コンテンツにスキップ

張奕

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
張 奕
富邦ガーディアンズ #19
西武時代
(2023年4月23日 京セラドーム大阪
基本情報
国籍 中華民国の旗 中華民国台湾
出身地 花蓮県万栄郷
生年月日 (1994-02-26) 1994年2月26日(30歳)
身長
体重
182 cm
86 kg
選手情報
投球・打席 右投右打
ポジション 外野手投手
プロ入り NPB / 2016年 育成選手ドラフト1位
CPBL / 2024年 ドラフト2位
初出場 NPB / 2019年5月16日
最終出場 NPB / 2023年5月2日
経歴(括弧内はプロチーム在籍年度)
国際大会
代表チーム チャイニーズタイペイの旗 チャイニーズタイペイ
プレミア12 2019年
張 奕
各種表記
繁体字 張 奕
簡体字 张 奕
拼音 Zhāng Yì
注音符号 ㄓㄤㄧˋ
和名表記: ちょう やく
発音転記: ジャン・イー
英語名 Chang Yi
テンプレートを表示

張 奕(ジャン イー、ちょう やく、1994年2月26日 - )は、台湾中華民国)・花蓮県万栄郷出身[1]プロ野球選手投手)。右投右打。富邦ガーディアンズ所属。

日本国内の高校(福岡第一高等学校)に3年間在学していたため、NPBでは外国人枠の例外規定で日本人選手と同じ扱いを受けているが、国際大会には台湾(チャイニーズタイペイ)の代表として出場している。NPBでの登録名の読みは、日本語読みした「ちょう やく」。

日本のプロ野球でのプレー経験を持つ陽耀勳、陽品華(改名前は「陽耀華」〈読み方:よう ようか〉、元長崎セインツ愛媛マンダリンパイレーツ内野手)、陽岱鋼兄弟は、母方の従兄に当たる[2]

経歴

[編集]

プロ入り前

[編集]

小学3年生の頃から台湾で野球を始めた[2]が、7歳年上の従兄である陽岱鋼への憧れから福岡県福岡市福岡第一高校に進学[3]右翼手投手を兼ねていた[1]。3年夏の第94回選手権福岡大会決勝では「1番・右翼手」としてスタメンに起用。3回裏からの救援登板で6イニングを無失点に抑えたほか、打者として1安打を放ったがチームは飯塚高校に2-4で敗れた[4]。結局、甲子園球場の全国大会とは無縁のまま日本経済大学へ進んだ。

日本経済大学への進学後は外野手として1年時の春からレギュラー[5]に定着。福岡六大学のリーグ戦では、新人王と2度のベストナインを受賞した。また3年時までのリーグ戦で打った本塁打は1本だったが、4年時の秋には4本塁打で最多本塁打のタイトルを獲得した[2]

2016年のドラフト会議で、オリックス・バファローズから外野手として育成選手ドラフト1位指名を受け、支度金300万円、年俸250万円(金額は推定)という条件[6]で、育成選手として入団した。入団当初の背番号122

オリックス時代

[編集]
オリックス・バファローズ時代
(2021年7月7日 京セラドーム大阪

2017年は、外野手としてウエスタン・リーグ公式戦59試合に出場した。しかし、打率.091、1打点、0本塁打と全く振るわず支配下選手登録を勝ち取れなかった。

2018年は、ウエスタン・リーグ公式戦で15試合連続ノーヒットを喫した末にレギュラーシーズン中の6月中旬から投球練習を開始[7]。外野手登録を続けながら同リーグ公式戦5試合に投手として登板すると、通算投球イニングが5回ながら防御率1.80という成績を残した[8]

