旅団

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NATO軍の歩兵旅団を表す兵科記号

旅団(りょだん、: Brigade)は、陸軍編成上の単位のひとつで、師団よりも小さく、連隊と同等又はこれよりも大きい単位で、1,500名から6,000名程度の兵員によって構成される部隊をいう。日本語にいう旅団の語は古代中国の軍隊の単位であるに由来する。「Brigade」はケルト語briga(争い)に由来するという。

英軍Brigadier准将あるいは上級大佐[1])は本来は「旅団の長」そのものであった。よって、諸外国の陸軍では旅団長には伝統的には准将級(旧ロシア帝国軍や現在のブラジル陸軍中華民国陸軍等准将を置かない軍隊では少将[2])が充てられてきたが、アメリカ陸軍では大佐が充てられ、中国人民解放軍ではそれぞれ上級大佐・大佐に相当する大校・上校が充てられる。また、ドイツ連邦軍等では准将が充てられる事もあれば、大佐の旅団長の例も珍しくない。

将官の階級を3段階として准将級の階級を置かなかった旧日本陸軍では少将が、将官の階級を2段階とした陸上自衛隊では陸将補(少将相当)がそれぞれ充てられる。

旅団の種類[編集]

旅団の編成は時代・国によって多岐にわたる。

師団内旅団タイプ
旅団は、そもそもは単一兵科たる2個歩兵連隊によって構成され、2個旅団を以て1個師団(4単位師団)を構成する存在であった。また、この旅団を基幹として他兵科の部隊を配属して臨時に編成されたものを「混成旅団」という。ところが、第一次世界大戦の頃より各国とも師団が3個歩兵連隊によって構成されるようになり(3単位師団)、このような伝統的な旅団の役割が終了した。
独立混成旅団(小型師団)タイプ
師団内旅団タイプの旅団が廃れた後に、小型紛争や後方の治安維持目的から小型師団の要求が高まった。すなわち、単一兵科によって構成されている連隊は、兵站部隊を付属していないことから独立してこのような任務に当たることは困難であり、連隊とは別箇又はその上級に各種兵科の混成部隊が必要とされた。そこで考えられたのが独立混成旅団である。「独立」とは師団に属さないことを、「混成」とは各兵科の混成部隊であることをそれぞれ表している。陸上自衛隊では、師団より規模の小さい各種職種混成部隊は「混成団」と称していたが、1999年平成11年)以降は新たに「旅団」の編成を置くようになった。陸上自衛隊の旅団は単に「旅団」と称しているが、「独立混成旅団」(「小型師団」)タイプである。
冷戦終結後の近年は軍縮の気運や非対称戦争の続発に対処するためか、イギリス陸軍フランス陸軍イタリア陸軍イスラエル陸軍などのように、軍の基本編成単位を師団よりも小回りの利く独立混成旅団に改変する軍も多い。
特科部隊の単一兵科独立旅団タイプ
歩兵以外の砲兵部隊などで見られる編制で、師団に属しない独立部隊ではあるが、独立混成旅団タイプとは違って諸兵科連合の構成にはなっておらず、基本的に単一兵科のみで構成されているものである。一般に、複数の師団を束ねた軍団レベルで運用され、軍団指揮下の各師団に分属させたり、重点となる師団に配属されて使用される。例えば攻勢の中心となる師団に、この種の戦車旅団を配属したりすることが考えられる。陸上自衛隊の団 (軍事)の英訳はいずれも "Brigade" の語が用いられており、このタイプといえる。
連隊タイプ
アメリカ陸軍でも、かつては旅団は2個連隊(regiments)以上によって構成されていたが、連隊を編制単位から省略(すなわち旅団のすぐ下に大隊が付属)している現在では前方展開部隊のストライカー旅団も含め2個大隊(battalions)以上によって編成されるようになり、実質的には従来の「連隊」と同等のものとなっている。これに衛生、補給、宣撫といった各種の支援兵科を追加して編成されるのが「旅団戦闘団」と呼称される。これは、指揮系統上は師団の隷下にある一方、機能では独立混成旅団もしくは(小型の)歴史的な師団に近いものとなっている。

日本[編集]

大日本帝国陸軍の旅団[編集]

沿革[編集]

大日本帝国陸軍では、鎮台時代から戦時には鎮台から旅団を臨時編成して戦地に派遣していた。西南戦争など後に師団制が採られるに至り、旅団は師団内旅団タイプとして位置づけられるに至った。この旅団は主に師団に属する歩兵旅団が主流で大半を占める。長は旅団長で少将が就任する。ただし、師団と異なり参謀長や参謀は置かれず、旅団長の補佐や旅団司令部の実務は旅団副官が行った。師団には2個の歩兵旅団が属し、旅団には2個歩兵連隊が属した。師団が出動するほどではない場合には砲兵部隊騎兵部隊工兵部隊などを配属し混成旅団として派遣した。混成旅団は臨時編制の場合が多い。支那事変後期からは、通常4個連隊をもって1個師団(つまり2個旅団)としていたものを1個連隊減らし3個連隊をもって1個師団とした。この歩兵連隊の上級部隊としては従来の旅団ではなく歩兵団が統括した。歩兵団も旅団に準ずる組織として長である歩兵団長には少将が就任した。第二次世界大戦期に出現した戦車師団についても、同様の師団内旅団タイプの戦車旅団(各2個戦車連隊)が編成されていた。

