日本大学芸術学部・大学院芸術学研究科

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日本大学藝術学部常用漢字: 日本大学芸術学部、にほんだいがく げいじゅつがくぶ、英語: Nihon University College of Art)は、東京都練馬区キャンパスを置く日本大学学部である。また、日本大学大学院芸術学研究科(にほんだいがくだいがくいん げいじゅつがくけんきゅうか)は、同学部の大学院研究科である。略称は、日藝常用漢字: 日芸、にちげい)。

写真映画美術音楽文芸演劇放送デザインの8学科・12コース・29専攻および、文芸学、映像芸術、造形芸術、音楽芸術、舞台芸術の大学院博士前期課程5専攻、芸術全分野の大学院博士後期課程1専攻を設置する。

東京五美大(多摩美術大学武蔵野美術大学東京造形大学女子美術大学、日本大学藝術学部)の一つである。

江古田キャンパス(旭丘

概要[編集]

日本大学芸術学部は、1921年大正10年)に誕生した日本大学法文学部美学科を起源とする。1933年に法文学部文学科芸術学専攻および専門部文科文学芸術専攻を日本大学芸術学園と称し、1939年昭和14年)には現在の江古田キャンパスの場所に移転する。

学科数や生徒数の増加により1989年から所沢校舎を開設し2つの拠点を有していたが、江古田キャンパス再整備によって、2019年に全学年の教育を江古田キャンパスに戻した。江古田校舎には芸術資料館と芸術研究所が付設されている。また、芸術学部の厚生施設として、房総半島の海岸に館山セミナーハウスが設けられている[注 1][1]

学風および特色[編集]

新入生歓迎行事(春祭)[編集]

新入生歓迎会として、上級生により毎年5月に開催されていた行事。

パフォーマンスライブ、作品の展示などが披露されていたが、2019年4月(平成31年)から全学年江古田キャンパス修学に伴い開催されなくなった。

プロジェクト[編集]

日藝アートプロジェクト (NAP) として、「総合的な文化・情報の学科横断的な研究・教育・創作活動の成果を学外との連携を図りつつ、学内外に広く発信すること」を掲げた芸術学部の事業で、専任教員の指導の下、学部生・院生が参加し演劇の上演や博物館の企画などが行われている[2]

日芸祭[編集]

文化の日を含む3日間に芸術学部全学科協力の元、学生を中心としたイベントとして大学祭が開催されている(芸術祭も参照)[3]

江古田カレッジトライアングル[編集]

練馬区江古田駅周辺の3大学(日本大学芸術学部・武蔵大学武蔵野音楽大学)と練馬区が協力し、各大学学園祭時に様々な合同企画「江古田カレッジトライアングル」を行っている[4]

卒展[編集]

毎年、卒業制作として卒業展示会が開かれている[5]

その他[編集]

日本大学の一学部ではあるが他学部との交流はほぼ皆無で、所属や出身を「日大」より「日芸(日藝)」と意識している学生・卒業生が多いと言われている[6][7]2018年(平成30年)に発生した日本大学フェニックス反則タックル問題の際、日本大学芸術学部は

皆さんが、「日藝に入学して良かった」、「卒業生として胸を張れる」と思えるよう、皆さんの持てる力をすべて安心して学修に向けられる環境を整えることに努めてまいります。日藝は、学生の皆さんを必ず守ります。日藝ブランド力を共に高めていきましょう。

と発信し、AERA dot.で教育ジャーナリストの小林哲夫は「他の学部とは一緒にしてほしくない、というプライドを感じさせる。日芸の思想である」と評価した[8]。また、日本大学芸術学部は毎年、多摩美術大学武蔵野美術大学東京造形大学女子美術大学と共に東京五美術大学連合卒業・修了制作展を共催している[9]

教育および研究[編集]

学科・コース[編集]

大学院(芸術学研究科)[編集]

  • 博士前期課程
    • 文芸学専攻(文芸)
    • 映像芸術専攻(写真・映画・放送)
    • 造形芸術専攻(美術・デザイン)
    • 音楽芸術専攻(音楽)
    • 舞台芸術専攻(演劇)
  • 博士後期課程
    • 芸術専攻

