新型インフルエンザ等対策特別措置法

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新型インフルエンザ等対策特別措置法
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 特措法
法令番号 平成24年法律第31号
種類 医事法措置法
効力 現行法
成立 2012年平成24年)4月27日
公布 2012年(平成24年)5月11日
施行 2013年(平成25年)4月13日
所管 内閣官房厚生労働省
主な内容 新型インフルエンザ等の感染症に対する対策強化
関連法令 感染症予防法(感染症法)
条文リンク 新型インフルエンザ等対策特別措置法 - e-Gov法令検索
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新型インフルエンザ等対策特別措置法(しんがたインフルエンザとうたいさくとくべつそちほう、平成24年5月11日法律第31号)とは、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図ることで、国民生命及び健康を保護し、生活経済への影響を最小にすることを目的として制定された日本法律である。略して新型インフル特措法とも呼ばれる[1]。なお、本法は新型インフルエンザだけでなく、急激に流行して国民に重大な影響を及ぼすおそれのある新たな感染症が発生した場合にも対応できる(第2条第1号)。

概説[編集]

新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画、発生時における措置、新型インフルエンザ等緊急事態措置等を定めることにより、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(以下、感染症法)、検疫法予防接種法と相まって[2]、新型インフルエンザ等に対する対策の強化を図り、もって新型インフルエンザ等の発生時において国民の生命および健康を保護し、並びに国民生活及び国民経済に及ぼす影響が最小となるようにすることを目的とする(第1条)。

自然災害に備えた災害対策基本法や、テロリズムへの対処を定めた武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)をモデルに制定された[3]2013年平成25年)4月の施行以降、適用された例はなかった[4]が、2020年(令和2年)における新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延のおそれにより、一定期間、COVID-19を新型インフルエンザ等とみなすための法改正が行われ(後述)、本法に基づいた緊急事態宣言の発令等が実施された。

経緯[編集]

法の制定過程[編集]

2009年(平成21年)に世界的に流行したH1N1亜型インフルエンザウイルスへの対応が混乱したことを踏まえ、2010年(平成22年)3月より厚生労働省が講じた対策の総括を行い、今後のH1N1亜型インフルエンザの再流行時の対応及び鳥インフルエンザH5N1亜型)発生時の対策の見直しに活かすため、「新型インフルエンザ(A/H1N1)対策総括会議」が厚生労働省新型インフルエンザ対策推進本部の下に開催され[5]、2010年(平成22年)6月に厚生労働省に対する提言を取りまとめた。この中で、対策の実効性を確保するため、各種対策の法的根拠の明確化を図ることが提言された[6]

これを受けて、2011年(平成23年)11月10日の「新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザ等に関する関係省庁対策会議」で、新型インフルエンザ対策のために必要な法制度の論点整理について議論し、日本国政府で法整備が検討された[7]。2012年(平成24年)4月27日の参議院本会議で、民主党公明党などの賛成多数で可決、成立した。共産党社民党は反対し、自民党田中直紀防衛相及び前田武志国土交通相問責決議後の審議拒否中に法案が内閣委員会で採決されたことを理由に欠席した[8]。5月11日に本法が公布された[1][9]

結果、医療の確保を確かなものにするための「医療関係者に対する補償制度の創設」や「知事の権限」の法的根拠の明確化等が図られた。「知事の権限」については、全国知事会からの「災害対策基本法に類似した知事の権限を付与するなど、法的な整備を進めるべき」という強い要望があった[10]

公布の日から1年以内(2013年(平成25年)5月10日)で政令で定める日に施行と規定されており、中華人民共和国鳥インフルエンザH7N9亜型)の感染が広がったことを受け、予定より前倒しされ、施行日を定める政令[11]を同年4月2日に閣議決定し、同日の官報(特別号外第10号)で公布、翌13日に施行された[1][3]

新感染症への該当可否についての議論[編集]

