弦楽四重奏曲第11番 (ベートーヴェン)

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弦楽四重奏曲第11番ヘ短調「セリオーソ」Op.95ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン1810年に作曲した弦楽四重奏曲である。原題は"Quartetto serioso"であり、セリオーソの名は作曲者自身によって付けられたものである。なお、この曲のあとに14年間、弦楽四重奏曲は作られていない。

概要[編集]

名前の通り「真剣」な曲であり、作曲者のカンタービレ期特有の短く、集約された形式を持つ。しかし、歌謡的な要素は少なく、あくまでも純器楽的に音楽は進行する。音楽は短く、きわめて有機的に無駄を省いた構成をとるが、時に無意味ともいえる断片が挿入されたりして、それがかえって曲の真剣さを高めており、そこに他の要素を挿入したり、緊張感の弛緩する余地を与えない。

曲の構成[編集]

第1楽章 Allegro con brio

ソナタ形式。ユニゾンで荒々しい主題が奏されると、第2主題は変ニ長調に転じ、3連符を元にした旋律がヴィオラに歌われるが、長く続かず、再び荒々しい打激に変わり、断片的な旋律と、それを打ち消すような無意味な音階進行によって、安らぐ暇を与えない。これがセリオーソと名づけられた所以だろう。提示部の反復はなく、展開部も短く、再現部の後、コーダで盛り上がりをみせるが、楽章は静かに閉じられる。 第1主題が変ト長調で反復されることや、変ニ長調に対するニ長調の激しい走句など、全体的にナポリの和音が多用されるが、これはベートーヴェンの多くの短調作品の特徴である。特に、その調的関係から月光熱情の両ピアノソナタを連想させる。

第2楽章 Allegretto ma non troppo

ニ長調という遠い調で書かれている。時計を刻むような無機質なチェロの進行に開始されるが、その後の第1ヴァイオリンに歌われる旋律はまったく関連性がなく、ベートーヴェンが追求してきた「人間的な」緩徐楽章に対する一種の皮肉を感じさせる。ヴィオラによって新しい主題が提示され、フガートとなり、展開される。途中に対旋律や反行形が加わり、さらにフーガ主題は冒頭主題の再現の中にも織り込まれる。楽章は減七の和音に終止し、第3楽章にそのままアタッカで繋がれる。

第3楽章 Allegro assai vivace ma serioso

スケルツォに相当し、5部分による。発想に「セリオーソ」と指示されている。減七の和音を多用した付点リズムによる労作的な主部と、コラール的なトリオからなる。

第4楽章 Larghetto espressivo-Allegro agitato

緩やかな短い序奏に始まる。主部はロンド形式。情熱的な主題が歌われ、ただならぬ雰囲気を漂わせる。しかし、突如コーダにおいて曲はAllegro ヘ長調に転じ、諧謔的ともいえる音階進行とそれに対応するパッセージが奏され、今までの真剣さをあざ笑うかのように明るく軽快に閉じられる。第2楽章でも見られたように、音楽は無意味なものの羅列や無機質な機械的進行によって、人間的なものに対する一種の皮肉を表現しているといえる。

外部リンク[編集]