整体

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整体(せいたい)とは、脊椎骨盤肩甲骨四肢上肢下肢)など、からだ全体の骨格関節の歪み・ズレの矯正、骨格筋の調整などを、手足を使った手技と補助道具でおこなう技術体系およびその行為[1][2]医療制度から見れば補完代替医療の一種[3]制度からは医業類似行為の一種とされる。「整体術」・「整体法」・「整体療法」 とも呼ばれる。光線療法・温熱療法など周辺の技術を含め、以前から療術の一つとされてきた歴史[4] があり、今もそのように扱われる。

解説[編集]

現在の整体は多種多様である。日本武術柔術骨法などの流派に伝わる手技療法を中心とする整体、伝統中国医学の手技療法を中心とする整体、大正時代に日本に伝わったオステオパシーカイロプラクティックなどの欧米伝来の手技療法を中心とする整体、各団体の独自の理論や思想などを加えた整体などが存在する。 かつて柔術や骨法などでは、「正体」・「正體」・「整體」・「整胎術」 などと呼称されていた。なお、現在の整形外科学をベースとした柔道整復(接骨・整骨)とは、施術に対する思想、施術内容がまったく異なる。

整体師の資格[編集]

整体師は誰でも名乗ることができる。民間資格は存在するが、無資格でも問題は無い。

整体の医学的効果[編集]

2012年に代替医療の国際的な学術雑誌 Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine で、整体療術・鍼治療・マッサージ治療の効果が、3群でどのように違うかをくらべるランダム化比較試験の論文が、一般社団法人 日本鍼灸療術医学会より発表された。整体療術についての研究が国際的な学術雑誌に取り上げられるのはこれが初である。この論文で整体療術に客観的な効果のあることが確認され、医学的な効果が存在することが示唆された。また、整体療術群では他の2群に対して有意に筋緊張と VAS (Visual-Analogue-Scale) などの低下が観察された[5]

歴史[編集]

日本の柔術をはじめとする武術の中で 「活法」・「骨法」 として受け継がれてきた手技療法伝統中国医学推拿などの手技療法、大正時代に日本に伝わったオステオパシーカイロプラクティックなどの欧米伝来の手技療法と、当時の施術家たちの独自の工夫や独自の思想[6] などを加え、集大成したものが現在 「整体」 と呼ばれるものである。

整体創設の初期には整体のことを、「正体」・「正體」・「正胎」・「整胎術」 などと呼んでいた。これらの自己改善療法が、野口晴哉により 「整体」 と呼ばれるようになった。現在では野口の整体法は 「野口整体」 と呼ばれている。現在も整体は各営利団体によって更に変貌を続け、様々な独自の手法、独自の思想、独自の理論が展開されており、これらを統一した手技療法とすることは困難であるとされる。

しかし、2012年、Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine により発表された 「Randomized Comparison of the Therapeutic Effect of Acupuncture, Massage, and Tachibana-Style-Method on Stiff Shoulders by Measuring Muscle Firmness, VAS, Pulse, and Blood Pressure」 によると、ランダム化比較試験の1群として取り上げられた 「立花療術」 に、医学的根拠(エビデンス)が示唆されている。このことにより 「SEITAI=整体」 および 「RYOJUTSU=療術」 が国際的な医学論文に初めて記載された。[7]

施術の特徴[編集]

整体とは、体全体の骨格を形作る関節脊椎骨盤肩甲骨四肢関節等)の歪み・ズレの矯正と、骨格筋のバランス調整などを、主に手足を使った手技(道具は、あくまで補助として使用する)で施術することで体を整え、体幹から四肢への脈絡の流れを良くし、脈絡改善によって各症状の改善を期待する健康法であると言われている。

整体師の施術は、国家資格である柔道整復、あん摩、マッサージ、指圧とはまったく異なるものである。その施術は末梢が対象ではなく、中枢を対象にした施術である。施術自体は(整体)操法、整体療術とも呼ばれる。上記の国家資格である柔道整復・あん摩・マッサージ・指圧との違いが分かりにくいとの声もあるが、その技術体系はまったく異なる。

