幕が上がる

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幕が上がる
著者 平田オリザ
発行日 2012年11月8日(単行本)
2014年12月12日(講談社文庫)
2015年2月13日(講談社青い鳥文庫 - 映画のノベライズ版)
発行元 講談社
ジャンル 青春小説
日本の旗 日本
言語 日本語
ページ数 314(単行本)
公式サイト 講談社BOOK倶楽部『幕が上がる』
コード ISBN 978-4-06-218070-2(単行本)
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幕が上がる』(まくがあがる)は2012年に出版された日本の青春小説。2015年に映画化され、同年舞台でも演じられた。映画は日本アカデミー賞TSUTAYA映画ファン賞報知映画賞などを受賞。

概要[編集]

キャッチコピーは「すべての世代の胸を打つ、2012年最高の青春小説」。劇作家である平田オリザが、自らもワークショップなどで関わりを持ち続けてきた高校演劇をテーマに書き下ろし、累計10万部の売り上げを記録した[1]平田オリザが提唱する、自然な会話とやりとりで舞台を進行する現代口語演劇理論というものが、ストーリーの中で示されている[2]。文体にもその理論が反映され、「…って感じ」「…みたいな」「…とか」といったカジュアルでつたない言い回しによる、主人公の一人称語りが多用されている[2]。書評家の土佐有明は、「『感動的』と評されることの多い本書だが、その感動はこうした細部への巧緻な配慮に支えられている」と評価した[2]。また、俳優の堺雅人が推薦をしており、「スタニスラフスキーに『俳優修業』という役者の教科書みたいな本があるけれど、これはまるで『演出修行』」だと評した[3]

小説[編集]

「幕が上がる」は、同名で3種類の本が出版されている。1つ目は2012年に平田オリザが書き下ろした[4]単行本。2つ目はそれを文庫として出版したもの。3つ目は古閑万希子が映画をノベライズしたものである。

このうち、1つ目、2つ目と3つ目の間には内容に相当の差異があるため、前2者を「文庫版」、後1者を「青い鳥文庫版」として、区別して記載する。

文庫版[編集]

あらすじ[編集]

とある北関東の公立進学校に演劇部があった。毎年地区大会止まりで、顧問も素人。県大会に出場できるかも、というだけで卒業生が喜んでしまう、そんな弱小演劇部。

だが、ある年は、3年生になった看板女優のユッコ、2年生ながら演技のうまいわび助ら、演技が上手いメンバーがそろい、高校内の発表会ではほどほど評価される状態だった。そんなところに、大学生時代は「学生演劇の女王」と言われた新任教師の吉岡が赴任し、また、演劇強豪校からエース級の生徒が転校してきたことで、状況は一変。当初は地区予選を勝ち抜いて県大会に出場することを目的としていたが、ブロック大会進出も夢ではなくなっていた。

3年生は受験との両立に苦しみながらも、合宿などを経て、多少のミスがあっても地区予選は通過できるほどのレベルに達していた。だが、その直後、演劇部を変貌させる大きな要因であった吉岡先生が退任してしまう。そんなアクシデントにもめげず、部員達は全国大会を目指して青春を懸ける。

主な登場人物[編集]

主な登場人物

  • さおり(高橋さおり):演劇部3年生。部長。作・演出
  • ユッコ(橋爪裕子):演劇部3年生。看板女優
  • ガルル(西条美紀):演劇部3年生。ムードメーカー
  • わび助(桃木):演劇部2年生。男子部員で天性の才能がある
  • 中西さん(中西悦子):演劇部3年生。県内強豪校からの転校生
  • 孝史先輩:演劇部の1年先輩
  • 明美ちゃん:わび助と2人だけの2年生
  • 成田さん:演劇部1年生
  • 溝口先生:演劇部顧問
  • 滝田先生:国語科の教師
  • 吉岡先生(吉岡美佐子):新任美術教師。演劇部副顧問。元「学生演劇の女王」

映画との違い[編集]

