日産・パトロール

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パトロールPatrol)は、日産車体が製造、日産自動車が販売している四輪駆動方式を主とした自動車である。

日本国内では1980年昭和55年)から2007年平成19年)まで日産・サファリの名称で販売されていたが、その後は日本国外専売車となっている。

概要[編集]

初代 4W60型系 (1951年 - 1960年)[編集]

日産・パトロール(初代)
4W60型
4W61型 パトロール
メッキグリルが採用された、通称「鉄仮面」
NissanPatrol4W61.jpg
販売期間 1951年 - 1960年
乗車定員 2 / 5名
ボディタイプ 2ドア ソフトトップ
エンジン A(NA)型
水冷 直6 SV ガソリンエンジン
3,670cc
駆動方式 4WD
変速機 3速MT + 1速TF
サスペンション 前:リジッドアクスル
+ 半楕円リーフスプリング
後:リジッドアクスル
+ 半楕円リーフスプリング
全長 3,650 mm
全幅 1,740 mm
全高 1,720 mm
ホイールベース 2,200 mm
車両重量 1,500 kg
後継 60型系パトロール
-自動車のスペック表-
4W61型用C(NC)型サイドバルブエンジン
同エンジン番号打刻

1951年昭和26年)9月、試作車が完成。同年に行われた警察予備隊の要請による小型トラックの競争入札に加わり、ウィリスジープライセンス生産車である三菱・ジープに敗れ、その後、民需の道に活路を見出した経緯はトヨタ・ジープBJ型(以下BJ型)と同様である。

車両の構成もBJ型と非常に近く、はしご形フレームに、前後リーフリジッドサスペンションと、大型トラック直列6気筒ガソリンエンジンを組み合わせる手法を採っている。エンジンは3.7 LのA型系(NA)で、基本型の最大出力は82 psであったが、程なくNT85(日産トラック85)型の通称を持つ、85 psのものに変更された。積載量はジープの1/4トンに対し、1/2トンと大きく、車両重量のみでも5割近く大きいが、タイヤサイズは6.00-16でジープと同じであり、プライ数のみが異なる。ホイールは4.5×16で5穴である。

駆動系は3ポジション(4WD・ニュートラル・2WD)のトランスファーを介して動力を分配し、プロペラシャフトでフロントデフに伝達するパートタイム4WDで、リアへはトランスファーのメインシャフトと同軸でプロペラシャフトが伸びる、フロントオフセット・リアセンタースルーのドライブレイアウトとなる。副変速機を省略した構成は、やはり大排気量トルクの大きなエンジンを持つ、BJ型と同様である。この種の車両としては重要となる、ウインチングなどの各種作業に対応するため、PTOの装備も可能となっている。

トヨタとの違いはフロント周りで特に顕著で、BJ型は長いエンジンをほぼフロントアクスル後方(フロントミッド)に収めるが、4W60型ではアクスルにオーバーハングする形を採っており、全長に対する有効スペースは僅かながら大きい。そのため、フロントデフとの干渉を防ぐため、エンジン搭載位置はやや高くなっており、オイルパンは薄く、フロントデフキャリアにも「逃げ」がある。また、両車のエンジンが直列6気筒であることも共通だが、トヨタ・B型シボレーのコピーで4ベアリング・OHVであったに対し、日産・NA型は戦前に米グラハム・ペイジ(英語版)から原設計を買い取って作られた7ベアリング・サイドバルブである。

フロント周りのデザインは、BJ型がフェンダー上に外付けした前照灯ダッジ・ウェポンキャリア風であったのに対し、4W60型はラジエータカバー内蔵型でジープMB / GPWに近く、前照灯の向きを反転させ、整備灯とするアイディアもそのまま採用された。唯一、水平方向としたラジエータカバーの長穴に、かろうじてオリジナリティーが見て取れる。エンジン高の関係から、ボンネット全体はジープはもとよりトヨタ・ジープBJ型のそれに比べても高く、量産型では干渉を防ぐため、フードの中央はさらに一段高くされた。

主に国家地方警察に納入された経緯や、無線車が設定されていた点もBJ型と同様である。

組み立ては車体メーカーに委託され、資本提携を開始した新日国工業(現・日産車体)の他、生産が本格化した4W61型からは高田工業も参加している。

1955年(昭和30年)?には改良型のB型(NB)エンジンを得て、4W61型となる。民間用としてふさわしいデザインへの試行も行われ、エンジンフード中央が一段と高くされたほか、平面であったラジエターカバーが中折れ形になり、メッキの装飾も加えられた。その見た目から「鉄仮面」のあだ名がつけられたが、これにもジープワゴン / ジープトラックの強い影響が見られる。当時、日産と新日国工業はジープの顔を持つ乗用車として異彩を放ったダットサン・スリフト(節約・倹約の意)の生産も行なっており、進駐軍と共に上陸したジープが日本の工業界に与えた衝撃の大きさがうかがえる。また、フロントシートがセパレートから2 + 1のベンチシートとなり、インストゥルメントパネルの意匠も変更され、センターメーターとなる。