国家資格療術業との軋轢[編集]

整体師が医業類似行為を業として行うことに対して、1960年最高裁判所昭和35年1月27日大法廷判決が 「憲法22条は何人も公共の福祉に反しない限り職業選択の自由を有する」 ことを保証している。これが半世紀を経た今日まで 「人の健康に害を及ぼすおそれがない以上、法律に違反しない」 ため、業として行うことの事実上の根拠となっている。

しかし、主に国家資格者であるあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師医療従事者からは、「骨折脱臼神経麻痺などを起こすおそれがある。また、悪性腫瘍などの重大疾患が隠れているような場合に、医療機関への受診遅れにもつながりかねない。したがって、整体は 「人の健康に害を及ぼすおそれがある医業類似行為であり、国家資格化されずにこれを行うことは国民の利益に反する。」 「医業類似行為と人の健康に害を及ぼすおそれがないというのは矛盾する。良い方向へ作用するものは、悪い方向へも作用する可能性を秘めている。」 などと懸念されている(後述)。

整体は誰でも行うことができる、そのため国民は医学知識がある有資格者とそうでない者を判断する機会が与えられていない現状があるが、国民としてはそれを知る権利がある。最近では無資格者の施術による事故の報告が消費者センターにも数多く上がってきており、国家資格レベルの基礎医学知識を持った施術者であることを社会に示すことができる体系作りが急務とされている。これらの民間療法者に対する無資格問題に対し、国内で唯一となる国家資格に準ずるレベルの全国統一「基礎医学検定」を内閣府 厚生労働省管轄の一般社団法人 日本鍼灸療術医学会が行なっている。この全国統一「基礎医学検定」[8]は民間資格者の救済措置として2012年より行われており、同時に全国統一「基礎医学検定」講習会には全国から多くのセラピストが参加している。

医業類似行為として[編集]

医業類似行為を行なって良い者は、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師及び柔道整復師である(あん摩マツサージ指圧師、はり師、きゆう師等に関する法律 (あはき法) 第一条/第十二条)。それ以外の療術業は昭和二十三年四月一日迄に開業届を出した者だけである(旧「あん摩、はり、きゆう、柔道整復等営業法」第十九条)。

「あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう・柔道整復」 以外の医業類似行為については、「当該医業類似行為の施術が医学的観点から人体に危害を及ぼすおそれがあれば、人の健康に害を及ぼす恐れがあるものとして禁止処罰の対象となる」 とされている[9]

  • 整体師は医師法に定める医師でないため、「医師」 の名称使用は法で禁じられている(医師法第十八条)。ドクターの名称についても医師との紛らわしさを防ぐために、医療系のドクターでない旨専門分野を明らかにして表記しなくてはならないと厚生労働省の通知がある。
  • 整体師は医師ではないため、「病院」「療養所」「診療所」「診察所」「医院」、その他病院又は診療所に紛らわしい名称を付けることは法で禁じられている(医療法第三条)。
  • 整体師は医師ではないので診断を伴う診察を行うことはできない。具体的には医学で使用されている病名を判断してはならない(「胃潰瘍である」 とか 「腱鞘炎である」 など)。また外科的手術、注射はり(鍼)、マッサージ麻酔レントゲン撮影、さらには血圧を測ることも医師法など医療関連法により禁止されている。
  • 整体師は医師でないので投薬服用の指示は出来ない。
  • 整体師は薬剤師ではないので医薬品調合・交付出来ない。
  • 整体師は登録販売者ではないので一般用医薬品を販売出来ない。医薬品医療機器等法上薬ではない湿布様のもの(冷却シートなど)は販売可能。
  • 整体師はあん摩マッサージ指圧師はり師きゅう師及び柔道整復師ではないので、当該国家資格を持たない限りあん摩指圧マッサージ・はり・灸・接骨、整骨等は禁止されている。(あはき法第一条/第十二条、柔道整復師法)
  • 整体師は公的な資格ではない。昭和二十三年四月一日迄に開業届を出した者以外は医業類似行為は認められていない(あはき法第一条/第十二条/第十九条)。医業類似行為を行い、それが著しく好ましくない結果をもたらした場合、刑法の定める業務上過失傷害罪などに問われる。
  • 施術実績などの広告を出すこと、効果のある病名を掲示すること、「○○流□□派」 などの流派の誇示は、あはき法第七条によって禁止されている[10]