映画化するにあたりエピソードの取捨選択や部員の性別など変更をしているので、細かな違いは多数[5]あるが、大きな違いは下記の通り

  • 舞台となっている高校は、映画は「静岡県立富士ケ丘高等学校」であるが、文庫版は群馬県の公立高校である(名称は記載されていない)
  • 映画は演劇部員は全員女性であるが、文庫版は男子部員もいる
  • さおりたちが3年になったときの新入生歓迎公演は、映画はロミオとジュリエットを演じて失敗したが、文庫版は他校の先生が書いた既存の台本をもとに演じて、評判がよかった
  • 中西さんの転校時期は、映画は「肖像画」を学内で演じる前だったが、文庫版は学内で演じた翌々日
  • 吉岡先生について、映画はたまたま美術室で稽古をしたことで知り合ったが、文庫版は「大学で演劇をしていた」という噂が先に流れ、噂をもとにさおりらが会いに行く
  • さおりと中西さんが、全国大会に行くのは、映画はボランティアスタッフとして参加したが、文庫版は普通に見学に行った
  • さおりが「銀河鉄道の夜」を題材にすると決めたきっかけは、映画は夜に入線する電車を見て中西さんがつぶやいた台詞だが、文庫版はさおりが車窓から見た夜空
  • 中西さんの転校理由が、映画は声がでなくなったことがきっかけだったが、文庫版は顧問の先生との不和となっている
  • 映画は県大会の幕が上がったところで終わっているが、文庫版は翌年の全国大会にさおりたちが応援に行くシーンまで記載されている

書誌情報[編集]

青い鳥文庫版[編集]

概要[編集]

映画版を元にノベライズしたもので、児童向け小説という青い鳥文庫の性質上、数字以外の漢字や英語にはルビがついている。

あらすじなどは映画のストーリーを参照のこと。

主な登場人物[編集]

  • さおり(高橋さおり):演劇部3年生。部長。作・演出
  • ユッコ(橋爪裕子):演劇部3年生。看板女優
  • がるる(西条美紀):演劇部3年生。盛り上げ役
  • 中西さん(中西悦子):演劇部3年生。県内強豪校からの転校生
  • 明美ちゃん(加藤明美):後輩部員
  • 吉岡先生:新任美術教師。演劇部副顧問。元「学生演劇の女王」
  • 溝口先生:演劇部顧問

映画との違い[編集]

さおりの夢のシーンや、カメオ出演している役者のシーンといった、映画の「遊び」の部分[6]が全てカットされているほか、下記のような違いがある。

  • 1、2年生が各3人(映画版は各4人)
  • 溝口先生がしっかりものとして描写されている(映画版は狂言回し)
  • さおりが部長を引き受けさせられた場所や、中西さんに初めて声をかけたときの場所等が違う
  • さおりが「銀河鉄道の夜」を題材にすると決めたきっかけとなった中西さんの台詞だが、映画は夜に入線する電車を見てつぶやいたが、青い鳥文庫版は夜空を見てつぶやいた

書誌情報[編集]

  • 原作:平田オリザ、脚本:喜安浩平、文:古閑万希子「幕が上がる」(ISBN 978-4-06-285472-6

映画[編集]

幕が上がる
監督 本広克行
脚本 喜安浩平
原作 平田オリザ
製作 [プロデューサー]
片山玲子、守屋圭一郎
出演者 百田夏菜子
玉井詩織
高城れに
有安杏果
佐々木彩夏
黒木華
ムロツヨシ
音楽 菅野祐悟
主題歌 青春賦
撮影 佐光朗
製作会社 [プロダクション]
ROBOT
[製作委員会]
フジテレビジョン
東映
ROBOT
電通
講談社
パルコ
配給 ティ・ジョイ
東映(配給協力)
公開 2015年2月28日
上映時間 119分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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2015年2月28日に公開。同年8月5日Blu-ray & DVD発売、各種動画サイトによる有料配信も開始。

踊る大捜査線』シリーズを手がけた本広克行の監督のもと、「世代年代を問わず幅広い方々に共感し感動してもらえる青春映画」を目標に製作された[7]。先生役として、2014年のベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した黒木華ムロツヨシが、生徒役として百田夏菜子玉井詩織佐々木彩夏有安杏果高城れにが出演している。

第40回報知映画賞では本広監督の演出生徒役5人(ももいろクローバーZ)の演技が認められ、両者に特別賞が贈られた[8]第39回日本アカデミー賞の話題賞、TSUTAYA映画ファン賞なども受賞。

出演者や演劇に興味がない人であっても楽しめる作品に仕上がっていると、映画関係者・評論家らは評価をしている[9][10][11]

