富豪刑事

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富豪刑事
ジャンル ミステリ
小説
著者 筒井康隆
イラスト 真鍋博
出版社 新潮社
掲載誌 小説新潮
発行日 1978年5月
連載期間 1975年 - 1977年
巻数 全1巻
アニメ:富豪刑事 Balance:UNLIMITED
原作 筒井康隆
監督 伊藤智彦
シリーズ構成 岸本卓
脚本 岸本卓
キャラクターデザイン 佐々木啓悟
音楽 菅野祐悟
アニメーション制作 CloverWorks
放送局 フジテレビほか
放送期間 2020年4月 -
テンプレート - ノート
プロジェクト アニメ
ポータル 文学アニメ

富豪刑事』(ふごうけいじ)は、筒井康隆の連作推理小説1975年から1977年にかけて『小説新潮』に発表された。4篇から構成される連作短編小説。新潮社より1978年に単行本化され、1984年新潮文庫で文庫化された。挿絵は、イラストレーターの真鍋博が描いている。

主人公は神戸大助(かんべ だいすけ)。現役時代は強欲で鳴らした実業家で大富豪の父を持つ刑事・神戸大助が、引退して悔い改めた父から提供された巨万の資産を、難事件の解決に惜しみなく消費することで、事件解決へと導く刑事小説

1979年エフエム東京音の本棚』でラジオドラマ化され[1]、1985年には関口シュン作画により漫画化もされた[2]1995年には筒井康隆の小説を漫画化する企画『筒井漫画涜本』で、いしいひさいちが「大富豪刑事」のタイトルにより「鉄壁のアリバイ」「バラバラ殺人事件」の2編の4コマ漫画を発表した[3]

制作背景[編集]

作者の筒井は、この種のフォーマット上に個性的なドラマを構築するのは年に2作が限度だとして、本作を年に1作から2作のペースで執筆し、1976年に3作目にとりかかった時点で、ドラマがパターン化してマンネリになることを理由に、もうこれ以上は書けないとしていた[4]。2年半で4作という執筆ペースは、トリックの考案が苦手で、考え出すのに時間が必要だったためともいう[5]

1985年の3月から4月にかけて、東宝企画の常務が映画化を打診したという。制作に当たって、映画はオリジナルストーリーにしてそれを筒井が小説化して新潮社が発行すること、全シーンを海外ロケ撮影するといったプランを提示されたため、筒井は「せめて脚本に手を入れさせてほしい」と要望を出したが、東宝企画が断ったことなど様々な条件で折り合わず、結局映画化の話を筒井は断ることにした。主演俳優には西城秀樹もしくは萩原健一が予定されていたという[6][7]

登場人物[編集]

