尿膜管

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尿膜管 Urachus
膀胱陰茎尿道の垂直断面図。図の中央上端が尿膜管。
尿膜管は #1
グレイ解剖学 subject #252 1213
MeSH Urachus
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尿膜管(にょうまくかん、urachus)は、胎児膀胱からの排出経路で臍帯につながっている尿膜 (allantois) が、出生後、索状に残存したもの[1]。この索状の残存物は、横筋筋膜より前、腹膜より後ろの、恥骨後隙 (Retropubic space) にある。

構造[編集]

尿生殖洞 (urogenital sinus) のうち、膀胱尿道の間の部分は、中腎管(ウォルフ管)や、これに付随する腎杯憩室の末端を吸収し、これによって、膀胱三角部 (trigone of urinary bladder) や尿道前立腺部 (prostatic urethra) が発達する。 膀胱と尿道の間の残りの部分は、膀胱や尿道前立腺部の一部となるが、最上部は細い管となってまで延び、これは後に、尿膜管が正中臍索 (median umbilical ligament) を形成する過程で、痕跡なく消えてしまう。

病理[編集]

膀胱は発生したあと、徐々に骨盤腔内に下降する。この際に尿膜管は引き延ばされて索状に延長しつつ、閉鎖する。尿膜管の内腔の退縮閉鎖がうまく行かない場合には、尿膜管開存の状態が残る(尿膜管遺残)。膀胱の下降が不十分なこともある。臍からの尿漏れは、尿膜管遺残の明白な兆候であり、開存する尿膜管は外科手術により除去する必要がある。尿膜管遺残は無症状であることも多いが、時に感染を合併して臍炎膿瘍を形成する[2]。成人の約2%に尿膜管遺残が認められる。 (尿膜管遺残には)解剖学的には、4つの形態がある。

  • 尿膜管嚢腫 (Urachal cyst):(開存部が)膀胱にも臍にもつながっていない。
  • 尿膜管瘻 (Urachal fistula):膀胱と臍がつながっている。(開存部が膀胱にも臍にもつながっている。)
  • 尿膜管憩室 (Urachal diverticulum, Vesicourachal diverticulum): (開存部が)膀胱につながっている。[3]
  • 尿膜管洞 (Urachal sinus):(開存部が)臍につながっている[4]

尿膜管は、新生物に冒されることもある(尿膜管癌)。尿膜管癌の発生率は0.14-0.27%とされ、膀胱頂部での頻度が高い。移行上皮癌ではなく、腺癌であることが多い。手術による腫瘍摘出術が第一選択であるが再発率は約40%と高い。予防的に遺残尿膜管を切除することもある。

画像[編集]

脚注[編集]

  1. ^ Larsen, "Human Embryology," 3rd ed., pg. 258
  2. ^ http://www.dokkyomed.ac.jp/dep-k/ped_surg/texts/T_urachal.htm
  3. ^ Le, Tao; Bhushan, Vikas; Vasan, Neil (2010). First Aid for the USMLE Step 1: 2010 (20th Anniversary ed.). USA: The McGraw-Hill Companies, Inc.. pp. 122. ISBN 978-0-07-163340-6 
  4. ^ Guray, Sogut, et al. (2000) Urachal Cyst. Eastern Journal of Medicine 5(2):76-78.

外部リンク[編集]

この記事にはパブリックドメインであるグレイ解剖学第20版(1918年)1213ページ本文が含まれています。