専守防衛

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専守防衛(せんしゅぼうえい、英語: Exclusively Defense-Oriented Policy[1])とは、第二次世界大戦後の日本で練られている軍事戦略である。戦略守勢とも言う。

概要[編集]

専守防衛は戦後の日本(自衛隊)の基本的な軍事戦略とされてきた。自衛隊の基本戦略戦術思想の根幹を成している。防衛上の必要があっても相手国に先制攻撃を行わず、侵攻してきた敵を自国の領域において軍事力(防衛力)を以って撃退する方針のことを意味する。

その内容は、全般的な作戦において、相手の攻撃を受けてから初めて軍事力を行使すること、その程度は自衛に必要最低限の範囲にとどめ、相手国の根拠地への攻撃(戦略攻勢)を行わないこと、自国領土またはその周辺でのみ作戦することなどである。戦力不保持・交戦権否認を規定する日本国憲法第9条と整合性を持った受動的な軍事戦略とされている(もっとも、同条の解釈については種々の議論がある)。

なお、ドイツ連邦軍も、第二次世界大戦の反省から、かつては専守防衛を原則としてきた。しかし、1990年代カンボジアソマリアユーゴスラビアに派兵するようになっており、またドイツ最高裁判所は、議会の承認を得たものなら海外派兵は憲法違反ではないとの判断を下している。ドイツ軍が現地で殺害に加担したり、戦死者を出すようになっており、ドイツにおいては専守防衛の原則は過去のものとなっている[2]

問題[編集]

スタンドオフ攻撃への対応[編集]

専守防衛では戦略攻勢は認められておらず、自衛隊による攻撃型兵器(弾道ミサイル、長距離戦略爆撃機潜水艦発射弾道ミサイルを含む原子力潜水艦、いわゆる攻撃型空母など)の保有はこの原則に反すると解されている。そのため、たとえば相手国が自衛隊の保有兵器よりも長射程の兵器で日本を攻撃(スタンドオフ攻撃)した場合、その射程を生かし自由かつ安全に攻撃を行うことが可能となるので、これに対抗することが必要となる。

日本の防衛戦略上、このような対抗手段として現在位置づけられているのは日米安全保障条約に基づくアメリカ軍の攻撃力である。もっとも、このような攻撃力の行使は、アメリカ合衆国の意思に依存するものであり、また条約における日本防衛義務の趣旨についても争いがある。このため、有事において日本を防衛できない危険が指摘されている(その反対に米国による戦争に巻き込まれるのではないかという危険も指摘されている。同盟のジレンマ)。 巻き込まれ論に対して米国が日本周辺で単独で軍事行動を行うオプションはまず考えられず、仮にそのようなことになったとしても台湾、朝鮮半島を含め、その時点で日本自身の安全保障、経済活動に重大な不利益を及ぼす事態になっていると想定されるため、巻き込まれるという考え方では適当でなく、アメリカと共通の利害関係(軍事同盟)をもつ以上必然的に参戦すると考えるほうが自然である。

先制攻撃の禁止[編集]

日本は大陸と非常に近い位置にあり、またその国土の形状は南北に長い一方で縦深性が低い。したがって、相手国による攻撃がなされた場合、初期段階で作戦地域となりうる範囲が広大になるうえ、前記のような国土の形状のため、防衛上の時間的猶予は極めて限られるとされている。そのため、弾道ミサイル戦略爆撃機を用いた攻撃に対しては、防衛が困難な地理的な環境にあると指摘されている。

このような分析を前提にすれば、専守防衛による先制攻撃の禁止は、こうした防衛上の困難をより深刻なものにしているということになる。この弱点を克服するためには、相手国の軍事的な動向を迅速かつ正確に把握できる情報収集の体制を整備したうえ、本格的な侵攻の兆候に応じて迅速に部隊を展開できるようにすることが必要ということにある。しかし、日本のこの点での整備・能力向上は不十分であり、米国の情報収集能力(たとえば偵察衛星など)に大きく依存していると一般的には指摘されている。

国民保護の重要性[編集]

専守防衛の戦闘はそれすなわち「本土決戦」のことである。自国の及びその周辺で作戦するために国民への被害が出る危険性が高く、また住民のために作戦行動が大きく制約されると指摘されている。そのため、住民の被害を最小化して国民生活を守り、効率的かつ円滑に作戦行動するために軍民一体の体制を整備することが必要であり、そのために有事法制国民保護民間防衛)の整備が重要であると論者により主張されている。

議論[編集]

専守防衛により許容される攻撃の程度については曖昧さを含んでいるとされている。敵からどの程度の攻撃を受けたら反撃が可能なのか、またその際どの程度の攻撃までが可能なのかについては、度々議論がなされる。一般的には、この点の政府の考え方は拡大化の傾向にあると考えられている。武力攻撃事態法においては先制的自衛権が可能とされており、また、個別的か集団的かに関わらず、自衛権とは必ずしも日本の領域に留まるものではないということは、従来の政府による国会答弁でも確認されている(在外邦人保護のための自衛権行使について公海上の自衛権行使の是非参照)。しかし、こうした政府解釈等に対しては、憲法解釈上の問題も指摘されており、反対論や異論が存在している。

武力攻撃予測事態における先制的自衛権[編集]

専守防衛の議論の中で今日、最も大きな議論は先制的敵基地攻撃の合憲性等についてである。有事法制をめぐる議論において、日本政府は、弾道ミサイル攻撃や核兵器攻撃に対し他国を攻撃する以外に自国を守る手段がない場合であれば他国への攻撃も自衛権の行使の範囲内であり、日本国憲法9条に抵触しないという見解を示している。 なお、2005年7月22日、改正自衛隊法の成立により、発射の兆候なしにミサイルが飛来した場合、緊急対処要領に基づき防衛庁長官(現・防衛大臣)の権限により現場指揮官への迎撃命令が可能とされた。

脚注[編集]

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  1. ^ Fundamental Concepts of National Defense”. 防衛省. 2016年11月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年6月12日閲覧。
  2. ^ ジェーソン・オーバードーフ (2013年11月12日). “専守防衛を捨てたドイツ軍の行く先は”. ニューズウィーク. http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2013/11/post-3098.php 2016年1月31日閲覧。 

関連項目[編集]