尾州電気

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尾州電気株式会社
種類 株式会社
本社所在地 大日本帝国の旗 愛知県海部郡津島町
大字津島字川原毛坪ハノ割296番地[1]
設立 1909年(明治42年)4月10日[2]
解散 1922年(大正11年)6月26日[3]
東邦電力と合併し解散)
業種 電気
事業内容 電気供給事業ガス供給事業
代表者 井上茂兵衛
公称資本金 120万円
払込資本金 60万円
株式数 2万4000株(額面50円)
特記事項:代表者以下は1922年1月時点[4]
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尾州電気株式会社(びしゅうでんき かぶしきがいしゃ)は、明治末期から大正時代にかけて現在の愛知県津島市一宮市に存在した電力会社ガス会社である。尾州電気は末期3年間の社名で、一宮瓦斯株式会社(いちのみやガス)と称した期間が長い。

1909年(明治42年)に一宮のガス会社として設立・開業。次いで津島でもガス事業を始め、1914年(大正3年)より津島地区において電気事業も開業して電気・ガス兼営となった。1922年(大正11年)に周辺事業者の統合を進める東邦電力へと合併され、電気事業は同社に、ガス事業はガス専業の東邦ガスへとそれぞれ引き継がれた。

沿革[編集]

一宮瓦斯設立[編集]

初代社長奥田正香

1889年(明治22年)、中部地方で最初の電気事業者として名古屋市名古屋電灯が開業した[5]。以後、同地方では主要都市に次々と電気事業が起業されていく[6]。また1907年(明治40年)に名古屋瓦斯東邦ガスの前身)も開業し、名古屋市では都市ガス供給も始まった[7]。この時代の都市ガスの用途はガス灯が主力であったことから、ガス事業は灯火供給という点で電気事業と競合関係にあった[7]

愛知県西部の中島郡一宮町(1921年9月市制施行し一宮市となる)において、電気事業の計画が出現したのは1903年(明治36年)のことである[8]。だがこの段階では採算が合わないとして実現せず[8]、ガス事業が先んじて開業することになった。ガス事業を担う一宮瓦斯は1909年(明治42年)4月10日に設立[2][9]。同社は名古屋瓦斯関係者と地元有力者が共同で計画したもので[10]、社長に名古屋瓦斯の奥田正香、常務に地元の佐分慎一郎が就いた[9]。そのほかにも地元からは林利左衛門・土川弥七郎(油商[11]一宮銀行頭取[12])が取締役、豊島半七(綿糸商[11])が監査役に名を連ねる[9]。設立時の資本金は30万円で、一宮町大字一宮字東蜂ヶ尻に本店を置いた[2]

一宮瓦斯は設立4か月後の1909年8月26日に開業した[13]。ガス事業に遅れること3年、1912年(明治45年)に電気事業を担う一宮電気が設立された[8]。同社の設立当初の役員は一宮瓦斯の役員と一部共通しており、土川弥七郎が社長、佐分慎一郎・豊島半七が取締役を務めた[8]

津島進出と電気事業開業[編集]

1910年(明治43年)1月13日、一宮と鉄道で繋がる海部郡津島町(現・津島市)に津島瓦斯株式会社が設立された[14]。資本金は20万円[14]。一宮瓦斯と同様に奥田正香が社長を務め、地元津島からは友松信治郎が専務取締役に入るほか、佐分慎一郎も監査役に名を連ねる[15]。翌1911年(明治44年)6月1日、一宮瓦斯はこの津島瓦斯株式会社を合併し資本金を50万円とした[9][16]。合併時、需要家数は一宮瓦斯が869戸、津島瓦斯が567戸であった[9]

津島町でも一宮町と同様、ガス事業に続いて電気事業が企画された。津島電気株式会社がそれで、1912年(明治45年)2月に電気事業許可を受け[17]、同年9月12日付で資本金10万円にて津島町に設立された[18]。奥田・友松・佐分の3名が取締役を務める会社であった[18]。一宮瓦斯は津島瓦斯に続いてこの津島電気も翌1913年(大正2年)3月1日付で合併し[19]、資本金を60万円とした[9]。そして合併後電気工事に着手し、津島分工場に発電所を設置して1914年(大正3年)8月1日より津島町で電気の供給を開始して電気事業者としても開業するに至った[17]

