • 六大新報社『六大新報』「晋山式次第」六大新報社、1960年7月、国立国会図書館蔵書。
  • 下泉全暁著『真言宗晋山式次第』青山社、2010年、国立国会図書館蔵書。

関連項目[編集]

  • 日本の寺院一覧
  • 曹洞宗