当たり屋グループ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動先: 案内検索

当たり屋グループ(あたりやグループ)とは、自動車オートバイなどに乗車してターゲットとなる相手にわざと交通事故を起こさせ、法外な要求してくるとされている集団のこと。1980年代末から1990年代にかけて[1]、当たり屋グループへの注意喚起を促す出所不明の文書が人伝いに広く流布したが、これらの怪文書は根拠のないデマであるとされており[2]、そのような集団が存在すること自体が都市伝説の一つであるともみなされている[3]

概要[編集]

当たり屋グループの存在を知らせるものとして広く流布した文書は、「示談金や見舞金を目当てにした当たり屋の集団が県内に来ている」と不安を煽り、その後に当たり屋とされる車両のナンバープレートの番号や、遭遇した場合の対応方法といった、具体的な回避方法が書かれた内容が続く体裁になっている[4]。組織的な犯罪集団がナンバープレートと共に報告され、いつまでも逮捕もされないというのは不自然であるが[2]当たり屋行為それ自体は実在しており[2]、また内容が漠然としたものではなく具体的なナンバーまで書かれていることが、読み手に注意喚起を促す[5]。こうした内容は読んだ人を不安に陥れ、思わず「事実」として他人に伝えたくなるような噂としての条件を兼ね備えたものとなっている[5]

こうした文書が流布したのはワープロ専用機ファクシミリが広く普及したのと同時期で[6]チラシ[1]、ファックス[1]回覧板[2]などといった媒体で広まった。一時はテレビや週刊誌でも採り上げられることがあったため、この都市伝説は、職業として自動車の運転に従事する者を中心に全国的に広まった。情報の広まり方としては、「当たり屋グループ出現チラシ」のファックスやコピーが手元に届き、そのコピーをコピーしたものを他者に送り、受け取った他者がさらにコピーを重ねて、さらに他者に送るといった経緯である。

1996年に社会心理学者の佐藤達哉が学生の協力でチラシを収集したところによれば、集まった11枚のチラシはいずれも同一のものがなく、大きさも体裁も書体もさまざまで、補足内容の差異などが見られたという[1]チラシのコピーを重ねていくうちに文字がつぶれて判別しにくくなったり、作り直された際に誤読され別の文字(数字)に置き換えられるなどの過程を経て、様々なパターンの内容ができていったと考えられる。一説によると、そのパターンは全国で200種類以上にものぼるという。

当たり屋グループ出現チラシの内容例[編集]

当たり屋グループが来た。気を付けて運転すること。
  1. 下記ナンバー車と接触事故を起こした場合は、その場で示談せずに直ちに警察に連絡すること
  2. 警察が到着する前に、自分の勤務先や氏名、電話番号は絶対に言わないこと
  3. このコピーを車内に備えておくこと
  4. 友人、知人に知らせること

要注意ナンバー(30台 - 36台が箇条書きに掲載。大半は分類番号(地名の後ろの数字)が「57」など2桁)

  • このナンバーの車が前を走行している時は、急に車が止まっても当たらない車間距離を保つこと(サイドブレーキを使用するのでブレーキランプはつかない)。
  • ○○(地名)ナンバーの他、△△(地名)方面の車にも気を付けること。
  • 運悪く事故を起こした場合は、警察に連絡すると同時にこの資料をチェックするだけで逃げていくケースもあるそうだ。

要注意ナンバーの地名は「品川」「大阪」「山口」など様々だが、流布する地域で偏見や漠然とした嫌悪感を持たれている地域や[2]、著名なヤクザ映画の舞台となっている地名のナンバーが列挙される傾向が見られ[7]、情報が出回る地域以外のナンバーの情報が出回ることが多いとされる。前述の通りコピーや複製が繰り返されるうちに、分類番号が「39」である実在しないナンバーや一連指定番号(ナンバーの中央にある4桁以下の数字)が「0」から始まるナンバーが書かれていたり(1962年以降、一連指定番号が3桁以下の場合はそれ以上の桁を「0」ではなく「・」で埋めている)、小型乗用車の車種が明記されているのに貨物車を表す「6ナンバー」が併記されていたりするなど明らかにおかしいものも多い。

当たり屋グループの手口として「ターゲットにする車を2台の車でサンドイッチ状態にし、後方からパッシングをして煽り、前方の車はサイドブレーキを使って急停止する(前の車に追突させる)」「道をゆずるフリをし、ターゲットの車が通り過ぎようとすると急発進して当てる」「公務員・女性が狙われやすい」などと紹介しているものや発行者が大企業や役所などになっているものもある。

警察の見解[編集]

リストに掲載された車のナンバーを警察が実調査したところ、既に廃車になっていたり、存在していなかったり、記載されている車種と実際の(車検証登録の)車種が異なったり、といったものばかりだったという。そのため警察は単なる「ウワサ」「デマ」であると判断し[2]、「これらの車が当たり屋であるという事実はない」「当たり屋グループ情報に惑わされないように」と注意を呼びかけている。

是非について[編集]

現在でも一部の企業などで、職場内の回覧・社内LANにおける電子掲示板電子メールなどで「当たり屋グループ」についての情報を流し、注意を呼びかけているところも少なくない。次のような背景のもとで情報が広まっているとされている。

  • 「法外な賠償金を要求される」などと不安を煽っていること
  • 有益な情報であると思い込み、善意で多くの人に知らせようとする心理があること

これらはパソコンネットワーク上でチェーンメールやデマウイルスなどが広まっていく形態とよく似ている。その場合手口自体が問題とされ、ナンバーの真偽はあまり重要視されない傾向もある。

また、チラシに書かれた特定の地域・ナンバーを見て、「○○(地名)は運転マナーが最悪」「△△(地名)はガラが悪い」などと偏見を持たれるようになるとも考えられる。もっとも、自動車のナンバーの分類番号は1999年(一部地域は1998年)に2桁から3桁になっており、2桁時代のナンバーは廃車などにより今後少なくなることから、以前出回っていた情報も徐々に廃れていくとみられる。

2008年(平成20年)度にはナンバーを一部改変したものも出回り始めたが、山口県警により当たり屋情報の事実はないと否定されている。

脚注[編集]

  1. ^ a b c d 松田 2014, p. 145.
  2. ^ a b c d e f 高田 2006, p. 145.
  3. ^ 木原浩勝・岡島正晃・市ヶ谷ハジメ 『都市の穴』 双葉社双葉文庫〉、2003年、148-150頁。
  4. ^ 松田 2014, pp. 145-148.
  5. ^ a b 松田 2014, p. 148.
  6. ^ 松田 2014, pp. 145,149-152.
  7. ^ 高田 2006, pp. 145,149-150.

参考文献[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]