択捉島沖地震
択捉島沖地震(えとろふとうおきじしん)では、択捉島及びその周辺を震央とする地震について記述する。日時は全てUTC+10による。
1780年南千島地震
[編集]1780年6月29日(安永9年5月26日)、ウルップ島沖(北緯45度30分 東経151度30分 / 北緯45.500度 東経151.500度)付近を震央とするM 8.2の地震が発生し、大規模な津波を伴った。津波高はウルップ島で10-12m、エトロフ島北部で10m、シムシル島で7m、ケトイ島で5mと推定されている[1]。
この地震の約5ヶ月前の1780年1月19日(安永8年12月23日)にもウルップ島沖でM 7程度の地震が起きたとされている[2]。
1918年地震
[編集]1918年9月8日に発生したMw 8.0 - 8.3の海溝型地震。2006年千島列島沖地震 (Mw 8.3) の前回活動である可能性がある[3]。静岡県沼津市まで人間が感じることができる揺れ(有感)が伝わった。6 m から12 m の津波が発生し、得撫島岩美湾では地震発生後35分で津波が来襲し家屋は全滅、当時の住民63名の中で24名が死亡した。根室で1 m、花咲で0.5 m、三陸海岸で1 m以下の津波を観測。
最大余震は2ヶ月後の同年11月8日に発生したM 7.9の地震。花咲と鮎川で弱い津波を観測し、父島で0.5メートルの津波を観測[4]。
1958年択捉島沖地震
[編集]1958年11月7日7時58分に発生したスラブ内地震。Mjma 8.0、Mw 8.1 - 8.3。択捉島、色丹島で5 m近い津波を観測。択捉島から福島県相馬市までの広い範囲で津波を観測[5]。
1963年択捉島沖地震
[編集]1963年10月13日15時18分に択捉島沖(北緯43度45分 東経149度58分 / 北緯43.750度 東経149.967度)を震央として発生したプレート境界型地震。北海道の帯広、浦河、襟裳岬、静内で最大震度4を観測。Mjma 8.1、Mw 8.2[6] - 8.5[7]。すべり域は震源の北東側にユニラテラルに伸び、2006年千島列島沖地震のすべり域に隣接すると推定される[8]。
各地の震度
[編集]震度3以上を観測した気象官署は次の通り。
震度 | 都道府県 | 観測点 |
---|---|---|
4 | 北海道 | 帯広・浦河 |
3 | 北海道 | 苫小牧・広尾・釧路・根室 |
青森県 | 青森・むつ | |
岩手県 | 盛岡 |
津波
[編集]ウルップ島で5 m、択捉島で4 m、花咲で1.21 m、釧路で0.9 m、根室で1.2 m、青森県八戸で1.3 mの津波を観測[9]。択捉島から宮城県塩竈市までの広い範囲で津波を観測。三陸海岸で津波による漁業施設の小被害が出る。
前震
[編集]本震が発生する約18時間前の10月12日21時27分にMw 7.0の前震が発生している[7]。
余震
[編集]本震から約1週間後の10月20日にMw 7.2 - 7.9 (Mjma 6.7, Mt 7.9) の最大余震が発生した。ウルップ島で10 - 15 m、択捉島で7 - 8 m、八戸で0.5 mの津波を観測。本震と比べて震源沿岸で局地的に津波が大きかった。
1978年択捉島沖地震
[編集]3月
[編集]択捉島沖を震央として、1978年3月23日13時15分に発生したMw 7.5の地震と、3月25日5時47分に発生した Mw 7.6の海溝型地震。3月22日10時50分にMw 6.7の地震が発生以降地震活動が活発化し、Mw 7.5の地震までにM 6以上が4回、M 5以上が19回発生していた[7]。
12月
[編集]12月7日0時2分ごろ、択捉島付近震央の深さ100kmを震源とするMjma 7.2 (Mw 7.8) の地震が発生した。この地震によって北海道と東北で最大震度4を、関東、中部、近畿、中国地方で有感となった。
1991年ウルップ島沖地震
[編集]1991年12月22日にウルップ島沖(北緯44度31分59秒 東経151度19分16秒 / 北緯44.53306度 東経151.32111度)を震央として発生した海溝型地震。規模は Mw 7.6。釧路と浦河で震度2を観測した[10]。本震から約15日前の12月7日にMw 6.0の地震が発生以降活動が活発化し、M 6以上が7回、M 5以上が39回発生していた。最大前震は12月19日のMw 6.8[7]。
なお、この地震では、17時52分に2区(北海道太平洋沿岸)に津波注意報が発表されたが、北海道では津波は観測されず、父島(東京都)で15cmの津波を観測した。注意報は19時30分に解除[10]。