COVID-19が(2020年3月の)改正前の本法上の「新感染症」とすることができるかどうかについて、2020年2月28日の衆議院財務金融委員会で、国民民主党日吉雄太委員への答弁として、内閣総理大臣安倍晋三は、対象となる感染症の種類が異なることを理由に、新型インフルエンザ等特別措置法の適用は「難しいと判断している」と法解釈を答弁した[12]厚生労働大臣加藤勝信は「何が原因か分からないものがあるための『新感染症』という規定だ。今回は新型コロナウイルスだと分かっており『新感染症』ではない」と説明した[4]。一方、3月13日の参院内閣委員会で、参考人として出席した尾身茂(政府の同感染症専門家会議の副座長、並びに地域医療機能推進機構理事長)は、同感染症を「新しい感染症」だとする意見を述べた[13]

新型コロナウイルス感染症への適用対象拡大[編集]

新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 新型コロナウイルス特措法、新型コロナ特措法
法令番号 令和2年法律第4号
種類 医事法特別措置法
効力 現行法
成立 2020年令和2年)3月13日
公布 2020年(令和2年)3月13日
施行 2020年(令和2年)3月14日
主な内容 新型コロナウイルス感染症を新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する新型インフルエンザ等とみなす
関連法令 感染症予防法(感染症法)
条文リンク 令和2年3月13日官報特別号外第27号
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2020年(令和2年)3月13日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)を改正法の施行日から最長2年間本法の対象とする旨の改正が行われ、翌14日に施行された[14]

以下、この改正に至る経緯を記述する。2019年(令和元年)12月以降、世界的に流行している新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、2020年1月の政令によって、感染症法に基づく指定感染症(感染症法6条8項)及び検疫法に基づく検疫感染症に指定された。

一方、この感染症について、政府は本法の対象となる「新感染症」には該当しないとの法解釈を採ることを表明し、その解釈を採る以上、COVID-19について本法は改正しなければ適用できないこととなった(解釈に関する議論について後述)。安倍晋三首相は2020年3月2日の第201回国会参議院予算委員会にて、本法をCOVID-19にも適用可能なように改正する方針を表明[15]3月4日の同委員会一般審議においても、改正した上で本法32条に基づく緊急事態宣言を発令できるようにする方針を改めて示した[16][17]

内閣は、2020年3月10日にCOVID-19の発生及びそのまん延により、国民の生命及び健康に重大な影響を与えることが懸念される状況に鑑み、2年を超えない範囲内において政令で定める日までの間、COVID-19を新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定する『新型インフルエンザ等』とみなし、同法に基づく措置を実施するために「新型インフルエンザ等対策特別措置法の一部を改正する法律案」を閣議決定し[18]、同日衆議院へ提出した[19]。3月11日に衆議院内閣委員会[19][20]、3月12日に衆議院本会議でそれぞれ可決され、参議院に送られた[19][21]。採決では、野党共同会派(立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム)の賛成方針に従わず反対票を投じたり、欠席する造反者が現れ、日本共産党は反対したことから、主要野党の足並みの乱れと報道された[22]3月13日参議院内閣委員会[23]及び参議院本会議にて可決され成立した[24][25]。同日付けの官報号外特第27号で公布[14]され、翌14日に施行された。

当初COVID-19を本法の適用対象とする期間は、政令[26]により(施行日から)2021年1月31日までと定められたが[27]、2021年1月7日に、緊急事態宣言が再度発令された際に政令改正[28]により、2022年1月31日までと改正された[29]。更に後述のとおり2021年2月13日の法改正で、期限の定めなく適用対象になった。

法案の審議において野党の要求で、各種対策を実施する場合においては、国民の自由と権利の制限は、必要最小限のものとすることなどを求める附帯決議衆議院20項目、参議院25項目)が、衆参の内閣委員会にてなされている[30][31]

新型コロナウイルス感染症対策の推進のための改正[編集]

新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律
日本国政府国章(準)
日本の法令
通称・略称 改正新型コロナウイルス特措法、改正新型コロナ特措法
法令番号 令和3年法律第5号
種類 医事法
効力 現行法
成立 2021年令和3年)2月3日
公布 2021年(令和3年)2月3日
施行 2021年(令和3年)2月13日
2021年(令和3年)4月1日
主な内容 新型コロナウイルス感染症対策を強化
関連法令 感染症予防法(感染症法)
条文リンク 令和3年2月3日官報特別号外第8号
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現下の新型コロナウイルス感染症の発生の状況等に鑑み、当該感染症に係る対策の推進を図るため、営業時間の変更の要請等を内容とする新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を創設し、併せて新型インフルエンザ等緊急事態措置において施設の使用制限等の要請に応じない者に対する命令を可能とするため[注釈 1]、新型インフルエンザ等対策特別措置法等の一部を改正する法律案が、2021年1月22日の閣議で決定され[33]、同日衆議院へ提出された[34]

