技術士国家試験

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
ナビゲーションに移動 検索に移動

技術士国家試験(ぎじゅつしこっかしけん)は、技術士または技術士補になるための日本国家試験である。

技術士国家試験は、技術士法の指定試験機関である日本技術士会が実施している。試験の内容はおおむね毎年同じであるが、2007年(平成19年)度のように大規模な制度変更を行う年度もある。

この記事の内容は最新の状態に保たれているとは限らないので、受験を志す者は必ず日本技術士会技術士試験センターのウェブサイトで最新の情報を入手すること。

スケジュール[編集]

例年、おおむね以下のようなスケジュールで実施されている。[1]。第一次試験の出願から第二次試験の合格まで、最短でも2年近くかかることになる。

第一次試験 第二次試験 会場
出願 6月上旬~7月上旬 4月上旬~5月上旬
筆記試験 10月中旬 8月第1週 北海道, 宮城県, 東京都, 神奈川県, 新潟県, 石川県, 愛知県, 大阪府, 広島県, 香川県, 福岡県, 沖縄県
技術的体験論文の提出 10月下旬~11月中旬
口頭試験 12月上旬~翌年1月下旬 東京都
合格発表 12月下旬 翌年3月上旬

第一次試験[編集]

第一次試験には受験資格はなく、誰もが受験できる。

第一次試験に合格すると、技術士補登録をする資格が得られる。つまり第一次試験は技術士補試験を兼ねている。技術士会では第一次試験合格者を「修習技術者」と呼んでいる。

第一次試験の試験科目は以下の通り。[2]

試験時間 配点 試験方式
共通科目 技術士補として必要な共通的基礎知識 2時間 40点 択一式
適性科目 技術士法第四章の規定の遵守に関する適性 1時間 15点
基礎科目 科学技術全般にわたる基礎知識 1時間 15点
専門科目 当該技術部門に係る基礎知識及び専門知識 2時間 50点

第一次試験の合格率は、2009年(平成21年)度の実績で41.6%[3]である。

一次試験[編集]

基礎科目
  • 科学技術全般にわたる基礎知識を問う問題
  1. 設計・計画に関するもの(設計理論、システム設計等)
  2. 情報・論理に関するもの(アルゴリズム情報ネットワーク等)
  3. 解析に関するもの(力学電磁気学等)
  4. 材料・化学・バイオに関するもの(材料特性バイオテクノロジー等)
  5. 技術連関(環境エネルギー品質管理技術士等)
適性科目
  • 技術士法第4章(技術士等の2つの義務と3つの責務)の規定の遵守に関する適性
  • 名称を表示する場合、登録をしている部門を名のる義務
  • 業務に該当する内容の秘密保持
  • 信用失墜行為の禁止
  • 公共の安全と環境の保全の責務
  • 資質向上の責務
  • その他
  • 製造物責任法
  • 公益通報者保護法
  • ISO規格
  • 労働基準法、労働組合法、労働関係調整法
  • 企業の社会的責任(CSR)
  • リスクアセスメント
  • 技術者倫理
  • バイオ技術を取り扱うガイドライン
  • 食の安全
  • 知的財産権及び著作権
  • 国際情勢での気候変動、カンクン合意、生物多様性
  • プロジェクトの進行の注意
等が出題される。(平成25年度の問題を参考)
共通科目(2013年試験から廃止)
  • 技術士補として必要な共通的基礎知識を問う問題(下の科目から2科目選択)
  1. 数学
  2. 物理学
  3. 化学
  4. 生物学
  5. 地学

科目免除[編集]

