はがき
はがき(葉書[1]、端書)は、手紙の形態の一つ。郵便葉書の略。片仮名で「ハガキ」と書く場合もある。
郵便約款で定められた規格・様式に基づき、郵便料金を示す証票が印刷された通信用紙(官製はがき)およびこれを基準として作られた、切手を貼って出す通信用紙(私製はがき)。
宛先と本文を一枚の厚めの紙(サイズは官製はがきで100.0mm×148.0mm)に書いて、封筒に入れずにそのまま送付する。
目次
語源[編集]
「はがき」は「はしがき」、つまり「端・書き」から派生した言葉で「端書」・「羽書」とも書かれた。古文書学においては文書料紙の右端を「端」と称し、端部分には「端書」(はしがき)と呼ばれる覚え書き・メモ等が記されていることが多いことから、もともと「端書」は紙片等に書き付けた覚え書き、また覚え書き等を書き付けた当の紙片等をも意味した(紙片に記したメモを文書に貼り付けたものは、付箋や押紙などと呼ぶこともある)。江戸時代には、金銭関係の催促状や通知文書が、「端書」と呼ばれた。明治時代に郵便制度が出来てからは、もっぱら「郵便はがき」の意味で使われ始め「葉書」という表記が一般になったとされる。そのため、今日はがきといえば一般的に「郵便はがき」のことを指すが、「葉書」は当て字であり、「端」の代わりに「葉」を使う理由については、「タラヨウ(多羅葉)」の木から「葉書」の「葉」が来た、など諸説あり、確かなことは分かっていない。
歴史[編集]
日本のはがきの歴史[編集]
日本では江戸時代に全国的に諸街道が整備され、特に江戸後期には飛脚による通信網が形成され近在や遠隔地との書簡による公的・私的な情報伝達が行われていた。書簡の中には、近代以降のはがきに相当するような、書式も単純で儀礼性が薄く口頭伝達の代用手段として用いられた簡易書簡も存在した。これらは飛脚以外にも使用人や家族を介しても伝達が行われ、郵便制度の確立以前から簡易書簡による情報伝達が盛んであった[2]とみることも可能である。こうしたことと関連づけて、後の郵便制度確立以降のヨーロッパ諸国と日本の郵便物に占めるはがきの割合を比較し、ヨーロッパ諸国が5パーセントから20パーセントの割合であるのに対し日本は40パーセントを超える高い割合であることを指摘する研究もある[2]。
このような近代以前の通信文化を背景に、明治に入ると交通がさらに発達するとともに政府による郵便制度が開始され、当初は切手制度(すなわち料金の支払いを示す切手、宛先を記す封筒、本文を記す便箋の三点を用意して送る封書による郵便)が先にスタートするが、まもなく一枚の紙が切手、封筒、便箋の三役を兼ねる官制はがき制度が導入されると簡単な内容を手軽に伝達できることで人々の間に浸透した。また、明治後期には絵葉書が流行し、はがきは私的な通信手段のみならず時候のニュースを伝えるメディアとしても発達した[3]。
官製はがき(公社製はがき)と私製はがき[編集]
郵便制度が存在する国では、郵便事業は通常、国家事業であるか公社的事業であり、民営企業が郵便事業を請け負う場合も、公社的性格を持つ。そのため、国家または公社/公社に準ずる事業体が発行する郵便はがきと、民間の印刷業者などが発行する郵便はがきの二種類が存在するのが普通である。前者は「官製はがき」あるいは「公社製はがき」と呼ばれるのに対し、後者は「私製はがき」と呼ばれる。アメリカ英語では、官製はがきをpostal card、私製はがきをpost cardと呼ぶが、イギリス英語では両者共にpost cardと呼んでいる。
日本における「官製はがき」は、郵便物の形態の一つとして1873年(明治6年)より導入され、1900年になってその私製が認可された[4]。郵便法ではがきは第二種郵便物に指定されている。はがきは郵便法により郵政官署によって調製され、この郵政官署(これまでの逓信省、逓信院、郵政省、郵政事業庁)が調製し発行するものが長らく「官製はがき」と呼ばれ親しまれてきたが、2003年4月1日から郵便事業が日本郵政公社の所管となったことに伴いこの語は廃され、「郵政はがき」と改称された。郵政民営化に伴い2007年10月1日からは郵便事業株式会社(2012年10月1日からは日本郵便株式会社)の発行となったが引き続き「郵政はがき」の名称が継がれている。他、一般の私製はがきは単に「郵便はがき」と呼称している。しかしながら、「郵政はがき」「郵便はがき」では官製と私製との区別が付きにくいとの考えから、「官製はがき」の語は依然として官公庁を含め(各所で広く?)使われている場合もある。日本の「官製はがき」のサイズは100×148mmである。
料金[編集]