1958年(昭和33年)10月、エンジンの排気量が4.0 Lに拡大されたC型(NC)となり、4W65型となる。

1959年(昭和34年)、C型の発展型であるOHV4.0 LのP型(160系サファリ登場の際に一部改良が行われP40型と改称)が搭載され、型式が4W66型となる。P型の名は、主に搭載される「Patrol」にちなんだものと言われ、1987年(昭和62年)にTB42型が登場するまで、パトロール / サファリに使われ続けているほか、陸上自衛隊向け「3/4tトラック」(Q4W70型系)とその民生用の4W70型系「キャリヤー」にも採用された。

2代目 60型系 (1960年 - 1980年)[編集]

60型系パトロール ショート
3本ワイパーと独立したターンランプ/クリアランスランプに変更されているが、ベースは1971年モデル
60型系パトロールハードトップ
LK60型(Lは左ハンドルの意)
60型系ファイヤーパトロール
3本ワイパーとフロントフェンダーエクステンション、消防車のみの前照灯間隔拡幅が特徴の末期モデル

1960年(昭和35年)10月、モデルチェンジ。先代のジープ亜流を脱し、ランドローバーSr I - Sr IIA にも通じる、大きな箱形フロントフェンダーを持つスタイルへ変更される。

トヨタ・ジープBJ型の後継であるランドクルーザーは、1972年(昭和47年)からステーションワゴンを別型式(別系列)としたが、パトロールはホイールベースや車型に関わらず、全てが同じ型式系列であった。

消防用シャーシは「ファイヤーパトロール」の名で販売され、山間部積雪地にとどまらず、大排気量エンジンを生かしたA2級ポンプの放水能力を買われ、広く全国に配備されていた。ファイヤーパトロールには、前輪の駆動装置を省いたニ輪駆動仕様があり、4×4のバッジ、トランスファーレバー、副変速機レバー、フロントアクスルのデフがないことが識別点となる。一方、ポンプへの動力を断切するPTOレバーはすべてのファイヤーパトロールに備わる。

これとは別に、通常の幌型パトロールも消防指揮車として、都市部を含む多くの消防署に配備されていた。

1980年、三代目パトロール(日本名;160型系「サファリ」)の発表に伴い、生産終了となった。

2000年代には消防署配備の車両は殆どがキャブオーバー車に更新され、その後は山間地や降雪地の消防団でもキャブオーバー車の配備が進み、後継のサファリ消防車やランドクルーザー消防車など、ボンネット型消防車の採用は減っていった。また、途上国への中古車輸出ルートができたことで、国内の旧い四輪駆動車や消防車は急速に数を減らし、ファイアーパトロールは限られた消防団と事業所(企業内)の自衛消防組織の配備車や、旧車愛好家が所有する程度しか日本国内に残存していないと推測される。

ホイールベース / ボディー
  • スーパーロング:ホイールベース2800 mm
    • バン
      • VH60
    • 消防用シャーシ ファイヤーパトロール
      • FH60
エンジン

PF型エンジンは、標準のP型エンジンに消防仕様として以下のような変更点が見られる。(比較参考にしたのは1975年式消防車と1971年式標準車)

  • 運転席計器盤に、上記のガバナーから駆動される機械式タコメーターが設置されているが、これには回転数表示のほか、エンジンメンテナンスの目安となる積算計が装備されている。この積算計は建設機械等で一般的な「時間」を基準としたアワーメーターではなく「累計回転数」であるのがユニークである。
  • 運転席計器盤に油温計が設置されている、この為オイルパンには油温センダが取り付けられている。
  • オルタネーター(発電機)も標準車の35 Aから45 Aに強化され、それに伴い、運転席計器盤に装備のアンメーター(電流計)もスケールの大きなものに変更されている。
  • 外部電源による冷却水(寒冷地仕様など一部の車両についてはエンジンオイル用も)の保温用ヒーターが取り付けられている。これは現在の車と違い、これらの装備がない場合、夏季であっても暖機運転が完了するまで息つき等を起こして、まともに走ることがままならないという事情から、即動を要求される消防車では必須装備であった。
  • 消火作業中は走行風による冷却が期待できないことから、放水用ポンプから導いた水を用いた水冷式エンジンオイルクーラーと、サブラジエターを追加装備している。これらの冷却に使われた水は車外に排出される垂れ流し式である。
  • エアクリーナーについては、標準車は1973年(昭和48年)以降は乾式フィルターになったとされているが、消防車については従来どおり、建機のようなオイルバス式(湿式)が選択できた。
トランスミッション
  • 4輪駆動:3速MT
  • 2輪駆動:3速MT

