府中三億円事件を計画・実行したのは私です。

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『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』(ふちゅうさんおくえんじけんをけいかくじっこうしたのはわたしです)は、白田の手記、小説

概要[編集]

2018年8月8日、小説家になろうで1968年に発生した三億円事件の犯人を称する白田なる人物の手記が投稿され、同年9月23日に完結[1]、12月6日に事件から50年を前にしてポプラ社より小説として書籍化、同社は10月3日に小説家になろうへ連絡、すぐに筆者とコンタクトして同月9日に書籍化の承諾を得た[2]。2018年12月29日から2019年12月31日まで少年ジャンプ+MUSASHI作画による漫画版が月1連載された[3]

白田は有力な容疑者とされ、青酸カリで自殺した少年S(本作では「省吾」)とは友人で学生運動に挫折した白田はその過程で現金輸送車を襲うことを計画、省吾にそれを持ちかけて話を進めるが省吾の恋人、京子をめぐる三角関係もあり、省吾抜きで白田は京子と実行に移したことが語られている[1][4]

白田は子や孫もいる普通の生活を送っていたが共犯者である妻(京子)の事故死をきっかけに[1][4]、葬儀後に息子へ自分が三億円事件の犯人だと明かすと世間にも告白することを勧められ、当初はマスコミに発表しようとしたが諸般の事情で諦め、息子が見つけた小説家になろうで手記を投稿、犯人を騙っていると疑われたとしても全ての人の信じられるとは思っていないが義理は通したかったとする[5][6]。発表方法や書き方は息子に任せ、白田はメカには弱いため手書きの文章を読み上げて息子が読みやすくしたものを投稿したという[5]

あらすじ[編集]

1968年、大学2年生の白田は盛んだった学生運動に励むことなく、友達もつくれずただなんとなく、ほとんど引きこもり状態の毎日を送っていた。古くからの親友の省吾は高校卒業後も暴走族をやっており、リーダーになっていた。それでも2人は郊外のプレハブ小屋を主として交流していた。あるとき、2人は大学で白田の同学年の京子と知り合い、カスタムされた省吾のバイクを褒められたことがきっかけで3人は交流するようになる。白田は学生運動の会合で美人、知的、カリスマ性のある三神千晶とも出会い、彼女が会長の経済理論研究会に参加、そこで聞いたある会話から、大きく運命が変わっていく。

反響[編集]

小説家になろうでは800万PV、書籍版は2019年2月時点で9刷13万部だった[7]

学生運動の様や、犯人である証拠としてアタッシュケースにSの父親の警察手帳を入れたとすることが秘密の暴露としてリアリティがあり[8][9]発煙筒の火がつかず予定通りにいかないことに慌てたとする新説に注目する見方や[10]、文体は三点リーダーやダッシュが多く小説的で犯人は今は老人のはずだが若者が書いたようで、きちんとした物証もなく、辻褄が合わない点もあり犯人の告白だとは思えない、話題作りのためではないかという否定的な見方もある[1][11][12][13]。警察側では犯人が名乗り出たと面白がる人や事件があった地元の府中警察署でも話題に上ったとされる[10]。白田はネットで話題になっていることは息子から教えられたが実感はなく、自分の元には誹謗中傷がよく届いた[5]。書籍版の奥付には小さく「この作品はフィクションです」と明記されている[14]

ダ・ヴィンチニュースの波多野公美は事件の裏側にあるテーマの1つとして若い4人男女の青春時代の輝きと痛みがあり、作中でたびたび「読者の皆さん」と白田から語りかけられるのが印象的で、そのうち直接、一世一代の告白を受けているような気持になり世界観に引き込まれると言い[15]、五十嵐大はことの顛末が冷静な筆致でまとめられているがそれ以上に本作はとても胸を打たれる青春もので、青春の痛みを真正面から書ききった力作で[16]、門賀美央子は始めは犯罪実録ものだと思っていたがしばらく読んでいるとそうではないことに気付き、本作は青春小説であり恋愛小説でもあり、大人になる直前のまだ何でもない自分を持て余しながら何かになりたいことを追い求める若者の記録で、昭和のジェットコースターのような時代を知る人には懐かしさ、知らない人には一種の興奮を与えるとしている[17]

BLOGOSが白田への取材でメールでやり取りすると、こちらがわざと質問を間違えても相手は気付かない不審な点はあったが、犯人ではないと知らないと思えるようなこともあり、嘘だと否定しきれないとしている[18]

