旧司法試験

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旧司法試験(きゅうしほうしけん)は、日本の法曹資格試験である司法試験のうち、司法試験法の2002年(平成14年)改正附則7条2項に基づき、2006年(平成18年)から2011年(平成23年)までの6年間、同改正法による新たな司法試験と並行して行われた従前の司法試験である(同附則7条2項)。これに対し、2006年(平成18年)よりも前に行われた司法試験は、旧法の規定による司法試験と称され、厳密には旧司法試験とは区別される(同附則10条)。しかし、一般的には両者をあわせて旧司法試験とも称するので、以下、そのような俗称としての「旧司法試験」について説明する。

概説[編集]

裁判官検察官弁護士法曹三者になろうとする者に、必要な学識とその応用能力を有しているかどうかを判定するための試験であり、合格により司法修習生となる資格を得る。第二次世界大戦以降の日本において実施されてきた司法試験の試験内容をほぼ継承するものであるが、2002年(平成14年)の司法試験法の改正により、2011年(平成23年)の試験を最後に[1]新司法試験へ移行して、廃止された。

司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成14年法律第138号)(以下「改正法」)施行前においては、改正法による改正前の司法試験法を根拠として、改正法施行後においては、改正法附則7条1項を根拠として行われていた。

現在の新司法試験と違って、その異常なまでの高度な内容と合格率の低さ、合格までに要する年数の長さから、「国家試験の最難関」「現代の科挙」などと言われ、2005年平成17年)以前においては、法曹裁判官検察官弁護士)になろうとするものは、原則としてこの試験を受けなければならなかった。

制度の概要[編集]

試験は2次・4段階よりなる。

第一次試験[編集]

第一次試験は、幅広い科目からなる教養試験であり、短答式試験および論文式試験からなる。

年齢性別・資格不問だが(高校生が一次試験を通過し話題になったことがある)、短大以外の大学を卒業又は2年以上在学し、一定の単位(具体的には一般教養年次修了。32単位以上)を取得していれば生涯免除される。このため、多くの受験者は二次試験からの受験となる。また、一次試験に一度合格してしまえば、その後は生涯免除となる。

合格者には社会保険労務士試験の受験資格が与えられる。つまり短期大学卒業同等とみなされる。

第二次試験[編集]

第二次試験は法律的知識を問うための試験であり、筆記試験(短答式)・筆記試験(論文式)・口述試験の3段階(後述)からなる。一般的に「司法試験(旧司法試験)」というと、この第二次試験のみを指すことが多い。

第二次試験考査委員については下記#外部リンク参照。

短答式試験[編集]

短答式試験は例年5月の第2日曜日(母の日)に、憲法民法刑法の3科目について、60問(各科目20問ずつ)、3時間30分通して行われる。5肢からの択一式試験でマークシートを用いて行われる試験である。そのため通称択一式試験とも呼ばれる。

一定の点数を獲得したものを合格させるタイプの試験ではなく、論文式試験の受験者を限定する趣旨(それゆえ、1955年までは短答式試験はなく論文式試験からのスタートであった)での競争試験であることから、年によって難易度も大きく異なり、求められる正答率は7割弱から8割程度まで変動する。

短答式試験は、前年度合格したとしても翌年の受験免除等の制度がないため、論文式試験に合格するまでは前年度の短答式試験合格者、合格経験者であっても再度受験の必要があり、前年の短答合格者が落ちることも珍しくない。

なお、後に述べる論文式試験・口述式試験とは異なり、六法等の試験中の参照物は認められない。

論文式試験[編集]

論文式試験は、7月第3月曜日(海の日)と、その前日の二日間にわたり、初日:憲法民法商法、二日目:刑法民事訴訟法刑事訴訟法の各科目につき、それぞれ2題ずつ、制限時間は2時間で、文章にて解答する形式で行われる(選択科目が存在した時代は三日間掛けて行われていたが、制度変更に伴い廃止された)。 問題の傾向としては、基本的な知識をダイレクトに問われたり、それをベースとして具体的な事案に則しての応用力が問われたりする。

参照物として、「旧司法試験用法文(2005年以前では司法試験用法文)」とよばれる最小限の条文のみが記載された小型六法が貸与される。不正受験防止のため、この法文の冊子は各科目試験終了ごとに回収されるが、論文式試験の全日程終了後は持ち帰ることが出来る。