文部科学省選定作品[12]、東京都優良映画[13]に指定されており、学校の授業などでも活用されている(逗子開成中学校・高等学校での実践報告

なお、脇役として出演していた芳根京子吉岡里帆がその後ブレイクし、芳根は2015年にTBS系ドラマ『表参道高校合唱部』で連続ドラマに初主演し、2016年にはNHK連続テレビ小説『べっぴんさん』の主演にも抜擢された。なお『べっぴんさん』には、主演の友人役として百田もメインキャストとして出演する。吉岡も2015年下半期のNHK朝の連続テレビ小説『あさが来た』の出演で注目を浴び、結婚情報誌『ゼクシィ』(リクルート)の9代目CMガールに抜擢された。

ストーリー[編集]

映像外部リンク

『幕が上がる』映画予告編 - YouTube

撮影にはフィルムのような質感を出せるアレクサというシネマカメラが用いられ、実際の演劇コンクール会場や学校でもロケが行われるなど、透明感と臨場感の追求がなされた[14]

とある地方高校の弱小演劇部。顧問の溝口は演劇の知識も無ければ指導力も無い。部長を務めるさおりに加え、お姫様キャラのユッコ、ムードメーカーのがるる、しっかり者の明美ちゃんなど個性豊かなメンバーがそろう。

かつて「学生演劇の女王」と呼ばれていた新任教師の吉岡との出会いによって、彼女たちの運命は一転。ある日吉岡が、"肖像画"と呼ばれる衝撃的な一人芝居を演じて見せたことをきっかけに、部員たちの潜在能力が開花し始める。地方大会すら勝ったことのない彼女らであったが、吉岡の「私は行きたいです。君たちと、全国に。行こうよ、全国!!」という気迫の一言に触発され、全国大会を目指し、青春の全てを懸けることに。

そんな折、強豪校の演劇部に属していたはずの中西さんが転校してくる。なかなか心を開かない中西さんであったが、部長のさおりと夜のホームで語り合い、辞めた経緯を明かす。しかし、さおりのある言葉によって、彼女は再び演劇の道を進むことを決意する。新たな仲間を加えた演劇部は『銀河鉄道の夜』を大会での演目に決め、合宿のため上京。高層ビル群の星のような輝きに浸る少女たち。そして、練習に明け暮れる日々が始まった。

高校の演劇大会は年にたったの一度、負けたらそこで終わりの一発勝負。吉岡は「答えはすべて稽古場にある」と励ます。ひたむきに青春を駆け抜けた彼女らが、最初の難関である地区大会に挑む。だがその頃、吉岡の心にはある迷いが生じる。上京した際に会った演出家から役者としての才能を認められ、演劇の世界へ誘われていたのだ。教師を辞める決意をする吉岡ーーそして演劇部に運命の瞬間が訪れる。

主な登場人物とキャスト[編集]

高橋さおり(さおり)
演 - 百田夏菜子
静岡県立富士ケ丘高等学校 演劇部3年生
橋爪裕子(ユッコ)
演 - 玉井詩織
同校演劇部3年生
西条美紀(がるる)
演 - 高城れに
同校演劇部3年生
中西悦子(中西さん)
演 - 有安杏果
同校演劇部3年生
加藤明美(明美ちゃん)
演 - 佐々木彩夏
同校演劇部2年生
高田梨奈
演 - 伊藤沙莉
同校演劇部2年生
成田香穂
演 - 大岩さや
同校演劇部2年生
村上舞
演 - 吉岡里帆
同校演劇部2年生
坂下綾乃
演 - 金井美樹
同校演劇部1年生
袴田葵
演 - 芳根京子
同校演劇部1年生
松永美緒
演 - 那月千隼
同校演劇部1年生
八木美咲
演 - 松原菜野花
同校演劇部1年生
吉岡美佐子先生
演 - 黒木華
同校・新任の先生
溝口先生(グッチ)
演 - ムロツヨシ
同校・演劇部顧問
滝田先生
演 - 志賀廣太郎
同校・国語教師
さおりのお母さん
演 - 清水ミチコ
さおりのお父さん
演 - 片山正道
ユッコのお父さん
演 - 天龍源一郎
がるるのおじいちゃん
演 - 笑福亭鶴瓶
中西さんのお母さん
演 - 内田春菊
中西さんのお父さん
演 - 藤村忠寿
明美ちゃんのお母さん
演 - 辛島美登里
明美ちゃんのお父さん
演 - 松崎しげる