「官製はがき」の場合、はがきの表面に切手と同等の効力を持つ額面が記載された「料額印面」が印刷されており、これが料金支払済みであることを示す。他方、「私製はがき」には、そのような印面は印刷されておらず、郵便事業体から料金分の切手を購入し、はがきに貼り付けなければならない。1895年のバイエルン王国の郵便はがきである右の写真を一例に説明すると、右上の料額印面はニュルンベルク(NUERNBERG)の4月27日の消印で抹消され、左下には、4月28日付けのミュンヘン(MUENCHEN)の到着印が押されている。
日本の「官製はがき(郵政はがき)」は郵便切手に相当し、郵便料金相当額の収受を証する「料額印面」(2017年6月1日現在、62円)が表示されている[注 1]。料額印面を汚染したはがきは無効となる。(ただし、料額印面を汚染したはがきは、新たにその料金相当の郵便切手をはり付けてこれを差し出すことができる)
- 郵便(はがき)料金の移り変わり
| 西暦 | 開始日 | 料金 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1873年 | 明治6年12月1日 | 市内 半銭(5厘) 市外 1銭 |
|
| 1883年 | 明治16年1月1日 | 1銭 | |
| 1899年 | 明治32年4月1日 | 1銭5厘 | |
| 1937年 | 昭和12年4月1日 | 2銭 | |
| 1944年 | 昭和19年4月1日 | 3銭 | |
| 1945年 | 昭和20年4月1日 | 5銭 | |
| 1946年 | 昭和21年7月25日 | 15銭 | |
| 1947年 | 昭和22年4月1日 | 50銭 | |
| 1948年 | 昭和23年7月10日 | 2円 | |
| 1951年 | 昭和26年11月1日 | 5円 | 1966年(昭和41年)までの年賀はがき料金は4円 |
| 1966年 | 昭和41年7月1日 | 7円 | 郵便法改正 |
| 1972年 | 昭和47年2月1日 | 10円 | |
| 1976年 | 昭和51年1月25日 | 20円 | |
| 1981年 | 昭和56年1月20日 | 30円 | |
| 1981年 | 昭和56年4月1日 | 40円 | |
| 1989年 | 平成元年4月1日 | 41円 | 消費税導入 |
| 1994年 | 平成6年1月24日 | 50円 | |
| 2014年 | 平成26年4月1日 | 52円 | 消費税増税 |
| 2017年 | 平成29年6月1日 | 62円 | 年賀はがき料金は52円(2018年用のみ実施) |
| 2019年 | 平成31年1月1日 | 62円 | 2019年用から年賀はがき料金も62円[5] |
根拠法令[編集]
郵便法第21条
郵便葉書は、第二種郵便物とし、通常葉書及び往復葉書とする。
○2 郵便葉書は、会社が、郵便約款でその規格及び様式を定めて、これを発行する。ただし、郵便約款の定める通常葉書又は往復葉書の規格及び様式を標準として、これを会社以外の者が作成することを妨げない。
無地はがきと絵はがき[編集]
官製はがきは普通、無地であるが、罫線を印刷したものなども発行されていたことがある。また、郵政が発行した「絵はがき」も存在する。「絵はがき」は1870年ころドイツにおいて創案された。19世紀のドイツ諸国では、ある程度以上の枚数を注文した場合、予め絵柄を刷り込んだ官製はがきを作ることができた。これに対し、私製はがきは、無地のままでは、ただの規格サイズの紙片に過ぎず、商品価値が希薄なので、通常は見た目に美しい絵柄や写真等を印刷してある。このように、絵柄や写真等が印刷されているはがきを「絵はがき」「ポストカード」と呼ぶ。およそ明治20年代に日本に導入され、1904年(明治37年)ころ彩色木版による市販絵葉書が多数発行され、流行した。
絵はがきは、写真絵はがきと挿絵絵はがきに分かれ、目的に応じて、観光絵はがき、記念絵はがきなどにも分かれる。名画や肖像を絵柄にすることもあれば、挿絵画家が専門にイラストを描いて絵はがきの図柄を作成することもある[4]。
種類[編集]
官製はがき(郵政はがき)には
- 「往復はがき」- 返信用のはがきが結合されたもので、はがき二枚分の価格となる。
- 「四面連刷はがき」 - 大量印刷用。
- 「小包はがき」 - 小包と同時に送れるように作られたはがき。荷札のような形状で上部に穴が開いておりそこを通っている針金で小包本体のひもにくくりつけられるようになっている。本文は2つ折りの内側に書いてのりしろで封をする。1951年6月から2003年3月まで発売。
- 「エコーはがき」 - 企業などの広告が表面の下部1/3に掲載されており、通常50円のはがきから、広告費として5円が引かれているため販売価格は45円となる。1981年7月から発売。
- 「ふるさと絵はがき」 - 各地の代表的な風景を印刷してある。売価50円。1991年から2003年3月まで発売。
