家内労働法

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家内労働法
日本国政府国章(準)
日本の法令
法令番号 昭和45年5月16日法律第60号
効力 現行法
種類 労働法
主な内容 家内労働に関し必要事項について
関連法令 民法, 労働安全衛生法
条文リンク 総務省法令データ提供システム
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家内労働法(かないろうどうほう)は、家内労働者(いわゆる内職者)を保護するための日本の法律。この法律において、家内労働者とは、委託者から物品の製造、加工等を請負って工賃の支払いを受ける者であるが、労働者を使用したり、一定規模以上の生産設備等を所有したりするような事業者性の強いものは除かれる(ただし、補助者(家内労働者の同居の親族であって、仕事を補助する者)を使用することは許される。)。家内労働者と委託者の関係は、使用従属性に欠けるため労働関係とはいえないものの、家内労働者が、一般に委託者に比して弱い立場にあり、その収入(工賃)を事業展開ではなく専ら自分や家族のための生活費に充てているという点からして、労働関係に類似するものであることから、家内労働者も労働者と同様に法的な保護を受けるべきとされる。家内労働者保護法規は世界的にみられる。また、補助者の作業環境の安全衛生についても、あわせて保護されている。

概要[編集]

  • 第一章 総則(第1条・第2条)
  • 第二章 委託(第3条―第5条)
  • 第三章 工賃及び最低工賃(第6条―第16条)
  • 第四章 安全及び衛生(第17条・第18条)
  • 第五章 家内労働に関する審議機関(第19条―第24条)
  • 第六章 雑則(第25条―第32条)
  • 第七章 罰則(第33条―第36条)
  • 附則

委託条件、工賃等[編集]

委託者は、家内労働者に対し、家内労働手帳を交付し、委託の都度、委託業務内容、工賃の単価、工賃の支払期日等を記入しなければならないとされる。 また、委託者は、家内労働者に対し、工賃を、納品から1箇月以内(締切日がある場合は締切日から1箇月以内)に、検品の如何を問わず、通貨で、その全額を支払われなければならず、家内労働に関する審議会が最低工賃(例:2穴ボタン付け1個5円)を定めた業種・工程については、最低工賃を下回る工賃の契約及び支払はできない。 また、委託者は、委託内容について帳簿に記入してその営業所に備え付けなければならないとされる。

安全及び衛生[編集]

委託者が家内労働者に機械等の貸与等を行う場合に必要な安全装置などを備え付ける等の危険防止措置義務を課しており、詳細は本法施行規則に示されている。また、家内労働者にも、その補助者の安全衛生に関する措置義務が課せられている。

監督機関[編集]

行政による履行確保は労働基準監督機関によって図られており、所掌部署は厚生労働省雇用均等・児童家庭局及び労働基準局都道府県労働局賃金課・賃金室、全国の労働基準監督署方面・監督課である。委託者は、毎年、都道府県労働局長に宛てて委託状況届を提出し、委託内容及び家内労働者数を報告しなければならない。労働基準監督官は、委託者の営業所や家内労働者の作業場所に立入って家内労働法の遵守状況を調査し、必要な指導を行うことができる。また安全衛生に係る重大な違反がある場合には、労働基準監督署長等は、当該機械等の使用停止や委託の禁止などを命じることができる。

通報・申告[編集]

家内労働法違反があるときは、家内労働者及び補助者は労働基準監督官等にこれを申告することができる。また、申告を行った家内労働者に対して工賃の引下その他不利益な取扱をすることは罰則はないが禁止されており、仮にそのような不利益取扱が生じた場合、都道府県労働局長等は、当該委託者に対し、その是正を命じることができる。 なお、本法は、公益通報者保護法の対象となる法律であるが、公益通報者保護法によって保護される公益通報は飽くまで労働者による通報であり、家内労働者による通報は公益通報とはならないので注意を要する。

罰則[編集]

委託禁止命令違反、最低工賃違反、安全衛生基準違反、家内労働手帳の不交付、工賃不払、委託状況届不提出、申告者に対する不利益取扱是正命令違反等について、懲役刑又は罰金刑の規定がある。なお、罰金額は、法文上は「1万円以下」ないし「5千円以下」と定められているが、これは罰金等臨時措置法により「1万円以上2万円以下」に読み替えて適用される。

労働基準法等との比較[編集]

本法は民法の請負に関する規定に係る特別法であり、労働基準法等は民法の雇用に関する規定に係る特別法であるという点で対照的であるが、規制の内容には、以下のような相似的な部分がある。

  • 家内労働手帳の交付義務(本法) - 労働条件通知書の交付義務(労働基準法)
  • 就業時間に関する努力義務(本法) - 時間外労働規制(労働基準法)
  • 継続委託の打切予告の努力義務(本法) - 解雇の予告義務(労働基準法)
  • 工賃の支払及び最低工賃(本法) - 賃金の支払及び最低賃金(労働基準法、最低賃金法)
  • 安全衛生に関する措置義務(本法) - 安全衛生に関する措置義務(労働安全衛生法)
  • 帳簿の備付義務(本法) - 賃金台帳の調製義務(労働基準法)

なお、請負に関する特別法としては、他に独占禁止法下請代金支払遅延等防止法等がある。 申告者への不利益取扱に関する規制については対照的であり、本法では監督機関による是正命令違反にのみ罰則が設けられているが、労働基準法等では不利益取扱そのものが罰則付きで禁止されており、監督機関に是正命令権限は付与されていない。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

参考文献[編集]

  • 寺園茂章 『家内労働法の解説』 労務行政研究所、1981年