逓信省の資料によると、電気事業開業当初は津島町と佐織美和平和の3村へと供給[20]。電源の発電所は蒸気機関大阪電灯三相交流発電機(周波数60ヘルツ)からなる出力40キロワットの火力発電所であった[21]。1年後の1915年(大正4年)10月20日、美和村木田の開閉所を通じて名古屋電灯からの受電を開始した[22]。受電高はこの段階では30キロワットである[23]。またこの間の1915年6月26日付で社名を一宮瓦斯から尾州瓦斯電気株式会社へと変更している[24][25]

次いで1918年(大正7年)6月26日、本店を一宮町から津島町大字津島へと移転[26]。翌1919年(大正8年)6月27日には社名から「瓦斯」を除いて尾州電気株式会社へと改称した[27][28]

東邦電力への合併[編集]

尾州電気への社名変更に続き、1919年9月12日、電気器具の製造販売や電気工事を目的とする名古屋市の名古屋電機(資本金60万円・1919年6月設立)を合併した[29][30]。合併に伴う増資は60万円で、同時に神谷卓男(名古屋電灯常務)と青木義雄(名古屋電灯支配人)が取締役に加わっている[30]。名古屋電灯との関係は電源方面でも動きがあり、翌1920年(大正9年)6月、名古屋と富田(三重県)を結ぶ名古屋電灯富田送電線から分岐し尾州電気とを繋ぐ送電線が完成した[31]。名古屋電灯からの受電高は1921年(大正10年)6月時点では430キロワットであり、この段階では自社発電所を含めて他に電源を持っていない[32]

尾州電気唯一の電源となった名古屋電灯は、1920年代に入ると急速に規模を拡大していた。1920年から翌年8月にかけて合併した電力会社は一宮電気・岐阜電気豊橋電気板取川電気など愛知・岐阜両県にまたがる計6社にのぼる[33]。さらに1921年10月には奈良県関西水力電気と合併し関西電気となった[34]。この関西電気も合併路線を進み、1922年6月にかけて周辺事業者9社と九州九州電灯鉄道を合併した[35]。尾州電気もこの時期に関西電気へ吸収された会社の一つである[35]株主総会における合併決議は尾州電気・関西電気ともに1922年(大正11年)1月12日付で行われており、特に関西電気側では九州電灯鉄道・北勢電気・時水力電気・愛岐電気興業八幡水力電気の5社と同時の合併決議となっている[36]

合併時、尾州電気の資本金は120万円(うち60万円払込)で、全2万4000株のうち半分の1万2000株を関西電気が保有していた[35]。関西電気との合併条件は、存続会社の関西電気が資本金を78万円増資し、解散する尾州電気の株主(自社保有分を除く)に対しその持株1株につき関西電気新株を1.3株の割合で交付する、また別途解散交付金として尾州電気側に3万1000円を交付する、というものであった[35]。合併手続きは合併決議を経て1922年5月11日付で逓信省からの合併認可取得と進み[37]、同年6月26日、関西電気での合併報告総会開催をもって完了[38][39]、同日をもって尾州電気は解散した[3]

尾州電気を合併した関西電気は、合併で供給区域が中京関西・九州に拡大したことを踏まえて合併と同日付で東邦電力へと改称した[40]。また東邦電力成立の過程で吸収していた名古屋瓦斯の事業を元に同日付で子会社東邦瓦斯(東邦ガス)を設立する[40]。この東邦ガスに対しては1年後の1923年(大正12年)4月1日付で旧尾州電気が経営していた一宮市・津島町のガス事業も東邦電力から譲渡された[41]。しかし一宮市での供給が継続された一方で津島町での供給は採算が取れず同年9月15日に廃止されている[41]

年表[編集]

供給区域[編集]

電気[編集]

東邦電力との合併前年、1921年(大正10年)6月末時点における電灯・電力供給区域は以下の2町13村であった[32]

愛知県 海部郡
(2町11村)
津島町・神守村(現・津島市)、永和村(現・津島市ほか)、
佐屋村佐織村立田村八開村(現・愛西市)、
弥富町鍋田村十四山村(現・弥富市)、市江村(現・弥富市・愛西市)、
美和村七宝村(現・あま市
中島郡
(1村)
平和村(現・稲沢市
三重県 桑名郡
(1村)
木曽岬村(現・木曽岬町