- 「絵入りはがき」 - 各地の代表的な風景のイラストや写真を印刷してある。2011年度発売分までの売価は1枚70円であったが2012年7月以降発売分については80円または100円となっている。1985年4月から発売。
- 「国際郵便はがき」 - 国際郵便(航空扱い)用。
などがあり、また、お年玉付郵便はがき(年賀はがき)や夏のおたより郵便葉書(かもめ〜る、暑中見舞用郵便はがき)など、日本の風習に沿った用途のはがきも販売されている。これらは、下端にくじが印刷されており、抽選で賞品があたるくじ付郵便はがきでもある。最近の家庭への高精細なインクジェットプリンターの普及に伴い、インクジェット用に表面処理を施された郵政はがきも販売されている。
郵政はがきのほか、大きさや重量(日本では14.0〜15.4×9.0〜10.7センチメートル、重量2〜6グラムの長方形)および「郵便はがき」「郵便往復はがき」またはこれに準ずる文字を掲げること、紙質、厚さが官製はがきと同等以上、表面は白色又は淡色などの規格[6]に基づいて、一般にはがきを調製することもでき、これは「私製はがき」と呼ばれる。料金分の切手を貼って(または郵便料金計器の証紙を貼るか、別納・後納扱いで)郵便物として差し出すことができる。私製の往復はがきを調製することもでき、その場合は復信部分にもあらかじめ切手を貼って(または料金受取人払扱いで)差し出す。
なお、和歌山南漁業協同組合が年賀はがきなどの代わりに使用できるとして「スルメール」という名称で販売しているものは、スルメを定形郵便物サイズの袋(封筒)に入れた封書扱いであり、はがきではない。
はがきは基本的には封書と異なり、カード状となっているため、文章内容が他人に読み取られ得る状態で配達される。企業が発送する請求書・領収書など、プライバシー保護などの理由で内容を秘匿したいものは、従来は封書で発送されていたが、近年では郵送費の節減を目的として、はがきを利用するケースが増加している。この場合、記載事項が見えないようにするため、目隠しシールを貼ったはがきや薄く張り合わせた接着はがき(「圧着ハガキ」や「封緘葉書」(ふうかんはがき)[注 2]と通称される)を使用する。一般家庭や個人商店用に封緘葉書を作成できるキットも存在する。
日本では、身体障害者手帳1・2級、療育手帳1・2度の6歳以上の障害者を対象に、年1回、4月下旬〜5月末日に郵便局に障害者手帳を提示して申し込むことによって、官製はがき(青い鳥はがき)20枚を無料で配布している。2001年までは表側左下の一部に半円形のくぼみを入れた特別デザインの「青い鳥郵便はがき」が発行され、申し込んだ障害者に無料配布されたほか、一般にも販売されていたが、2002年以降は青い鳥をデザインしたオリジナル封筒に通常の郵便はがき20枚を入れたものを、申し込んだ障害者に無料配布する形に変更された。2007年10月の郵政民営化以降は日本郵便株式会社の手によって継続されている[7]。
郵政民営化以後、各郵便局内で赤い郵便ポスト型のオリジナルはがきを発売するようになった。郵便局名が印字されているため、購入店舗がわかるのが特徴である。
その他[編集]
郵政はがき(および従来の官製はがき)の料額印面の部分を切り取ってハガキ大の紙に貼って郵送することは認められていない[8]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ 「葉書」は借字とされる。(『新明解国語辞典第四版』 三省堂、1996年)
- ^ a b 石井寛治『情報・通信の社会史』1994
- ^ 田邊幹「メディアとしての絵葉書」『新潟県立歴史博物館研究紀要』第3集、2002
- ^ a b 山田俊幸 「日本絵葉書事始め」『アンティーク絵はがきの誘惑』 産経新聞社、2007年
- ^ “年賀葉書の料金改定” (pdf) (プレスリリース), 日本郵便株式会社, (2018年2月23日), オリジナルの2018年2月24日時点によるアーカイブ。 2018年2月24日閲覧。
- ^ 郵便事業(株)- 内国郵便約款(約款)PDFより(私製葉書の規格および様式)の項を参照。
- ^ 青い鳥郵便葉書の無償配布 - 郵便事業(株)(2008年3月10日付)
- ^ “はがきの種類”. Homepage@Sayopee.net. 2014年12月4日閲覧。
関連項目[編集]
- お年玉付郵便はがき(年賀はがき)
- 夏のおたより郵便葉書(かもめ〜る、暑中見舞用郵便葉書)
- 春の絵柄付郵便葉書(さくらめーる、就職・転勤、卒業・入学などの挨拶・お祝い用葉書)
- エコーはがき
- ふみカード
- タラヨウ(植物、樹木) - 葉書の「葉」とはタラヨウの葉であり、これに文字を刻んだ事が葉書の語源という説がある。
- エフェメラ
- 手彩色絵葉書
- ハガキ職人
- ポストクロッシング
- 手紙