居酒屋兆治

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居酒屋兆治』(いざかやちょうじ)は、山口瞳の小説、またそれを原作にした1983年公開の日本映画、また1992年放送の三村晴彦監督のテレビドラマである。

あらすじ[編集]

函館居酒屋「兆治」を営む藤野英治。輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人で、今は資産家と一緒になった「さよ」の転落を耳にするが、現在の妻茂子との生活の中で何もできない自分と、振り払えない思いに挟まれていく。周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざなみのような波紋が周囲に広がる。「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と学校の先輩の河原に挑発されても、頭を下げるだけの男。そんな夫を見ながら茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた。

モデル[編集]

モデルになった「文蔵」という店は南武線谷保駅の近くにあり、山口は「家の近くに、赤提灯の店がある。毎晩、そこへ飲みに行って客の言葉を記録し、日記ふうの小説が書けないだろうかと、考えたことがある」と書いていて、もともと物置だったところを借り受け「滑稽なくらいにちいさい」店だった[1][2]

主人公・藤野英治は高校時代に投手で、村田兆治への憧れから店の名を「兆治」にしたという設定[2]。野球ファンの山口瞳が、村田の全力投球に魅了されていたことが背景にあったといわれる[3]

映画[編集]

居酒屋兆治
監督 降旗康男
脚本 大野靖子
製作 田中プロモーション
東宝
出演者 高倉健
大原麗子
加藤登紀子
池部良
音楽 井上堯之
撮影 木村大作
配給 東宝
公開 日本の旗 1983年11月12日
上映時間 125分
製作国 日本の旗 日本
言語 日本語
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出演[編集]

藤野英治
演 - 高倉健
主人公。函館で居酒屋「兆治」を営む無口な男。兆治を営む以前は球児であったが肩を壊して断念し、その後入社した北洋ドックではオイルショックの際に、自身の出世と引き換えに同僚のクビにするよう命じられたのに反発して退社に至っている。
藤野茂子
演 - 加藤登紀子
英治の妻。夫とともに「兆治」を切り盛りし、何があろうとも夫を支える良妻だが、夫が不器用さゆえに時に損しているのを特別咎めはせず、半ば諦観している。
神谷さよ
演 - 大原麗子
英治の元恋人。かつて自身と神谷との間で縁談が持ち上がった際、若く貧しい己が身を負い目に思った英治が身を引いたことで、裕福だが心から愛してもいない神谷と望まぬ結婚をし、それ故に英治のことを忘れられない。家に放火し失踪する。キャバレーで働きながらたびたび英治に電話をかける。
岩下義治
演 - 田中邦衛
英治の親友で、球児時代は彼とバッテリーを組んでいた同級生。「兆治」の常連客。精肉店経営。
河原
演 - 伊丹十三
兆治でくだを巻き、英治になにかとケチをつける先輩。三光タクシー副社長。鈴子の死について、その顛末を悪口を大いに交えて無神経に言い続けた結果、我慢できなくなった英治に殴られる。
峰子
演 - ちあきなおみ
「兆治」の向かいにある小料理屋「若草」を営む陽気な女性。
有田
演 - 山谷初男
英治の元同僚。「兆治」の常連客。
小寺
演 - 河原さぶ
英治の元同僚。「兆治」の常連客。
越智
演 - 平田満
英治の元同僚。「兆治」の常連客。すすきののキャバレーで知り合ったさよに結婚を申し込む。
堀江
演 - 池部良
「兆治」の常連客。生命保険会社社員。
秋本
演 - 小松政夫
「兆治」の常連客。タクシー運転手。河原から借金をして三光タクシーに移籍。
神谷久太郎
演 - 左とん平
さよの夫。牧場経営。
河原洋子
演 - 中島唱子
河原の妹。
秋本鈴子
演 - 立石凉子
秋本の妻。
岩下靖子
演 - 片山満由美
岩下の妻。
吉野耕造
演 - 佐藤慶
北洋ドック専務。北洋ドックにつとめていた英治をクビにする。
井上
演 - 美里英二
「若草」の常連客。井上造船所社長。趣味が高じて会社を潰す。
相場先生
演 - 大滝秀治
小学校校長。月に1度か2度朝食の目玉焼きが3個になることに苦悩している。
相場多佳
演 - 石野真子
相場の妻で、36歳年下。
小関警部
演 - 小林稔侍
英治がさよと共謀して神谷の財産を狙って放火したのではないかと疑っている。そのため、英治は河原を殴った一件で警察に留置されたのに、さよに関する聴取ばかりをされた。
中村巡査部長
演 - 三谷昇
沢井
演 - 石山雄大
市役所職員
佐野
演 - 細野晴臣
市役所職員
松川
演 - 東野英治郎
英治の師匠。焼き鳥屋経営。
ミーコ
演 - 好井ひとみ
「若草」のホステス。
勝子
演 - 大沢ゆかり
キャバレーのホステス。
エミリー
演 - 水木薫
キャバレーのホステス。
桐山少年
演 - 佐野秀太郎
英治が通っていた高校の現在の野球部のエースピッチャー。かつての英治と同様に肩を痛めてしまい絶望するが、英治に諭されて奮起する。
モツ屋
演 - あき竹城
アベックの男
演 - 武田鉄矢
アベックの女
演 - 伊佐山ひろ子
酒場の客
演 - 板東英二
土産を持ってきた客
演 - 山口瞳、山藤章二

主題歌[編集]

スタッフ[編集]

逸話[編集]

  • 映画公開から7年後の1990年10月13日、店名のモデルになった村田兆治の最後の公式戦登板を見た高倉健が、村田の引退劇に感銘を受け、村田と面識はなかったが、花束と手紙を持って村田の自宅を訪ねた。しかし村田は不在で、車の上に花束と手紙を置いて帰った。夜、村田が自宅に帰り封筒を開けると「長い間、本当にお疲れさまでした。高倉健」と書かれてあり、感激したという[3][4]

DVD[編集]

  • 「居酒屋兆治」
  • 「高倉健 DVD-BOX」

テレビドラマ[編集]

1992年7月10日フジテレビ系の「金曜ドラマシアター」枠で放送された。

キャスト[編集]

スタッフ[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 川本三郎 「山口瞳ー『居酒屋兆治』の国立」『それぞれの東京 昭和の町に生きた作家たち』 淡交社2014年、136-145頁。ISBN 978-4-473-03679-7
  2. ^ a b 山口瞳流、大人の飲み方”. 本の話WEB - 文春写真館(文藝春秋) (2013年4月30日). 2017年5月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年5月1日閲覧。
  3. ^ a b “【あの時・サンデー兆治】(5)引退試合を見たあの人からの手紙”. スポーツ報知 (報知新聞社). (2017年4月24日). オリジナル2017年4月24日時点によるアーカイブ。. http://archive.fo/Ci9Au 2017年5月1日閲覧。 
  4. ^ “【スポーツ茶論】ミスター・ベースボール 別府育郎”. SANSPO.COM (産業経済新聞社). (2014年12月16日). オリジナル2017年4月30日時点によるアーカイブ。. http://archive.fo/owGIX 2017年5月1日閲覧。 “村田兆治氏、面識のなかった健さんから引退試合の日に花束”. SANSPO.COM (産業経済新聞社). (2014年11月19日). オリジナル2017年4月30日時点によるアーカイブ。. http://archive.fo/k01K5 2017年5月1日閲覧。 

外部リンク[編集]

映画
テレビドラマ