子役

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アメリカ人俳優ジョゼフ・ジェファーソン英語版と子役たち/1909年撮影。
サイレント映画キッド』(1921年公開)におけるチャールズ・チャップリンと子役ジャッキー・クーガン/クーガンはこの作品で子役の黎明期を代表するスターとなった。撮影時は5~6歳。子役としての活動期間は1917年から1933年まで(映画は1931年製まで、少なくとも22作品。cf. )。
ハリウッド女優シャーリー・テンプルの子役時代/幼児だけが登場するアメリカ製白黒短編映画「ベビー・バーレスク(原題:Baby Burlesks)」シリーズの一作『グラッド・ラグズ・トゥ・リッチズ(原題:Glad Rags to Riches)』(1933年公開)の一場面で、撮影時は4~5歳であった。子役としての活動期間は1931年から1947年まで(映画は56作品。cf. )。
双子の子役 "モーフ・ツインズ"/ビリー・アンド・ボビー・モーフ英語版(ウィリアム・ジョン・モーフとロバート・ジョセフ・モーフ)。撮影は1930年代後期後半。主な活動期間は1937年から1943年まで。
日本人俳優・片山明彦の子役時代/1941年(昭和16年)以前の撮影。
ロシア人女優エカテリーナ・スターズホーワ (en) の子役時代。

子役(こやく)とは、演劇や演劇的映像作品(ドラマ性のある映画テレビ番組・テレビCMなど)における、子供(配役)[1]。また、それを演じる子供をも指す[1]。子供のイメージモデル全般も含むとする捉え方もある[2]

英語では、男女を区別して "child actor"、"child actress" といい、日本語でもこれらを音写した外来語チャイルドアクター」「チャイルドアクトレス」が通用する。また、ティーンエイジ(13歳から19歳まで)の子役に対して英語では "teen actor"、"teen actress" も用いられる(※外来語としては確認できない)。フランス語では英単語との混種語で "enfant starアンファン スター)" という。中国語では「童星拼音tóngxīngトォンシィン〉)」という。

大人が「子供の役」を務める場合も「子役」である。

子供の役を務める子供(児童)は、基本的にそれを仕事として行う俳優である。しかし、あえて素人(俳優でない子供、演技のスキルをもたない子供)を用いることもあり、全体からすれば例外ではあっても珍しいというほど例が少ないわけではない。

子供の役を務める子供の俳優、すなわち最も狭義にいう子役は、広く世界に存在する。

なお、アニメーションラジオのような人間の姿を伴わない表現形態や媒体でも「子供の役」はあるが、これらを「子役」と呼ぶことは、基本的に無い。アニメーション分野でのそれは「子供のキャラクターの役」であって「子役」ではない。ただ、ラジオドラマでの子供の役などは、視覚情報が無いだけで演劇的表現における「子供の役」なのであるから、「子役」であろう。

日本の子役[編集]

日本伝統芸能における子役[編集]

ここでは、日本伝統芸能において、「子役」に相当する配役とその演者について解説する。

能の子方[編集]

では、少年が扮する役、および、それを演じる少年を、「子方(こかた)」という[3]が、これとは大きく意味の異なるもう一つの語義として、本来は大人が演じるべき大人の役をあえて少年に務めさせるその役、および、それを演じる少年をも、同じく「子方」という[4]。演劇や映画などの分野における「子役」と同じと言えるのは前者のみであり[5]、後者は能に固有の演出法である[5]。子方はシテ方から出るものと決まっており[6]、後者はシテ方を際立たせるための演出法として始まったとも[6]室町時代稚児愛好趣味(cf. 少年愛)に由来するとも考えられている[6]

前者の例としては、『望月』の花若(はなわか)[4]、『善知鳥』の千代童[5]、『烏帽子折(えぼしおり)[B 1]』や『鞍馬天狗』の牛若丸[5]、『関寺小町』の稚児[5]などがある。後者の例としては、『安宅[5]と『船弁慶』の源義経[4][7]、『花筐』の男大迹皇子[A 1]皇太子時代の継体天皇[5]と『草子洗小町』の天皇(継体天皇)[5]、『大仏供養[B 2]』の源頼朝[5]、『正尊(しょうぞん)[B 3]』の静御前[5]などがある。