製作[編集]

監督の本広克行は、『踊る大捜査線』シリーズ映画2作目における実写邦画興行成績の歴代1位を保持している。しかし、同作の公開から10年ほどの時が過ぎ、映画監督を辞めようかと思い悩むようになってしまう[15]。そんな折に、平田オリザの「現代口語演劇理論」を知り、新たな活路を見い出すこととなった[16]。平田の主宰する劇団「青年団」の世界に没頭し、2010年には舞台『演劇入門』の演出を担当するまでになる[16]。そして、平田の小説『幕が上がる』を「自分の作った青春ドラマや映画で一番見たくなる作品にしなくては、という異常な使命感を持ち」、監督業としての集大成とすべく映画化にこぎつけたとしている[16]

映画のテーマは「あきらめない心」であり、本広が主役に抜擢したのは、ももいろクローバーZとしても活躍する5人である。彼女らは、数人の客しか集まらなかった路上ライブから始まる数々の試練を経て、女性グループ初となる国立競技場ライブの実現まで辿り着いたという経歴を持つ。本広は、「本当の喜び、悲しみ、大切なことに気づききらめいていくというストーリーに、今、もっとも輝いている少女たちに演じてもらいたい」想いがあったと明かしている[16]。また、全員が北川景子柴咲コウ竹内結子らを擁する俳優事務所スターダストプロモーションに所属しており、結成(2008年)以前から演技レッスンを重ねてきている。映画『シロメ』やNHKクリスマスドラマ『天使とジャンプ』ですでに5人での主演経験もあることに加え、今回の撮影に先立って平田オリザによる演劇ワークショップを約25時間に渡って受講した[9]。平田は総括として、「彼女たちは、このひと夏で、役者として驚異的な成長を遂げました」と講評した[16]

脚本は、映画『桐島、部活やめるってよ』(2012年)で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した喜安浩平が担当。原作では演劇の楽しい側面ばかりに焦点が当てられていたが、喜安は本業の舞台役者として抱き続けてきた「迷い」も主人公らに投影[17]。”何のために演じ続けているのか”、そしてどんなに上達しても拭えない「不安感」の正体に迫るストーリーとなった。配役は個人面談により決定し、本人の個性を活かした脚本が書き下ろされた[9]

1年前からスケジュールが確保され、2か月間をほぼ撮影にあてることができた[9]。プロデューサーの守屋圭一郎は、5人が現場どころか移動の車でも台本を見ないことを挙げ、「セリフを完璧に頭に入れて来ていることに驚きました」と述べている[9]。監督の本広も、「若い女優さんだと、待ち時間に寝ちゃったりするんですけど、彼女たちは一切そういう瞬間を見たことがない。その姿勢がスタッフにも移り、いい作品にしようといういい効果が生まれています」と評価した[18]。また監督は、「80年代頃の骨太なアイドル映画を狙いたい」などと話し、クランクイン前にアイドル映画の名手・大林宣彦のもとを訪ね、薫陶を受けた後、本作の演出に挑んだ[19]。女優としての成長過程も浮き彫りにするため、順撮り(物語の時系列どおりの撮影方法)を採用した。

キャスティングとしては先生役として、2014年のベルリン国際映画祭で最優秀女優賞を受賞した黒木華や、日経トレンディにおいて2014年の「ヒット人」に選ばれた俳優・ムロツヨシ、本作の出演後ブレイクを果たすことになる芳根京子伊藤沙莉吉岡里帆らも抜擢された。

公開[編集]

宣伝予算が通常の映画の3分の1しかなく[20]、上映館数も127館と小規模であったため、「史上最大のプロモーション大作戦」と銘打った低予算・口コミ重視のキャンペーンが展開された。一般公開前の2月13日より1か月以上をかけて、主演キャストが手分けをする形で全ての上映館を廻り、舞台挨拶付上映を実施。2月20日には、さぬき映画祭でライヴとトークイベント付先行上映を行い、全国の映画館でもライヴビューイングを開催した[21][22]。このプロモーションが奏功し[21]、2月28日からの一般公開週末2日間で観客動員数は5位、興行収入は『アメリカン・スナイパー』、『ベイマックス』、『テラスハウス クロージング・ドア』に次ぐ4位にランクインした。トップ10に入った映画の中で上映館数が2番目に少なかったため、一館あたりの平均興行収益では『アメリカン・スナイパー』に次ぐ2位であった[23][21][24][25]。一部の劇場では6月までロングラン上映が行われ、その後に上映を開始した劇場もあった。