共通科目の免除

大学の理科系学部を卒業した者や、指定国家資格の保有者は、共通科目を免除される。

一次試験で、共通科目が免除になる指定国家資格は以下の通り。

  1. 公害防止管理者(大気1・3種、水質1・3種)
  2. 公害防止主任管理者
  3. 高圧ガス製造保安責任者(甲種化学、甲種機械、第1種冷凍機械)
  4. エネルギー管理士
  5. 電気主任技術者(第1種、第2種)
  6. ダム水路主任技術者(第1種)
  7. ボイラー・タービン主任技術者(第1種)
  8. ガス主任技術者(甲種)
  9. 総合無線通信士(第1級)
  10. 陸上無線技術士(第1級)
  11. 技術検定1級合格者(1級建設機械施工技士、1級土木施工管理技士、1級管工事施工管理技士、1級造園施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級電気工事施工管理技士)
  12. 測量士
  13. 核燃料取扱主任者
  14. 原子炉主任技術者
  15. 放射線取扱主任者(第1種)
  16. 労働安全コンサルタント試験合格者
  17. 労働衛生コンサルタント試験合格者
  18. ボイラー技士(特級)
  19. 建築士合格者(一級)
  20. 危険物取扱者(甲種)

大学や工業高専などの教育機関において、日本技術者教育認定機構 (JABEE) が認定した教育課程を修了した者は、第一次試験の合格者と同等(つまり修習技術者)であるとみなされる。

専門科目の免除

第二次試験[編集]

第二次試験に合格すると、技術士登録をする資格が得られる。

第二次試験を受験するには、修習技術者(技術士一次試験合格もしくはJABEE認定課程の修了)であることに加えて、次のいずれかの条件を満たすことが必要である。

  • 技術士補として4年間(総合技術監理部門は7年間)以上、技術士を補助する業務に就いた
  • 第一次試験に合格してから4年間(総合技術監理部門は7年間)以上、監督者の下で「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務」に就いた
  • 7年間(総合技術監理部門は10年間)以上「科学技術に関する専門的応用能力を必要とする事項についての計画、研究、設計、分析、評価又はこれらに関する指導の業務」に就いた

理工系の大学院を修了している場合、その期間のうち最大2年を、上記の業務期間から減じられる。つまり理工系の大学院を修了した者が技術士補登録をすれば、最短2年の実務経験で受験が可能になる。

一次試験と二次試験の技術部門は異なっていてもよい。例えば一次試験は電気電子部門で受験して、二次試験は情報工学部門で受験してもかまわない。

総合技術監理部門の選択科目は、他の技術部門の選択科目および必須科目に該当する[5]。すなわち、総合技術監理部門の受験には次の特徴がある。

  • 総合技術監理部門で選択科目を受験することは、総合技術監理部門と他の部門を併願受験することにほかならない。ただしこの場合も科目合格はない。すなわち総合技術監理部門と他の部門を両方とも合格するか、両方とも不合格になるかのどちらかである。
  • 総合技術監理部門以外の部門の第二次試験に合格している者が、総合技術監理部門を受験する場合は、合格した部門に相当する選択科目が免除される。すなわち必須科目のみ受験すればよい。

筆記試験[編集]

受験申込書に記入した「技術部門」「選択科目」「専門とする事項」に従って、以下の設問に[6]解答する。

  • 総合技術監理部門以外の技術部門
科目 出題内容 試験方法 試験時間 配点
選択科目 「選択科目」に関する専門知識と応用能力 記述式(600字詰用紙6枚) 2時間30分 50点
必須科目 「技術部門」全般にわたる論理的考察力と課題解決能力 記述式(600字詰用紙3枚) 3時間30分 50点
  • 総合技術監理部門
科目 出題内容 試験方法 試験時間 配点
選択科目 選択した技術部門に対応する「選択科目」に関する専門知識と応用能力 記述式(600字詰用紙6枚) 2時間30分 50点
選択した「技術部門」全般にわたる論理的考察力と課題解決能力 記述式(600字詰用紙3枚) 3時間30分 50点
必須科目 「総合技術監理部門」に関する課題解決能力及び応用能力 択一式 2時間 50点
「技術部門」全般にわたる論理的考察力と課題解決能力 記述式(600字詰用紙3枚) 3時間30分 50点

技術的体験論文[編集]