狂言の子方[編集]

狂言では、少年が扮する役、および、それを演じる少年を、子方(こかた)といい、子方の出るものが少数ながらある[6]

歌舞伎の子役[編集]

歌舞伎では、大抵の場合、役者の子が「子役(こやく)」として初舞台を踏む[3]。子役が成長してもっぱら子役を務めている間は「若衆方(わかしゅがた)」と呼ばれ[3][8]、これは配役上結果的の「美少年役」を意味する[8]。子役は、長じては「立役(たちやく)」と「敵役(かたきやく)」、もしくは「娘方(むすめがた)」の、いずれかを務めることになる[3]。なお、娘方は「若女方(わかおんながた)」へと変わってゆき[3]、娘方は若女方の役柄の一つという位置づけになる[9][A 2][9]。歌舞伎の子役には地位による差別は無く[3]、出勤は演目の都合によって決められ[3]、給金は演じるごとに包み金という形で渡される[3]。歌舞伎の場合、「寺子屋」こと『菅原伝授手習鑑』の小太郎、『伽羅先代萩』の千松、『重の井子別れ(しげのい こわかれ)[B 4]』の三吉など、舞台の出来を左右する大役に子役を配した演目もある[3]

子役と労働に関する法律[編集]

日本の子役・鈴木福/2011年(平成23年)撮影。

現代日本において、子役の労働は、子供を保護する目的で法的に規制されている。

  • 日本国憲法第27条3項
    児童は、これを酷使してはならない。
  • 労働基準法第6章 年少者(抜粋:全文は脚注参照[10]
    • 第56条(最低年齢)
      使用者は、児童が満15歳に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、これを使用してはならない。
    • 第56条 第2項
      前項の規定にかかわらず、別表第1第1号から第5号までに掲げる事業以外の事業に係る職業で、児童の健康及び福祉に有害でなく、かつ、その労働が軽易なものについては、行政官庁の許可を受けて、満13歳以上の児童をその者の修学時間外に使用することができる。映画の製作又は演劇の事業については、満13歳に満たない児童についても、同様とする
    • 第57条(年少者の証明書)
      使用者は、満18歳に満たない者について、その年齢を証明する戸籍証明書を事業場に備え付けなければならない。
    • 第57条 第2項
      使用者は、前条第2項の規定によつて使用する児童については、修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を事業場に備え付けなければならない。
    • 第58条(未成年者の労働契約)
      親権者又は後見人は、未成年者に代つて労働契約を締結してはならない。
    • 第59条
      未成年者は、独立して賃金を請求することができる。親権者又は後見人は、未成年者の賃金を代つて受け取つてはならない。
    • 第60条(労働時間及び休日) 第2項
      第56条第2項の規定によつて使用する児童についての第32条の規定の適用については、同条第1項中「1週間について40時間」とあるのは「、修学時間を通算して1週間について40時間」と、同条第2項中「1日について8時間」とあるのは「、修学時間を通算して1日について7時間」とする。
    • 第61条(深夜業)
      使用者は、満18歳に満たない者を午後10時から午前5時までの間において使用してはならない。ただし、交替制によつて使用する満16歳以上の男性については、この限りでない。
    • 第61条 第2項
      厚生労働大臣は、必要であると認める場合においては、前項の時刻を、地域又は期間を限つて、午後11時及び午前6時とすることができる。
    • 第61条 第5項
      第1項及び第2項の時刻は、第56条第2項の規定によつて使用する児童については、第1項の時刻は、午後8時及び午前5時とし、第2項の時刻は、午後9時及び午前6時とする。
  • 年少者労働基準規則
    • 第1条(児童の使用許可申請)
      使用者は、労働基準法第56条第2項の規定による許可を受けようとする場合においては、使用しようとする児童の年齢を証明する戸籍証明書、その者の修学に差し支えないことを証明する学校長の証明書及び親権者又は後見人の同意書を様式第1号の使用許可申請書に添えて、これをその事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長(以下「所轄労働基準監督署長」という)に提出しなければならない。
  • 学校教育法第2章 義務教育(抜粋:全文は脚注参照[11]
    • 第20条
      学齢児童又は学齢生徒を使用する者は、その使用によつて、当該学齢児童又は学齢生徒が、義務教育を受けることを妨げてはならない。