評価[編集]

山田洋次をはじめとする複数の映画監督から高く評価されており[26]東京国際映画祭などで数々の受賞経験のある松江哲明も、2015年1月の試写会後に次のようにコメントしている。

『幕が上がる』が一番突き刺さるのは、ももクロにも演劇にも興味がない人だと思う。夢中になることの説得力がもの凄く強い映画だから、まだ夢中になれるものを見つけてない人が見たら爆発しちゃうような作品。そういう人に届くといいな、と『キッズ・リターン』に人生を決められた僕は思いました。[10]

コラムニストの三浦崇宏も本作を「アイドル映画ではない」とした上で、仕事に悩みを抱えた人たちが観ても勇気づけられ、辛い出来事をどう解釈し乗り越えるかのヒントが得られる作品だと評した[11]

加えて、生徒役の自然な演技に対して肯定的な意見が多く挙がっている[9]。『転校生』、『時をかける少女』などの青春映画を手がけてきた監督・大林宣彦は以下の様に述べている。

最初は、近くにいそうな普通の女の子に見えて、「この子たちと2時間付き合うのはつらいぞ」と思ったんです。でも、映画が進んでいくにつれてどんどんチャーミングになり、見終った時には、ハグしたいくらいになっていた。[中略]プロの女優になっていく過程を、ドキュメンタリーのように見ることができる。それが、この映画を感動させる大きな力になっていると思います。[9]

また、数々の文学賞を受賞している映画評論家の川本三郎は、主演の5人の存在を知らないとしながら、以下の様に論じた。

まだ成長過程にある彼女たちが、この映画に出演することで演劇の好きな高校生を大事に演じたいという思いと、映画のなかのいい舞台を作りたいという[ストーリ上の]少女たちの切実な思いが、素直に重なり合っている。虚実が一致している。出演した少女たちは、演じている役をまさに自分だと思ったのではないか。[中略]

涙を禁じ得ない。ただの感動の涙ではない。安部公房が『第四間氷期』で言ったあの、「星をみながら、じっと宇宙の無限を考えたりしていると、ふと涙があふれそうになったりする」涙――。[27]

演劇ワークショップに携わる田野邦彦(PAVLIC代表)は、「[上映時間]110分過ぎくらいまで、ももクロの映画だってことすっかり忘れてた」[28]と述べるなど、いわゆる「アイドル映画」としては捉えられていない向きがある[29]。この点に関して日経エンタテインメントは、「ファン以外も楽しめる上質の映画に仕上がった理由のひとつは、通常の映画ではなかなかできない周到な準備をしたことにある」と分析している[9]

以下は『シネマトゥデイ』に掲載された、編集部認定の専門家によるレビュー・スコアである[30]

専門家 スコア 要点
くれい響(映画評論家) 4/5stars 近年の本広監督作品では「断トツの出来」であり主演の5人に女優魂を感じるとしながらも、ストーリーが原作を活かしきれていない点に関して批判している[31]
ミルクマン斉藤(映画評論家) 5/5stars 「自分のやりたいこと・やるべきことを見つけていく過程」と、その先にある「人間の至福と苦悶」を描いた普遍的な作品だと評している[31]
清水節(編集者・映画評論家) 5/5stars 5人が演技を通して「アイドルの仮面を脱ぎ、思春期の素を露わにする」瞬間を丁寧にすくいとった、ドキュメントの様な作品だと評している[31]

受賞[編集]

公的機関による推奨[編集]

  • 東京都優良映画[39]
  • 静岡県優良映画(中学生以上向き)[40]
  • 文部科学省選定(少年・青年・成人向き)[41]

メディアによる特集[編集]

(すべて2015年、主なもののみ)

主題歌・サウンドトラック[編集]

Blu-ray & DVD、動画配信[編集]

幕が上がる[編集]

2015年8月5日発売。「Blu-ray豪華盤」「Blu-ray通常盤」「DVD通常盤」の3形態。副音声としてオーディオコメンタリーが収録されている(主演の5人、本広監督、片山プロデューサー、守屋プロデューサーが出演)。