2019年は、ポジション登録を外野手から投手へ正式に変更[9]令和時代最初の日であった5月1日に支配下選手契約へ移行するとともに、背番号を 98に変更した[10][11][12]。5月16日の対千葉ロッテマリーンズ戦(ZOZOマリンスタジアム)8回裏に一軍公式戦へデビュー。救援で2試合に登板しただけで出場選手登録をいったん抹消されたが、抹消後は二軍で先発調整に取り組む[13]一方で、7月11日のフレッシュオールスターゲーム楽天生命パーク)にウエスタン・リーグ選抜の救援投手として登板した[14]。8月8日の対北海道日本ハムファイターズ戦(旭川スタルヒン球場)では、先発投手として一軍に復帰。6回を2被安打、1失点、無四球、6奪三振という内容で一軍公式戦での初勝利を挙げた[15][16]NPBの球団に育成契約の野手として入団した選手が、投手への転向と支配下選手登録を経て、一軍公式戦の初先発で初勝利を挙げた事例は張奕が初めてである[15]。一軍公式戦では通算で8試合に登板。初勝利以降に登板した6試合はすべて先発で2勝4敗、防御率5.93を記録した。シーズン終了後に開催の第2回WBSCプレミア12には台湾代表の投手として出場すると[17]、オープニングラウンドのベネズエラ代表戦(11月6日)、スーパーラウンドの韓国代表戦(11月12日)の2試合に先発。通算投球イニング13回2/3を無失点で凌いだほか、いずれの試合でも白星を挙げたことから大会終了後には先発投手部門でベストナインに選ばれた[18]

2020年は春季キャンプ中に右肘を痛め、戦列復帰は8月中旬と大きく出遅れ、前年と同じ2勝に終わった[19]

2022年は全て中継ぎとして15試合に登板し、防御率2.38を記録した。

西武時代

[編集]

2022年12月15日、埼玉西武ライオンズからFA宣言しオリックスに移籍した森友哉の人的補償として張奕が西武に移籍することが発表された。背番号は47[20][21]

2023年は、2月に右肩の炎症が見つかり、春季キャンプは二軍にあたるB班に配置換えとなった。この故障により同年3月開催のWBCチャイニーズタイペイ代表も辞退することとなった[22]。それでも4月12日は移籍後一軍初登板を果たし、23日の古巣のオリックス戦で途中登板した際には森を右飛に打ち取るなど三者凡退に抑えた。しかし、その後の登板では失点を重ね、5月2日の対日本ハム戦の登板翌日に登録を抹消され、持病の右肩痛にも悩まされて5試合の登板にとどまった。10月4日に球団から戦力外通告を受け、育成契約の打診もなかった[23]

故障の影響で実戦登板から離れていたが、12球団合同トライアウトでの登板を目指して準備を行い、11月15日開催のトライアウトに間に合わせた。シート打撃での打者3人との対戦で奪三振1、与四球2の結果だったが、およそ半年ぶりの実戦登板だったことから、登板後は無事に投げられたことを安堵するコメントを出している[24]。トライアウト終了後も、アジア プロ野球チャンピオンシップチャイニーズタイペイ代表のオーバーエイジ枠に追加招集される可能性があったことから西武第二球場で自主練習を続けていたが、結局招集のないまま大会は終了した。NPB球団からのオファーがなかったため、21日の自主練習の際、台湾で現役続行を目指すことを明言した。2024年7月の台湾プロ野球ドラフト会議での指名を目指し、現地の社会人チームでプレーを続行する予定[25]。11月27日には、台鋼ホークスの練習生(自行培訓選手)としてチームに合流[26]。同球団でアジアウインターリーグに参加することになり[27]、12月9日の初登板ではNPB REDを2回2安打無失点に抑えている[28]

富邦時代

[編集]

2024年6月28日に台湾プロ野球のドラフト会議が行われ、富邦ガーディアンズから2位の指名を受けた[29]。背番号は19

選手としての特徴・人物

[編集]

大学時代は50メートル走6.0秒[30]、遠投120メートル、走攻守三拍子揃った外野手との評価を得ていた[2]

プロで投手に転向した後は、ストレートと落差のあるフォークボール[31]を軸にカーブスライダーを交える[8]。2021年には、二軍でリリーフとして自己最速157km/hを計測している[32]

愛称は「チョーメン[33]、「シーファン[34]

詳細情報

[編集]

年度別投手成績

[編集]




















































W
H
I
P
2019 オリックス 8 6 0 0 0 2 4 0 0 .333 126 27.1 36 7 9 0 1 17 1 0 20 18 5.93 1.65
2020 13 9 0 0 0 2 4 0 0 .333 212 48.0 50 5 16 0 2 46 1 1 26 23 4.31 1.38
2021 8 1 0 0 0 0 1 0 3 .000 54 10.1 21 4 2 0 0 15 0 0 15 15 13.06 2.23
2022 15 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 101 22.2 23 0 10 0 2 20 0 0 9 6 2.38 1.46
2023 西武 5 0 0 0 0 0 0 0 0 ---- 25 5.0 10 2 1 0 0 3 0 0 5 5 9.00 2.20
通算:5年 49 16 0 0 0 4 9 0 3 .308 518 113.1 140 18 38 0 5 101 2 1 75 67 5.32 1.57
  • 2023年度シーズン終了時
  • 各年度の太字はリーグ最多

