惑星 (組曲)
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Holst: The Planets, Op. 32 - ジェームズ・レヴァイン指揮シカゴ交響楽団の演奏、Universal Music Group提供のYouTubeアートトラック。 |
大管弦楽のための組曲『惑星』(わくせい、The Planets)作品32は、イギリスの作曲家グスターヴ・ホルストの作曲した代表的な管弦楽曲である。この組曲は7つの楽章から成り、それぞれにローマ神話に登場する神々にも相当する惑星の名が付けられている。「木星」中間部の旋律は、イギリスの愛国歌、またイングランド国教会の聖歌となっている。
概要[編集]
ホルストの代表曲として、ホルスト自身の名前以上に知られており、近代管弦楽曲の中で最も人気のある曲の1つである。イギリスの管弦楽曲を代表する曲であるとも言えるが、むしろイギリス音楽とは意識されず、その枠を超えて親しまれている曲である。ただし、特殊楽器の多用や女声合唱の使用などが実演の障壁になることも多く、全曲を通しての演奏の機会は必ずしも多いとはいえない。
この作品は惑星を題材としているが、天文学ではなく占星術から着想を得たものである。地球が含まれないのはこのためである。西欧ではヘレニズム期より惑星は神々と結び付けられ、この思想はルネサンス期に錬金術と結びついて、宇宙と自然の対応を説く自然哲学へと発展した。この作品は、日本語では「惑星」と訳されてはいるが、実際の意味合いは「運星」に近い。それぞれの曲の副題は、かつては「…の神」と訳されていたが、近年では本来の意味に則して「…をもたらす者」という表記が広まりつつある。かねてよりホルストは、作曲家アーノルド・バックスの兄弟で著述家のクリフォード・バックスから占星術の手解きを受けており、この作品の構想にあたり、占星術における惑星とローマ神話の対応を研究している。
作曲の経緯・初演[編集]
作曲[編集]
作曲時期は1914年から1916年。当初は『惑星』としてではなく『7つの管弦楽曲』として作曲が開始された。これはアルノルト・シェーンベルクの『5つの管弦楽曲』に着想を得たものといわれている。
まず「海王星」以外の6曲はピアノ・デュオのために、「海王星」はオルガンのために作曲された。 1914年に「火星」(8月以前)、「金星」(秋)、「木星」(年末)が作曲され、 1915年には「土星」(夏)、「天王星」(8月頃)、「海王星」(秋)が、そして1916年初頭に「水星」が作曲された。その後、日本人舞踏家伊藤道郎の依頼を受け、『惑星』の作曲を一時中断して『日本組曲』を完成している。
1917年になって、オルガンや声楽を含む大管弦楽のためにオーケストレーションされた。しかし、生涯ホルストを苦しめた腕の神経炎の再発のため、オーケストレーションにおけるホルスト自身の関与は後述する「水星」、ピアノスコアへの楽器の指定、口述などにとどまった(しかし全オーケストレーションの構想はホルスト自身で完成されていたようである)。フルスコア作成の補助のため、ホルストが勤めていたセント・ポール女学校音楽科の同僚ノラ・デイとヴァリ・ラスカー、学生のジェーン・ジョセフと筆記者としての契約を交わしている。オーケストレーションは創造的かつ色彩的であり、英国の作曲家よりもストラヴィンスキーら大陸の作曲家からの影響が強く見られる。
管弦楽法的には複雑ではないものの、ソロとトゥッティ(複数人で同じ旋律を奏でること)を使い分けて音の厚みを変化させたり、同一楽器で和音を奏する(例えば、フルート3本で和音を構成する)など大編成にもかかわらず繊細で独特な音色、音響的効果が引き出されている。また声部は基本的に旋律、和音、バス音など明確に分けられており、大編成のわりに曲の構造はわかりやすい。
「火星」の5拍子など民族的なリズムや、「海王星」などで現れる神秘的な和音など、作曲当時のある種、流行を取り入れているが、その親しみやすさのおかげで20世紀の音楽としては珍しく日常的に聞く機会に恵まれた曲になったといえる。
初演[編集]
