応用言語学
言語学 |
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関連項目 |
応用言語学(おうようげんごがく、英語:applied linguistics)とは、言語と個人・社会に関わる諸問題を多角的に解決することを目的とした学問である[1]。理論言語学が「言語の構造」を対象としているのに対し、応用言語学は、言語に関する人間行動 (=言語行動) をマクロ的に捉えている。[2] 応用言語学に関連する学問分野として、教育、心理学、コミュニケーション研究、人類学、及び社会学が挙げられる。
研究分野[編集]
- バイリンガリズム、多言語主義
- 語用論
- 文体論
- 異文化コミュニケーション
- 翻訳通訳論
- 言語テストとリサーチ
- 社会言語学
- 言語政策・言語計画
- 第二言語習得研究・言語教授法研究
- 談話分析
- 自然言語処理・機械翻訳・コーパス言語学
- 辞書学(Lexicography)
- 臨床言語学(Clinical linguistics)
- 法言語学(Forensic linguistics)
- 進化言語学(Evolutionary linguistics)
など
歴史[編集]
応用言語学は、1950年代後半に、生成言語学の出現に伴う言語学の対象範囲の狭まりに対抗する動きの一環として確立されたのが発端であり、言語問題への関心を主とすることによって、社会的責任を担う役割を常に維持してきた。
欧州及び米国を起源とするが、その後、急速に国際的学問へと発展を遂げた。
初期の頃は、言語学をベースとした原理及び実践だと見なされ、少なくとも当該分野の外側からは、「言語学の応用」だと考えられていた。しかしながら、1960年代になると、応用言語学は、言語評価、言語政策、及び第二言語習得も含む分野へと拡大してゆく。早くも1970年代には、理論言語学よりもむしろ実社会における言語関連問題の解決を含む問題主導の分野になり、1990年代には、批判的研究及び多言語使用を含むまでに拡大した。応用言語学における研究は、「言語を中心的課題とする実社会上の問題の理論的及び経験的調査」へと移行した。
米国では、応用言語学は、構造言語学からの洞察を先ずは学校教育における英語教授に、次いで第二言語教授及び外国語教授に応用するという狭い範囲から始まった。言語教育への言語学の応用的手法は、陸軍専門訓練計画の礎を築いたLeonard Bloomfieldによって、及び1941年にミシガン大学にて英語語学研究所(English Language Institute, ELI)英語を設立したCharles C. Freisによって、最も精力的に広められた。1946には、応用言語学は、上記の大学にて一学問として認識され、1948には、ミシガン州の研究会がLanguage Learning: A Journal of Applied Linguistics(言語学習:応用言語学ジャーナル)を発行した。これは、応用言語学という名称をタイトルに含む最初の定期刊行物となった。1960年代に入ると、応用言語学は、実社会における言語的課題に関わる言語学の学際的研究分野としてその独自性を確立しはじめた。そして、1977年、米国応用言語学協会の結成によって、新たな独自性が強固なものになった。
批判的応用言語学[編集]
この応用言語学(言語教育学)を疑問視し、多角的に捉えている学問領域に批判的応用言語学がある。現代言語学はそもそも記述的(現実的)であり、規範的(理想的)な教育と相反するにもかかわらず、言語学理論を言語教育に応用しようとしている応用言語学への批判的議論である。応用言語学の枠組みで言語教育を行うと、学習者は非政治的・非経済的な(言語が本来持っているイデオロギー性を黙殺した)環境で言語を学習することになり、言語帝国主義などを無意識かつ無批判に受け入れる社会を作り出す、という指摘もある[3]。
協会[編集]
国際応用言語学協会(International Association of Applied Linguistics)が、1964年にフランスで設立された。AILAとして知られており、30カ国以上に支部を要する。
日本では、より国際的なスケールの活動に従事するために、1982年、大学英語教育学会(JACET)の中に日本応用言語学協会(JALL)が設立された。1984年、JALLは、国際応用言語学協会(AILA)の支部になった。
脚注[編集]
参考文献[編集]
- Pennycook, Alastair (2001), Critical Applied Linguistics, Lawrence Erlbaum Associates. ISBN 0-8058-3792-2
- 中村 敬 (2004)、『なぜ、「英語」が問題なのか?』、三元社
関連文献[編集]
- Norton, Bonny & Kelleen Toohey [eds.] (2004), Critical Pedagogies and Language Learning, Cambridge University Press. ISBN 0-521-53522-0
- 山内 進 (2003)、『言語教育学入門』、大修館書店。ISBN 4-469-24489-9