阿部嘉昭は本作の読者はネット小説の程度を知ろうとする者、事件の真相を知ろうとする実録好きな者、真贋を見極めようとする好事家であり、それらが合わさってヒット、基調は事件への慙愧だが筆者はSのグループ所属であったというのなら警察にマークされ、追及もあったはずで、完全に潜伏に成功したのかと疑問で、先に挙げた読者の1つ、2つ目の人たちはその点でリテラシーが試され、真贋を確かめる人に対してのパッチワーク性もあり、盗んだ金を米軍基地内に隠そうとしたのは松本清張の『小説 3億円事件』の転用である可能性や、省吾が米軍兵士相手に体を売っていた描写は『悪魔のようなあいつ』の主人公の設定と同じだと指摘した[7]

江藤史朗は窃盗犯に女がいたのは面白く、実際に犯行に使用された車の中にイヤリングが片方だけ落ちていたため女が乗っており、女関与説はあった[19]。ただ、Sの恋人は作中では大学生だが実際には当時高校生で、Sは省吾となっているが実際にはSは名字であり信憑性に欠け[19]、警察手帳については大胆な考えで真相に迫っているように見えるが、警視庁では当時も現代でも手帳はいつも個人では持たず、勤務中に所持して仕事が終わると署に置いて帰るため、アイデアとしては面白いがミステリーとしては少し詰めが甘いと否定的である[20]

殿岡駿星は犯人として有力となっているSが実行犯ではないことには同意で、新たな視点といえるが詳細な部分が少なく、本当に犯人なら通し番号が控えられている五百円札を見せて欲しいと考えているが[19]、白田は盗んだ紙幣は手元に残ってないとしながらも、その紙幣は自分から世間に流れてはいないとする[21]

Jタウンネットは書籍化、漫画化と進みが速いことから本作は創作であり、当時はカミナリ族と呼ばれていたのを暴走族としていることや、学生運動独特の言葉が全く使われていない、どのメディアでもほぼ100パーセント三億円を入れたケースをジュラルミンケースとしているが本作ではアタッシュケースになっているなど不自然さがあり、犯行計画や実行の様子より人間関係や心理関係がメインで肩すかし感があり、犯人は最初から日本信託銀行国分寺支店を狙ったのではなく、そこからすぐ近くにある事件前日に三億円が保管された三菱銀行国分寺支店も見張っていた可能性もあるがそのあたりはほとんどカットされ、白田ら関係者に尋ねてみようとしたが回答は得られなかった[22]。白田は暴走族の表現については息子が書いたため言葉が変わっているがカミナリ族が正しいとしている[5]

ねとらぼは小説家になろうが自分以外の他人を名乗ることを禁止しているため本作は微妙な立場で、真贋だけでなくネット時代の創作のあり方について考えさせられるとする[12]