1918年の9月29日にロンドンのクイーンズ・ホールにおいて、エイドリアン・ボールトの指揮するニュー・クイーンズ・ホール管弦楽団により非公式の初演が行われている。正式な初演は、1920年10月10日にバーミンガムにて行われている。
組曲『惑星』は大編成の管弦楽のために書かれており、オルガンや、最後の「海王星」では舞台の外に配置された歌詞のない女声合唱が使われる。初演に立ち会った聴衆は斬新な響きに驚き、この組曲はたちまち成功を収めた。
『惑星』はホルストの最も知られた作品ではあるが、作曲者自身はこれを佳作の1つとして数えてはおらず、他の作品がことごとくその影に隠れてしまうことに不満を洩らしていた、といわれている。ただ、自身でも何度かこの作品を指揮し、録音も残しており、「土星」は気に入っていたという。
再評価[編集]
初演当初は好評をもって迎え入れられたが、同時代の作曲家の意欲的な作品(たとえばドビュッシーの『海』やストラヴィンスキーの『春の祭典』など)と比較してやや低水準と見なされた本作品は、ホルストの名とともに急速に忘れられる道をたどることになり、一時は英国内の一作曲家の成功作という程度の知名度に甘んじるようになった。今日のような知名度を獲得するのは、1961年頃にヘルベルト・フォン・カラヤンがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で紹介したことがきっかけである。カラヤンは続いて同じオーケストラでレコードを発売、鮮明な録音もあって大評判となり、この曲は一躍有名になった。それ以後、近代管弦楽曲で最も人気のある作品の一つとして知られるようになった。また、初演者であるエイドリアン・ボールトにとっては名刺代わりのような曲であり、1945年から1974年までの間に5回の録音を行っている。
構成[編集]
作曲当時太陽系の惑星として知られていた8つの天体のうち、地球を除いた7つの天体(すなわち水星、金星、火星、木星、土星、天王星、海王星)に、曲を1曲ずつ割り当てた、全7曲で構成される組曲である。全曲を通した演奏時間は約50分(作曲者が指揮した録音では約42分)である。 なお、本曲の作曲後の1930年に冥王星が発見されて惑星に分類されたため、作曲されていない惑星がある状態になったが、その後2006年に冥王星は惑星から除外されたので、現在では地球以外のすべての惑星に対応する楽曲があることになる。
「火星」と「水星」の位置が入れ替わっていることを例外として、各惑星は軌道長半径上で太陽から近い順番に配列されている。「火星」と「水星」の位置が入れ替わっているのは、最初の4曲を交響曲の「急、緩、舞、急」のような配列にするためだと言われる。もう1つの説明として、黄道12宮の守護惑星に基づくという説がある。黄道12宮を白羊宮(おひつじ座)から始まる伝統的な順番に並べるとその守護惑星は、重複と月・太陽を無視すれば楽章の順序に一致する。そのため、のちに追加された冥王星、再生する者は水星と木星の間に来るべきだとする意見もある。[要出典]
火星、戦争(戦い)をもたらす者[編集]
- 原題:Mars, the Bringer of War
- Allegro
日本では「木星」に次いでよく知られている曲である。この曲について第一次世界大戦の影響を指摘されることもあるが、作曲者自身は否定している[1]。ニを主音とするが調号はなく、無調的。再現部の第2主題と第3主題の順序が入れかわったソナタ形式に相当する。
上記の5拍子のリズムは曲中でさまざまな楽器により演奏され、全体のモチーフになっている。提示部第3主題でのテナーチューバ(ユーフォニアムで演奏されることが多い)のソロが、オーケストラにおけるこの楽器の秀逸な用例としてしばしば言及される。全185小節。
金星、平和をもたらす者[編集]
- 原題:Venus, the Bringer of Peace
- Adagio - Andante - Animato - Largo - Animato - Largo - Animato - Largo - Adagio - morendo - Tempo I
