時課
時課(じか、希: ὧραι, 羅: Liturgia Horarum, 露: часы , 英: hours)とは、キリスト教(カトリック教会・正教会)における特定の典礼・奉神礼を指す用語。
- 狭義 - 「時課」の名を持つ奉事である一時課・三時課・六時課・九時課(1時課・3時課・6時課・9時課)。
- 広義 - 時を定めて行われる日々の祈りの全て。
本記事では広義の時課全体について詳述する。
カトリック教会
[編集]概要
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カトリック教会には、伝統的な時課と、第二バチカン公会議後の典礼改革による「新しい時課」の二種類の時課がある。伝統的な聖務日課は教会法上一度も廃止されたことはなく、聖伝主義の共同体では実践されているものの、主流派である非聖伝主義の共同体では「新しい時課」が実践されている。
| 旧式 | 時間の目安 | 新式 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 朝課(ちょうか) | Matutinum | 夜中(0時頃) | 読書課(どくしょか) | Officium Lectionis | ||
| 賛課(讃課、さんか) | Laudes | 日出(6時頃) | 朝の祈(あさのいのり) | Laudes Matutinas | ||
| 小時課(しょうじか) | 一時課(いちじか) | Horae Minores | Prima | 6時 | 廃止 | |
| 三時課(さんじか) | Tertia | 9時 | 昼の祈(ひるの…) | Hora Media | ||
| 六時課(ろくじか) | Sexta | 12時 | ||||
| 九時課(くじか) | Nona | 15時 | ||||
| 晩課(ばんか) | Vesperae | 夕刻(18時頃) | 夜の祈(よるの…) | Vesperae | ||
| 終課(しゅうか) | Completorium | 就寝前(21時頃) | 就寝前の祈(しゅうしんまえの…) | completorium | ||
朝課は夜の定時課(officium nocturnum)を、その他は昼の定時課(officium diurnum)をなす。
時間についての注意
[編集]古典的な時課は、ローマ式の昼の時間配分(夜明けを起点に第1時=およそ6時、第3時=9時、第6時=12時、第9時=15時)を背景にしている。したがって「一時課=朝の早い時間」「三時課=午前中」「六時課=正午頃」「九時課=午後」「晩課=夕刻」「終課=就寝前」という概形が基本である。
ただし、典礼は「理想(各時課を本来の時刻に)」と「義務充足(24時間内に全課を)」を区別する。1960年版『ローマ聖務日課書』は、各時課は本来の時刻に近いほど良いと明言しつつも、義務としては二四時間のうちに全てを唱えれば足りるとする。さらに運用上の要点として、
- 朝課:前日午後2時以降なら前倒し可。
- 賛課:朝に。
- 晩課:正午以後に。
- 終課:「一日の終わりの最後の祈り」として置くのが非常に適切。
という骨格が示されている。
各課の内容
[編集]朝課
[編集]朝課は、かつて修道院で日の出前に唱えたので徹夜(Vigiliae)とも呼ばれる。朝課は宵課(よいか、羅: Nocturnus)と呼ばれる単位で構成され、主日・一級祝日には三つ、平日・小祝日には一つの宵課を行う。三つの宵課はそれぞれ第一宵課、第二宵課、第三宵課と呼ばれる。宵課は通常、詩篇(Psalmi)、読書課(Psalmi)、応唱(Responsorium)から成る。詩編では、複数の詩編が唱えられ、それぞれに交唱(アンティフォナ)がつく。読書課では聖書、聖人伝、教父の説教(ホミリア)を朗読する(Sacra Scriptura, Patres, Homilia)。答唱(Responsorium)では、 読書の後にその内容を深めるための歌(答唱)が挟まれる。
聖木曜日、聖金曜日、聖土曜日の朝課は特にテネブレと呼ばれ、15本の蝋燭を一本ずつ消していく儀式を伴う。キリストの受難と死に向かう暗闇を象徴する、旧聖務日課の中でも最も劇的な典礼の一つである。
朝課の流れは以下である。
- Domine, labia mea aperies ...:この際、親指で唇に十字を記す。
- 招詞(Invitatorium):詩篇第94篇(Venite exultemus)をその日に応じた交誦を交えて繰り返す。
- 詩篇
- 読書課
- 応唱
祝日や主日(降臨節や四旬節を除く)の最後には、「テ・デウム」が歌われる。
賛課
[編集]- Psalmi breves
- Capitulum
- Responsorium breve
- Oratio
- Lectio Martyrologii (in usu tradito)
