日本の国立公園

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

日本の国立公園では、日本における国立公園について記述する。

日本における狭義の国立公園は、自然公園法に基づき、日本を代表する自然の風景地を保護し利用の促進を図る目的で、環境大臣が指定する自然公園のひとつである。国定公園が都道府県に管理を委託されるのに対し、国立公園は国(環境省)自らが管理する。日本の国立公園の面積の約60%が国有地である[1]

歴史[編集]

日本では1931年自然公園法の前身である国立公園法が施行され、1934年3月16日に瀬戸内海国立公園、雲仙国立公園、霧島国立公園の3か所が最初の指定を受けた。また戦前の台湾と朝鮮でも国立公園指定の動きがあり、実際、1937年12月27日台湾大屯山新高阿里山次高タロコの3箇所が日本の国立公園に設定された経緯がある。

2015年3月27日までに35箇所の国立公園が指定されてきたが、前記の台湾の3箇所の国立公園が日本の統治権放棄により消滅したために、現在は32箇所の国立公園が存在している。

最近の動向[編集]

2007年8月1日、西表国立公園の区域を拡大し沖縄県石垣島の一部を編入し、同国立公園の名称を西表石垣国立公園に変更した。これは、1964年富士箱根伊豆国立公園以来43年ぶりの大規模な拡張である。この拡張により、新空港問題などで有名となった白保地区等が海中公園地区に指定され、同国立公園の海中公園の面積は日本の国立公園中で最大となった。

また、同年8月30日に日光国立公園から尾瀬地域を分離し、周囲を新たに編入する形で尾瀬国立公園が新設された。これは釧路湿原国立公園以来20年ぶりの国立公園の新設である。

2010年11月、環境省は霧島屋久国立公園を霧島地域と屋久島地域に分割して別々の国立公園とする方針を決め[2]2011年12月22日には同省の中央環境審議会自然環境部会が答申した[3]。霧島地域は現在の霧島山錦江湾地域に加えて姶良カルデラ地域を加え「霧島錦江湾国立公園」と名称を変更し、独立する屋久島地域は屋久島国立公園となる。2012年3月16日、正式に両国立公園が指定されて官報への公示が行われ、両国立公園が発足した。

2011年5月、環境省は東日本大震災の復興の支援と震災の様子を後世に伝えることを目的に、陸中海岸国立公園と南三陸金華山国定公園に1つの青森県立自然公園[4]、3つの宮城県立自然公園[5]を加えて(仮称)三陸復興国立公園に再編する構想を明らかにし[6]、2013年5月24日に、ひとまず、青森県の種差海岸階上岳県立自然公園を編入して三陸復興国立公園に改称した。

2014年3月5日、沖縄県の慶良間諸島周辺が沖縄海岸国定公園から削除されるとともに新たに区域を指定され、新設の慶良間諸島国立公園となった。国立公園の新規指定は屋久島国立公園以来であるが、屋久島国立公園やその前に指定された尾瀬国立公園はその多くの地域が既に既存国立公園に指定されており、事実上の分離指定である。完全な新設国立公園の誕生は1987年の釧路湿原国立公園以来27年ぶりとなる。

2015年3月27日、上信越高原国立公園のうち、新潟県と長野県の県境に位置する、妙高山を代表とする妙高火山群と、戸隠山を代表とする戸隠連峰などを分離する形で、妙高戸隠連山国立公園が新設された。

2015年3月31日、かねてから予定されていた南三陸金華山国定公園の三陸復興国立公園への編入が行われた。これにより三陸復興国立公園は青森県から牡鹿半島の先まで広がることになった。

国立公園の区分[編集]