「Blu-ray豪華盤」にはボーナスディスクが付属し、以下の内容が収められている。

  • 劇中劇・ロミオとジュリエット
  • 劇中劇・肖像画(フル版)
  • 劇中劇・銀河鉄道の夜(フル版)
  • 未公開集(映画本編に使用されていない「長回し」などの映像)
  • イベント集(完成披露試写会、初日舞台挨拶、行ったぞ!舞台挨拶全国行脚最終日)
  • 公開記念特別番組『ももいろ演出論』(劇場公開時にテレビ放送された番組)
  • 公開記念メイキング番組『「幕が上がる」のここが熱い!』(同上)

また店舗レンタル用DVDには、上記とは異なる映像特典(サイネージムービー)が収録されている。作品単体としては、各種動画サイトによる有料配信も行われている(幕が上がる - dTV | 幕が上がる - YouTube幕が上がる - iTunes など)。

幕が上がる、その前に。彼女たちのひと夏の挑戦[編集]

2015年8月5日発売、「Blu-ray」「DVD」の2形態。2015年3月11日から期間限定で公開された作品で、事前ワークショップや本編の撮影風景を追ったドキュメンタリー映画。約400時間に渡り密着した映像が用いられた[42]。本編95分。DVDのみレンタルもされている。

舞台[編集]

2015年5月1日 - 5月24日Zeppブルーシアター六本木において上演された。演出は映画版の監督を務めた本広克行、脚本は原作の作者でもある平田オリザが新たに書き下ろした[43]。主要キャストは映画版と同じ[44]だが、下級生役については演者の変更[45]が行われた。

舞台は映画のストーリーをそのままなぞったものではなく、映画の一部分を深く掘り下げたもの[46]となっている。実際、舞台には出演していないが、映画に出演していた「吉岡先生」とか「グッチ」といった人物の名前が出されている。しかし、学校の設定が微妙に異なる[47]、下級生の学年の変更[48]、名前の変更などが行われ、パラレルワールド的な要素も存在する。

平田オリザ率いる青年団の演劇では、客入れの時点から演者が演技を始める「0場(ゼロば)」というものが特徴的で、本作でも0場が行われた。ムロツヨシ志賀廣太郎笑福亭鶴瓶が特別出演した公演回もあった。

ストーリー[編集]

地区大会を無事通過した演劇部だが、精神的支柱であった吉岡先生が学校を退職してしまった。県大会出場のために、残された部員達はさおりを中心に稽古を続けるが、吉岡先生がいなくなったショックが非常に大きかった。部員は全体的に皆落ち込んでしまい、部活を休む生徒も出てくる。一方、さおりは吉岡先生のことに言及することを拒絶するほど気負いすぎてしまう。

そんな中、さおりが改変したセリフを中西さんが声に出せなかったことをきっかけとして、3年生の間で話し合いがもたれた。その過程でさおりは精神的に成長することで気負いがとれ、さおりを中心とした演劇部は再び活気を取り戻す。

キャスト[編集]

高橋さおり(さおり)
演 - 百田夏菜子
私立富士ケ丘高等学校 演劇部3年生
橋爪裕子(ユッコ)
演 - 玉井詩織
同校演劇部3年生
西条美紀(がるる)
演 - 高城れに
同校演劇部3年生
中西悦子(中西さん)
演 - 有安杏果
同校演劇部3年生
加藤明美(明美ちゃん)
演 - 佐々木彩夏
同校演劇部2年生
村上舞
演 - 藤松祥子
同校演劇部2年生
松永美緒
演 - 多賀麻美
同校演劇部2年生
成田香穂
演 - 井上みなみ
同校演劇部2年生
袴田葵
演 - 芳根京子
同校演劇部1年生
坂下綾乃
演 - 金井美樹
同校演劇部1年生
高田梨奈[49]
演 - 伊藤沙莉
同校演劇部1年生
八木美咲
演 - 坂倉花奈
同校演劇部1年生

Blu-ray & DVD[編集]

舞台の千秋楽の模様を収録している。2017年3月28日発売。「舞台「幕が上がる」[ブルーレイ特装盤]」「舞台「幕が上がる」(DVD)」の2形態。副音声としてオーディオコメンタリーが収録されている(主演の5人、本広監督が出演)。また特典映像として、映画版で溝口先生役を演じたムロツヨシが舞台鑑賞に来た[50]際に特別出演された回の第0場の映像が約33分収録されている。