緩徐楽章に相当する。主に三部形式。主に、中間部は3拍子、他は4拍子である。主調は変ホ長調だが、途中複数の調を経由する。中間部にはヴァイオリンやチェロのソロもある。全141小節。
水星、翼のある使者[編集]
- 原題:Mercury, the Winged Messenger
- Vivace
スケルツォに相当する曲である。組曲中で最も短い。ホ長調と変ロ長調の複調が用いられている。主に二部形式。ホルスト自身がフルスコアを書いたのはこの曲のみで、この曲を「心の象徴」と述べている。全296小節。
木星、快楽をもたらす者[編集]
- 原題:Jupiter, the Bringer of Jollity
- Allegro giocoso - Andante maestoso - Tempo I - Maestoso - Lento maestoso - Presto
組曲中、最もよく知られている。特に中間部Andante maestosoの旋律が非常に有名である(後述)。大きな三部形式であり、主調はハ長調、中間部は変ホ長調、終盤で中間部の旋律が戻ってくるときにはロ長調である。全409小節。
土星、老いをもたらす者[編集]
- 原題:Saturn, the Bringer of Old Age
- Adagio - Poco animato - Tempo I - Animato - Andante
組曲中で最も長い。ハ長調ではあるものの、第3音にフラットが付くなど調性は不安定である。ハ音上の付加六の和音や七度の和音が多用される。ホルスト自身この曲が最も気に入っていたといわれ、組曲中でも中核をなす曲と考えられる。全155小節。
天王星、魔術師[編集]
- 原題:Uranus, the Magician
- Allegro - Lento - Allegro - Largo
スケルツォに近い曲。主に6拍子で、デュカスの『魔法使いの弟子』に影響を受けたといわれる。また、冒頭の印象的な4音(下譜面を参照。G, Es, A, H)は、ホルストの名前(Gustav Holst)を表していると言われ[誰によって?]、曲中にも執拗なまでに取り入れられている。
全250小節。
海王星、神秘主義者[編集]
- 原題:Neptune, the Mystic
- Andante - Allegretto
ホ短調と嬰ト短調の複調。3+2の5拍子。静かなこの曲では[2]56小節目からは女声合唱[3]も演奏に加わり、最後の1小節には女声合唱のみとなる。そこには反復記号が記され、音がなくなるまで繰り返すように指示されている。全101小節。
編成[編集]
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 4 (3番はPicc., 4番はPicc.とA.Fl.持替) | Hr. | 6 | Timp. | 6 (奏者2名) | Vn.1 | ● |
Ob. | 3 (3番はB.Ob.持替), Eng.Hr.1 | Trp. | 4 | 他 | Glock., Xylo., Bells, Trgl., Tamb., S.D., Cym., B.D., Tam-t. (奏者3名) | Vn.2 | ● |
Cl. | 3, B.Cl.1 | Trb. | Tenor 2, Bass 1 | Va. | ● | ||
Fg. | 3, Cfg.1 | Tub. | Bass 1 | Vc. | ● | ||
他 | 他 | Eu.1 (テナーチューバ表記) | Cb. | ● | |||
その他 | Cel., Org., Harp 2, 女声合唱 |
- 注1:アルト・フルート(A.Fl)は、スコアには「バス・フルート」(Bass Flute)と書かれている。
- 注2:女声合唱は、舞台外に置かれる。
- 注3:アマチュア・オーケストラのために、次の楽器が省略できる。
- フルート4番(ピッコロ2番、バス・フルート持ち替え)、オーボエ3番(バスオーボエ持ち替え)、ファゴット3番、コントラファゴット、ホルン5番と6番、トランペット4番、テナーチューバ(ユーフォニアム)、オルガン。