独立混成旅団(小型師団)タイプの旅団としては、1934年(昭和9年)に「独立混成旅団」が創設され、支那事変以降は占領地の治安維持を主目的に約100個ほど編成された。独立混成旅団の編制の特徴としては、旅団の下に連隊が存在しないことが通常で、代わりに独立歩兵大隊から成っていた点が挙げられる。なお、在中国の独立混成旅団のうち24個のように、後に本物の師団に拡大改編された例も多い。このほか、第68旅団海上機動旅団のように、同様の小型歩兵師団タイプの旅団ながら独立混成旅団を名乗らない編制も存在した。戦車師団を小型化したタイプで、戦車連隊に加えて歩兵なども含んだ独立戦車旅団も存在する。

師団内旅団タイプと独立混成旅団タイプの中間的な旅団も太平洋戦争大東亜戦争)期には出現した。これは、第102師団のような、独立混成旅団を改編・格上げした師団などに見られたものである。師団の下に2個の「歩兵旅団」が置かれた点では師団内旅団に近いが、各旅団の下には連隊が存在せずに、多くの独立混成旅団のように独立歩兵大隊から構成され、旅団作業隊(工兵の一種)や旅団通信隊など若干の特科部隊を有することが多かった。このタイプの旅団を持つ師団は分散して治安任務にあたることが本来の任務で、多数の独立歩兵大隊の管理や、旅団単位での独立行動を容易にするための編制であった。第109師団なども類似の「混成旅団」2個から成っていた。

特科の単一兵科独立部隊タイプの旅団としては、日清戦争後の軍備拡張に際し砲兵旅団と騎兵旅団(小型騎兵師団タイプとも見うる)が2個ずつ編成されたのが最初である。それまでも同種の独立部隊はあったものの、小規模で旅団の名を冠していなかった。その後、野戦重砲兵旅団など多数が誕生した。前出の独立戦車旅団の中にも、旅団編制内に歩兵を持たずに他部隊との協同を前提とした、この範疇の旅団が存在する。

師団内旅団型の歩兵旅団の基本編制

  • 旅団司令部
  • 歩兵連隊(2個)
    • 連隊本部
    • 大隊(3個)
      • 大隊本部
      • 中隊(4個)
      • 機関銃中隊
      • 歩兵砲小隊(大隊砲小隊)
    • 歩兵砲中隊(連隊砲中隊)
    • 速射砲中隊

独立混成旅団の基本編制

  • 旅団司令部
    • 独立歩兵大隊(3~8個)
      • 歩兵中隊(3~5個)
      • 機関銃中隊
      • 歩兵砲中隊(機関銃中隊と兼用した銃砲隊1個のみの場合もある)
    • 旅団砲兵隊
    • 旅団工兵隊
    • 旅団通信隊など


陸上自衛隊の旅団[編集]

沿革[編集]

陸上自衛隊の基本的な作戦単位は、1962年(昭和37年)に管区隊が改組されて以降、30年以上にわたって、師団及び混成団とされてきた。しかし、冷戦後の軍縮の流れの中で、師団の規模を縮小化させ、また、混成団の規模を拡充させる必要が生じたことから、1995年(平成7年)11月28日閣議決定された07大綱に基づき、平成8~12年度中期防において、自衛隊としては初の旅団編制が導入されることとなった。

これにより、1999年(平成11年)以降、第5・第11・第12・第13の4個師団及び第1混成団第2混成団が旅団に改編され、総合近代化旅団が2個、即応近代化旅団が4個編成された。また、即応近代化旅団のうち、東部方面隊のもの(第12旅団)は空中機動力を強化し、また、西部方面隊のもの(第15旅団)は離島防衛に対応するよう、それぞれ編制を調整している。また、5旅団・12旅団及び13旅団は創隊当時即応予備自衛官を主力とする1個普通科連隊(コア部隊)を置いていたが、混成団#方面混成団の新編によりいずれも廃止されている。

編制[編集]

陸上自衛隊の旅団は、作戦単位である点で師団に共通しており、編制上もほぼ完全にミニ師団であることから、番号も師団と重複しないものとなっている。しかし、定数は約2千名から約4千名と小規模であり、日本陸軍における混成旅団に近い形態となっている。

その一方、戦術単位である普通科連隊については、第15旅団を除いて複数保有するという特徴も備えている。なお、旅団隷下の普通科連隊は、師団隷下の普通科連隊よりもコンパクトな普通科連隊(軽)であり、連隊長は一区分低い1等陸佐(三)、定数も約650名とされている。

