教員資格認定試験

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教員資格認定試験(きょういんしかくにんていしけん)とは、文部科学省、または文部科学省が委嘱する大学が実施する教員資格の認定試験のことである。合格者には試験の種類に応じた教諭普通免許状が授与される。教育職員免許法の第16条の2に定めがあり、授与申請も16条2の規定に沿って各都道府県に行う形となる。

概要[編集]

教員資格認定試験(以下「認定試験」)の制度は、教職課程を修了していなくても教員としての資質、能力を有する者に教員免許を与える機会を開くためのもので、「広く一般社会に人材を求め、教員の確保を図る」ことが目的となっている[1]

現在、教員資格認定試験規程(文部科学省令)には、

  • 幼稚園教員資格認定試験
  • 小学校教員資格認定試験
  • 高等学校教員資格認定試験
  • 特別支援学校教員資格認定試験

が定められている(中学校学校種はない)。ただし、2004年度(平成16年度)以降の高等学校教員についての認定試験は、文部科学省により、当分の間行わないと、されているため現在のところ「幼稚園教員資格認定試験」「小学校教員資格認定試験」「特別支援学校教員資格認定試験」の3学校種における試験が行われている。

出題レベルは、教員採用試験などに比べると高めに設定されており、特に教科に関する科目ではより専門的に深く出題されている。

認定試験の合格者は試験の実施機関(大学)より授与される合格証書を元に、居住地の都道府県の教育委員会に申請を行うことで普通免許状が授与される。なお、教員免許更新制の導入に伴い、認定試験に合格後10年を経過してから免許状の申請を行う場合(例えば、合格したのに免許状の申請をしないまま10年を経過したなど)については、教員免許更新制と同様の講習を修了しなければ免許状が授与されないことになった(教育職員免許法第16条の2第2項)。

免許状取得後は、教職課程の修了者と同様に教員採用試験を受験できることはもちろん、常勤・非常勤講師として採用されることも可能である。また、認定試験に合格する前であっても、免許状の「取得見込み」(認定試験の合格見込み)の条件で採用試験の受験が可能となっている教育委員会もある(ただしこの場合、認定試験が不合格になると採用試験の結果は取り消される)。

なお、この認定試験は、教員採用試験(以下「採用試験」)とよく似ているものの、あくまでも資格を与えるための試験(以下「資格試験」)なので、教員を採用するための試験採用試験)ではない。したがって、教員としての採用を希望される場合は、都道府県教育委員会などが行う教員採用試験に別途、合格する必要がある

教員資格認定試験により取得できる免許状
種類 区分 受験資格 科目・種目 備考
幼稚園教諭 二種 高卒・20歳以上かつ、保育士として3年以上の実務経験者 2005年から開始
小学校教諭 二種 高卒・20歳以上 全科  
高等学校教諭 一種 高卒・22歳以上 11科目(一部領域) 2004年以降当分の間休止
特別支援学校
自立活動教諭
一種 高卒・22歳以上 4種目 旧特殊教育教員資格認定試験

試験の沿革 [2][編集]

  • 1964年 高等学校(柔道、剣道、計算実務)開始
  • 1973年 高等学校(看護、インテリア)追加、小学校開始、特殊教育(聴覚障害、肢体不自由、言語障害)開始
  • 1974年 高等学校(デザイン)追加
  • 1975年 高等学校(建築)追加
  • 1989年 特殊教育(視覚障害)追加
  • 1994年 高等学校(情報技術、情報処理)追加
  • 2000年 高等学校(情報、福祉)追加、特別支援(自立活動4種)名称変更
  • 2004年 高等学校休止
  • 2005年 幼稚園開始

試験の内容[編集]

幼稚園教員資格認定試験[編集]

幼稚園教員資格認定試験とは、幼稚園教諭二種免許状の授与を受けるための資質を審査するための認定試験のことである。

規制改革推進3か年計画(平成15年3月28日閣議決定)を踏まえ、幼稚園と保育所の連携を一層促進する観点から保育士として3年以上の実務を有する経験者が幼稚園教諭免許状を取得する方策として実施されている試験である。

2005年から新設された試験である。

平成17年度の実施内容

  • 1次試験
    • 一般教養科目
    • 教職に関する科目(I)
    • 教職に関する科目(II)
  • 2次試験
    • 教職に関する科目(III)
    • 指導案の作成に関する試験

小学校教員資格認定試験[編集]