筆記試験合格者は、図表等を含め3000字以内でA4用紙2枚の技術的体験論文を作成し、所定の期日までに提出する。2006年(平成18年)度までは各部門で異なる出題がされていたが、平成19年度以降は以下の出題に統一された。[7]

総合技術監理部門以外の部門
あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」について実際に行った業務のうち、受験した技術部門の技術士にふさわしいと思われるものを2例挙げ、それぞれについてその概要を記述せよ。さらに、そのうちから1例を選び、以下の事項について記述せよ。
(1)あなたの立場と役割
(2)業務を進める上での課題及び問題点
(3)あなたが行った技術的提案
(4)技術的成果
(5)現時点での技術的評価及び今後の展望
総合技術監理部門
あなたが受験申込書に記入した「専門とする事項」について実際に行った業務のうち、総合技術監理部門の技術士にふさわしいと思われるものを2例挙げ、それぞれについてその概要を記述せよ。さらに、そのうちから1例を選び、以下の事項について記述せよ。
(1)あなたの立場と役割
(2)業務を進める上での課題及び問題点
(3)あなたが行ったもしくは行うべきだったと考えている総合技術監理の視点からの提案
(4)総合技術監理の視点からみた提案の成果
(5)総合技術監理の視点から見て今後の改善が必要と思われること

口頭試験[編集]

技術的体験論文を提出した者だけが口頭試験を受験できる。[8]

口頭試験は、筆記試験の答案、技術的体験論文、および受験申込書に添付した業務経歴書を使用して実施される。口頭試験の試問事項及び試問時間は次の通りである。

  • 総合技術監理部門以外の技術部門
試問事項 配点 試験時間
受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容と応用能力 40点 45分
必須科目及び選択科目に関する技術士として必要な専門知識及び見識 40点
技術士としての適格性及び一般的知識 20点
  • 総合技術監理部門
試問事項 配点 試験時間
選択科目に対応 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容と応用能力 40点 45分
選択した技術部門の必須科目及び選択科目に関する技術士として必要な専門知識及び見識 40点
技術士としての適格性及び一般的知識 20点
必須科目に対応 受験者の技術的体験を中心とする経歴の内容と応用能力 40点 30分
必須科目に関する技術士として必要な専門知識及び見識 40点
技術士としての適格性及び一般的知識 20点

平成18年度以前の制度との比較[編集]

近年では2001年(平成13年)度と2007年(平成19年)度に大きな制度変更が行われている。

2000年(平成12年)度までの技術士二次試験の出題形式は概ね以下のようであった。

科目 出題内容 試験方法 試験時間
選択科目 「専門とする事項」に関連した技術的体験と専門知識ならびに応用能力 記述式(800字詰用紙5枚) 3時間
「選択科目」に関する一般的専門知識 記述式(800字詰用紙10枚) 4時間
必須科目 「技術部門」全般にわたる一般的専門知識

全体の記述量は12000字にもおよび、「論文のトライアスロン」[9]と言われるほどであったが、2001年(平成13年)度から論文の記述量が削減され、また総合技術監理部門が新設されて、以下のようになった。(総合技術監理部門については省略)

科目 出題内容 試験方法 試験時間 配点
選択科目 「専門とする事項」に関する専門知識の深さ、技術的体験及び応用能力 記述式(600字詰用紙6枚) 3時間 40点
「選択科目」に関する一般的専門知識 記述式(600字詰用紙6枚) 4時間 50点
必須科目 「技術部門」全般にわたる一般的専門知識 五肢択一式 15点
記述式(600字詰用紙3枚) 15点

これには次のような批判があった[10]

  • 技術的体験に関する試問は、事前に作成した論文を丸暗記して試験当日に吐き出すという、暗記力・速記力を問う試験となっている。また他人の論文の丸暗記でも合格できる[要出典]という見方もあった
  • 五肢択一式試験で問うている専門知識は、論述式試験でも問えるし、一次試験と重複している。

