新橋ストーカー殺人事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

新橋ストーカー殺人事件(しんばしストーカーさつじんじけん)とは、2009年8月に発生した殺人事件。被害者職業から「耳かき店員殺害事件」とも称されている。

概要[編集]

2009年8月3日午前8時50分頃、東京都港区西新橋民家で、耳かき専門店の女性従業員(当時21歳)とその祖母(当時78歳)が襲われる事件が発生。2人はなどを刃物で刺され、祖母はその場で死亡、女性従業員は意識不明の状態で病院に搬送されたが1ヶ月後の9月7日に死亡した。事件発生当時に現場にいた会社員の男(当時41歳)が逮捕された。

被害者の女性は東京都秋葉原の耳かき専門店で働く、いわゆる耳かき嬢であった。勤務していた店舗でナンバー1の人気嬢であり、多い時は1ヶ月に65万円の収入を得ていた[1]。一方、被疑者の男は2008年2月からこの耳かき専門店に通い始め、この女性従業員を指名し続けて店に通う頻度が上がり、最終的に同店で少なくとも200万円以上を費やした[2]。2009年4月5日、被疑者は女性従業員に店外で会うことを要求したとして店を出入禁止となり、その後、女性従業員にストーカー行為をするようになった。女性従業員が拒否を続けることで、被疑者の女性従業員に対する愛情が憎悪に変わり、8月3日、被疑者は、果物ナイフ包丁ハンマーを準備して女性従業員の自宅を訪れ、応対した祖母を1階の玄関先で刺した後、2階にいた女性従業員を刺した。

8月24日、被疑者は殺人および殺人未遂の疑いで東京地検によって起訴された。その後、女性従業員が死亡したことにより、起訴内容は2人の殺人容疑に変更された。

この事件は裁判員裁判の対象であり、裁判員裁判として初めて死刑求刑された裁判である(判決無期懲役が確定した)。

裁判[編集]

  • 2010年1月8日 : 東京地方裁判所にて、第1回公判前整理手続が行われた。
  • 2010年5月6日 : 第5回公判前整理手続において、被告精神鑑定実施を決定。その後、鑑定の結果、被告には完全責任能力があるとされた。
  • 2010年10月19日 : 東京地方裁判所にて初公判。裁判長若園敦雄。検察・弁護双方で事実関係の認定に相違はなく、また被告の責任能力にも争いはない。公判の中で検察は、被告の身勝手で一方的な性格や、被告に強い殺意があったことを主張した。それに対し弁護側は、被告が反省し、遺族からの損害賠償請求の申し出に応じる意思を示していること、耳かき店の中での被告と被害者の関係が良好であったことを述べた。
  • 2010年10月25日 : 検察側の論告求刑、弁護側の最終弁論が行われる。検察は、2人を殺害したこと、残虐性が高いこと、計画的犯行であること等を挙げ、死刑を求刑。弁護側は、計画性を否定し、被告が反省の意を示していること、前科が無いこと等から、死刑の回避を主張した。公判はこの日で結審し、翌日から4日間の評議が始まった。
  • 2010年11月1日 : 午後3時30分から判決公判。これは当初は午前11時開廷予定であったが、当日まで評議が終わらず午後に変更されたもの。判決は無期懲役。判決では、被告の身勝手さを認定するものの、祖母の殺害に計画性は認めなかった。また、被告の反省態度も一部認定し、無期懲役刑に処すこととなった。被害者遺族は反発し、検察に裁判の続行を依頼。一方、被告側弁護人は、控訴しない意思を表明した。
  • 2010年11月12日 : 東京地検が、本件に関して控訴しない方針を発表[3]
  • 2010年11月15日 : 控訴期限が到来。一審判決が確定した。

判決の詳細[編集]

東京地裁における一審判決
争点 検察の論告求刑 弁護側の最終弁論 判決
求刑 死刑 死刑回避を主張 無期懲役
事件に至る経緯 被告は自分に都合の悪いことは聞こうとしない一方的で身勝手な性格であり、そのことが犯行を生んだ。 被害者と良好な関係であった被告が、突然、店を出入禁止とされたことが原因である。意識野が狭窄し、抑鬱状態になり殺意が芽生えた。 身勝手で短絡的な動機ではあるが、他方、約1年間に渡る被告と被害者の表面上良好な関係も影響している。会うことを拒否されて抑鬱状態が悪化した末の犯行である。
祖母殺害に対する計画性 女性従業員は家族と同居しており、その事は被告も知っていた。女性従業員の自宅へ行けば家族と遭遇することは明らかであり、女性従業員以外の者を殺害することも充分予想されうるものであった。 祖母の殺害までは考えておらず、衝動的に行ったもの。 祖母の殺害に計画性は認められない。
遺族の被害感情 極めて峻烈であり、極刑を望んでいる。 (言及なし) 遺族が極刑を望むのは当然であり、理解できる。
情状等 真に反省しているとは言えない。 反省しており、被告本人および被告の母親も賠償を申し出ている。被告に前科は無く、20年間会社員として真面目に働いてきた。 不十分ではあるが、被告なりの反省が見受けられる。前科が無く、20年以上に渡り大きなトラブルなく働いていたことは斟酌すべき要素である。

脚注[編集]

関連項目[編集]

書籍[編集]