弥富金魚

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弥富市歴史民俗資料館にある展示水槽
愛知県における弥富市の所在地

弥富金魚(やとみきんぎょ)とは、愛知県弥富市周辺で養殖されている金魚

弥富市に加えて、津島市愛西市の旧佐織町域、海部郡飛島村で生産された金魚も「弥富金魚」とされる[1]。日本にいる金魚の全品種である26種類がすべてそろう産地である。約100ヘクタールの養殖池があり、約5,000万匹を生産している[1]。金魚の尾数では奈良県大和郡山市を下回るが、品種数、養殖池面積、売上高では弥富が日本一の金魚産地である[1]弥富市歴史民俗資料館のロビーには22種類の金魚が水槽で展示されている。

歴史[編集]

弥富市内にある金魚養殖池

江戸時代文久年間(1861年-1864年)、大和国郡山(現・奈良県大和郡山市)の金魚商人が東海道の前ヶ須(現・弥富市)に宿泊した際、土地を借用して溜池を造成し、金魚の水替えや休養に用いた[2]。この地の権十郎が金魚を気に入って購入したのが弥富金魚の始まりとされている[1]

やがて産卵や孵化の方法も郡山の商人に伝授され、1868年(明治元年)に佐藤宗十郎が採卵や孵化に成功すると[1]、1884年(明治17年)頃からこの地で金魚養殖がおこなわれるようになった[2]。金魚による収益は水稲による収益をはるかに超え、大正末年頃には56町歩もの金魚田があった[2]

当初は郡山からもたらされたワキン・和蘭・その他の雑種のみだったが、やがて東京から丸長・デメキンリュウキンシュブンキンシュウキンなどが導入され、西日本・東日本の双方向に出荷するようになった[3]。昭和前期には郡山や東京が高級金魚の生産地であり、弥富はリュウキンとワキンを大量生産する産地だった[3]。この頃には北アメリカに対して輸出を行っており、1931年(昭和6年)には20万尾を輸出した[3]

宇宙金魚の子孫

太平洋戦争中には一時的に金魚養殖が姿を消したが、戦後には復興した[4]。1959年(昭和34年)の伊勢湾台風では深刻な打撃を受け、関東や関西の業者からの支援を受けて再び復興した[4]。1978年(昭和53年)の愛知県水産試験場弥富指導場の調査によると、金魚養殖の専業農家は11%であり、農業との兼業農家が65%だった[4]。100%が個人経営であるが、51アールから100アールの経営体が37%ともっとも多く、全国的にみると経営規模は大きい方だった[4]。地区別では96アールの芝井地区がもっとも多く、前新田などが芝井地区に次いでいた[4]

1994年(平成6年)頃の弥富金魚漁業協同組合の組合員は約130人、販売市場は3か所、年間の出荷量は7,000万匹だった[4]。1994年(平成6年)7月には、日本人宇宙飛行士の向井千秋スペースシャトルコロンビア号で弥富金魚を用いた宇宙酔いの実験を行った[1]。この際に用いられた金魚は「宇宙金魚」と呼ばれている[1]。1997年(平成8年)には江戸錦ランチュウの交配種が「桜錦」として新品種登録された。

2005年(平成17年)に愛知県で開催された愛知万博(愛・地球博)では、「宇宙金魚」の子孫が配布された[1]。2006年(平成18年)には弥富町と十四山村が合併し、市制施行して弥富市が誕生した。旧来から養殖池が多くある地域が市街化調整区域となったことで、養殖池の埋め立てと宅地化が進んでいる。2007年(平成19年)には弥富金魚のイメージソング『近所の金魚は弥富のきんちゃん』が完成した。

2017年(平成29年)には野鳥による食害が原因とみられる金魚の大量消失の被害が相次いで発生した[5]。1968年(昭和43年)頃には弥富金魚全体で約300軒の生産業者がいたが、2018年(平成30年)時点では約80軒となっている[6]

特徴[編集]

種類[編集]

生産量が多いワキン

1994年(平成6年)頃に生産されていた種類は、リュウキンデメキンオランダシシガシラワキンアズマニシキタンチョウスイホウガン、キャリコ、トサキンコメットシュブンキンチョウテンガンセイブンギョランチュウ、ロクリンだった[4]。リュウキンが26%、ワキンが22%、デメキンが13%であり、この3種類で約60%を占めていた[4]。その他にはシュブンキン、キャリコ、ランチュウなどの高級金魚が多い[4]

自然条件[編集]

弥富地域が金魚生産が盛んとなったのには、以下の自然条件があったことが挙げられる[3]

  1. 低湿地で水に恵まれ、海に近いためわずかに塩分を含んでいること
  2. 稚魚の餌となるミジンコの生育に適した粘土質であること
  3. 光沢を美しくする酸化鉄を含む土壌であること
  4. 年間を通じて水温の変化が小さいこと

脚注[編集]

参考文献[編集]

  • 弥富町誌編集委員会 『弥富町誌』 弥富町、1994年
  • 森文俊 『金魚百華』 ピーシーズ、2009年

外部リンク[編集]