衆議院での審議は、2021年1月29日に本会議において、西村大臣が趣旨の説明を行い、これに対する質疑が行われ[35]、内閣委員会に付託された[34]。1月29日、内閣委員会において、西村大臣から趣旨の説明が行われ、質疑が行われた[36]。2月1日、内閣委員会厚生労働委員会連合審査会において、質疑が行われ[37]内閣委員会において修正議決された[38]、2月1日の衆議院本会議で委員会修正のとおり可決[39]され、参議院へ送付された。賛成会派は、自由民主党・無所属の会、 立憲民主党・社民・無所属、 公明党及び日本維新の会・無所属の会、反対会派は、日本共産党及び国民民主党・無所属クラブであった[34]。衆議院での修正は、1月28日に自民党と立憲民主党との修正協議で合意されたもので、新型インフルエンザ等対策特別措置法に関しては、過料罰の額の引下げ等が主な内容である[40]

参議院での審議は、2021年2月2日に本会議において、西村大臣が趣旨の説明を行い、これに対する質疑が行われ[41]、内閣委員会に付託された[34]。2月3日、内閣委員会及び内閣委員会厚生労働委員会連合審査会において、質疑が行われ[42]、内閣委員会において、可決された、同日、参議院院本会議で可決[43]され成立した。参議院における会派別賛否は、コロナ対策のため押しボタン式投票に代わり起立採決となったため公式なHPから確認できない。改正法は、同日付けの官報号外特第8号で公布[44]され、附則第1条の規定により公布の日から起算して10日を経過した日である2月13日(一部の規定は4月1日)に施行された。

構成[編集]

  • 第1章 総則(第1条-第5条)
  • 第2章 新型インフルエンザ等対策の実施に関する計画等(第6条-第13条)
  • 第3章 新型インフルエンザ等の発生時における措置(第14条-第31条の3)
  • 第3章の2 新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置(第31条の4-第31条の6)
  • 第4章 新型インフルエンザ等緊急事態措置
    • 第1節 通則(第32条-第44条)
    • 第2節 まん延の防止に関する措置(第45条・第46条)
    • 第3節 医療等の提供体制の確保に関する措置(第47条-第49条)
    • 第4節 国民生活および国民経済の安定に関する措置(第50条-第61条)
  • 第5章 財政上の措置等(第62条-第70条)
  • 第5章の2 新型インフルエンザ等対策推進会議(第70条の2-第70条の10)
  • 第6章 雑則(第71条-第75条)
  • 第7章 罰則(第76条-第80条)
  • 附則

対象とする疾患[編集]

本法の対象とする「新型インフルエンザ等」とは、感染症法6条第7項に規定する「新型インフルエンザ感染症」と、感染症法6条第9項に規定する「新感染症」のうち「全国的かつ急速なまん延のおそれのあるもの」を指し、新型インフルエンザだけでなく、急激に流行して国民に重大な影響を及ぼすおそれのある、新たな感染症が発生した場合にも対応できる(第2条第1号)。

感染症法によれば、「新型インフルエンザ等感染症」とは、新型インフルエンザ[注釈 2]、再興型インフルエンザ[注釈 3]、新型コロナウイルス感染症[注釈 4]及び再興型コロナウイルス感染症[注釈 5]をいう。

また、「新感染症」とは、感染症法では、人から人に伝染すると認められる疾病であって、既に知られている感染性の疾病とその病状又は治療の結果が明らかに異なるもので、かかった場合の病状の程度が重篤であり、かつ、まん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。更に本法では「全国的かつ急速なまん延のおそれのあるもの」に限定されている。

