孤島パズル

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孤島パズル』(ことうパズル)は有栖川有栖1989年に発表した推理小説。「学生アリスシリーズ」の長編2作目である。

解説[編集]

本作から有馬麻里亜(マリア)が「学生アリスシリーズ」のレギュラーメンバーに加わる。同シリーズではクローズド・サークル物の事件が定番であり、本作では嵐で陸と断絶した孤島が舞台となる。また、同シリーズはエラリー・クイーンの影響を受け、全長編作品にクイーンの「国名シリーズ」に倣(なら)って「読者への挑戦」が挿入されており、本作では第5章と第6章の間に挿入されている。

このミステリーがすごい!」1989年16位、「東西ミステリーベスト100」2012年版の国内編95位[1]

あらすじ[編集]

英都大学推理小説研究会[2]の新入部員[3]・有馬麻里亜(マリア)の伯父・竜一の別荘「望楼荘」がある南の島・嘉敷島[4]のどこかに、マリアの祖父・鉄之助が遺した時価5億円相当のダイヤモンドが眠っており、その隠し場所を示す手がかりは、宝の地図と鉄之助の遺言状に記された「進化するパズルを解いたものがダイヤモンドの相続人となる」という言葉だけだという。マリアから別荘に誘われた江神二郎と有栖川有栖(アリス)は、宝捜しを兼ねて1週間のバカンスを楽しみに島を訪れる。

南の島での夏休みをマリアの親類縁者たちとともに楽しく過ごす3人だったが、2日目、折り悪しく接近してきた台風のため全員が別荘で待機していた夜、竜一の義兄・牧原完吾と、完吾の娘・須磨子がライフルで撃たれて殺されてしまった。ライフルは室内に見つからず、ドアには掛け金が掛かり窓は施錠された状態の密室であった。しかも無線機が壊され、連絡船もあと3日間は来ない絶海の孤島という閉鎖状況の中、4日目、望楼荘がある満ち潮岬と湾を挟んで向かいの引き潮岬にある「魚楽荘」で、画家の平川がライフルで撃たれて殺されているのが発見される。アリスたち一行は、この連続殺人の謎に挑む。

登場人物[編集]

  • 有馬麻里亜(マリア) - 英都大学法学部2回生
  • 有馬鉄之助 - マリアの祖父
  • 有馬竜一 - マリアの伯父
  • 有馬英人 - 竜一の長男
  • 有馬礼子 - 竜一の養女
  • 有馬和人 - 竜一の二男
  • 牧原完吾 - 竜一の義兄
  • 牧原須磨子 - 完吾の娘
  • 牧原純二 - 須磨子の夫
  • 犬飼敏之 - 竜一の異母弟
  • 犬飼里美 - 敏之の妻
  • 園部祐作 - 医師
  • 平川至- 画家
  • 江神二郎 - 英都大学文学部4回生
  • 有栖川有栖(アリス) - 英都大学法学部2回生

書誌情報[編集]

漫画版[編集]

本作品を原作として鈴木有布子作画で『孤島パズル』(マッグガーデン)の題で漫画化された。コミックアヴァルスから単行本は全3巻。

脚注[編集]

  1. ^ 他の有栖川作品では『双頭の悪魔』が22位。
  2. ^ 略称EMC (Eito Univ. Mystery Club)。江神とアリス、マリア以外のメンバーに経済学部3回生の望月周平と織田光次郎がいるが、本作では冒頭以外には登場しない。
  3. ^ マリアは大学入学から1年経って初めて推理小説研究会の存在を知ったため、2回生になってからの入部である。
  4. ^ 奄美大島からモータークルーザーで3時間かかる場所に位置している。

外部リンク[編集]