小学校教員資格認定試験とは、小学校教諭二種免許状の授与を受けるための資質を審査するための認定試験のことである。

中央教育審議会初等中等教育分科会教員養成部会第58回(平成21年5月18日)の会議資料として、「小学校教員資格認定試験の見直しについて」において「当分の間、休止とすること」とされ、活発な議論が行われた。

平成17年度の実施内容

  • 1次試験
    • 一般教養科目
    • 教職に関する科目(I)
    • 教職に関する科目(II)…9教科から6教科を選択。ただし、6教科中、「教職に関する科目(III)」で受験を希望する2教科(図画工作音楽体育のなかから最低2教科をあらかじめ選択)を必ず含めなければならない。
  • 2次試験
    • 教科に関する科目…論述問題。9教科から1教科選択。
    • 教職に関する科目(III)…実技試験。3教科中2教科を選択。
    • 口述試験
  • 指導の実践に関する事項に係る試験
    • 2次試験通過者を対象として実施され、実技試験等により小学校における指導実践に関して審査される。ただし、教育職員免許状をすでに授与されたものなどは免除対象となるため、2次試験合格を以って教員資格認定となる(「3次試験」と称さないのはこのため)。

特別支援学校教員資格認定試験[編集]

特別支援学校教員資格認定試験とは、特別支援学校自立活動教諭一種免許状(視覚障害教育)、特別支援学校自立活動教諭一種免許状(聴覚障害教育)、特別支援学校自立活動教諭一種免許状(肢体不自由教育)または特別支援学校自立活動教諭一種免許状(言語障害教育)の授与を受けるための資質を審査するための認定試験のことである。

なお、試験の実施種目により隔年実施されているものもある。

2006年、特別支援学校制度の創設によって、それまでの「特殊教育教員」という資格名称は「特別支援学校教員」と改められた。

平成19年度の実施内容

  • 1次試験
    • 一般教養科目
    • 教職に関する科目
    • 自立活動に関する科目(I)
  • 2次試験
    • 自立活動に関する科目(II)
    • 自立活動に関する科目(III)
    • 口述試験

高等学校教員資格認定試験[編集]

看護、情報、福祉、柔道(保健体育の一部領域)、剣道(保健体育の一部領域)、情報技術(工業の一部領域)、建築(工業の一部領域)、インテリア(工業の一部領域)、デザイン(工業の一部領域)、情報処理(商業の一部領域)、計算実務(商業の一部領域)の免許について試験が行われていた。教科・科目によっては隔年実施のものもあった。

現在は特別免許状の活用という名目で試験は実施されていない。名目上は「平成16年度以降の高等学校教員資格認定試験については当分の間行いません」(文部科学省HP)との休止の表現を使っているが、制度の廃止には法令改正が必要となるための措置で、事実上の廃止とも見られている(文部科学省による不作為の状態)。 しかし、高等学校教員資格認定試験制度の代替となる特別免許状の制度は、不透明な推薦制度や、効力が特定地域に限定されるなど制限も多く、ほとんどの県で実施されていない。普通免許(高等学校教諭一種)を与えるための高等学校教員資格認定試験制度と異なり、代替できる根拠に乏しいのが実情である[3]

なお、休止されている試験のうち、看護情報福祉に関しては、実習を担任する教諭(実習教諭)の普通免許状を、教育職員検定(教育委員会が実施)に合格することで取得することも可能である。検定を受けることが出来る所要資格は、実習に係る実業に関する学科を専攻して学士学位を有し、一年以上その学科に関する実地の経験を有する者(民間の企業や施設等における実地の経験で技術優秀)となっている。授与される免許状の種類・区分は高等学校教諭一種(当該実習)である(教育職員免許法「別表第5」・高校一種・イ。情報実習、福祉実習については2000年に同表に加えられた)。

試験の免除[編集]