過去には、法律選択科目(行政法破産法刑事政策国際公法国際私法労働法から1科目選択)や教養選択科目(経済原論心理学政治学社会政策経済政策会計学財政学から1科目選択)も試験科目として存在していた。

口述試験[編集]

口述試験は、論文式試験の合否発表の二週間ほど後である10月下旬の連続した3日間に、千葉県浦安市にある「法務省浦安総合センター」にて、憲法、民事系(民法民事訴訟法)、刑事系(刑法刑事訴訟法)の計3科目について面接方式(「主査」・「副査」とよばれる試験官2人に対し回答者1人)で行われる。試験時間は、憲法は15分 - 20分、民事系・刑事系は30分 - 40分が標準的と言われるが、憲法で30分近く、民事系・刑事系で50分近く掛かることも珍しくない。

質問の内容は一般に、まず条文・定義・その他の基本的知識を問うことから始まり、具体的事例を想定してその場面での解釈を問われることが通常である。場合によっては、文献等でこれまでに余り論じられていない内容を問い、その場での柔軟な法的思考を問うような質問に到ることがある。

その場に「司法試験用法文」が用意されているが、許可を得ないと参照することはできず、質問の内容によっては参照を許可されない場合もある。

受験人数および受験特例制度[編集]

旧来の司法試験における各試験の受験者は、時代の変化や制度の変更とともに増加し、2005年平成17年)までは概ね、短答式:3万人 - 4万5千人、論文式:7 - 8千人 (1/7)、口述:1500人 (1/5) であった(新司法試験開始の初年の2006年においては、短答式:約3万5千人、論文式:約4千人弱)。なお、論文式試験に合格した者は、その年の口述試験に合格できなくても、その翌年に限り、筆記試験(短答式・論文式)の免除を受けることができる。

合格発表以降[編集]

最終合格発表は、例年11月上旬から中旬までの間になされる。合格者は、その翌年以降の4月から、司法修習生として、最高裁判所付属の司法研修所埼玉県和光市)で3ヶ月間の研修を受けた後、全国に散らばり1年間の実務研修を受ける。実務研修は、民事裁判刑事裁判検察弁護の4ヶ所を約3ヶ月のタームで回る。その後、司法研修所に戻り再度研修を受け、試験(通称「二回試験」)を受けこれに合格すれば法曹となる資格を得る。司法研修制度も改革の中で短縮の方向にあり、以前は1年6ヶ月であった研修期間が2006年度(平成18年度)から1年4ヶ月に短縮された(新司法試験合格者向けの司法修習は1年)。

司法試験の歴史[編集]

  • 1949年(昭和24年) - 制定当初の司法試験が、1949年(昭和24年)5月31日に司法試験法が公布され、旧高等試験司法科試験を廃止した上で始まった。初回の合格者数は265人、合格率(対出願数)は10.31%であった。
  • 1954年(昭和29年) - 昭和28年法律第85号による改正法(第1次改正)による試験制度の変更
    • 第二次試験の筆記試験・口述試験における商法が必修化されるとともに、筆記試験における行政法が選択科目化される。
  • 1956年(昭和31年) - 第二次試験の筆記試験に短答式試験(7科目)を導入
  • 1959年(昭和34年) - 昭和33年法律第180号による改正法(第2次改正)による試験制度の変更
    • 筆記試験(短答式試験) - 憲法、民法、刑法の3科目に科目削減
    • 筆記試験(論文式試験) - 試験科目が以下のように変更
      1. 憲法
      2. 民法
      3. 商法
      4. 刑法
      5. 民事訴訟法・刑事訴訟法のいずれか1科目選択
      6. 法律選択科目 - 民事訴訟法・刑事訴訟法・行政法・破産法・労働法・国際公法・国際私法・刑事政策の8科目から1科目選択(民事訴訟法及び刑事訴訟法は、5において選択しなかった科目に限り、選択可能)
      7. 教養選択科目 - 政治学・経済原論財政学会計学心理学経済政策社会政策の7科目から1科目選択
    • 口述試験の科目は、論述試験科目と同じ
  • 1962年(昭和37年) - 合格者数がこのころから500人前後(446~554人)に固定化する
  • 1991年(平成3年) - 長らく500人前後に固定化されていた合格者数が、このころから増加し始める
  • 1992年(平成4年) - 平成3年法律第34号改正法(第3次改正)による試験制度の変更
    • 教養選択科目の廃止
  • 1996年(平成8年)-2003年(平成15年) - 平成3年法律第34号改正法により導入された、受験回数から3回以内の受験者を論文式試験で特別枠(約200人)を設けて合格させる通称「丙案」制度が実施された。
  • 1999年(平成11年) - 合格者数が1000人に。
  • 2000年(平成12年) - 平成10年法律第48号改正法(第4次改正)による試験制度の変更
    • 現在の旧司法試験と同じ科目配置になる。 - 法律選択科目の廃止・民事刑事両訴訟法の必修化・商法の口述試験の廃止
  • 2006年(平成18年) - 平成14年法律第138号改正(第5次改正)による試験制度の変更
    • 新司法試験の実施開始。旧司法試験は経過措置として5年間(口述試験は2011年(平成23年)まで)実施されることになり、旧司法試験の合格者は減少傾向となる。
  • 2010年(平成22年) - 旧司法試験最後の短答式試験および論文式試験を実施。
  • 2011年(平成23年) - 最後の旧司法試験(口述試験のみ)を実施(合格者6名[2])して、制度廃止。