舞台子役と深夜労働[編集]

※本節において肩書きはすべて当時。

2001年(平成13年)に文化芸術振興基本法が制定されたことに伴い、演劇界はこの規制緩和に積極的に働きかけている。各演劇興行会社が文化庁長官に要望書を提出したり、2003年(平成15年)6月3日には、神奈川県横浜市日本演劇興行協会構造改革特別区域の一つとして22時まで延長する「子役特区」を提案した。鴻池祥肇特命担当大臣が「モーニング娘特区」と名付けて実施を目指していたが、坂口力厚生労働大臣は「義務教育を受けるためにも限界がある」と慎重な姿勢を示していた。内閣府で行われた同年9月3日の会談で坂口厚労相が「21時まで認める」と述べ、2004年(平成16年)11月16日の労働政策審議会に対する答申にて、2005年(平成17年)1月1日より全国的に演劇などへの「13歳未満の子役の出演が従来の20時までから21時まで」に延長されることになった。この議論においても、テレビの収録などはこの範囲ではないとの発言もあり、子役や演劇という言葉の示す範囲の曖昧さが指摘されている[12]

21時までの出演が可能となってからも、世界各国の子役事情と比較し緩和が十分とはいえず、2007年(平成19年)12月4日、日本演劇興行協会より子役出演時間延長の要望書が首相官邸に提出されている[13]

2008年(平成20年)4月7日、日本外国特派員協会において「児童俳優の舞台時間延長問題を考えるパネル」が開かれ、子供の教育を受ける権利や児童の福祉を考慮した上での舞台子役の育成と保護について論じられた[14]

2017年(平成29年)には、WOWOWのテレビドラマにおいて、WOWOWの意向でハードワークを課せられた製作陣が、深夜3時から始まる撮影に当時6歳の子役・稲垣来泉を駆り出したうえ、リテイクなどによる徹夜を含む14時間もの撮影を強要した[15][16]。この案件は、『週刊文春』が3月1日にウェブサイト版「文春オンライン」で、明くる2日に本誌で取り上げ、関係者もその事実を認めたと報じられた[15][16]

子役を取り巻く環境と問題点[編集]

少女向け雑誌の表紙は1960年代の半ばまでは少女子役の写真であり、それ以後は少女モデルの写真になり、漫画表紙が定番になるのはさらに後のことである[17]

日本の子役・子役出身者[編集]

1900 - 1940年代生まれ[編集]

1950年代生まれ[編集]

1960年代生まれ[編集]

1970年代生まれ[編集]

1980年代生まれ[編集]

1990年代生まれ[編集]

2000年代生まれ[編集]

2010年代生まれ[編集]

日本国外の子役[編集]

ハリウッド女優シャーリー・テンプルの子役時代(中央)/1939年製アメリカ映画『テンプルちゃんの小公女』の一場面で、撮影時は10~11歳であった。

アメリカの子役・子役出身者[編集]

アメリカ合衆国においては州によって差はあるものの、映画産業の盛んな州でも撮影現場にいることのできる時間に制限が設けられているケースが多い[18]。その対応として、一つの役に双子を交代で起用するなどの方法も用いられている[18]

1900 - 1940年代生まれ[編集]

脚注[編集]

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注釈[編集]

