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宇都宮宝石店放火殺人事件

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
宇都宮宝石店放火殺人事件
場所 日本の旗 日本栃木県宇都宮市江野町ジュエリーツツミ宇都宮店
日付 2000年平成12年)6月11日
標的 民間人(宝石店店員)
攻撃手段 放火
武器 ガソリン
死亡者 6名
犯人 S
動機 借金の返済
対処 2002年平成14年)3月19日死刑判決
2007年平成19年)2月20日判決確定
2010年平成22年)7月28日死刑執行(東京拘置所
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宇都宮宝石店放火殺人事件(うつのみやほうせきてん ほうかさつじんじけん)とは、2000年平成12年)6月11日栃木県宇都宮市江野町にあるジュエリーツツミ宇都宮店で、産業廃棄物処理会社相談役を自称する男(以下、S)が指輪など293点約1億4000万円相当を奪った上、店長を含む当時店内にいた従業員全員を拘束した上で店内に放火し、6人全員を殺害した事件。最高裁判所においては宇都宮宝石店放火強盗殺人事件と称される[1]

事件概要

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背景

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容疑者の男S(当時49)は高校中退後、蕎麦屋に丁稚奉公していたが数年後に辞め、うどん屋を経営していたが、経営に行き詰まり廃業し、料理店に勤務するも長続きはしなかった。事件を起こす頃には、実在しない産業廃棄物処理会社相談役を名乗るだけで事実上無職であった。安定した収入がないにもかかわらず、Sは親の金を使い高級車や高級ブランド品を購入したり愛人を囲ったりする生活を続け、パチンコ等のギャンブルにのめりこみ、最終的には多額の借金を抱え返済に行き詰っていた。

事件前の来店

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Sは1998年以降、ジュエリーツツミ宇都宮店に来店し、宝飾品の購入・貴金属の加工等の取引を行っていた[2]

2000年平成12年)5月29日、Sは同店に来店し8000万円の取引を求めたが、ツツミ本社はSの身元に不審を感じ、取引に応じないよう指示したため破談となった[2]

同年6月1日、Sは再び来店し、5月のことについて謝罪し、後日商品を購入する旨を伝えた[2]

事件当日

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2000年平成12年)6月11日午後5時すぎ、Sはガソリンを入れたブランドバッグを持って宝石店に入店、バッグの中に現金で1億5千万円を持ってきたので、希望する宝飾品を売ってほしいと店長に伝える。店長は希望する宝飾品を揃えるのに時間がかかるため、閉店後に再度来店するよう伝える。店員は、今回は全額現金払いをするというSの言葉を信じたため、商談が成立した。

この間、従業員は近郊のツツミ系列店および近隣の時計店から商品を用意し、本社には午後7時半の閉店後ミーティングがあると連絡した。

午後7時30分、Sは再度来店し希望する宝飾品を確認した。午後9時50分、ツツミ本社からの最後の電話に対し、従業員は間もなく取引が終了すると答え、問題がある様子はなかったという[2]

Sは「清算をするから」等と言葉巧みに店長と店員ら(店長も含め全員女性)を一箇所に集めると、Sは態度を豹変し刃物を突きつけて従業員を脅した。

店長を脅迫し、他の店員の両手をSが事前に用意した粘着テープで縛らせた。Sは店長の両手両足および店員の両足をテープで縛り、さらに全員の目にハンカチを当てテープを巻き付けて目隠しをした。全員を休憩室に閉じ込め、店員の足下および1名の上半身にガソリンをかけ、火をつけて逃走。火災は翌日の午前0時15分頃鎮火されたが現場から完全に炭化した6体の焼死体が発見された。死因は火傷死2名、焼死4名。

ツツミが持っていた不審者リストや店内の防犯カメラ等の映像等が有力な証拠となり、さらに自らの車を東武宇都宮駅近くの駐車場に止めていたことが判明したため捜査員が張り込んでいたところ、翌日正午ごろにSがを取りに駐車場に現れたため任意同行し、強盗殺人放火の容疑で逮捕された。Sは取り調べに対し「女性店員だけの店を狙った」と供述した。

裁判

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現場の焼失・被害者遺体の損傷により、物的証拠が少なかったため、防犯カメラの映像証拠および自白の信憑性に重点が置かれた。Sは強盗の事実は認めるが、「脅すつもりでライターの火を付けたところ、突然爆発した。殺すつもりはなかった」等と殺意を否認し、自白についても精神的動揺を理由に信用性が低いと主張した[3]

2002年平成14年)3月19日宇都宮地方裁判所は「凶悪、悪質で他に類をみない」と求刑通り死刑判決を言い渡した。2003年平成15年)4月23日東京高等裁判所は「犯罪史上まれにみる凶悪な事件」として控訴棄却し、2007年平成19年)2月20日最高裁判所上告を棄却して死刑が確定する。確定死刑囚として東京拘置所収監されたSは、2008年に死刑廃止団体が行ったアンケートに「死刑になるのか、きもちの整理がつきません。死刑とはざんこくなものです」と答える[4]

2010年平成22年)7月28日千葉景子法務大臣(当時)立会いのもと、東京拘置所でSの死刑が執行された[5]。同日には熊谷男女4人殺傷事件の死刑囚の死刑も執行されている[5]。この日は、前年に死刑が執行されて以来、ちょうど1年が経過した日であり、民主党政権下で初の執行である。

また、千葉は死刑廃止論者かつ直前の参議院選挙で落選していたため、大きな波紋を呼んだ[6][7]

出典

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  1. ^ 最高裁判所判例集」『裁判所』。2024年6月1日閲覧
  2. ^ a b c d “強奪・宝石店放火殺人事件](14) まさか1億2千万円とは”. 読売新聞. (2000年6月30日) 
  3. ^ “宇都宮の宝石店放火殺人結審 弁護側「殺意なし」改めて主張”. 読売新聞. (2002年2月28日) 
  4. ^ “[死刑]かえらぬ命(2) 死刑囚と面会願う遺族 つらさ伝えたい…”. 読売新聞. (2008年2月12日) 
  5. ^ a b “2人の死刑を執行 1年ぶり 民主政権下で初”. 日本経済新聞. (2010年7月28日). https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG28012_Y0A720C1CR0000/ 
  6. ^ “「支持目当てに死刑を執行」、衆院予算委で野党の追及に千葉法相ぶぜん”. 神奈川新聞. (2010年8月3日) 
  7. ^ “【週刊・中田宏】(30) 死刑反対アピールで執行?千葉法相に疑問”. 産経新聞. (2010年7月31日). オリジナルの2011年2月9日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20110209012425/http://sankei.jp.msn.com//politics/news/110110/stt11011015350106-n1.htm 

参考文献

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  • 宇都宮地方裁判所 平成12年(わ)第397号、平成14年3月19日判決 [1](pdf)

関連項目

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