日本の国立公園・国定公園の保護区分は、大きく分けて次の4つがある。

  • 普通地域
    • 制限は最小限だが、基準を超える工作物の建築、広告の表示、土石の採取、地形の変更などには届出が必要。
  • 特別地域
    • 風致の維持に重要な地域が指定され、その重要度により第一種から第三種までの区分がある。
      普通地域で届出が必要な行為に加え、指定動植物の採取や損傷、建物の色の塗り替え、自動車や船の乗り入れなどに「許可」が必要になる。また、本来の生息地でない動物を放すこと、本来の生育地でない植物を植栽したり、その種子をまくことにも「許可」が必要になる。
  • 特別保護地区
    • 特別地域内でも特に重要な地区。特別地域で許可が必要な行為に加え、全ての動植物の捕獲・採取(落葉や枯れ枝も含む)・損傷をすること、植物を植栽し、またはその種子をまくこと、動物を放つこと(家畜の放牧を含む)、たき火をすることなどに許可が必要となる。ただし学術目的や地域住民の生活に必要な行為・各自治体等でなければ許可されることはほとんどなく、実質的に「禁止」と考えてよい。また、これらの地域では盗掘を防ぐため、植生などのマップの公開を禁止される場合や立ち入りが一部禁止される場合もある。
  • 海域公園地区
    • 海域の地形や生物の景観の優れた場所で、指定動植物の採取、地形変更、汚水の排出などに許可が必要。1970年の自然公園法改正で「海中公園」として誕生し、2010年に「海域公園」と改正された。

日本の国立公園一覧[編集]

現存する国立公園[編集]

国立公園名 都道府県 指定日 管轄する
地方環境
事務所
備考 特徴(環境省HPより引用[7]
阿寒国立公園 北海道 1934年
12月4日
北海道
摩周湖

二つの巨大な複式火山地形、火山と森と湖の原始的景観

大雪山国立公園 1934年
12月4日
冬の大雪山

日本最大の原始的国立公園

支笏洞爺国立公園 1949年
5月16日

様々な型式の火山及び火山地形、火山現象

知床国立公園 1964年
6月1日
知床五湖・一湖と五連山

原始的半島景観

利尻礼文サロベツ国立公園 1974年
9月20日
利尻礼文国定公園から昇格

火山、海蝕景観及び湿原、沼沢、砂丘景観

釧路湿原国立公園 1987年
7月31日

日本最大の湿原、ラムサール条約登録湿地

十和田八幡平国立公園 青森・岩手・秋田 1936年
2月1日
東北 指定時は十和田国立公園、後に改称

湖水美の典型、火山性高原と温泉群

磐梯朝日国立公園 山形・福島・新潟 1950年
9月5日
五色沼・毘沙門沼と磐梯山

爆裂式火山と火山性湖沼群、山岳宗教

三陸復興国立公園 青森・岩手・宮城 1955年
5月2日
指定時は陸中海岸国立公園、2013年5月24日に青森県部分を追加して改称

日本最大級の海食崖とリアス海岸

日光国立公園 福島・栃木・群馬 1934年
12月4日
関東

日本式風景の典型、東照宮等の人文景観

富士箱根伊豆国立公園 東京・神奈川・山梨・静岡 1936年
2月1日
指定時は富士箱根国立公園、後に改称

火山景観、火山性湖沼、温泉群、火山列島

秩父多摩甲斐国立公園 埼玉・東京・山梨・長野 1950年
12月4日
指定時は秩父多摩国立公園、後に改称

代表的水成岩山地と原生林

南アルプス国立公園 山梨・長野・静岡 1964年
6月1日

日本最高標高の構造山地、アルプス的景観

小笠原国立公園 東京 1972年
10月16日
父島の小湊海岸・コペペ海岸
海底火山脈に属する火山列島の島嶼及び海蝕崖景観、亜熱帯地域の海洋島
尾瀬国立公園 福島・栃木・群馬・新潟 2007年
8月30日
日光国立公園から尾瀬地域を分離