逓信省の統計によると、1921年11月末時点における供給成績は電灯供給が需要家数1万476戸・取付灯数2万1356灯[42]、電力供給が電動機104台・計429.3馬力とその他電力装置2台・計0.6キロワットの合計320.8キロワットであった[43]。なお佐織村所在の東洋紡績津島工場は名古屋電灯(関西電気)の需要家であり、1921年3月より同社が直接送電を開始した[44]。同年末時点での工場への供給高は330キロワットである[45]

なお、東邦電力時代の1923年末時点においては上記区域のうち海部郡十四山村と桑名郡木曽岬村は全域が供給区域から外れており[46]、海部郡飛島村と鍋田村の大部分(大字森津・鎌島新田以外の地域)を加えた4村で海部岬電気という飛島村所在の小事業者の供給区域に入っている[47]。海部岬電気は翌1924年(大正13年)7月1日に開業した[48]

ガス[編集]

ガス供給区域は愛知県一宮市および海部郡津島町であり、1921年3月末時点で需要家数957戸に対し灯火孔口数4591個・熱用孔口1481個にガスエンジン10基を取り付けていた[49]

脚注[編集]

[脚注の使い方]
  1. ^ 商業登記 東邦電力株式会社変更」『官報』第3029号附録、1922年9月5日付。NDLJP:2955147/17
  2. ^ a b c d 「商業登記」『官報』第7754号附録、1909年5月4日付。NDLJP:2951104/19
  3. ^ a b c 「商業登記」『官報』第3032号附録、1922年9月8日付。NDLJP:2955150/38
  4. ^ 『日本全国諸会社役員録』第30回下編183頁。NDLJP:968834/590
  5. ^ 『中部地方電気事業史』上巻17-19頁
  6. ^ 『中部地方電気事業史』上巻22-23頁
  7. ^ a b 『中部地方電気事業史』上巻64-67頁
  8. ^ a b c d 『一宮市史』下巻181-183頁。NDLJP:1261432/123
  9. ^ a b c d e f g h 『一宮市史』下巻178-180頁。NDLJP:1261432/122
  10. ^ 『社史 東邦瓦斯株式会社』61-63頁
  11. ^ a b 『商工名鑑』中島郡7-10頁。NDLJP:910452/139
  12. ^ 『一宮市史』下巻167-168頁。NDLJP:1261432/116
  13. ^ a b 『社史 東邦瓦斯株式会社』477頁(巻末年表)
  14. ^ a b c 「商業登記」『官報』第7980号、1910年2月1日付。NDLJP:2951331/16
  15. ^ 『日本全国諸会社役員録』第19回下編228-229頁。NDLJP:780123/616
  16. ^ 「商業登記」『官報』第8390号、1911年6月12日付。NDLJP:2951747/15
  17. ^ a b c 『八開村史』通史編526-527頁
  18. ^ a b c 「商業登記」『官報』第43号、1912年9月20日付。NDLJP:2952140/14
  19. ^ a b 「商業登記」『官報』第183号附録、1913年3月13日付。NDLJP:2952282/11
  20. ^ 『電気事業要覧』第8回46-47頁。NDLJP:975001/52
  21. ^ 『電気事業要覧』第8回200-201頁。NDLJP:975001/130
  22. ^ a b 「名古屋電灯株式会社第52回事業報告書」(名古屋市市政資料館蔵)
  23. ^ 『電気事業要覧』第9回46-47頁。NDLJP:975002/43
  24. ^ a b 『社史 東邦瓦斯株式会社』484頁(巻末年表)
  25. ^ 「商業登記」『官報』第879号附録、1915年7月7日付。NDLJP:2952985/16
  26. ^ a b 「商業登記」『官報』第1800号附録、1918年8月2日付。NDLJP:2953913/23
  27. ^ a b 『社史 東邦瓦斯株式会社』488頁(巻末年表)
  28. ^ 「商業登記」『官報』第2115号、1919年8月22日付。NDLJP:2954228/18
  29. ^ 「商業登記」『官報』第2105号附録、1919年8月11日付。NDLJP:2954218/18
  30. ^ a b c 「商業登記」『官報』第2188号、1919年11月19日付。NDLJP:2954301/20
  31. ^ 「名古屋電灯第62回事業報告書」(J-DAC「企業史料統合データベース」収録)
  32. ^ a b 『電気事業要覧』第13回68-69頁。NDLJP:975006/64
  33. ^ 『東邦電力史』39-42頁
  34. ^ 『東邦電力史』82-86頁
  35. ^ a b c d 『東邦電力史』89-93頁
  36. ^ a b 「公示催告」『官報』第2839号、1922年1月21日付。NDLJP:2954955/14
  37. ^ 「関西電気株式会社大正11年上半期営業報告書」(J-DAC「企業史料統合データベース」収録)
  38. ^ 「東邦電力株式会社大正11年下半期営業報告書」(J-DAC「企業史料統合データベース」収録)
  39. ^ a b 『社史 東邦瓦斯株式会社』492頁(巻末年表)
  40. ^ a b 『東邦電力史』93-111頁
  41. ^ a b c d 『社史 東邦瓦斯株式会社』113-115頁・486頁(巻末年表)
  42. ^ 『電気事業要覧』第14回334-335頁。NDLJP:975007/194
  43. ^ 『電気事業要覧』第14回362-363頁。NDLJP:975007/208
  44. ^ 「名古屋電灯第63回事業報告書」(J-DAC「企業史料統合データベース」収録)
  45. ^ 『管内電気事業要覧』第3回26頁。NDLJP:975997/30
  46. ^ 『管内電気事業要覧』第5回18-19頁。NDLJP:975999/28
  47. ^ 『管内電気事業要覧』第5回28-29頁。NDLJP:975999/33
  48. ^ 『管内電気事業要覧』第6回30-31頁。NDLJP:976000/34
  49. ^ 『瓦斯事業要覧』大正9年度版4-5頁。NDLJP:946301/7