整体技術に対する見解について[編集]

厚生労働省では、「整体は指圧の類ではないか」 との疑義照会に対して、昭和47年7月9日付旧厚生省医務局長からの回答で 『整体は脊椎等の調整を目的とする点において、あん摩、マッサージ又は指圧と区別される。従って、あん摩、マッサージ又は指圧に含まれないものと解する』 と回答している[要検証 ]。 しかし、特にチェーン展開のスーパー銭湯内の整体店などで多く見られるが、法逃れの為に整体の看板を隠れ蓑に客を寝かせ安易にアルバイトが背中や腰を押すだけと言った、実質的にマッサージ行為を行っている違法の悪質業者も多く散見するのも事実である。

禁忌対象疾患[編集]

整体術(カイロプラクティックなど)の対象とすることが適当でない疾患として、厚生労働省通達[11]において、腫瘍性、出血性、感染性疾患、リュウマチ、筋萎縮性疾患、心疾患等とされている。さらに、椎間板ヘルニア、後縦靭帯骨化症、変形性脊椎症、脊柱管狭窄症、骨粗しょう症、環軸椎亜脱臼、不安定脊椎、側彎症、二分脊椎症、脊椎すべり症などと明確な診断がなされているものについては、注意が必要である。また「免疫力を高める(アトピーが治る)」「脳の成長の促進」「夜泣きが減る」などと謳った乳幼児に対する施術は医学的根拠に乏しい[12]

出典[編集]

  1. ^ 通常医療の診断において「骨盤のずれ、歪み」は緊急を要する重傷扱いになっている。
  2. ^ 日本側彎症学会では、手技による脊椎側彎症への施術、側弯角度の改善・完治に関して医学的な根拠は無いとの立場を取っている。生活に支障をきたす背骨の歪みなどは矯正装具や外科手術による治療が行われる。
  3. ^ 代替医療の項を参照。
  4. ^ 井村宏治『霊術家の饗宴』。
  5. ^ Randomized Comparison of the Therapeutic Effect of Acupuncture, Massage, and Tachibana-Style-Method on Stiff Shoulders by Measuring Muscle Firmness, VAS, Pulse, and Blood Pressure (Kazuhiro Tachibana, Noriyuki Ueki, Takuji Uchida, Hiroshi Koga 2012  ) (“Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine Volume 2012”). Text
  6. ^ 例えば、高橋迪雄『正體術矯正法』。
  7. ^ 【療術師】立花和宏著『伝説の療術師からセラピストたちへ』
  8. ^ 一般社団法人 日本鍼灸療術医学会, 全国統一「基礎医学検定」について.
  9. ^ いわゆる無届医業類似行為に関する最高裁判所の判決について 昭和35年3月30日 医発第247号の1 各都道府県知事あて厚生省医務局長通知
  10. ^ あん摩師、はり師、きゆう師及び柔道整復師法違反, 刑集第15巻2号347頁 (最高裁判所大法廷  昭和36年02月15日).
  11. ^ 平成03年06月28日 医事第58号
  12. ^ 施術後に乳児が死亡…「免疫力高める」首ひねり読売新聞 2014年09月06日

参考文献[編集]

初出順。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

【1】私は如何にして東洋医になりしか、2012年8月18日(土)放送
【2】東洋医学の大いなる未来、2012年8月25日(土)放送