本州最大の高層湿原と山岳景観

中部山岳国立公園 新潟・富山・長野・岐阜 1934年
12月4日
中部

構造山地のアルプス的景観、渓谷美

伊勢志摩国立公園 三重 1946年
11月20日
英虞湾の日の出

沈降と隆起を繰り返し形成されたリアス式海岸や海蝕崖、伊勢神宮とその背後に広がる宮域林

上信越高原国立公園 群馬・新潟・長野 1949年
9月7日
晩秋の谷川岳

火山性高原、構造山地のアルプス的景観、温泉群

白山国立公園 富山・石川・福井・岐阜 1962年
11月12日
白山国定公園から昇格

自然性の高い火山孤峰、信仰と伝説で古来有名な名山、白山神社の本体

妙高戸隠連山国立公園 新潟・長野 2015年
3月27日
上信越高原国立公園から分離
野尻湖と山々

火山非火山が密集する山岳景観

吉野熊野国立公園 三重・奈良・和歌山 1936年
2月1日
近畿

水成岩の山地を深くうがつ峡谷、歴史と伝説、山岳宗教

山陰海岸国立公園 京都・兵庫・鳥取 1963年
7月15日
山陰海岸国定公園から昇格

鳥取砂丘を含む日本海側の海岸を代表する景観

大山隠岐国立公園 鳥取・島根・岡山 1936年
2月1日
中国四国 指定時大山国立公園、後に改称
白島海岸(隠岐の島町

中国地方の最高峰、歴史と伝説、外海多島海景観並びに半島景観

足摺宇和海国立公園 愛媛・高知 1972年
11月10日
足摺国定公園から昇格

隆起海岸の断崖景観、沈降海岸の海蝕景観

雲仙天草国立公園 長崎・熊本・鹿児島 1934年
3月16日
九州 指定時雲仙国立公園、後に改称
雲仙温泉・雲仙地獄と雲仙岳

雲仙岳の山岳景観と温泉、切支丹遺跡、内海多島海景観

霧島錦江湾国立公園 宮崎・鹿児島 1934年
3月16日
指定時霧島国立公園、後に「霧島屋久国立公園」、2012年3月16日に屋久島国立公園を分離し改称
桜島と噴煙

集成火山景観、海域カルデラの錦江湾と活火山桜島の景観

阿蘇くじゅう国立公園 熊本・大分 1934年
12月4日
指定時阿蘇国立公園、後に改称

カルデラ景観、草原美

西海国立公園 長崎 1955年
3月16日

外海多島海景観、切支丹遺跡

屋久島国立公園 鹿児島 2012年
3月16日
霧島屋久国立公園から屋久島地域を分離

九州地方の最高峰、顕著な標高差による植生の垂直分布、巨樹が形成する原生的自然景観、多雨な気候

西表石垣国立公園 沖縄 1972年
5月15日
西表政府立公園を移管。指定時西表国立公園、後に改称

亜熱帯性常緑広葉樹林と日本最大のサンゴ礁景観、マングローブ林

慶良間諸島国立公園 沖縄 2014年
3月5日[8]
沖縄海岸国定公園から慶良間諸島地域を分離して国立公園に昇格
座間味島の古座間味ビーチ

海域の多様な生態系、透明度の高い海域、海から陸まで連続した多様な景観

瀬戸内海国立公園 大阪・兵庫・
和歌山・岡山
・広島・山口
・徳島・香川
・愛媛・福岡
・大分
1934年
3月16日
共同管理
(近畿、
中国四国
、九州)

世界的な多島海公園、歴史と伝統

日本統治時代の台湾にかつて存在した国立公園[編集]

国立公園の利用[編集]

国立公園は自然公園法に基づき、その地域の自然や景観などの保護を目的とするものであって、その地域を観光地とすることを目的としているわけではない。

国立公園は自然公園法に基づき環境省が整備を進め、公園内に公園利用拠点である集団施設地区を指定し、国民休暇村や、環境に配慮したハイキングコースや自然遊歩道、自然観察などを目的としたビジターセンター、エコミュージアムセンター、キャンプ場などが整備されている。公園内の特別保護地区との規制とメリハリをつけ、国立公園の保護と利用の調整が行われている。これらを観光資源とし、公園地区外に宿泊施設などを整備することにより、観光地として整備されている場合が多い。

なお、一部の国立公園の特別保護地区の中には、宮内庁神宮司庁が管理する区域がある。これらの多くは神域として管理されているものであり、管理者もしくはそれらから委託された者以外の入山などの立ち入り行為自体が禁止され、事実上、環境省の特別保護地区同様の規制が加えられている。また、その周囲のほとんどは環境省によって保護されている。

脚注[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ ようこそ国立公園へ』(環境省)
  2. ^ 朝日新聞-「霧島」「屋久島」を分割へ=国立公園、計30に―環境省
  3. ^ 朝日新聞-「世界遺産の屋久島「独立」へ 霧島屋久国立公園から
  4. ^ 種差海岸階上岳県立自然公園
  5. ^ 県立自然公園気仙沼・硯上山万石浦県立自然公園・県立自然公園松島
  6. ^ 岩手日報-「三陸復興国立公園」を構想 沿岸6自然公園再編へ
  7. ^ 自然保護各種データ 国立公園の概要」環境省、2015年3月31日付、2015年7月19日閲覧
  8. ^ 慶良間諸島国立公園が誕生 きょう指定 - 沖縄タイムス(2014年3月5日付、同日閲覧)

外部リンク[編集]