2020年3月14日の法改正により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)についても最長2年間は対象とすることとなっていたが、2021年2月13日の法改正により、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、期限の定めなく適用対象になった。

行動計画の作成[編集]

日本国政府地方公共団体、指定された公共機関は、新型インフルエンザ等の発生に備え、行動計画を作成することとなっている(第6条から第9条)。

発生時の対応[編集]

新型インフルエンザ等の発生が確認された場合、内閣総理大臣は原則として政府対策本部を設置する(第15条第1項)。政府対策本部が設置されたときは、政府対策本部の名称並びに設置の場所及び期間を国会に報告するとともに、これを公示しなければならない(第15条第2項)。また、政府対策本部が設置されたときは、都道府県知事及び市町村長も対策本部を設置しなければならない(第22条、第34条)。また、医療従事者等へのワクチンの先行接種の指示が可能になる(第28条)。

新型コロナウイルス感染症対策本部の設置[編集]

新型インフルエンザ等対策特別措置法に規定される「政府対策本部」に移行した当日の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合(2020年3月26日総理大臣官邸にて)

2020年3月26日の持ち回り閣議で「新型コロナウイルス感染症対策本部の設置について」の一部改正についてが行われ、新型コロナウイルス感染症対策本部を新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものとした[45]。設置の公示は、2020年3月26日付官報特別号外第33号で行われた[46]

都道府県対策本部長による協力要請[編集]

第24条9項は「都道府県対策本部長は、当該都道府県の区域に係る新型インフルエンザ等対策を的確かつ迅速に実施するため必要があると認めるときは、公私の団体または個人に対し、その区域に係る新型インフルエンザ等対策の実施に関し必要な協力の要請をすることができる。」としている。この規定を用い、2020年に、新型コロナウイルス感染症に対応するため、一定の種類の施設の使用停止等の要請が行われ、緊急事態宣言以後ほとんどの都道府県において行われた(後述)。

2020年5月4日、国は内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室長名の事務連絡を各都道府県知事に発出し、緊急事態措置の維持及び緩和等に関して留意すべき事項を示した[47]。これは、特定警戒都道府県[48]および特定警戒都道府県以外の特定都道府県に区分して、緊急事態宣言延長後の措置についての留意すべき事項を示したものである。

まん延防止等重点措置[編集]

特定の地域において、国民生活および国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあるまん延を防止するため、「まん延防止等重点措置」を創設し、営業時間の変更等の要請、要請に応じない場合の命令、命令に違反した場合の過料を規定する。(第31条の4-第31条の6、第80条)

新型インフルエンザ等緊急事態[編集]

全国的かつ急速なまん延により、国民の生活および経済に甚大な影響を及ぼし、またはそのおそれがあるものとして政令で定める要件[49]に該当する事態となった場合、政府対策本部長(内閣総理大臣)は新型インフルエンザ等緊急事態宣言を行う。新型インフルエンザ等緊急事態宣言は、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間(2年以内、1年以内の延長可能)、新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき区域等を公示し、国会に報告するものとされている(32条)。単に緊急事態宣言と呼称する場合が多い。

新型インフルエンザ等緊急事態において、以下の措置が可能になる[50]