年度別守備成績

[編集]


投手












2019 オリックス 8 0 4 0 0 1.000
2020 13 1 8 0 0 1.000
2021 8 1 0 0 0 1.000
2022 15 2 2 2 0 .667
2023 西武 5 0 0 0 0 ----
通算 49 4 14 2 0 .900
  • 2023年度シーズン終了時

表彰

[編集]
国際大会

記録

[編集]
初記録
投手記録
打撃記録

背番号

[編集]
  • 122(2017年 - 2019年5月1日)
  • 98(2019年5月2日 - 2022年)
  • 47(2023年)
  • 192019年WBSCプレミア12、2024年 - )
  • 61(2023年アジアウインターリーグ)[35][36]

登場曲

[編集]

代表歴

[編集]

脚注

[編集]

出典

[編集]
  1. ^ a b 都築学園グループ 日本経済大学 硬式野球部の張奕(チョウ・ヤク)選手がプロ野球ドラフトにてオリックス・バファローズより育成枠1位指名」『PR TIMES』2016年10月20日。2017年6月10日閲覧
  2. ^ a b c d オリ育成ドラフト1位の張奕 いとこ陽岱鋼と「一緒にやりたい」」『Sponichi Annex』2016年11月8日。2017年6月10日閲覧
  3. ^ オリ育成ドラフト1位・張奕 いとこの陽岱鋼にラブコール「右中間を組みたい」」『デイリースポーツ』2016年11月8日。2017年6月10日閲覧
  4. ^ 第94回全国高校野球選手権福岡大会 飯塚―福岡第一(決勝)」『朝日新聞デジタル バーチャル高校野球』2012年7月28日。2017年6月10日閲覧
  5. ^ 日ハム陽岱鋼は従兄。オリックス育成1位の張奕がヤフオクドームで本塁打」『Yahoo!ニュース』2016年10月22日。2017年6月10日閲覧
  6. ^ オリックス育成ドラ1張奕と仮契約 陽岱鋼のいとこ」『日刊スポーツ』2016年11月16日。2017年6月12日閲覧
  7. ^ オリックス育成の張奕1回0封 巨人陽岱鋼のいとこ」『日刊スポーツ』2018年10月18日。2019年5月2日閲覧
  8. ^ a b 【次のスターはオリまっせ】張奕投手 エースの言葉で消えた甘さ 投げ続けた先に春は来る」『スポーツニッポン』2019年1月31日。2019年8月8日閲覧
  9. ^ オリックス育成の張奕外野手、支配下選手から開幕1軍目標 来季からは投手登録に」『デイリースポーツ』2018年11月21日。2019年5月2日閲覧
  10. ^ 陽岱鋼いとこ・張奕がオリ支配下に」『サンケイスポーツ』2019年5月2日。2019年5月2日閲覧
  11. ^ 新規支配下選手登録 2019年度」『NPB.jp 日本野球機構』。2019年5月2日閲覧
  12. ^ オリックス、張奕を支配下登録 令和初の昇格 いとこ陽岱鋼と「対戦したい」」『スポーツニッポン』2019年5月1日。2019年8月8日閲覧
  13. ^ 【オリックス】巨人・陽岱鋼のいとこ・張奕がプロ初先発へ「やることは変わらない」」『スポーツ報知』2019年8月5日。2019年8月8日閲覧
  14. ^ 2019年7月11日(木) 楽天生命パーク【フレッシュオールスターゲーム】 イースタン・リーグ vs ウエスタン・リーグ」『NPB.jp 日本野球機構』。2021年6月27日閲覧
  15. ^ a b 育成野手出身オリックス・張、涙のお立ち台「亡くなったおじいちゃんに…」捧げる初白星 いとこ陽岱鋼にも感謝」『スポーツニッポン』2019年8月8日。2019年8月8日閲覧
  16. ^ オリックス、プロ初先発の張奕が6回1失点の好投「楽しんで投げることができた」」『デイリースポーツ』2019年8月8日。2019年8月8日閲覧