神戸大助(かんべだいすけ)
主人公。警察署刑事課捜査1係所属の刑事。大富豪・神戸喜久右衛門の息子。金持ちであることを鼻にかけたりしない好青年である。一人称は「ぼく」で、基本的に「ですます調」の丁寧な口調で話す。常識人であるが、金銭面に関しては一般人の尺度からは感覚が外れている。例えば、愛車はキャデラックのセダン(モデルは不明)、吸うのは1本8,500円のハバナ葉巻で、それも半分も吸わずに揉み消す、就業中の昼食もレストランの予約を行う(逆に予約という便利なシステムを利用しない人々を理解できない)、持っている腕時計は最も安いもので250万円、受け取った給料を袋ごと無造作に車の助手席に放置する、バーバリー背広を着ているのに雨の中を傘も差さずに歩く、1個10万円の高級ライターを始終どこかに置き忘れるなど。こういったブルジョワ性の垣間見える行動から、警察には彼を「富豪刑事」と呼ぶ者もいる。刑事としての収入は1年と数ヶ月分の給料で500万円とのことで(作品が書かれたのは昭和50年代前半)、彼の金銭感覚はいつまでたっても巨額の財産と公務員としての低収入の両極端、どちらにも落ち着くことができないとのこと。正義漢で、喜久右衛門が他者に圧力をかけたりするのを嫌う。当初は、鈴江から好意を寄せられていることにまるで気づいていなかった。財産を惜しげもなく使った捜査を提案し、難事件を解決に導いていく。第3話では、鶴岡刑事からだいぶ観察眼が鋭くなったと言われたように、刑事としての能力も評価されるようになってきた。正体を隠してのおとり捜査でも、“ボロを出すとすれば金持ちとしてのボロで、やらかせばやらかすほど刑事らしくなくなる”と評される。なお、前述の漫画版ではオールバックの青年の姿で描かれている[8]
神戸喜久右衛門
大助の父で大富豪。若い頃は金のためならなんでもするという非情な人間で、さんざん悪いことをして金儲けをしてきた。妻はそれに心を痛めて亡くなってしまった(それでも当時はなんとも思わなかった)という。今は、刑事となった大助が正しいことのためにその全財産を使ってしまってくれることが唯一の罪滅ぼしと期待している。大助が捜査の協力を申し出るたびに感涙にむせび、喉に痰をつめる発作を起こすが、その息が停まっている間に自分の財産や人脈をどのように使わせるかのアイデアが閃く。それを大助に話す際に、うっかり浮きうきと昔の悪行をしゃべりかけてしまい、大助や秘書の鈴江に睨まれてしまう。誕生日は11月4日。一度言い出したら後へは引かない強情さを持っている。鈴江を孫娘を見るような思いでかわいがっている。
浜田鈴江
喜久右衛門の有能な秘書で清楚な美女。両親は病気で亡くなったが、喜久右衛門は自分がその会社を破産に追い込んだせいだと考え、鈴江を東京の女子大に進学させる等の面倒を見て、卒業後は秘書とした。大助に想いを寄せていて、大助のために向こう見ずな行動をとる場合もある。喜久右衛門と同様、一度言い出したら後へは引かない強情さを持っている。ですます調で話す大助だが、鈴江に対してはタメ口で親しげに話す。
鶴岡
警察署刑事課捜査1係所属の刑事で、大助の同僚。長身痩躯。一見学究肌、または実直な経理課長風。初老で人情味厚く、若い刑事たちへの面倒見もよい。加えて鋭い勘と推理力も持っているので、署内でも人望がある。父親は小さな町工場を経営していたが、破産したという。その独特の風貌を捜査に生かして解決した事件も数多いとのこと。孫が6人いる。
狐塚
警察署刑事課捜査1係所属の刑事で、大助の同僚。最も刑事らしいタイプ。癇癪持ちで、逮捕好き。金持ちに対する嫌悪を露わにし、当初から大助の提案に最も批判的だが、次第に慣れていった模様で、金のあるやつがいくらでも金を出せばいいという考え方に変わったらしい。悪に対しては容赦なく追及し、時にはそれが苛烈すぎて問題になったりする。
布引
警察署刑事課捜査1係所属の刑事で、大助の同僚。前歯が欠落していて、アルフレッド・E・ニューマンそっくり。ずんぐりむっくりの童顔で一番刑事らしくない顔といわれる。狐塚とは名コンビと言われ、その暴走を制御する役割を自ら引き受けた。ふたりが個性をぶつけ合って協力し解決した事件も数多いとのこと。家族は、妻と子供が2人。
猿渡
警察署刑事課捜査1係所属の刑事で、大助の同僚・親友。大助より2歳ほど年上で未婚。推理小説マニア。知能犯相手の捜査に闘志を燃やして名探偵ぶりを発揮し、その活躍によって解決した難事件もいくつかあるとのこと。鈴江が大助の婚約者だと思っている。
福山警視
第1話「富豪刑事の囮」に登場。「五億円強奪事件」の特別捜査本部キャップ。アルフレッド・ヒッチコックそっくりの顔をしている。
鎌倉警部
第2話「密室の富豪刑事」に登場。ジャン・ギャバンそっくり。鋳造会社社長焼死の捜査を担当する班長。「迷宮入り」という言葉が大嫌いで、聞くなり跳び上がる。
飛騨警部
第3話「富豪刑事のスティング」に登場。児童誘拐事件捜査本部のキャップ。誘拐事件捜査のベテランで、グレン・フォードそっくりの顔。
三宅警部
第4話「ホテルの富豪刑事」に登場。県警4課にその人ありと言われた暴力団関係のベテラン。県下の暴力団員で彼の名を知らない者はいなく、その名を聞いた者は皆震え上がる。ハンフリー・ボガートそっくりで、自分の部下にギャング映画俳優そっくりの者たちを意図的に集めたとも噂されている。
署長
いったいどういう人物でどういう経歴なのか、作者にもさっぱりわからないと地の文に明記してある大助が所属する警察署の署長。事件が解決されるたびに、その解決された場所がどんなところでも、必ず「おめでとさん、おめでとさん」と躍り出てくる。

書籍情報[編集]

テレビドラマ[編集]

テレビアニメ[編集]

富豪刑事 Balance:UNLIMITED』(ふごうけいじ バランス・アンリミテッド)のタイトルで2020年4月よりフジテレビノイタミナ』枠にて放送予定[10]

登場人物(アニメ)[編集]

神戸 大助(かんべ だいすけ)
声 - 大貫勇輔[10]
加藤春(かとう はる)
声 - 宮野真守[10]

スタッフ(アニメ)[編集]

フジテレビ ノイタミナ
前番組 番組名 次番組
富豪刑事 Balance:UNLIMITED
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関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

出典[編集]

  1. ^ 1979年6月13・14・15日放送 出演・小池朝雄 仲谷昇 他
  2. ^ 講談社コミックノベルス27
  3. ^ 『筒井漫画涜本』実業之日本社、1995年、p.217
  4. ^ 筒井康隆「こんなふうに外国テレビ映画を見ている」『言語姦覚』中公文庫、1986年、p.204。初出は『週刊TVガイド』1976年特別増刊
  5. ^ 佐野洋「筒井康隆氏『富豪刑事』について」『富豪刑事』新潮文庫、1984年、p.254
  6. ^ 筒井康隆『日日不穏』(西城案)中央公論社、1987年、pp.77、96-97、126。
  7. ^ 筒井康隆「『富豪刑事』はなぜ映画化されなかったか」『笑犬樓よりの眺望』(萩原案 本文中は『ショーケン』と表記)新潮社、1994年、ISBN 4-10-314522-6\新潮文庫、1996年、ISBN 4-10-117136-X )。初出は『噂の眞相』1987年11月号。
  8. ^ Amazon.co.jp: 富豪刑事 (コミックノベルス): 関口 シュン, 筒井 康隆: 本
  9. ^ 富豪刑事 (新潮社): 1978|書誌詳細|国立国会図書館サーチ ではISBNが登録されていないため、書籍情報源機能を経由して検索することができない。
  10. ^ a b c d e f g h i j k “筒井康隆の小説「富豪刑事」アニメ化!4月のノイタミナ枠で、制作はCloverWorks”. コミックナタリー (ナターシャ). (2020年1月23日). https://natalie.mu/comic/news/364344 2020年1月23日閲覧。 
  11. ^ ロデオOFFICIAL WEB 本宮ひろ志インタビュー

外部リンク[編集]