消防車には、PTOギアの冷却用に、放水用ポンプから導いた水を利用するギアオイルクーラーが装備される。

トランスファー
  • 4輪駆動:リア・オフセット、フロント・オフセット型、2速副変速機付き。
  • 2輪駆動:トランスファーなし。
アクスル・ディファレンシャルギア
  • 4輪駆動車はフロント、リア共にオフセット式アクスルを採用。
  • 4輪駆動車に関しては、フロントアクスルは軽荷重(積載量400 Kg)、重荷重(積載量750 Kgか、消防車)共に共通のビルドアップ式で、デフはC216型であった。
  • リヤアクスルについては、軽荷重仕様と重荷重仕様があり、構造が異なる。前者がビルドアップ(組み立て型・デフキャリアにパイプを差し込んでホーシングを形成している都合、デフキャリアとホーシングは一体構造)式アクスル(デフはC216型)、後者がバンジョー(成形されたホーシングに、別部品のデフキャリアをボルトで組み付けてある)式アクスル(デフはH260型)であった。
  1. 同じP型エンジン搭載の四輪駆動車でも、より重荷重・高負荷で使われるキャリヤーはスプリット(左右分割)式
  • 4輪駆動車に関しては、ファイナルギヤレシオ(最終減速比)は、車体重量が1.7トンクラスである標準車での使用を考えてもやや高めの 1:4.111 の一種類しか設定されなかった(似通ったガソリンエンジンを積むトヨタ・ランドクルーザー FJ40 系では、さらに高い 1:3.363 - 3.700、消防用シャシで 1:4.1111 の設定)。
  • 消防車の一部に設定される2輪駆動にはトラック的な低いファイナルギヤレシオが与えられ、ローレンジを持たないハンディを補っている。
サスペンション
  • フロント、リヤ共にリーフ・リジッド式で、前後にトーションバースタビライザーを持っていた。
  • リーフスプリングは乗り心地を考慮して両端に行くほど板厚が薄くなる様に加工されたテーパードリーフを採用しているのが特徴となっている。このコストがかかるスプリングは、トヨタ・ランドクルーザーでは使われたことがない。
  • サスペンションストロークを大きく採る目的で、リーフスプリングのスパン(長さ)がフロント1,100ミリ、リヤ1,300ミリと当時のこのクラスとしては破格に長い物となっており、同年代のランドクルーザー40系が前後共に同じスパン(数値的にはパトロール60型のフロントよりもやや短く、結果サスペンションストロークも小さい)のリーフスプリングを採用していたのと対照的である。

歴史[編集]

  • 1968年(昭和43年)12月頃ステアリング・ホイールメッキ仕上げの3x3本スポークから、全樹脂被覆の2本スポークへ変更された。
  • 1973年(昭和48年)頃、法規に適合させるため、それまでの白色でターンシグナルとクリアランスを兼用したランプから、アンバーのターンランプと白色のクリアランスランプの、独立したものに変更された。合わせてリアランプもそれまでのストップ・テール・ターンシグナル共用の丸形赤一灯式から、ダットサントラックに使われているものと同じ、アンバー・赤・白のレンズを持つ矩形横長のコンビネーションランプに変更された。
  • 1973年(昭和48年)頃、法規に適合させるため、フロントフェンダーに回転突起物(フロントハブ部)対応のエクステンション(オーバーフェンダー{初期のものは木製であったという説があるが、1975年(昭和50年)式消防車の実例では鉄板のプレス成形品であった}、通称カツオブシ))が装備された。これは元来フロントアクスル先端のハブ部が極僅かであるがフェンダーよりはみ出していたものが、法規の改正で認められなくなった為の処置。このフロントアクスルがネックとなって全幅が1.7メートルを越えてしまう都合、仮にディーゼルエンジンをラインナップしたとしてもランドクルーザー40系のように維持費の安い4ナンバー(小型貨物自動車)登録は不可能であった。
  • 1974年(昭和49年)頃?ダッシュボードにクラッシュパッドが追加された。
  • 1975年(昭和50年)頃?法規に適合させるため、全幅(車体後部の幅)が広いファイアーパトロールの前照灯光軸間隔が広げられる。フロントフェンダー前端との干渉を避けるため、前照灯自体が前方に突出している。
  • 1975年(昭和50年)頃?ワイパーが2本から3本となり、払拭面積が拡大した。
  • 1979年(昭和54年)9月、昭和54年排出ガス規制適合となり、型式が「J-G61」、「J-FH61」となる。この際前席足元のカウル(スカットル)ベンチレーター(通称蹴飛ばし窓)が廃止された。