参考文献[編集]

  • 企業史
    • 東邦瓦斯(編) 『社史 東邦瓦斯株式会社』東邦瓦斯、1957年。 
    • 東邦電力史編纂委員会(編) 『東邦電力史』東邦電力史刊行会、1962年。 
    • 中部電力電気事業史編纂委員会(編) 『中部地方電気事業史』 上巻・下巻、中部電力、1995年。 
  • 官庁資料
    • 帝国瓦斯協会(編) 『瓦斯事業要覧』 大正9年版、帝国瓦斯協会、1922年。NDLJP:946301 
    • 逓信省電気局(編) 『電気事業要覧』 第8回、逓信協会、1916年。NDLJP:975001 
    • 逓信省電気局(編) 『電気事業要覧』 第9回、逓信協会、1917年。NDLJP:975002 
    • 逓信省電気局(編) 『電気事業要覧』 第13回、逓信協会、1922年。NDLJP:975006 
    • 逓信省電気局(編) 『電気事業要覧』 第14回、電気協会、1922年。NDLJP:975007 
    • 『管内電気事業要覧』 第3回、名古屋逓信局電気課、1922年。NDLJP:975997 
    • 『管内電気事業要覧』 第5回、名古屋逓信局電気課、1925年。NDLJP:975999 
    • 名古屋逓信局(編) 『管内電気事業要覧』 第6回、電気協会東海支部、1926年。NDLJP:976000 
  • その他文献
    • 一宮市役所(編) 『一宮市史』 下巻、一宮市役所、1939年。NDLJP:1261432 
    • 商業興信所 『日本全国諸会社役員録』 第19回、商業興信所、1911年。NDLJP:780123 
    • 商業興信所 『日本全国諸会社役員録』 第30回、商業興信所、1922年。NDLJP:968834 
    • 八開村史編さん委員会(編) 『八開村史』 通史編、八開村役場、2000年。 
    • 中尾矩市 『商工名鑑』 第3版、名古屋商工社、1912年。NDLJP:910452 

関連項目[編集]

  • 知多電気 - 同様に東邦電力・東邦ガスへ統合された電気・ガス兼営事業者。
  • 津島ガス - 1953年より津島市でガス事業を経営。