資料・データ[編集]

大学別合格者数一覧[編集]

  • 昭和24年(1949年)~平成22年(2010年)における旧司法試験大学別合格者数一覧[3][4]


【旧司法試験合格者数】

1位東京大学(6537人) 2位中央大学(5484人) 3位早稲田大(4205人) 4位京都大学(2938人) 5位慶應義塾大学(2071人)

6位明治大学(1108人) 7位一橋大学(1003人) 8位大阪大学( 797人) 9位東北大学( 757人) 10位九州大学( 640人)

11位関西大学( 591人) 12位名古屋大( 561人) 13位日本大学( 521人) 14位同志社大( 517人) 15位立命館大( 436人)

16位神戸大学( 425人) 17位北海道大( 413人) 18位大阪市大( 351人) 19位上智大学( 335人) 20位法政大学( 321人)

【司法試験合格者数首位獲得回数】

① 東京大学 38回(昭和24、25、46、47、49~56、59~63、平成1~16、18~22)

② 中央大学 22回(昭和26~45、48、57)

③ 早稲田大学 3回(昭和58、平成16、17)

※平成16年は東京大学、早稲田大学が首位タイ

その他の特筆事項[編集]

  • 特別合格枠制度(いわゆる丙案)
2009年度の結果は、合格率(対出願数)0.49%、合格者の平均年齢29.48歳であった(なお、同年度の新司法試験は、合格率(同)21.00%、合格者の平均年齢28.84歳である)。多くの受験生が大学卒業後5年程度を受験勉強のために費やすこととなっている。合格者の若年化を図るため受験回数による特別合格枠(通称「丙案」、受験開始から3年までの受験生を優先的に合格させる)などを試みたが、受け控えが増えたため効果は一時的なものだったとされている。なお、合格者数全体を増加する措置が取られたことに伴い、優勢合格枠を定める丙案は2004年以降廃止されている。
  • 新司法試験との併行実施
前述のとおり、法曹養成を目的とした法科大学院の創設と併せて2006年度より新司法試験が開始されたため、2011年まで(2011年の旧司法試験は、前年の口述試験に不合格であった者のみが対象の口述試験のみ実施)は新司法試験と旧司法試験とが併行して行われることになる。なお、法科大学院生が旧司法試験を受験した場合、修了前2年間の旧司法試験の受験や修了後の旧司法試験の受験も受験回数の制限対象となる。新司法試験と旧司法試験を同じ年度に受験することもできない。新司法試験の受験経験者で新司法試験の受験資格を喪失した者は、旧司法試験の受験資格も喪失する。これらの措置は、あくまで旧司法試験は法科大学院に諸般の事情により進学できない者に対する経過措置であることに由来するものである。
  • オンライン出願
2006年(平成18年)の第2次試験からは、オンライン申請システムを利用することにより、インターネット経由で出願ができた。この場合においては、受験手数料が400円割安となる(通常11,500円→11,100円)。
  • 1994年(平成6年)には史上初めて、専門学校の学生による最終合格があった。

脚注・出典[編集]

  1. ^ 短答式試験・論文試験は2010年(平成22年)が最後。2011年(平成23年)は、口述試験再受験者のための口述試験のみが行われた。
  2. ^ 平成23年度旧司法試験第二次試験合格者受験番号
  3. ^ 法務省広報
  4. ^ 法務省:旧司法試験の結果について

関連項目[編集]

外部リンク[編集]