  1. ^ 「おおど(ヲホド)」から来ている皇子名で、「男大迹皇子」の読みは「おおどのみこ」「おおあとべのみこ」など異説多数あり。また、「男大迹邉皇子」「大迹部皇子」などの異表記もある。
  2. ^ 娘方は、武家の娘、商家の娘、ただの町娘などの役がこれにあたり、やんごとなき姫君の役をも含む捉え方もある。
  3. ^ サイレント映画時代を代表する子役で、「ザ・ソラックス・キッド (The Solax Kid)」の二つ名でも知られる。活動期間は1910年から1913年まで。
  4. ^ チャールズ・チャップリンのサイレント映画『キッド』(1921年公開)で、黎明期における子役スターの一人となった。
  5. ^ チャールズ・チャップリンのサイレント映画『キッド』(1921年公開)で、黎明期における子役スターの一人となった。クーガン法の成立でも後世に大きな影響を与えている。■右列上段に画像あり。

注記[編集]

  1. ^ 烏帽子折”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  2. ^ 大仏供養”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  3. ^ 正尊”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  4. ^ 重の井子別れ”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。

出典[編集]

  1. ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』、小学館『精選版 日本国語大辞典』、三省堂大辞林』第3版、平凡社世界大百科事典』第2版. “子役”. コトバンク. 2019年9月10日閲覧。
  2. ^ 研究調整部 研究調整課 (2006年6月14日). “労働政策研究報告書No.62 諸外国における年少労働者の深夜業の実態についての研究 ―演劇子役等に従事する児童の労働の実態―”. 公式ウェブサイト. 独立行政法人 労働政策研究・研修機構 (JILPT). 2019年9月12日閲覧。 “(...略...)特に演劇、オペラ、ミュージカル、テレビ番組製作、映画製作、モデル撮影などメディア・文化の領域で子役として就労している児童の労働保護規制のあり方、法規の運用、就労実態及び健康、教育、財産管理などへの影響を調査しています。”
  3. ^ a b c d e f g h i 平凡社『世界大百科事典』第2版. “子役”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  4. ^ a b c 小学館『精選版 日本国語大辞典』. “子方”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g h i j 平凡社『世界大百科事典』第2版. “子方”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  6. ^ a b c d 平凡社『百科事典 マイペディア』. “子方”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  7. ^ 三省堂『大辞林』第3版. “子方”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  8. ^ a b ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “若衆方”. コトバンク. 2019年9月14日閲覧。
  9. ^ a b 浅原恒男(文責): “娘方”. 公式ウェブサイト. 歌舞伎用語案内. 2019年9月14日閲覧。
  10. ^ 法令データ提供システム:労働基準法第6章 年少者 [リンク切れ]
  11. ^ 法令データ提供システム:学校教育法第2章 義務教育 [リンク切れ]
  12. ^ 労働基準局 勤労者生活部 企画課 (2004年11月). “04/11/16 労働政策審議会労働条件分科会第37回議事録”. 公式ウェブサイト. 厚生労働省. 2019年9月13日閲覧。
  13. ^ 演劇子役の出演可能時間の延長について(要望) (PDF)”. 公式ウェブサイト. 日本演劇興行協会 (JAMT) (2007年12月4日). 2019年9月13日閲覧。
  14. ^ 渡辺晴子(日本外国特派員協会 特別企画委員長) (2008年). “児童俳優の舞台時間延長問題を考える”. 公式ウェブサイト. 日本演劇興行協会. 2019年9月13日閲覧。
  15. ^ a b “WOWOWドラマで天才子役が号泣した徹夜の“違法撮影””. 週刊文春 (文藝春秋). (2017年3月1日). http://bunshun.jp/articles/-/1567 2017年3月5日閲覧。 [リンク切れ]
  16. ^ a b WOWOWが6歳女児の「違法撮影」を謝罪! 監督も不安吐露の“鬼スケジュール”が原因か」『日刊サイゾー』サイゾー、2017年3月2日。2019年9月13日閲覧。
  17. ^ 「プ~タオ 2000年 春の号」、白泉社、2000年5月1日、2019年9月13日閲覧。
  18. ^ a b 猿渡由紀「「東京すみっこごはん」騒動:ハリウッドで子役はどのように扱われているのか」『Yahoo!ニュースYahoo! JAPAN、2017年3月5日。2017年3月5日閲覧。

外部リンク[編集]