沿革[編集]

日本大学芸術学園
(本郷金助町)
江古田校舎(1939年
  • 1921年大正10年) - 日本大学法文学部内に美学科を設置。
  • 1924年(大正13年) - 法文学部美学科を文学科と改め、同科に文学芸術専攻を設置(2月)。また、専門部文科に文学芸術専攻を設置(3月)[10]
  • 1926年(大正15年) - 法文学部文学科文学芸術専攻を文学科外国文学芸術専攻と改称。
  • 1927年昭和2年) - 法文学部文学科外国文学芸術専攻を英文学専攻と芸術学専攻に分離。
  • 1929年(昭和4年) - 専門部文科文学芸術専攻を文芸演劇映画美術音楽の5専攻とした。
  • 1933年(昭和8年) - 法文学部文学科芸術学専攻と専門部文科文学芸術専攻が本郷金助町に移転し、日本大学芸術学園と称した[11]
  • 1934年(昭和9年) - 松原寛が芸術学園科長に任命される[11]
  • 1937年(昭和12年) - 法文学部文学科芸術学専攻を法文学部芸術学科(文芸学・演劇美学・映画美学・美術史・音楽美学専攻)とし、専門部文科の文学芸術専攻を専門部芸術科(創作・演劇・映画・美術・音楽専攻)とした。
  • 1939年(昭和14年) - 芸術学園が江古田校舎に移転。専門部芸術科を創作・演劇・映画・美術・音楽・商工美術・写真・宣伝芸術の8専攻科に増設。
  • 1943年(昭和18年) - 戦局の悪化による当局の美術科・創作科の廃止要請に対し専攻科を縮小。以後終戦まで専攻科は改変を繰り返す。
  • 1944年(昭和19年) - 専門部芸術科の学生募集を停止し、専門部工科(板橋工科、写真工業科・映画工業科)に転換。
  • 1946年(昭和21年) - 専門部芸術科復活。
  • 1949年(昭和24年) - 新制学部に移行、芸術学部となり、写真映画美術音楽文芸の5学科体制で発足。
  • 1950年(昭和25年) - 演劇学科増設。芸術学部内に日本大学江古田高等学校開校。
  • 1958年(昭和33年) - 短期大学部の中に放送科を設置。
  • 1960年(昭和35年) - 放送学科増設。
  • 1969年(昭和44年) - 芸術学部芸術研究所設置。
  • 1976年(昭和51年) - 日本大学江古田高等学校(昭和51年2月)廃止。
  • 1988年平成元年) - 埼玉県所沢市に新校舎の建設開始。
  • 1989年(平成2年) - 所沢校舎開校。
  • 1993年(平成5年) - 大学院芸術学研究科(修士課程)に4専攻(映像芸術専攻・造形芸術専攻・音楽芸術専攻・舞台芸術専攻)を増設。
  • 1994年(平成6年) - 江古田校舎敷地内に芸術学部芸術資料館を設置。
  • 1995年(平成7年) - 大学院芸術学研究科博士後期課程(芸術専攻)増設。
  • 1996年(平成8年) - 美術学科からデザインコースが独立、デザイン学科となり現在の8学科となる。
  • 2004年(平成16年) - 江古田キャンパス整備事業による新校舎建設工事を開始。所沢校舎にテレビスタジオ棟・美術棟・文芸棟・デザイン棟が竣工。
  • 2010年(平成22年) - 江古田キャンパス整備事業が終了し、江古田キャンパス新校舎修祓式を挙行。
  • 2011年(平成23年) - 創設90周年記念式典を挙行。
  • 2016年(平成28年) - 第3回アジア大学生映画祭が江古田校舎にて開催された。
  • 2019年(平成31年) - 全学年江古田キャンパス修学化に伴い、所沢キャンパスの使用を2月をもって終了。

キャンパス・旧キャンパス[編集]

江古田キャンパス[編集]

所沢キャンパス(現在は閉校)[編集]

日藝賞[編集]