- また、スコア上に省略した場合の代替するための記載がされている。[4]
編曲[編集]
この曲はオーケストラのための曲ではあるが、しばしば吹奏楽やブラス・バンドのために編曲される他、冨田勲によるシンセサイザー編曲、諸井誠によるオルガンと打楽器のための編曲などがある。
編曲の制約[編集]
ホルストは、この曲に関して非常に厳格な制約を設けていた。楽器編成の厳守(アマチュア団体の演奏に限り編成の縮小を認めた)から抜粋演奏の禁止まで提示しており、死後も遺族によって守られてきた[5]。
しかし1976年、冨田勲によるシンセサイザー版『惑星』が許可されて以降、この制約は絶対的なものではなくなっていく。1986年にはエマーソン・レイク・アンド・パウエルの同名アルバムにプログレッシブ・ロックにアレンジされた「火星」が収録され、ついにクラシック音楽の枠からも逸脱した(なお、キング・クリムゾンはデビュー当時からステージで火星を演奏していたが、1970年に発表されたキング・クリムゾンのアルバム「ポセイドンのめざめ」への収録は許可されなかった。そのため火星をモチーフとした"The Devil's Triangle"という楽曲として収録している[6])。
現在では、人気のある「木星」と「火星」のみを抜粋して演奏されることがめずらしくない。また、バスオーボエ(バリトンオーボエ)のような普及率がきわめて低い特殊楽器は、他の楽器に代替して演奏されることもある。
「木星」の第4主題[編集]
この節に雑多な内容が羅列されています。 |
「木星」の第4主題は作者自身によって管弦楽付きコラールに改作編曲されている。イギリスの愛国的な賛歌として広く歌われている「我は汝に誓う、我が祖国よ」(I vow to thee, my country)がそれであり、作品番号 (Op) はないが、H148がふられている。1918年にイギリスの外交官セシル・スプリング・ライス(Cecil Spring Rice, 1859年 - 1918年)が作った詩に、1918年(1921年説も)に「木星」の第4主題、Andante maestoso の旋律が付けられた歌である。歌詞が第一次世界大戦のさなかに作られ、作品の発表も1926年の第一次世界大戦休戦協定記念式典であったために、11月11日のリメンブランス・デーに歌唱されることが多い。
1926年にホルストの友人レイフ・ヴォーン・ウィリアムズが監修した賛歌集『ソングス・オブ・プライズ』でウィリアムズがホルストの「木星」を基にした作品を、彼が暮らした街の名にちなんで「サクステッド」(Thaxted)と呼んで以来、「木星」の第4主題を基にした作品は「サクステッド」とカテゴライズされるようになった。
1988年、ペーター・ホフマンのクラシカル・クロスオーバーアルバム『モニュメンツ』に「サンライズ」と題してロック風にアレンジされた歌唱が収められている。
1991年、ラグビーワールドカップのテーマソングとして新たな歌詞が付けられ、「ワールド・イン・ユニオン」(World In Union)として発表される。原曲は「サクステッド」としており、4分の3拍子を4分の4拍子に変えている。「ワールド・イン・ユニオン」は大会ごとにアレンジされている。
1997年にはオルガンに編曲されたものが、ダイアナ妃の葬儀において教会で演奏された。
イギリスをはじめ英語圏を中心に夥しい数の賛美歌などが作られているが、これらは原曲を「我は汝に誓う、我が祖国よ」「サクステッド」としている場合が多く(題名の下に (I vow to thee) あるいは (Thaxted) と付される)、『惑星』あるいは「木星」からとするものは少ない。以下の日本の作品もその点は判然としない。
2003年5月21日リリースの本田美奈子.のアルバム『AVE MARIA』の1曲として岩谷時子の歌詞によるものが収められている。それに先がけて遊佐未森が1999年に発表したアルバム「庭 (niwa)」にも「A little bird told me」の題で遊佐自身の詩による曲が収められている。
音楽プロデューサー浅倉大介は自身の参加ユニットであるaccessの「DELICATE PLANET」ツアー(1994年)において、この旋律を浅倉独自のシンセサイザーアレンジで演奏している。
