小選挙区比例代表併用制

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小選挙区比例代表併用制(しょうせんきょくひれいだいひょうへいようせい、英:Mixed member proportional representation)とは、小選挙区制の要素を加えた比例代表制。全議席は政党の得票数に応じて比例配分されるが、各政党では小選挙区で当選した候補者に優先的に議席が与えられる。ドイツニュージーランドでの採用例が有名である。

この制度では全議席は比例代表によって民意に近い配分がされ、かつ有権者は誰を当選させるかを選ぶことができるという利点がある。一方で複雑で分かりにくい制度という批判もある。

概要[編集]

2005年ドイツ連邦議会選挙においてヴュルツブルクの選挙区で使用された投票用紙。選挙区の票が左側で、政党名簿の票が右側である。

小選挙区制比例代表制の選挙を同時に行う点は小選挙区比例代表並立制と同じであるが、決定的に違うのは、併用制では各党の議席数は基本的に比例代表の得票率により決定し、小選挙区部分は党内の当選者を決定する際に使用されるという点である。別の言い方をすれば、1)比例代表で全ての政党別の議席配分を決めた上で、2)各政党に配分された議席をその党の小選挙区での当選者に優先して割り当て、3)それでも余りが生じた場合にのみ政党名簿に登載された候補者を補充して当選させることになる。このため小選挙区での獲得議席が比例代表での獲得議席を上回る政党が現れない限り、比例代表の性質は歪められない。ただし比例代表の一票の格差を自動調整する機能は失われる。

なお比例区(政党名簿)と小選挙区では個別に分離して投票を行うことが多い(二票制。右のドイツの例での投票用紙もこの一種である)が、小選挙区の候補者への投票を所属する政党への投票とみなし、全国で政党別に集計して各政党に比例配分すること(一票制)も、理論的には可能である。

小選挙区で候補者が無所属で出馬し当選した場合は、政党名簿での議席配分にあずかることができないため、当然比例代表の枠外での当選となる。極端な例だが、小選挙区の候補者が全員無所属で出馬した場合は、事実上小選挙区比例代表並立制と同じとなる。これを防ぐためドイツでは、小選挙区比例代表並立制を採用している日本とは逆に、同一候補者が小選挙区と比例区に重複立候補することが奨励されている節があり、実例としては有力政治家であるヘルムート・コールドイツキリスト教民主同盟)もハンス・ディートリッヒ・ゲンシャー自由民主党)も重複立候補した上、地元の小選挙区では落選を繰り返し、比例区で当選(いわゆる復活当選)していた[1]

超過議席[編集]

ドイツでは小選挙区の獲得議席数が比例で獲得した議席数を上回った場合、超過分も超過議席ドイツ語Überhangmandat英語Overhang seat)として認められるため、ドイツ連邦議会では定数より選挙での確定議席数が多くなることがほとんどであり、若干ながらドイツキリスト教民主同盟ドイツ社会民主党二大政党に有利に働いている[2]。このためドイツではこの制度が阻止条項と並んで議会政治の安定に寄与している側面がある。

日本で民間政治臨調が提唱した小選挙区比例代表連用制は、この超過議席の発生を回避し、かつ、ドイツの選挙制度に限りなく近くなるようにした制度であるとも言える。このため併用制と連用制を区別せずに分類する方法が一般的である。

併用制を採用している国[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 参考 加藤秀治郎『日本の選挙-何を変えれば政治が変わるのか-』p106-107(2003年 中央公論新社) ISBN4121016874 。なおコールは1990年の連邦議会選挙においてのみ地元の小選挙区で勝利した。
  2. ^ ドイツでは第3党以下の自由民主党緑の党が小選挙区で議席を獲得することはまれであり、左翼党の小選挙区議席も地盤である旧東ドイツ地域に集中している。なお逆に地域政党キリスト教社会同盟は議席のほとんどを地盤であるバイエルン州の小選挙区で獲得している。
  3. ^ 超過議席が出ない仕組みになっており、連用制に近い。Matthew Shugart & Martin P. Wattenberg (ed). 2001. Mixed-Member Electoral Systems: The Best of Both Worlds? Oxford, UK: Oxford University Press. P.23.

参考文献[編集]

  • 早川東三ほか編 『ドイツハンドブック』 三省堂、1984年
  • 渡辺重範編:ドイツハンドブック、早稲田大学出版部、1997年

関連項目[編集]