後方散乱

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写真における後方散乱

物理学において、後方散乱backscatter, backscattering) はや粒子もしくは信号の、来た方向への反射をいう。散乱に起因する拡散反射であり、鏡面反射とは異なる。天文学写真超音波検査の分野で応用上重要である。

物理空間上の波の後方散乱[編集]

後方散乱は全く異る様々な物理的状況で起こりうる。入射波もしくは入射粒子が元の方向から偏向するようならばその機構は問われない。

散乱がそれなりに等方性をもち、散乱方向の分布に偏りがなくいろんな方向にランダムに散乱される場合がある。このような場合には、「後方散乱」という言葉は単に実用上の問題から検知器が後方に置かれていることを示すにすぎない。

  • X線画像では後方散乱画像は透過画像の単に逆である。
  • 非弾性中性子散乱もしくは非弾性X線散乱の場合、エネルギー分解能を最適化するために後方散乱配置が採られる。
  • 天文学において、後方散乱光とは位相角英語版が90度よりも小さい反射光である。

後方散乱の強度が増す場合もあり、いくつかの理由が挙げられる。

  • 山頂光英語版は、レイリー散乱により青いスペクトル成分が抑制され、赤い光が優勢になるため起こる。
  • 対日照には干渉により強めあう光が関係する(要検証)。
  • コヒーレント後方散乱はランダム媒体で見られる。可視光域では、ミルクのような懸濁液で見られる場合が最も多い。弱い局在化英語版により増幅された多重散乱が後方で観測される。

標的の後方散乱物性は波長に依存し、偏極にも依存する。したがって、複数の波長および偏極を用いるセンサー系ではさらなる標的の物性が得られることもある。

レーダー、特に気象レーダー[編集]

後方散乱はレーダーシステムの背景原理である。

気象レーダーでは、標的の直径よりも波長が長い限り後方散乱は標的の直径に標的特有の反射物性を掛け合せたものを6乗したものに比例する(レイリー散乱)。水は氷よりもほぼ4倍反射率が高いが、水滴は雪片や雹よりも非常に小さい。したがって後方散乱はこの二つの因子の両方に依存する。その大きさから、最も強い後方散乱はと大きい固体)から返ってくるが、非レイリー散乱(ミー散乱)が話を複雑にする。もう一つ強い散乱源として、サイズが大きく水により反射率も高くなった溶けかけの雪や濡れたがある。これらが存在する空域は、実際の降水量よりも非常に高い降水量があるように見えるため「ブライトバンド」と呼ばれる。は穏やかに後方散乱を起こし、その強さは雨滴が大きくなる(雷雨の場合など)ほど強くなり、小さくなる(霧雨の場合など)ほど弱くなる。の後方散乱は比較的弱い。水平方向と鉛直方向の偏波の後方散乱を計測する二重偏波気象レーダーにより、二つの信号の比から形状についての情報を得ることができる。

導波管において[編集]

ファイバー光学においても後方散乱法は光学欠陥の検出に用いられている。光ファイバーケーブルを通って伝播する光はレイリー散乱により徐々に減衰していく。よって、レイリー後方散乱された光の変化を監視することにより欠陥を検知することができる。後方散乱された光は光ファイバーケーブルを通るにつれて指数関数的減衰英語版するので減衰特性は対数スケール英語版のグラフで表現できる。グラフの傾きが急であれば、パワー損失が大きいことを示す。傾きが緩い場合は光ファイバーが十分な損失特性を持っているといえる。

後方散乱法による損失計測は光ファイバーケーブルを切断することなく片側のみから行えるので、光ファイバーの構築と維持管理上便利である。

写真において[編集]

写真における後方散乱とは、フラッシュもしくはストロボがレンズの視野角内の粒子により反射され写真上に光片として表われることをいう。これを「オーブ」と呼ぶこともある。この現象は雪や雨、雪、空気中の塵などによって引き起こされる。現代のコンパクトカメラおよびウルトラコンパクトカメラのサイズ制限により、特にデジタルカメラでレンズと組み込みフラッシュとの距離が狭まってきており、したがって光の反射角も小さくなってきているので通常は目に見えない粒子の反射が写り込みやすくなってきている。したがって、小さなデジタルカメラおよびフィルムカメラにおいてオーブは頻発する[1]

関連項目[編集]

出典[編集]

  1. ^ The Truth Behind 'Orbs'”. 2016年11月14日閲覧。