平原綾香のデビュー曲は、吉元由美により第4主題に新たな歌詞が付けられたもので、2003年12月17日にシングル盤『Jupiter』としてリリースされた。
ハワード=ブレイクリー(Ken Howard & Alan Blaikley)作曲、ザ・ハニーカムズ歌唱・演奏の「Once You Know」も、この旋律に触発された曲の1つである。
また、木星を舞台としたSEGAのアーケードゲーム「電脳戦機バーチャロン フォース」のエンディングにもこの旋律が流れる。
世界陸上大阪大会の開会式でサラ・ブライトマンが歌った曲「Running」もこの旋律を基にしている。ほか、三菱・ギャランフォルティスのCMソングにも用いられている。
他の作曲家による追加曲[編集]
冥王星、再生する者[編集]
1930年のトンボーによる発見から2006年の惑星の新定義の決定によって除外されるまで、76年間にわたり太陽系第9惑星として一般に親しまれてきた天体として冥王星(現在では準惑星に分類されている)が知られているが、上記の通り組曲「惑星」には冥王星に該当する曲が含まれていない。これは1916年の作曲当時にはこの天体は未発見だったためである。冥王星発見後、ホルストは冥王星のための8曲目の作曲に取りかかったが、半ばにして脳卒中で倒れ、一時は学生に書き取らせ続行しようとしたものの、完成させないまま1934年に亡くなった[7]。
このようにホルストに「冥王星」を追加する意志があったことや、冥王星が惑星とされていた頃は「科学的に内容が古い」などと指摘されることがよくあったことから、「冥王星」を組曲に追加して現代的に補完しようとする試みもあった。そのうち最も有名なのが、ホルストの研究家でイギリス・ホルスト協会理事の作曲家コリン・マシューズによる「冥王星、再生する者」(Pluto, the renewer)である。これは、ハレ管弦楽団の指揮者ケント・ナガノの委嘱に応じて2000年に作曲されたものであり、同年5月11日に初演されている。この試みでは、「海王星」の終結部を少し書き換え(最後の小節の直前で切れるヴァイオリンの高いロ音を延ばし続ける)、そのままアタッカで「冥王星」に続くように編作されている。「海王星」の消え入るような終結に対し、「冥王星」は消え入るようには終わらず、太陽系の外のさらに広い宇宙空間へと続いていくかのような音響をもって終わる。この点がホルストの原作の音楽的意図とは異なり、賛否が分かれる点でもある。実際、サイモン・ラトルは「冥王星」付き『惑星』を指揮した折、オリジナル通り「海王星」でいったん演奏を終えてから「冥王星」の演奏に入っている。この8曲からなる通称『惑星(冥王星付き)』は、特にイギリスで好んで演奏され、ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、マーク・エルダー指揮ハレ管弦楽団、デーヴィッド・ロイド=ジョーンズ指揮ロイヤル・スコティッシュ管弦楽団、オウエン・アーウェル・ヒューズ指揮ロイヤルフィルハーモニー管弦楽団、ポール・フリーマン指揮チェコ・ナショナル交響楽団などの録音が存在する。これらは「海王星」の後に配置されている。
2006年8月24日、国際天文学連合総会において惑星の新定義が決定され、冥王星が惑星から除外された。これにより、地球を除いた太陽系の惑星の顔ぶれは、組曲『惑星』の曲目と再び一致することとなった。なお、奇しくも総会決議の前日に日本で国内盤が発売されたサイモン・ラトル指揮ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の「冥王星」付き『惑星』は、マスメディアから注目されたこともあり好調な売り上げを記録し、販売元の東芝EMIでは5日間にして1万枚の在庫が切れたという。
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 2, Picc.1, A.Fl.1 | Hr. | 6 | Timp. | 2名 | Vn.1 | ● |