旅団の編制は、下記のようになっている。

即応近代化旅団の編制
  • 旅団長(陸将補(一))
  • 副旅団長(1等陸佐(一))
  • 旅団幕僚長(1等陸佐(二): 但し、隷下部隊・司令部(幕僚)における指揮統制の関係上通常は「連隊」・「群」長等の部隊長経験者を指定)
  • 旅団司令部
  • 1~4個普通科連隊(軽)
  • 戦車大(中)隊[注釈 1]
  • 野戦特科[注釈 2]
  • 高射特科中隊[注釈 2]
  • 施設中隊(5,14旅団は隊編制。なお、14施設中隊は隷属する北徳島分屯地の管理を兼任する関係から指揮官は1佐相当)
  • 通信中隊(5,12,15旅団は指揮官が2佐の隊編成となっており、将来的に全ての通信中隊は隊編制に拡充予定)
  • 偵察隊
  • 飛行隊
  • 化学防護隊(2013年3月にすべての旅団司令部付隊化学防護小隊が分化独立)
  • 後方支援[注釈 3]
    • 2個整備中隊
    • 補給中隊
    • 輸送隊
    • 衛生隊(隷下は1個治療小隊と救急車小隊)

一覧[編集]

現在、陸上自衛隊には下表に示す6個の旅団が設置されている。

陸上自衛隊の旅団(2014年3月末)
師団 方面隊 司令部所在地 隷下主要戦闘部隊 特色
普通科 野戦特科 高射特科 戦車
第5旅団 北部 北海道帯広市 3個連隊 1個 1個中隊 1個大隊 総合近代化
第11旅団 北海道札幌市 1個大隊
第12旅団 東部 群馬県榛東村 3個連隊 (欠) 即応近代化(空中機動)
第13旅団 中部 広島県安芸郡海田町 3個連隊 1個中隊[3] 即応近代化
第14旅団 香川県善通寺市 2個連隊
第15旅団 西部 沖縄県那覇市 1個連隊 (欠) 1個連隊[注釈 4] (欠) 即応近代化(離島型)

アメリカ[編集]

アメリカ陸軍においては、従来編成されてきた連隊タイプの旅団から、衛生、補給、宣撫といった各種の支援兵科を追加してある程度の独立作戦能力を付与した旅団戦闘団(BCT)への改編を進めている。全ての旅団戦闘団は、歩兵旅団戦闘団、重旅団戦闘団、ストライカー旅団戦闘団の3種類のいずれかの編成に統一される。

一方、アメリカ海兵隊においては、旅団級の海兵空地任務部隊(MAGTF)として海兵遠征旅団(MEB)を編成している。これは海兵連隊(歩兵連隊)、海兵航空群および戦闘兵站連隊を中核とした諸兵科連合部隊で、固定翼機を含むという点で、各国陸軍の旅団とは一線を画した編成になっている。

ロシア[編集]

ソビエト連邦軍においては、伝統的に、連隊-師団-軍(軍団)-軍管区という指揮系統が採用されてきたことから、いくつかの例外的な独立旅団を除き、旅団は編成されていなかった。

しかし、2008年に採択されたロシア陸軍の再編計画において、兵力の機動運用および効率化のため、従来の師団のほぼ全てを旅団に縮小改編することが決定された。これを受けて、2009年中に23個師団が解体され、85個旅団(諸兵科連合旅団40個、特定任務旅団45個)が創設された。これにより、現在のロシア陸軍では、日本の北方地域を占拠している第18機関銃・砲兵師団以外に師団は存在しなくなっている。また、依然として師団編制が存続しているロシア空挺軍においても、独立空挺旅団の編成が行なわれている。

非正規軍武装組織の自称としての旅団[編集]

上記のような正規軍の一編成としてではなく、テロ組織を含む武装集団が自称として「旅団」を名乗ることもある。中東パレスチナアル・アクサ殉教者旅団ファタハ系)、イッズッディーン・アル=カッサーム旅団英語版ハマース系)、イタリアでかつて活動した赤い旅団などである。

注釈[編集]

  1. ^ 空中機動型と離島型旅団は機動力向上のため戦車部隊を欠く
  2. ^ a b 離島型旅団(第15旅団)は、野戦特科部隊を欠く一方で高射特科部隊を群編制と拡充している
  3. ^ 実人員規模は師団隷下の後方支援連隊とほぼ同じであるが、機能は大隊規模を中隊にするなどコンパクト化している
  4. ^ 2014年3月26日付けで群から連隊に改編(防衛省組織令等の一部を改正する政令(平成二十六年一月三十一日公布政令第二十号、防衛省HP))
  1. ^ 正確には旅団長たる大佐の職制上の地位(Positional Rank)であり、そのため海軍代将(Commodore)にならぞえて陸軍代将と和訳するケースも稀にある。
  2. ^ 近年ポルトガル陸軍でも、再び少将が充てられるようになった。
  3. ^ 第14戦車中隊は平成29年度末廃止予定

関連項目[編集]