  • 外出制限要請、興行場、催物等の制限等の要請・指示(潜伏期間、治癒するまでの期間等を考慮)
    • 都道府県知事は住民に対し、生活の維持に必要な場合を除き外出の停止を要請できる(45条1項)。多数の者が利用する施設(学校社会福祉施設、建築物の床面積の合計が1,000平方メートルを超える劇場映画館体育館ショッピングセンター飲食店喫茶店[注釈 6]などにより)の使用制限・停止または催物の開催の制限・停止を要請することができる(45条2項)。正当な理由がないのに要請に応じないときは、特に必要があると認めるときに限り、要請に係る措置を講ずべきことを命令できる。この命令に違反した場合は、30万円以下の過料に処される(第79条)[注釈 7]。外出制限や使用制限の期間は、新型インフルエンザ等対策特別措置法の新型インフルエンザ発生後の制定当時は、最初の1-2週間が目安とされていた[53]。しかし2020年に、新型コロナウイルス感染症に対して発動された際は、これを超える最大50日近い期間が対象になった。
    • 休業命令違反に対して過料の制裁が2021年の改正で新設されたが。これに対して補償を行う旨の規定は設けられず、「影響を受けた事業者を支援するために必要な財政上の措置その他の必要な措置を効果的に講ずるものとする。」(第63条の2)と規定されたのみである。
  • 住民に対する予防接種の実施(国による必要な財政負担)
  • 医療提供体制の確保(臨時の医療施設等)
    • 臨時の医療施設を開設するため、土地や建物を権利者の同意なしに強制使用[注釈 8]することが可能である(49条)。
  • 緊急物資の運送の要請・指示
  • 医薬品、食品その他の政令で定める物資[54]の売渡しの要請・収用
    • 都道府県知事等は、新型インフルエンザ等の対応に必要な物資の売り渡しを業者に要請することができ、不当に応じない場合は強制収用[注釈 9]することも可能である(55条)。また、不当に売り渡しに応じなかった業者に対して、罰則を適用することができる(76条)。
  • 49条に基づく使用、55条に基づく収用の場合は「通常生ずべき損失を補償」が必要になる(62条1項)
  • 埋葬・火葬の特例(墓地、埋葬等に関する法律による、市町村長の火葬許可証のない状態での火葬の許容)[注釈 10]
  • 生活関連物資等の価格の安定(国民生活安定緊急措置法等の的確な運用)
  • 行政上の申請期限の延長等
  • 政府関係金融機関等による融資 等

ただし、個人自由権利の制限につながるおそれもあることから、法の制定の時点で、日本弁護士連合会日本ペンクラブが2012年3月に本法への反対声明を出すなど、慎重な運用を求める声もあった[53][56]。なお、第5条において、国民の自由と権利の制限は必要最小限のものでなければならないと定められている。また、法の制定の時に、野党であった自民党の要求で緊急事態宣言を恣意的に行わないことなどを求める附帯決議(衆議院11項目[57]、参議院19項目[58])が[4]、衆参の内閣委員会にて付けられている。

事例[編集]

2020年[編集]

2020年4月7日17時45分、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。19時より国民向け記者会見(NHK(日本放送協会)・民放各局によるテレビ・ラジオ放送及びYouTube Liveニコニコ生放送によるライブストリーミング配信にて生中継)を行った後、同日付官報特別号外第44号[59]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。

4月7日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、2020年4月7日から同5月6日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、埼玉県千葉県東京都神奈川県大阪府兵庫県及び福岡県の区域とされた。

4月7日より後、対象外とされた愛知県京都府など、自治体独自で緊急事態宣言[60]を行う自治体が見られた事と、各地で感染者の急増が止まらない状況を鑑み、同年4月16日、緊急事態措置を実施すべき区域が全都道府県の区域に拡大された。緊急事態措置を実施すべき期間については、既指定の7都府県を除いては、2020年4月16日から同5月6日までとされた(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年4月16日付官報特別号外第50号)[61][62]

政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針によると、4月16日の全都道府県の区域に拡大について、北海道茨城県石川県岐阜県、愛知県、京都府については、4月7日に指定された7都府県と同程度にまん延が進んでいるとして緊急事態措置を実施すべき区域に加えるとし、それ以外の県については「全都道府県が足並みをそろえて感染拡大防止の取組が行われることが必要である」との理由としている[48]

政府の新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針は、当初の7都府県及び同程度にまん延が進んでいるとした北海道、茨城県、石川県、岐阜県、愛知県、京都府の13都道府県を総称して、以下「特定警戒都道府県」とし、緊急事態措置として外出自粛等を求めるものとしている[48]

2020年5月4日、「当面、新規感染者を減少させる取組を継続する必要があるほか、地域や全国で再度感染が拡大すれば、医療提供体制への更なる負荷が生じるおそれもある」[63]として、緊急事態措置を実施すべき期間が、全都道府県を対象に、2020年5月31日まで延長された(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月4日付官報特別号外第58号)[64][65]

2020年5月14日、「感染状況の変化等について分析・評価を行い、後述する考え方を踏まえて総合的に判断」[66]として、北海道、埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、京都府、大阪府及び兵庫県は宣言を継続し、他の39県については緊急事態措置を解除した(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月14日付官報特別号外第63号)[67]