日藝賞は2006年に創設され、「著しく日藝の名声を高め、その業績が社会に貢献し、芸術を志す学生に夢を与える人物」を受賞対象にしている。中退者も含め、かつて日藝に在籍していたことのある人すべてを対象とし、活躍分野は問わない。候補者は、在学生、専任教職員、校友会役員の投票で選ばれ、日藝賞選考委員会によって受賞者を選出している。授賞式は受賞翌年の芸術学部入学歓迎式の中で行われ、賞状と名前が刻まれたトロフィーが贈られる[12]

歴代受賞者[編集]

出身有名人[編集]

写真学科[編集]

映画学科[編集]

美術学科[編集]

音楽学科[編集]

文芸学科[編集]

演劇学科[編集]


放送学科[編集]

デザイン学科(旧美術学科デザインコース)[編集]

芸術学研究科[編集]

その他・不明[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 館山セミナーハウスは、南房総千葉県館山市にある芸術学部の厚生施設である。

出典[編集]

  1. ^ “館山セミナーハウス”. 芸術学部. http://www.art.nihon-u.ac.jp/facilities/seminarhouse.html 2015年11月21日閲覧。 
  2. ^ “NAP(日藝アートプロジェクト事業)”. 芸術学部. http://www.art.nihon-u.ac.jp/facilities/research.php 2015年11月21日閲覧。 
  3. ^ 学部行事|学生生活|日本大学芸術学部”. 日本大学芸術学部. 2021年12月31日閲覧。
  4. ^ 練馬区役所. “【令和元年10月23日】江古田3大学合同学園祭プロジェクト「江古田カレッジトライアングル」~練馬産野菜をたっぷり使った「焼きうどん」「塩焼きそば」を販売~”. 練馬区. https://www.city.nerima.tokyo.jp/kusei/koho/hodo/h31/r110/011023.files/011023.pdf 2019年10月23日閲覧。 
  5. ^ “日藝の卒博”. 芸術学部. http://nichigei.tumblr.com/ 2015年11月21日閲覧。 
  6. ^ アメフト問題、日芸の学生は 「迷惑」「小説にする」:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2020年5月2日閲覧。
  7. ^ 【日大解剖】芸術学部OBは出身を聞かれると「日芸」と答える”. BLOGOS. 2020年5月2日閲覧。
  8. ^ 小林哲夫 (2018年5月29日). “日大全16学部の「謝罪」を検証 多くはマニュアル文面のなか光ったのは「日芸」 〈dot.〉”. AERA dot. (アエラドット). 2020年5月2日閲覧。
  9. ^ 第43回 東京五美術大学連合卒業・修了制作展”. 日本大学藝術学部美術学科 – Nihon University College of Art. 2020年5月2日閲覧。
  10. ^ 『日本大学百年史』 第五巻、40頁
  11. ^ a b 『日本大学百年史』 第二巻、481頁
  12. ^ “日藝賞”. 芸術学部. http://www.art.nihon-u.ac.jp/artwork/index.html 2015年5月1日閲覧。 
  13. ^ 『声優の世界-アニメーションから外国映画まで』朝日ソノラマファンタスティックコレクション別冊〉、1979年10月30日、69頁。 
  14. ^ 『日本タレント名鑑(2017年版)』VIPタイムズ社、2017年1月27日、687頁。ISBN 978-4-904674-08-6 

関連書籍[編集]

  • 『ニチゲー力―日大芸術学部とは何か』(山下聖美・著/三修社/2006年7月1日) - 文芸学科助手が「日本大学芸術学部」という特殊な教育・研究機関を多角検証 ISBN 978-4384040883
  • 『はみだすチカラ! 日大芸術学部』(大下英治・著/徳間書店/2016年5月13日)- OBのインタビューを中心に多才のジャンルを輩出する秘密を探る ISBN 978-4198641382
  • 『江古田文学』(江古田文学会) - 1980年に復刊、年3回発行[1]
  • 『日本大学芸術学部五十年史』(日本大学芸術学部/1972年1月1日)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. ^ 江古田文学、三田文學、文芸ラジオ。新旧の大学文芸誌が見る”今”と”これから”。