次の条件を満たす場合に科目ごとに試験の全部または一部が免除される。

一般教養科目
大学(小学校教員資格認定試験または幼稚園教員資格認定試験の場合は、短期大学でもよい)を卒業している場合[4]、は、この科目が免除されていた。また、小学校教員資格認定試験と幼稚園教員資格認定試験に限り、大学に2年以上在学し、かつ、62単位以上を修得した者または、高等専門学校を卒業した者もこの科目が免除されていた。
このほか、すでに教員免許状(普通免許状に限る)を授与されている者も、この一般教養科目の試験が免除されていた。高等学校教員資格認定試験または特別支援学校教員資格認定試験(かつての特殊教育教員資格認定試験を含む)の場合では、幼稚園教員小学校教員中学校教員高等学校教員のいずれかの普通免許状[5]を授与された者が、また、小学校教員資格認定試験または幼稚園教員資格認定試験の場合では、幼稚園教員小学校教員中学校教員高等学校教員特別支援学校教員(かつて授与されていた養護学校教員、盲学校教員、聾学校教員を含む)、養護教諭栄養教諭のいずれかの普通免許状[6]を授与されている者が、それぞれこの一般教養科目の試験を免除されていた。
ただし、平成25年度の教員資格認定試験をもって、一般教養科目の試験の実施は廃止された(したがって、平成26年度の教員資格認定試験以降、一般教養科目の試験は全員免除ということになる)。
教職に関する科目(一次試験のみ)
前年度の一次試験に合格していれば免除される。したがって、前年度一次試験合格者は二次試験からの受験でよい。
ただし、小学校教員資格認定試験の場合は平成24年度からこの一次試験免除制度が中止された為、全員が一次試験を受けなければならない。
特別支援学校自立活動の試験(二次では当該科目の設定はない)の場合は、小学校教員中学校教員高等学校教員のいずれかの免許状ないしは受験領域以外の特別支援学校自立教科の免許状を授与されている場合は免除となる。
教科に関する科目
当該分野に関連した資格(実施要綱で指定されたもの)を取得している場合、この科目の一部が免除される。
自立活動に関する科目(特別支援学校教員)
Iについては、特別支援学校自立教科(受験領域とは別の領域)の免許状を授与された者は免除となる。
IIIについては、言語聴覚士等の有資格者は、免許状の種類の関連教育分野にかかわる科目が免除される。
教職に関する科目(III)
幼稚園教諭普通免許状を有する者に対しては、この試験の全部を免除される。
音楽の教科についての中学校教諭又は高等学校教諭の普通免許状を有する者に対しては、音楽を免除される。
美術の教科についての中学校教諭の普通免許状又は美術若しくは工芸の教科についての高等学校教諭の普通免許状を有する者に対しては、図画工作を免除される。
保健体育の教科についての中学校教諭又は高等学校教諭の普通免許状を有する者に対しては、体育を免除される。
口述試験(小学校教員資格認定試験と特別支援学校教員資格認定試験に限る)
いずれかの教育職員免許状(特別免許状または臨時免許状を含む)を授与された者は、免除される。
指導の実践に関する事項に係る試験(小学校教員資格認定試験の場合)
教育職員免許状(普通免許状に限る)[7]を授与された者、ないしは、当該試験の2週間前までに2単位以上の教育実習の受講済みの証明が提出できるもの、あるいは3年以上の教員経験を有する者のいずれかに該当する場合は、免除となる。
指導案の作成に関する試験(幼稚園教員資格認定試験の場合の場合)
教育職員免許状(普通免許状に限る)[8]を授与された者、ないしは、当該試験の2週間前までに2単位以上の教育実習の受講済みの証明が提出できるもの、あるいは3年以上の教員経験を有する者のいずれかに該当する場合は、免除となる。


 なお、上記の試験の一部または全部の免除を希望する場合には、教員の普通免許状の授与証明書又は教員の普通免許状の写し、卒業証明書又は卒業証書の写し、単位習得証明書、実務に関する証明書などの免除事由に該当することを証明する書類を必ず添付する必要がある(教員の普通免許状又は卒業証書等の写しを提出する場合は、学校長又は勤務先の長などの、原本に相違ない旨の証明の書き添えのあるものとする)。

 また、上記の試験の一部または全部を免除する条件に該当する場合であっても、願書提出時に「試験科目等の一部免除書類」を提出しない者は、試験の一部または全部がいかなる場合があっても、免除されないことになっている。

受験者の傾向[編集]

教職課程を受けていない人に門戸を広げている教員資格認定試験だが、受験者の中には教育学部系の学生など、本来の趣旨を逸脱した受験者も多数いる。

また、平成15年度まで実施されていた「高等学校教員資格認定試験」では実施教科に関連した分野の民間企業などに従事する社会人も多数受験したが合格率は5%前後の低いものであった。

幼稚園教員資格認定試験は幼保一元化を受けてできた制度である。そのため、受験には、保育士として3年以上の従事期間を必要とする。そういった条件もあり、現職の保育士の受験生も数多い。短大卒業以上の学歴があれば一般教養試験を免除となるがこれまでの試験では一般教養試験を受験した受験生の合格率は他の認定試験に比べて極端に低い。