続いて5月21日、京都府、大阪府、兵庫県の緊急事態措置を解除(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月21日付官報特別号外第66号)[68][69]

最後に残された関東1都3県(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県)及び北海道も、5月25日、「改めて感染状況の変化等について分析・評価を行い、「区域判断にあたっての考え方」を踏まえて総合的に判断」[70]として、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認め、緊急事態が終了した旨を宣言した(「新型コロナウイルス感染症緊急事態解除宣言に関する公示」同年5月25日付官報特別号外第68号)[71]

2021年1月[編集]

2021年1月7日17時30分、再び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。前年の発令時同様18時より国民向け記者会見を行った後、同日付官報特別号外第1号[72]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。

1月7日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、2021年1月8日[注釈 11]から同2月7日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、埼玉県・千葉県・東京都及び神奈川県の区域とされた。

同年1月13日、栃木県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県および福岡県を対象区域に追加した。緊急事態措置を実施すべき期間については、既指定の一都三県を除いては、2021年1月14日から同2月7日までとされた(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年1月13日付官報特別号外第4号)[73]

同年2月2日、2月8日から栃木県のみを解除し[注釈 12]、残りの10都府県は3月7日までの延長を決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年2月2日付官報特別号外第7号[76]、訂正:2021年2月5日官報第427号[77]。合わせて状況が改善されれば期限前でも解除する事を表明。

同年2月26日、3月1日から[注釈 13]岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県、福岡県の緊急事態措置を解除することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年2月26日付官報特別号外第19号)[79]。これにより、緊急事態宣言の対象区域は、埼玉県・千葉県・東京都および神奈川県の区域となった。

同年3月5日、3月8日から緊急事態措置を実施すべき期間を3月21日まで延長することを決定。「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年3月5日付官報特別号外第21号)[80]

同年3月18日、緊急事態措置を実施する必要がなくなったと認め[注釈 14]、緊急事態措置を実施すべき期間とされている3月21日をもって[注釈 15]の緊急事態が終了する旨を公示した。(「新型コロナウイルス感染症緊急事態の終了に関する公示」同年3月18日付官報特別号外第24号)[81]

2021年4月[編集]

2021年4月23日、再び新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の全国的かつ急速なまん延による国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがある事態が発生したと判断したとして、本法32条1項に基づく緊急事態宣言を発令。同日付官報特別号外第38号[82]において、「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示」として公示された。

4月23日時点での緊急事態措置を実施すべき期間は、2021年4月25日から同5月11日まで。緊急事態措置を実施すべき区域は、東京都・京都府・大阪府及び兵庫県の区域とされた。

同年5月7日、5月12日から愛知県および福岡県を対象区域に追加し、期限を5月31日まで延長することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月7日付官報特別号外第41号)[83]

同年5月14日、5月16日から北海道・岡山県および広島県を対象区域に追加することを決定(「新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示」同年5月7日付官報特別号外第41号)[84]

財政上の措置等[編集]

国や都道府県による費用の負担についての規定の他、損失補償や損害補償等についても本法で規定している。国、都道府県は、検疫のためにやむを得ず特定病院等を同意なく使用する場合や臨時の医療施設開設のため、土地等を使用する場合等による損失を補償しなければならない。また要請や指示による医療等を行う医療関係者に対して、実費を弁償しなければならない(62条)。要請や指示による医療の提供を行う医療関係者が、そのため死亡や負傷した場合等は、損害を補償しなければならない(63条)。

施設の使用停止等の要請等[編集]

既述のとおり、都道府県知事は施設の使用停止等の要請(休業要請とも呼ばれる)、外出自粛要請を新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき行なうことができる。

物資の売渡しの要請・収用[編集]

2020年4月26日、時事通信は「高額マスク、政府が強制収用へ」と報道した[85]。「マスクの品薄が続く中、政府が高額販売などで「不当な利益」を得る事業者への対策を強化する方針を固めたことが25日、明らかになった」「新たな対策では、物流・小売業者がマスクの値上がりを見込んだ買い占めや売り惜しみをしていないか調査。「不当」と判断した場合、特措法55条に基づき、都道府県は売り渡し要請や収用措置が可能となる」との報道である[85]