書誌情報[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c d “「私が三億円事件の実行者です」 自称犯人の告白が「小説家になろう」に...信憑性は?”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2018年10月2日). https://www.j-cast.com/2018/10/02340064.html?p=all 2020年6月8日閲覧。 
  2. ^ “三億円事件「真犯人の告白」まさかの書籍化 小説?ノンフィクション?出版社の見解は”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2018年11月8日). https://www.j-cast.com/2018/11/08343181.html?p=all 2020年6月8日閲覧。 
  3. ^ “三億円事件が題材の漫画、『ジャンプ+』で連載開始 “実行犯”が50年の時を経て告白する物語”. オリコンニュース (オリコン). (2018年12月29日). https://www.oricon.co.jp/news/2126515/full/ 2020年6月12日閲覧。 
  4. ^ a b “三億円事件告白小説“真犯人”からのメールと専門家真贋分析”. NEWSポストセブン (小学館): p. 2. (2018年10月16日). https://www.news-postseven.com/archives/20181016_781549.html/2 2020年6月8日閲覧。 
  5. ^ a b c d “本物?自称「三億円事件の犯人」を名乗る白田という人物を直撃取材してみた”. BLOGOS (LINE): p. 1. (2018年10月20日). https://blogos.com/article/332946/ 2020年6月8日閲覧。 
  6. ^ “「府中 三億円事件を計画・実行したのは私です。」白田著”. 日刊ゲンダイ (日刊現代). (2019年1月8日). https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/book/244964 2020年6月8日閲覧。 
  7. ^ a b “慚愧を告白する?ネット小説 白田「府中三億円事件を計画・実行したのは私です。”. 好書好日 (朝日新聞社). (2019年2月19日). https://book.asahi.com/article/12148438 2020年6月8日閲覧。 
  8. ^ ““三億円事件実行犯”の告白小説、府中警察署の見解”. NEWSポストセブン (小学館): p. 1. (2018年10月17日). https://www.news-postseven.com/archives/20181017_781555.html 2020年6月8日閲覧。 
  9. ^ ““三億円事件実行犯”の告白小説、府中警察署の見解”. NEWSポストセブン (小学館): p. 2. (2018年10月17日). https://www.news-postseven.com/archives/20181017_781555.html/2 2020年6月8日閲覧。 
  10. ^ a b ““三億円事件実行犯”の告白小説、府中警察署の見解”. NEWSポストセブン (小学館): p. 3. (2018年10月17日). https://www.news-postseven.com/archives/20181017_781555.html/3 2020年6月8日閲覧。 
  11. ^ “三億円事件の犯人?それとも創作? 「小説家になろう」の投稿で議論沸騰”. ハフポスト (ザ・ハフィントン・ポスト・ジャパン). (2018年10月2日). https://www.huffingtonpost.jp/amp/2018/10/02/sanokuenjiken-narou_a_23548030/ 2020年6月8日閲覧。 
  12. ^ a b “「三億円事件を計画、実行したのは私」 犯人手記風の文章が「小説家になろう」に投稿され話題に”. ねとらぼ (アイティメディア). (2018年10月2日). https://wjn.jp/article/detail/5669775/ 2020年6月8日閲覧。 
  13. ^ ““三億円事件”の手記は本物?真贋を巡るネット上のさまざまな指摘”. 週刊実話 (日本ジャーナル出版). (2018年10月7日). https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1810/02/news132.html 2020年6月12日閲覧。 
  14. ^ “「【書評】3億円事件の「真犯人」が語る、トンデモすぎた犯行動機”. まぐまぐニュース (まぐまぐ). (2019年3月16日). https://www.mag2.com/p/news/390560 2020年6月12日閲覧。 
  15. ^ “「罪の意識が一切無いのです」完全犯罪の犯人が独白!『府中三億円事件を計画・実行したのは私です。』の真実とは?”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). (2019年3月14日). https://ddnavi.com/review/522008/a/ 2020年6月8日閲覧。 
  16. ^ “ネットを騒がせた、真犯人による独白小説も! 伝説の犯罪「三億円事件」をモチーフにした小説”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). (2019年3月6日). https://ddnavi.com/review/523403/a/ 2020年6月8日閲覧。 
  17. ^ “フェイクかそれとも本物か? 「三億円事件」真犯人による告白小説は、実は……”. ダ・ヴィンチニュース (KADOKAWA). (2018年12月9日). https://ddnavi.com/review/506203/a/ 2020年6月8日閲覧。 
  18. ^ “「あさチャン! ~寒い!首都圏で雪積もった?~」2018年12月12日(水)放送内容”. 価格.com (カカクコム). (2018年12月12日). https://kakaku.com/tv/channel=6/programID=45002/episodeID=1221056/ 2020年6月8日閲覧。 
  19. ^ a b c “三億円事件告白小説“真犯人”からのメールと専門家真贋分析”. NEWSポストセブン (小学館): p. 3. (2018年10月16日). https://www.news-postseven.com/archives/20181016_781549.html/3 2020年6月8日閲覧。 
  20. ^ “三億円事件告白小説“真犯人”からのメールと専門家真贋分析”. NEWSポストセブン (小学館): p. 4. (2018年10月16日). https://www.news-postseven.com/archives/20181016_781549.html/4 2020年6月8日閲覧。 
  21. ^ “本物?自称「三億円事件の犯人」を名乗る白田という人物を直撃取材してみた”. BLOGOS (LINE): p. 2. (2018年10月20日). https://blogos.com/article/332946/?p=2 2020年6月8日閲覧。 
  22. ^ “三億円事件は「エンタメ」になった 創作物から薄れゆく「リアリティ」”. Jタウンネット (ジェイ・キャスト). (2018年12月31日). https://j-town.net/tokyo/column/gotochicolumn/269960.html?p=all 2020年6月8日閲覧。 

外部リンク[編集]