Ob. | 2, Eng.Hr.1, B.Ob.1 | Trp. | 4 | 他 | Glock., Crotales, Bells, T.D., B.D., Susp.Cym., Clashed Cym., Tam-t., Trgl. (奏者4名) | Vn.2 | ● |
Cl. | 3, B.Cl.1 | Trb. | 3 | Va. | ● | ||
Fg. | 3, Cfg.1 | Tub. | Tenor 1, Bass 1 | Vc. | ● | ||
他 | 他 | Cb. | ● | ||||
その他 | Org., Harp 2, Cel., 女声合唱7声部(アド・リブ) |
その他の追加曲[編集]
惑星に新たな曲を加えようとする試みとして、その他にも類似した試みがなされたことがあった。サイモン・ラトルは4人の作曲家に委嘱して、以下の4曲をベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会で演奏した。これらは上述のCDにも収録されている。ただし、組曲『惑星』に追加した形式にはなっておらず独立した作品と考えられ、「冥王星」とは少々事情が異なる。またこれとは別に「ゾリステン・ドライエック」が委嘱した、ヴァリオリンとトロンボーン、オルガンのための『クワーオワー』などがある。
小惑星4179:トータティス[編集]
2005年作曲。小惑星トータティスを題材としている。カイヤ・サーリアホが作曲。
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 3 (Picc.持ち替え) | Hr. | 6 | Timp. | 2名 | Vn.1 | ● |
Ob. | 3 | Trp. | 4 | 他 | 打楽器3名 | Vn.2 | ● |
Cl. | 3 | Trb. | 3 | Va. | ● | ||
Fg. | 3 (Cfg.持ち替え) | Tub. | 1 | Vc. | ● | ||
他 | 他 | Cb. | ● | ||||
その他 | Harp 2 |
オシリスに向かって[編集]
2005年作曲。恒星HD 209458の惑星、オシリスを題材としている。マティアス・ピンチャーが作曲。
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 3 (2番と3番はPicc.持ち替え) | Hr. | 4 | Timp. | Vn.1 | 14 | |
Ob. | 2, Eng.Hr.1 | Trp. | 3 | 他 | 4名 | Vn.2 | 12 |
Cl. | 2, B.Cl.1 (B.Cl.はCb.Cl.持ち替え) | Trb. | 3 | Va. | 10 | ||
Fg. | 2, Cfg.1 | Tub. | 1 | Vc. | 8 | ||
他 | 他 | Cb. | 5 | ||||
その他 | Harp 2, Pf., Cel. |
ケレス[編集]
2005年作曲。小惑星ケレス(現在は準惑星に分類されている)を題材としている。マーク=アンソニー・タネジが作曲。2006年の国際天文学連合総会において、この天体を惑星に分類しなおす提案がなされたことから特に話題になった。
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 2 (Fl.はA.Fl.持ち替え), Picc.2 | Hr. | 4 | Timp. | Vn.1 | ● | |
Ob. | 2, Eng.Hr.1 | Trp. | 3 | 他 | 3名[8] | Vn.2 | ● |
Cl. | 2, B.Cl.1 | Trb. | 3 | Va. | ● | ||
Fg. | 2, Cfg.1 | Tub. | 1 | Vc. | ● | ||
他 | S.Sax.1 | 他 | Eu.1 | Cb. | ● | ||
その他 | Harp, Cel. |
コマロフの墜落[編集]
2006年作曲。宇宙からの帰還中に事故死したソ連の宇宙飛行士ウラジーミル・コマロフを題材としている。ブレット・ディーンが作曲。