教員資格認定試験にて免許状の授与を受けた後の1種などへの移行(変更)方法[編集]

幼稚園・小学校の場合[編集]

認定試験で幼稚園小学校の免許状を取得した場合、現職教員であれば、その後の勤務経験(教育職員検定を活用)により、免許法別表3にて1種免許状への移行が可能である。

また、教員経験が少ない、または無い者が、免許法別表1に基づいて幼稚園または小学校の免許状を変更(1種免許状取得)する場合、施行規則第十条六の第1項が適用され、2種に必要な単位を修得済みとみなされる。そのため1種の法定単位と2種の法定単位の差分のみが法定上最低限必要な単位数となる(つまり、介護等の体験教育実習等の単位はあたらめて取得する必要はない。1種にしてから専修免許状へ移行する場合も同様)。小学校1種の場合は、教職に関する科目の第4欄が8単位不足するため、それを充当すればよい(ただし大学によってはこの規定に沿った単位修得を認めない場合もある)。

特別支援学校の場合[編集]

認定試験で特別支援学校の免許状を取得した場合、自立活動教員の普通免許状が1種のみであるため、教育職員検定を利用しても、修士学位を有する者も含めて専修免許状へ移行することはできない。

(参考)高等学校の場合[編集]

現在は基本的に実施されていないものの、認定試験で高等学校の免許状を取得した場合、現職教員であれば、その後の勤務経験(教育職員検定を活用)により、免許法別表3にて専修免許状への移行が可能である。

備考(介護等の体験について)[編集]

教員資格認定試験によって、小学校教諭免許を取得する場合、基本的に介護等の体験は免除されるが、特別支援学校教諭免許または小学校教諭免許を取得してから、新規に中学校教諭の免許状教育職員免許法第5条の規定に基づいて取得する場合は、原則として介護等の体験が必要である。また、この教員資格認定試験によって特別支援学校教諭免許を受けた者が、教育職員免許法第5条に基づいて小学校または中学校教員免許状を取得する場合、特別支援学校教諭の免許状を受けているとしても、介護等の体験が免除されない場合がある。

脚注[編集]

  1. ^ 教員資格認定試験の受験案内(文部科学省)より
  2. ^ 教員資格認定試験の経緯(「小学校教員資格認定試験の見直しについて」文部科学省)
  3. ^ 特別免許状の授与件数は年間最小0件~最大38件(高等学校のみ。文部科学省初等中等教育局教職員課)
  4. ^ 厳密には、別表第1の基礎資格である学士の学位ないしは短期大学士の学位を有する状態を指す。
  5. ^ 具体的には、幼稚園教員小学校教員中学校教員高等学校教員のいずれかの1種以上(かつての1級または専修を含む)の普通免許状または、高等学校教員の2級普通免許状を授与されている者だった。
  6. ^ 具体的には、小学校教員資格認定試験の場合では、幼稚園教員中学校教員高等学校教員養護教諭、養護学校教員、盲学校教員、聾学校教員のいずれかの1種以上(かつての1級または専修を含む)の普通免許状、特別支援学校教員栄養教諭の1種以上(専修を含む)の普通免許状、高等学校教員の2級普通免許状を授与されている者だった。幼稚園教員資格認定試験の場合では、小学校教員中学校教員高等学校教員養護教諭、養護学校教員、盲学校教員、聾学校教員のいずれかの1種以上(かつての1級または専修を含む)の普通免許状、特別支援学校教員栄養教諭の1種以上(専修を含む)の普通免許状、高等学校教員の2級普通免許状を授与されている者だった。
  7. ^ 具体的には、幼稚園教員中学校教員高等学校教員特別支援学校教員(かつての養護学校教員、盲学校教員、聾学校教員のいずれかを含む)、養護教諭栄養教諭の普通免許状(いずれの場合も、かつての1級または2級の普通免許状を含む。ただし、特別支援学校教員と栄養教諭の場合は、専修、1種、2種のいずれかの普通免許状に限る。)を授与された者は、この指導の実践に関する事項に係る試験を免除される。
  8. ^ 具体的には、小学校教員中学校教員高等学校教員特別支援学校教員(かつての養護学校教員、盲学校教員、聾学校教員のいずれかを含む)、養護教諭のいずれかの普通免許状(かつての1級または2級普通免許状を含む。ただし、特別支援学校教員の場合は、専修、1種、2種のいずれかの普通免許状に限る。)を授与された者は、この指導案の作成に関する試験を免除される。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]