「ブルーレイ特装盤」の特典は下記の3つ

  • 96ページ写真集
  • 特製三方背ケース
  • オリジナルポストカード

出典[編集]

  1. ^ “『幕が上がる』累計十万部!”. 主宰からの定期便. http://www.seinendan.org/oriza/2015/02/08/4241 2015年2月8日閲覧。 
  2. ^ a b c “平田オリザ『幕が上がる』”. CINRA. http://www.cinra.net/review/20130108_book_makugaagaru.php 2015年1月7日閲覧。 
  3. ^ 講談社BOOK倶楽部『幕が上がる』
  4. ^ 平田オリザにとって初の小説
  5. ^ 特に、具体的な演劇の技術やノウハウなどは映画版ではほとんど省かれている
  6. ^ 細かなところでは、ショッピングセンターで、ももクロでは赤担当の百田演じるさおりがアイスティー(赤)を、緑担当の有安演じる中西さんがメロンソーダ(緑)を飲むシーンがあるが、青い鳥文庫版ではさおりがメロンソーダを、中西さんがアイスティーを飲んでいる
  7. ^ “本編完成にあわせてポスタービジュアルお披露目”. 映画.com. http://eiga.com/news/20141226/11/ 2015年1月16日閲覧。 
  8. ^ [1]
  9. ^ a b c d e f g h 「『幕が上がる』特集」、『日経エンタテインメント』2015年3月号、日経BP社、2015年2月4日
  10. ^ a b “11:08 - 2015年1月15日”. 松江哲明公式ツイッター. https://twitter.com/tiptop_matsue/status/555547016235728896 2015年1月15日閲覧。 
  11. ^ a b “『幕が上がる』は単なるももクロのアイドル映画ではない。これは社畜のための青春映画だ”. THE HARD WORKERS. http://news.aol.jp/2015/02/20/hwz_makugaagaru/ 2015年2月25日閲覧。 
  12. ^ “映像作品等選定一覧(平成27年1月)”. 文部科学省. http://www.mext.go.jp/a_menu/shougai/movie/020301/1355380.htm 2015年3月25日閲覧。 
  13. ^ “第656回東京都青少年健全育成審議会の議事録”. 東京都. http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/09_646_menu.html#656 2015年11月25日閲覧。 
  14. ^ 「『幕が上がる』特集」、『別冊FLIX』Vol.2、ビジネス社2015年2月4日
  15. ^ 映画『幕が上がる』公式サイト
  16. ^ a b c d e “本広克行監督コメント”. BARKS. http://www.barks.jp/news/?id=1000109359 2015年1月5日閲覧。 
  17. ^ 「『幕が上がる』特集」、『PICT-UP』第93号、ピクトアップ、2015年2月18日
  18. ^ “本広克行監督「アイドル映画は手を抜いて作られている」”. クランクイン. http://www.crank-in.net/movie/interview/34494 2015年1月6日閲覧。 
  19. ^ “ももクロと目指す「完全なアイドル映画」とは!『踊る』本広監督、新作に懸ける思い”. シネマトゥデイ. http://www.cinematoday.jp/page/N0069440 2015年2月28日閲覧。 ― 映画監督の本広克行さんが語る『時をかける少女』 ― | スカパー! 日曜シネマテーク- TOKYO FM
  20. ^ 映画『幕が上がる』公開に伴う史上最大のプロモーションの提案”. BB-WAVE. 2015年11月25日閲覧。
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  43. ^ 別冊FLIX 5月号増刊p.4
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  45. ^ 下級生7名中4名が青年団所属の役者になった
  46. ^ 別冊FLIX 5月号増刊p.13
  47. ^ 映画版は静岡県立だが、舞台は関東の私立高校
  48. ^ 高田は映画では2年生であったが、舞台では1年生に、逆に松永は1年生から2年生になった
  49. ^ 当初は「高田佳子」と発表されていた[2]。その後、高田里奈となり、最終的には映画と同じ高田梨奈となった。
  50. ^ 2015年5月5日の昼公演。なお、同日の夜公演の0場には志賀廣太郎が出演した

外部リンク[編集]