  17. ^ 聯合新聞網「12強/中華隊28人名單公布 王柏融入列 | 聯合新聞網:最懂你的新聞網站」『聯合新聞網』(中国語)、2019年10月1日。2019年10月1日閲覧
  18. ^ 2019 WBSCプレミア12 表彰選手」『2019 WBSC プレミア12』。2021年6月27日閲覧
  19. ^ オリックス・張奕が決意の早期来日で自主トレ開始! 満を持してのスロー調整」『BASEBALL KING』2021年1月15日。2021年2月23日閲覧
  20. ^ FA補償による選手の獲得合意について」『埼玉西武ライオンズ』2022年12月15日。2022年12月15日閲覧
  21. ^ 張奕投手の移籍について|オリックス・バファローズ」『オリックス・バファローズ オフィシャルサイト』2022年12月15日。2022年12月15日閲覧
  22. ^ WBC台湾代表に痛手、西武・張奕が出場辞退へ 地元メディア伝える…右肩炎症「とても悔しい」」『Full-Count』2023年2月3日。2023年2月3日閲覧
  23. ^ 杉田純「人的補償、現役ドラフトで移籍もわずか1年で戦力外 当事者たちが語った本音「育成契約はあるかなと...」「もうちょっとチャンスはほしかった」」『web Sportiva』集英社、2023年11月22日、2頁。2023年11月22日閲覧
  24. ^ 杉田純「人的補償、現役ドラフトで移籍もわずか1年で戦力外 当事者たちが語った本音「育成契約はあるかなと...」「もうちょっとチャンスはほしかった」」『web Sportiva』集英社、2023年11月22日、1頁。2023年11月22日閲覧
  25. ^ 【西武】戦力外の張奕が単身で母国・台湾での現役続行を表明 「出会った人全員に感謝してます」」『日刊スポーツ』2023年11月22日。2023年11月22日閲覧
  26. ^ 日本選手やNPB組が続々と台湾球界へ 激動のオフ…元近鉄戦士が監督就任」『Full-Count』2023年12月20日。2023年12月21日閲覧
  27. ^ 西武から戦力外の張奕投手が台湾リーグ台鋼ホークスでウインターリーグ参戦へ 台湾記者が伝える」『日刊スポーツ』2023年11月27日。2024年1月2日閲覧
  28. ^ 「出会に感謝」母国で復活目指す右腕がオリックスナインとの再会報告」『西スポWEB OTTO!』2023年12月9日。2023年12月12日閲覧
  29. ^ 台湾ドラフト1位に元レッドソックス張育成 元オリックス張奕も2位指名、日本人の高塩将樹も」日刊スポーツ、2024年6月29日。2024年7月1日閲覧
  30. ^ オリックス ドラフト“隠し玉”に陽岱鋼いとこ」『スポーツニッポン』2016年10月8日。2019年11月13日閲覧
  31. ^ 【プレミア12】侍ジャパンが“お手本”にすべきオリ張奕 なぜ好調韓国を止められたのか?」『Full-Count』2019年11月16日。2021年6月27日閲覧
  32. ^ 聯合新聞網「日職/張奕飆157公里後重返一軍 有機會對戰王柏融 | 聯合新聞網:最懂你的新聞網站」『聯合新聞網』(中国語)、2021年6月23日。2021年6月23日閲覧
  33. ^ 98 張 奕選手名鑑2019」『オリックス・バファローズ オフィシャルサイト』。2022年1月8日閲覧
  34. ^ 陽岱鋼獲得へオリに援軍!いとこの育成D1・張奕がラブコール」『サンスポ』2016年11月8日。2024年1月1日閲覧
  35. ^ 張奕明天搭機返台 冬盟選穿台鋼雄鷹61號」『ETtoday Sports Cloud』。2023年12月21日閲覧
  36. ^ 張奕借穿台鋼61號登板2局無失分 最快球速147公里」『蕭保祥/台南報導』2023年12月9日。2023年12月21日閲覧
  37. ^ 選手名鑑」『オリックス・バファローズ』。2023年12月14日閲覧

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]