その他[編集]

3代目 (160型系 1980年 - 1987年/1994年/2002年)[編集]


4代目 (Y60型系 1987年 – 1997年)[編集]


5代目 (Y61型系 1997年 –)[編集]

2010年平成22年)に後継車Y62型系が登場したが、こちらはV型8気筒・ガソリンエンジンのみで、独立懸架サスペンションを持つ高級大型SUVとなったため、ディーゼルエンジンで車軸懸架サスペンションを持ち、簡素でよりヘビーデューティな用途向けとしてオーストラリアアフリカ中東市場などではこのY61型系が継続販売されている。

2015年(平成27年)8月、日産オーストラリアは、2016(平成28)年度をもって1998年(平成10年)5月に導入以来、実に18年間に渡って販売が続けているY61型系の販売を全て終了することを発表。ディーゼルエンジン搭載のヘビーデューティ用途にはNP300ナバラをベースとしたワゴンタイプを導入して対応する。


6代目 (Y62型系 2010年 -)[編集]

日産・パトロール(6代目)
Y62型
後期型 フロント
Nissan Patrol Sixth generation Front.jpg
後期型 リヤ
Nissan Patrol Sixth generation Rear.jpg
販売期間 2010年 -
乗車定員 8人
ボディタイプ 5ドアSUV
エンジン VK56VD
駆動方式 オールモード4X4
変速機 7AT、6MT
全長 5,170 mm
全幅 1,995 mm
全高 1,940 mm
ホイールベース 3,075 mm
車両重量 2,780 kg
-自動車のスペック表-

2010年2月発表。Y62型系は主にUAEなどの中東市場富裕層向けとして開発され、同時に日産SUVのフラグシップと位置づけられ、堂々かつ洗練されたスタイルとなり、内外装の高級感も増している。車体寸法と室内容積も大幅に拡大している。初めて背面スペアタイヤを廃した。3代目インフィニティ・QX(のちにQX80に改称)と共通設計でもあり、従来モデルとは性格が大きく変わっており、ディーゼルエンジン、キャブシャーシ、ショートボディの設定は無く、それらが必要な市場向けには、従来のY61型系が継続販売される。本モデルより生産が日産車体九州に移管されている。

前後輪にダブルウィッシュボーンサスペンションが採用され、パトロール/サファリ史上、初めての独立懸架となった。また、日産車初採用となる「HBMC」(油圧ボディモーションコントロールシステム)は、車線変更やコーナリング時のロールを抑え、舗装路での快適な乗り心地と砂漠などの悪路での安定性を確保する。

エンジンはインフィニティM56にも搭載されている新開発の5.6 L・VK56VD型で、これもパトロール/サファリを通して初のV型エンジンとなった。排気系の設計やVVELECUのセッティングはサファリに合わせてトルク重視とされ、最大出力400 ps、最大トルク56.1 kgmとなっている。組み合わされるトランスミッションは7速ATのみである。

パトロール/サファリでは新採用となるオールモード4X4は、1995年発表のR50型系テラノから使われ、エクストレイルなどでもおなじみのシステムであるが、エンジン出力と車重に合わせて各部は大幅に強化されている。「サンド」、「オフロード」、「スノー」、「ロック」の4モードに切り替えが可能で、ヒルスタートアシストヒルディセントコントロールなども採用され、オフロードでの運転操作が容易になっている。

北米市場においては、2016年より2代目アルマーダとしても販売されるため、QX50、パトロールとともに3兄弟体制となった。


トヨタ・パトロール[編集]

トヨペット・クラウン(後にトヨタ・クラウンに改称)をベースに警ら専用車両として、同名違車のトヨタ・パトロールが1955年(昭和30年)から1967年(昭和32年)まで存在したが、その後はトヨタ・パトロールカーを経てトヨタ・クラウンパトロールカーへ名称変更されている。

車名の由来[編集]

「パトロール」は英語の「巡回」、「斥候」、「警衛」、「巡行」、「偵察隊」、「監視者」を意味する。

出典[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]