木管 | 金管 | 打 | 弦 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
Fl. | 2, Picc.2 | Hr. | 6 | Timp. | 1名 (兼むち) | Vn.1 | ● |
Ob. | 3, Eng.Hr.1 | Trp. | 3 | 他 | 5名[9] | Vn.2 | ● |
Cl. | 2,Es Cl.1, B.Cl.1 | Trb. | 3 | Va. | ● | ||
Fg. | 2, Cfg.1 | Tub. | 1 | Vc. | ● | ||
他 | 他 | Cb. | ● | ||||
その他 | Harp 2, Cel. |
イトカワとはやぶさ[編集]
冨田勲の晩年のシンセサイザー演奏によるアルバム『惑星(プラネッツ) Ultimate Edition』(2011年6月)には、冨田作曲の「イトカワとはやぶさ」(「小惑星イトカワと小惑星探査機はやぶさ」)が「木星」と「土星」の間に入る形で新たに追加されている。
関連項目[編集]
- 我は汝に誓う、我が祖国よ
- 惑星 (冨田勲のアルバム) - ホルストの惑星をもとにしてシンセサイザーで演奏して制作したLPアルバム(RCA、1976年)。
- ケン・ラッセル - 1983年、『惑星』の音楽をそのまま利用してモンタージュ映画(Ken Russell's View of) The Planetsをテレビ放送用に制作。音源はユージン・オーマンディ指揮、フィラデルフィア管弦楽団による既成のもの。
- ジョークドキュメントBBS放送局 - CM前アイキャッチにて「木星」のラストが流れていた。なお本曲をバックに外国語によるナレーション(言語は毎回変わる)が流れており、内容をハガキに明記して局に送ると記念品がもらえるサービスもあった(後年深夜に再放送された際も有効とされた)。
- ラグビーワールドカップ - 「ワールド・イン・ユニオン(World in Union)」の題で「木星」中間部が歌われる。
脚注[編集]
- ^ “Mood Pictures: Mr. Holst's Analysis of The Planets,” Glasgow Herald, No.33, 1926, p.13
- ^ ヴァイオリンとクラリネットの一フレーズずつを除いてすべての楽器にsempre ppの指示がある。
- ^ 楽章の冒頭に、女性合唱は隣接する部屋に置き、最後の小節でゆっくりと閉じるまでドアを開けていくよう指示がある。また、合唱隊やドア、第2指揮者は観客から隠すようにも指示されている。
- ^ ブージー・アンド・ホークス社のスコアより。
- ^ ただし、現在もブージー・アンド・ホークスから入手可能な「火星」と「木星」の吹奏楽編曲版は、作曲者存命中の1924年に出版されている。そのため作曲者自身の編曲とも言われていたが、実際には当時王立陸軍音楽学校に在籍していたジョージ・スミスの手による。
- ^ シンコー・ミュージック刊「キング・クリムゾン」より。
- ^ ニール・ドグラース・タイソン (Neil deGrasse Tyson) 『かくして冥王星は降格された 太陽系第9惑星をめぐる大論争の全て』2009年、日本語訳: 早川書房 2009年
- ^ 第1奏者: 小トライアングル, 小バスドラム, 小シズルシンバル, 小ラチェット
第2奏者: 中トライアングル, 中バスドラム, 中ライドシンバル, 中ラチェット
第3奏者: 大トライアングル, 大バスドラム, 大サスペンデッドシンバル, 大ラチェット - ^ 第1奏者: マリンバ, バスドラム, アルミ箔
第2奏者: シロフォン, グロッケンシュピール, ウッドブロック5, クロタル(2オクターブ), トムトム3, アルミ箔
第3奏者: グロッケンシュピール, クロタル, サスペンデッドシンバル, ハイハット, スネアドラム, サンドペーパー
第4奏者: ヴィブラフォン, タムタム, アルミ箔
第5奏者: ゴング(音程付き), スネアドラム, 中型のチャイナシンバル, サンダーシート, アルミ箔