1995年択捉島沖地震
[編集]1995年12月4日に択捉島沖(北緯44度40分 東経149度18分 / 北緯44.667度 東経149.300度)を震央として発生した海溝型地震。規模はMw 7.9。釧路・浦河・厚岸・むつで震度2を観測した[10]。9日前の11月25日にM 6.6の地震が発生したのをきっかけに地震活動が活発化しており、本震までにM 6以上が4回、M 5以上が23回発生していた。最大余震は本震から約2か月後の1996年2月8日に発生したMw 7.2[7]。
なお、この地震では、3時07分に2区に、3時09分に4区(東北地方太平洋側)に、3時14分に7区(茨城県~千葉県野島崎)と8区(東京湾~静岡県沿岸と伊豆諸島)にそれぞれ津波注意報が発表され、根室花咲港で17cm、八戸で13cm、銚子で6cmの津波を観測した。注意報は6時00分に解除[10]。
2020年択捉島南東沖地震
[編集]2020年2月13日19時33分に択捉島南東沖(北緯45度3分 東経149度10分 / 北緯45.050度 東経149.167度)を震央として発生した地震。深さは155km、規模はMjma 7.2[11]。この地震によって北海道で最大震度4を観測[11]。
震度3以上を観測した地点は次の通り[11]。
震度 | 都道府県 | 観測点名 |
---|---|---|
4 | 北海道 | 標茶町・標津町北2条・別海町常盤・別海町本別海・根室市落石東・根室市珸瑶瑁 |
3 | 北海道 | 函館市泊町・函館市新浜町・清里町羽衣町・新冠町北星町・浦河町潮見・様似町栄町・十勝池田町西1条・浦幌町桜町・釧路市幸町・釧路市黒金町・釧路市阿寒町中央・釧路市音別町中園・釧路町別保・厚岸町尾幌・厚岸町真栄・浜中町湯沸・浜中町茶内・標茶町川上・鶴居村鶴居東・白糠町西1条・中標津町丸山・羅臼町岬町・別海町西春別・根室市弥栄・根室市牧の内・根室市厚床 |
青森県 | 平内町小湊・八戸市湊町・八戸市内丸・八戸市南郷・野辺地町田狭沢・野辺地町野辺地・七戸町森ノ上・東北町上北南・五戸町古舘・五戸町倉石中市・青森南部町苫米地・階上町道仏・おいらせ町中下田・むつ市大畑町中島・東通村砂子又蒲谷地・東通村砂子又沢内 | |
岩手県 | 盛岡市薮川・二戸市浄法寺町・八幡平市田頭・軽米町軽米・矢巾町 | |
宮城県 | 涌谷町新町裏・登米市迫町・石巻市桃生町 |
この他、北海道地方から東海地方にかけて震度2〜1を観測。
評価
[編集]地震調査研究推進本部による将来の地震発生の可能性は、次の様に評価されている。
- 地震の規模 : Mjma 8.1 前後
- 地震発生確率: 30年以内に、60% - 70%
- 地震後経過率: 0.76
- 平均活動間隔: 72.2年
出典
[編集]- 地震調査研究推進本部
- 択捉島沖
- “海溝型地震の長期評価の概要”. 2011年8月5日閲覧。。
脚注
[編集]- ^ 羽鳥徳太郎 (2007). “南千島~北海道東部間の歴史津波の規模と波源域” (PDF). 歴史地震 22: 151-155 2017年8月23日閲覧。.
- ^ 中西一郎 (2013). “[講演要旨 北海道と周辺の歴史地震史料:安永八年,九年(1780年)得撫(ウルップ)島沖地震”] (PDF). 歴史地震 28: 169 2017年8月23日閲覧。.
- ^ 谷岡勇市郎・西村裕一・中村有吾 (2008年). “北海道・南千島での巨大地震発生サイクルの解明”. 北海道大学大学院理学研究科. 2017年2月10日閲覧。
- ^ 択捉島沖 - 地震調査研究推進本部
- ^ 1958年択捉島沖地震(プレート内地震) Archived 2011年10月28日, at the Wayback Machine.
- ^ 択捉島沖の地震 (PDF) [リンク切れ]
- ^ a b c d e “Search Earthquake Catalog”. アメリカ地質調査所. 2018年1月1日閲覧。
- ^ 北海道から千島列島沖で発生した過去の海溝型巨大地震の震源過程解明 - 谷岡勇市郎, 北海道大学, 地震調査研究推進本部
- ^ 18.エトロフ島沖地震(1963年)
- ^ a b c d 津波予報の記録3(1990.01~1999.03)
- ^ a b c “気象庁|震度データベース検索 (地震別検索結果)”. www.data.jma.go.jp. 2020年2月15日閲覧。