成東・東金食虫植物群落

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成東・東金食虫植物群落(なるとう・とうがねしょくちゅうしょくぶつぐんらく)は、千葉県山武市島(旧成東町島)と千葉県東金市上武射田(かみむざた)にまたがる国指定天然記念物湿原のことである。

地理[編集]

1983年昭和58年)に群落上空付近から撮影された航空写真。画面右に流れる川は作田川国土交通省 国土画像情報(カラー空中写真)を基に作成

当群落は、九十九里平野のほぼ中央に位置し、標高は5m前後である。九十九里平野にはかつて、「茂原・八積湿原」に代表されるように、沼沢低湿地が数多く存在していた。しかし、戦中から戦後の食糧政策による農地への転用、近年では宅地・工業地化により沼沢や低湿地は激減しており、当群落は残された貴重な湿地と言える。 当群落には、千葉県に自生する10種の食虫植物のうち、8種が自生している。群落内には2本の木道が整備され、中央水路によって北区・南区と追加指定区に分かれており、地表の高低差による水環境の違いによりそれぞれ異なった植生を呈している。作田川寄りの北区は他区よりも標高が低く地下水位が高いためモウセンゴケやナガバノイシモチソウが多く、くぼ地部分にはミミカキグサ、ムラサキミミカキグサが自生している。南区は北区よりも標高が若干高いため、やや乾燥気味の土壌に育つコモウセンゴケ、イシモチソウが多い。また、全域にわたってホザキノミミカキグサが自生している。そして管理棟内には、一時期群落から姿を消していたタヌキモが展示されている。

歴史[編集]

群落近望
群生するコモウセンゴケ
  • 1920年(大正9年)7月17日、同県いすみ市太東海浜植物群落埼玉県さいたま市田島ヶ原サクラソウ自生地岐阜県中津川市坂本のハナノキ自生地などとともに、日本で最初の国指定天然記念物に指定される(不告示)。指定理由は、「特異な湿生植物、なかでも食虫植物の種類に富み、かつこのように多数発生するところは全国的にも稀である。(後略)」で、指定当時の名称は「成東町肉食植物産地」。
  • 1978年(昭和53年)12月21日、名称が現在の「成東・東金食虫植物群落」に変更される。
  • 1985年(昭和60年)5月1日、保護増殖事業(植生回復事業)が始まる。(~1987年(昭和62年))
  • 1987年(昭和62年)7月、ボランティアによる案内活動が始まる。
  • 1993年(平成5年)7月、ボランティア団体が「成東・東金食虫植物群落を守る会」に再編される。
  • 2005年(平成17年)11月18日、国の文化審議会にて、かつての指定地で、戦後食糧増産のため1956年(昭和31年)に天然記念物の指定を解除され、農地に転用されていた群落に隣接する東金市側の国有地について、現在は農地として利用されておらず、また既指定地よりも水の状態がよく、食虫植物などの再生が確認された事[1]などを理由に再指定することを文部科学大臣に答申[2]した。
  • 2006年(平成18年)1月26日文部科学省告示第13号[3]により前述した追加指定地が正式に追加され、これですでに指定されていた約1.7ヘクタールに加え、追加指定地約1.5ヘクタールで合計約3.2ヘクタールとなり、天然記念物指定当時の3.9ヘクタールに大幅に近づいた[4]
  • 2007年(平成19年)8月4日、日本蘚苔類学会により「日本の貴重なコケの森」に認定される。認定理由は、当地が世界で唯一のオオカギイトゴケモグリゴケの自生地である事や、その他の希少なコケ植物が自生している事など[5]

見られる植物[編集]

保護活動[編集]

群落のすぐ北東側には二級河川作田川が流れており、江戸時代から作田川堤防改修のための砂取り場や芝剥ぎ地として地元の人々に利用されていた。そのため、人為的に常に地表面がかく乱されていたのでススキセイタカアワダチソウなどの大型植物が育つことなく、食虫植物などが育つ環境が維持されていた。しかし、天然記念物に指定されてからは砂取りや芝剥ぎが行われなくなったため大型植物が進入し、さらには耕地整理による周囲の水田の乾田化などにより地下水位が低下し、群落全体が乾燥化していった。そのため、乾燥化を防ぐために作田川から水を引くポンプを設置し、大型植物の進入を防ぐために毎年、ボランティア団体の「成東・東金食虫植物群落を守る会」や地元・島地区の「島愛土会」などにより野焼きや大型植物の刈り取り・掘り取り作業を行っている。また、盗掘も相次いでいるが、これは文化財保護法で禁止されており、処罰の対象となるため、珍しいから、花がきれいだからなどの理由で特別な許可なく動植物をむやみに採取、捕獲してはならない。逆に、遺伝子汚染外来種・移入種などの帰化を防ぐため群落以外からの植物を持ち込むことも許されない。

脚注[編集]

  1. ^ 文化庁 文化審議会答申 報道発表資料 平成17年11月18日
  2. ^ 第52回文化審議会文化財分科会議事要旨
  3. ^ 官報 平成18年1月26日 号外第16号にて、文化財保護法第109条第1項の規定により告示
  4. ^ 東金市教育委員会 生涯学習課 「国指定天然記念物 『成東・東金食虫植物群落』の追加指定」(アーカイブ)
  5. ^ 日本蘚苔類学会 日本の貴重なコケの森

参考文献[編集]

大場達之・中村俊彦 『「成東・東金食虫植物群落」ガイド』 「成東・東金食虫植物群落」を守る会、山武市教育委員会、2000年

外部リンク[編集]

座標: 北緯35度35分34.5秒 東経140度25分8.1秒