小時課
[編集]- Deus in adiutorium
- Hymnus
- Tres Psalmi
- Capitulum
- Responsorium breve
- Oratio
晩課
[編集]- Quinque Psalmi
- Capitulum
- Hymnus
- Magnificat
- Oratio
終課
[編集]- Iube, domne, benedicere
- Examen conscientiae
- Psalmi (ex. 4, 90, 133)
- Nunc dimittis
- Oratio
- Antiphona B. Mariae Virginis - Alma Redemptoris Mater / Ave Regina Caelorum / Regina Caeli / Salve Regina 等。
正教会
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概要
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正教会において時課とは、時を定めて行われる奉神礼である昼夜奉事(ちゅうやほうじ)のすべてを指す。狭義には昼夜奉事のうち、時課との名を持つ奉事(一時課・三時課・六時課・九時課)のみを指す。それぞれ時を定めて行われ、それぞれ意義が与えられている。聖詠・讃詞・カノン・連祷などから構成されている。
時間
[編集]旧約時代の伝統を維持しているユダヤ教と同じく、正教会の一日は日没から始まる(殆どの他教派でも同様)。創世記第1章に「夕あり、朝あり、是れ一日なり」とあることによる[1]。例えば一般でいう土曜日の日没時は日曜日の始まりと位置付けられ、一般でいう日曜日の日没時は月曜日の始まりと位置付けられる。12月25日(ユリウス暦使用教会では1月7日に相当)のクリスマスが、前日の12月24日(ユリウス暦使用教会では1月6日に相当)の晩であるクリスマス・イヴに始まるのも、こうした日没から一日が始まる教会暦の方式に由来する。
聖体礼儀はこうした昼夜奉事とは別枠のものとして扱われる。これは、聖体礼儀ではイイスス・ハリストス(イエス・キリスト)の復活が中心に記憶されるが、復活の時刻は神秘に属していて画定されていないことによる。福音書にはハリストスが復活した瞬間についての記述は存在せず、聖伝でもそれは明らかにされていない。
昼夜奉事の一覧・意義
[編集]| 正教会における昼夜奉事一覧 | ||
| 名 | 時刻の目安 | 記憶するテーマ |
| 晩課(ばんか) | 午後6:00 | 天地創造・陥罪・ハリストス(キリスト)の受難に際し血と水が流れたこと ・アリマフェヤのイオシフの記憶 |
| 晩堂課(ばんどうか) | 午後9:00 | 睡眠前の痛悔・ハリストスの葬り |
| 夜半課(やはんか) | 午前0:00 | 最後の審判・ゲフシマニヤの祈り・ハリストスの逮捕(受難の始まり) |
| 早課(そうか) | 午前3:00 | 起床への感謝・神への讃美・ユダヤ人によるハリストスに対する裁判 |
| 一時課(いちじか) | 午前6:00 | 異邦人(ピラト)によるハリストスに対する裁判 |
| 三時課(さんじか) | 午前9:00 | 聖霊降臨(せいれいこうりん)、ピラトの手洗い、ハリストスの茨の冠と鮮やかな衣 |
| 六時課(ろくじか) | 正午 | ハリストスの十字架刑、十字架上のハリストス |
| 九時課(くじか) | 午後3:00 | ハリストスの死 |
奉事の実施
[編集]時課全てを行う事は、一定以上の規模の修道院以外ではまず行われない。また修道院でも、8つそれぞれを目安の時刻通りに区切って行うのではなく、幾つかの課をまとめて行う事が普通である。
主日(日曜日)および大祭(十二大祭など)にあたっては、晩課・早課・一時課をまとめてこれを盛儀とした徹夜祷と呼ばれる祈りが行われる。街の教会では大祭などの限定された祭日にのみ公祈祷が行われる事が多く、結果的に、徹夜祷と、三時課・六時課を伴う聖体礼儀が行われる頻度の方が高いことが多い。
脚注
[編集]参考文献
[編集]カトリック教会
[編集]- Breviarium Romanum (editio 1962)
- Institutio Generalis Liturgiae Horarum.
- 上智大学・独逸ヘルデル書肆共編『カトリック大辞典』富山房、昭和15年
正教会
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関連項目
[編集]カトリック教会
[編集]正教会
[編集]- 時課経 - 正教会の時課に用いられる祈祷書
- 聖三祝文 - 時課で必ず唱えられる祈祷文
- 聖金口イオアン聖体礼儀
- 祈祷書 (正教会)
- 六時礼讃