この報道では、どのように明らかになったかは伝えていない。なお新型インフルエンザ等対策特別措置法第55条に基づく収用の場合、「当該処分により通常生ずべき損失を補償しなければならない」(第62条第1項)と規定されている。

2020年4月27日の官房長官は、記者会見で、売り渡しの要請などを行うことについても都道府県と連携しながら検討していきたい」と述べた[86][87][88][89][90]

2020年4月26日の報道に関する続報は、2020年6月2日現在、確認できない。また2020年4月27日の官房長官の発言にある検討についても報道や公式の発表についても同様に確認できない。

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 国会に提出された法案[32]の理由
  2. ^ 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
  3. ^ かつて世界的規模で流行したインフルエンザであってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの
  4. ^ 新たに人から人に伝染する能力を有することとなったコロナウイルスを病原体とする感染症であって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。
  5. ^ かつて世界的規模で流行したコロナウイルスを病原体とする感染症であってその後流行することなく長期間が経過しているものとして厚生労働大臣が定めるものが再興したものであって、一般に現在の国民の大部分が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう。)
  6. ^ 新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令の一部を改正する政令(令和3年政令第3号)[51]による新型インフルエンザ等対策特別措置法施行令の改正により「飲食店、喫茶店その他設備を設けて客に飲食をさせる営業が行われる施設」が対象に追加された。
  7. ^ 緊急事態宣言時には30万円以下の過料、「まん延防止等重点措置」では20万円以下の過料を科す[52]感染症法の改正で、感染者が入院を拒んだ場合に「50万円以下の過料」、保健所の調査を拒否した人へ「30万円以下の過料」(いずれも行政罰)にする[52]
  8. ^ 土地や建物については、所有権を移転する「収用」はできず、後に返還を前提とする「使用」のみが可能である。
  9. ^ 物資は消費されるため、所有権を移転する「収用」となっている。
  10. ^ 死後(または死産後)24時間以内の埋葬禁止の除外は、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づくものではなく、感染症予防法第30条第3項[55]に基づくものである。
  11. ^ 2020年の緊急事態宣言では、公示の日から実施(解除の場合も)とされており、公示当日のどの時点で有効になるか不明確であった。これに対し、2021年の緊急事態宣言では、実施すべき期間を公示の翌日からとすることで、その日の午前0時から適用されることが明確化された。また解除の場合も、改正の公示に適用開始日を明記して解除の前日まで有効であることを明記した。
  12. ^ 2月2日に改正された新型コロナウイルス感染症対策の基本的対処方針[74]には、「2月8日以降については、法第32条第3項に基づき、緊急事態措置を実施すべき区域を埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、岐阜県、愛知県、京都府、大阪府、兵庫県及び福岡県の 10 都府県に変更する」と明記され、国会への報告[75]においても「緊急事態措置を実施すべき期間を延長するとともに区域を変更することとし、令和3年2月8日から適用する」と記載されている。しかし2月2日付の新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言に関する公示の全部を変更する公示)[76]には、適用日の記載がなく、したがって法的には2月2日の公示以後、解除が発効している状態であったが、2021年2月5日官報第427号[77]において、原稿誤りとして「令和三年二月八日から適用する」との文言を含む形に訂正された。
  13. ^ 内閣総理大臣会見において「2月28日をもって解除[78]」と表明しているが、公示との整合性からこの「もって」は「限り」の意味と解されるので、「2月28日に解除」とすると不正確になるので、公示にあわせ「3月1日から」と記載する。
  14. ^ 終了の公示自体にはこの文言はないが、同日公示された対処方針にはその旨がある。
  15. ^ 2020年の緊急事態宣言では、公示の日から解除したが、2021年の時は、期限満了で終了とされた。

出典[編集]

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  55. ^ 一類感染症、二類感染症、三類感染症又は新型インフルエンザ等感染症の病原体に汚染され、又は汚染された疑いがある死体は、二十四時間以内に火葬し、又は埋葬することができる。
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関連項目[編集]

外部リンク[編集]