そのため、2007年(平成19年)度より以下のように改正された。

  • 技術的体験に関する試問は、事前に論文を提出させて口頭試験で試問する方式に改める
  • 五肢択一式試験は廃止する
  • 記述式試験は、専門知識を問うだけでなく、論理的思考力や問題解決能力を問うものに改める
  • 口頭試験での試問事項が増えるため、口頭試験の試験時間を30分から45分に延長する

この制度改革により、試験結果には次のような変化が現れた。[11]

  • 受験者が増加した。
  • 筆記試験の合格率が上がった。平成18年度の総合技術監理部門を除く平均で17%であったが、平成19年度では19%まで上がっている[12]
  • 口頭試験での合格率が下がった。平成18年度以前の口頭試験は9割以上が合格していたが、平成20年度では全部門平均で8割、部門によっては6割まで低下した。
  • 最終的な合格者数は増加したが、合格率はあまり変わっていない

このことから、改正前の試験と比べて受けやすくはなったが、易しくはなっていないと言える。

合格率等[編集]

以下、2008年(平成20年)度の実績[13]に基づいて記述する。

二次試験の合格率は年度や部門、部門内の選択科目によって異なる。実際に受験した26,423人のうち、4,967人(18.8%)が筆記試験に合格し、4,143人(15.7%)が口頭試験に合格している。総合技術監理部門は、他部門で合格した者が受験することが多かったので、かつては他の部門よりも合格率が高かったが、現在では他部門の平均と変わらなくなっている。

なお、技術士第二次試験の合格者の平均年齢は41.8歳であるが、合格率が最も高いのは30代の受験者であるので、30代で合格できる試験にするという制度改革の主旨は達成されたと言える。

試験実施の詳細[編集]

令和元年東日本台風の影響[編集]

技術士国家試験第一次試験(10月13日)は、東京および神奈川試験地での実施が中止となり[14]、当該各都県では2020年3月7日に再試験を実施することとなった。また、試験地が宮城県、新潟県であって受験しなかった受験者、試験地が東京都、神奈川県、宮城県、新潟県以外で受験しなかった受験者のうち、台風の影響で試験当日または試験前日に、鉄道・バスなどによる試験地への移動が客観的に不可能であったと日本技術士会が認めた受験者についても、東京都、神奈川県において日本技術士会が指定する試験会場で受験可能となった[15]

出典[編集]

  1. ^ 日本技術士会 技術士試験センター「技術士制度について」p8,13
  2. ^ 日本技術士会 技術士試験センター 平成22年度技術士第一次試験実施大綱
  3. ^ 日本技術士会 技術士試験センター 平成21年度 技術士第一次試験統計
  4. ^ 平成31年度技術士試験の試験方法の改正についてのQ&A|公益社団法人 日本技術士会
  5. ^ 日本技術士会「技術士制度について」p12
  6. ^ 平成22年度技術士第二次試験実施大綱
  7. ^ 日本技術士会 技術士試験センター 「技術的体験論文について」
  8. ^ 日本技術士会 技術士試験センター「技術的体験論文について」6.その他
  9. ^ NikkeiBP ITPro IT資格ゲッターの不合格体験記 第19回 技術士第二次試験(情報工学部門)「技術士」とは技術力の試験ではない!?
  10. ^ 技術士第二次試験の試験方法の改正について
  11. ^ 日本技術士会 技術士試験センター 統計情報
  12. ^ 「技術士口頭試験マル秘対策」ISBN 978-4-915151-15-6
  13. ^ 日本技術士会 技術士試験センター 平成20年度技術士第二次試験統計
  14. ^ “技術士第一次試験を受験される皆様へ(第6報 10月13日 8時40分)”. 日本技術士会. (2019年10月13日). https://www.engineer.or.jp/c_topics/006/006816.html 2019年10月13日閲覧。 
  15. ^ “令和元年度技術士第一次試験の再試験について(第1報)”. 日本技術士会. (2019年11月1日). https://www.engineer.or.jp/c_topics/006/006853.html 2019年11月14日閲覧。 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

  1. 社団法人日本技術士会 技術士試験センター